この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します 作:伽華 竜魅
ちびたXtreme様、誤字報告ありがとうございます!
『並行世界』、一室。
見張りとして
否、見張っていたが正しいだろう。
その理由はなぜか?それは——
「■■さん、それって、
——
ナンバーは『13』であり、それ以外の物は見た感じない故、
そして読み続けている
だがイヴは気配で感じ取っていた。
イヴは居ても立っても居られず、
そして何度も、何度も「ごめんなさい」、「ごめんなさい」と謝罪の言葉を、涙ながらに言い続ける。
その言葉が届いたのかはわからない。
代わりにボロボロの分析ノートのページの上に、
——◆——
気が付けば元の場所……とは言い当てられないが、薄暗い施設のような空間にいた。
傍にはアダムと蜂沼も立っていて、周りにはローブを羽織っている人たちが作業をしている。
「おかえりなさいっス。どうでしたか?」
「悲劇、惨劇は教えてたよ、向こうも同じだろう」
2人が何か話してるけど、あまり入ってこない。
それほどまでにさっきまで見せられていたこの世界の悲劇が、惨劇が酷すぎるからだ。
あの泥による悲劇もだけど、その後の人間同士での争いが酷すぎる……。
「うぷっ…」
吐き気を催す…咄嗟に片手で口を押えてしまう。
だけどそんな私を他所に、扉が開かれる音が響いた。
「任務、遂行してきました。局長」
「ご苦労だったね」
視線を向ければあの金髪女性と、出久くんが立っていた。
「出久くん!!」
「ッ! 幻神!?」
私に気づいたのか、出久くんは急いで駆け寄ってきた。
「無事だったんだね!?」
「うん、そっちこそ…」
見た感じ傷もない…よかった。
「角笛は、どうしたんだい?」
「歌姫が今こちらに連れてきているようです。例の幼体たちもまた一緒です」
角笛…『ギャラルホルン』のことだろう、それを指すのはイヴちゃんのことだろう。
そして歌姫ってのは…………すると、別の場所から扉が開く音が聞こえた。
バッと振り向けば、さっきまで扉がなかったところに扉があり、そこからイヴちゃんと、彼女が出て来た。
「ッ! 幻神さん!? 出久さん!?」
イヴちゃんは私たちを認識すれば、すぐにこっちに駆け寄ってきた。
「なんで、この世界に…!?」
「……連行された、としか言えない」
「さっきもいろいろあって、ここに連れてこられたんだ」
「…ッ!」
イヴちゃんは黙ってアダムを睨んだ。
「揃ったようだね、これで全員」
「はい。既にこの2人はこの世界に起きた事態を伝えていますので、今の状況を、自身の目で見せましょう」
「良さそうだね、その方が。開けるんだ、ハッチを」
「ハッ!」
部下であろう、彼女と同じローブを羽織る人物たちが壁側に設置されている装置をいじる。
すると自分たちの今いる場所そのものが地震のように、一回揺れ、次の瞬間には壁と天井が開き始めた。開いて気づいた。透明なガラス…窓として透明な球体がここを囲っていることを。
それが曇り降り続けている雨を遮っていることを。
そして私は見た。見せられた。
この『並行世界』の今の状況を。
「——」
この時の私は呼吸することすら忘れてしまったことを、今でも覚えている。
それもそのはずだ、だって目の前……いや、両サイドも、後方も、全部が全部…
「日本は法、秩序も失った。その先に待ち受ける未来は…御覧の通りよ」
これが…『並行世界』の、今の形……………。
「何モナイ。何モナイ」
「消エタ。消エタ」
「皆、生贄、生贄」
アルビノである幼子たちが片言にそう言いながら、私たちの周りを一定のリズムで動く。
「これは跡だよ、記憶の。そしてその先の追い打ちでもあるんだ」
「どういう、意味だ…」
「言っただろう、記憶で。秩序も法も機能しなくなったんだ、わかるだろ? その先で起こる事態を」
秩序、法律などの人間の行動を制限することで平和を保たせるものが完全に機能を失う。
それはつまり、檻にいれられた獣が解放されるのと同じこと。
法で抑えられていた己の本心、欲をさらけ出すことができるということ。
「子供大人、成人だろうと未成年だろうと多くの犯罪、事件が起こり、日本内で同族殺しとも、混沌とも言える時期となった。私たちはその中で唯一生きて、団結した者たち」
「もういないさ、公安も。そして見捨てられているのさ、
アダムが真っすぐ指を指す。
私たちはその指指す方へ視線を向ける。
その先には…記憶で見たあの黒く大きな亀裂と核による爆心地が……。
「アダムと言ったか……あの泥に飲み込まれた人たちは、どうなったんだ?」
「わからないよ、調べても。なんせ無いからね、今は。封じられていようとも機能自体はしているんだよ、泥は」
一月前、アダムは泥を調べるために調査隊を派遣させた。だが調査隊は泥に接近し、吸い上げるための装置をほんの一滴程度、触れた瞬間、泥は動き出したのだ。
僅かなで一瞬過ぎて、気づかないほどの触れ。例えるなら蚊が人知れず肌の上に乗っているのと同じ。
泥は一気に調査隊へと触手のように塊を伸ばし、捕縛し、泥の中へと引きずり込んだ。
それらが分かるのは、唯一カメラだけが泥外へ放り投げられ、そのレンズが捉えていたから。
だが例外がいたとも言った。
「例外…?」
「これさ」
アダムは懐からある宝石を取り出す。
それは糸が通され、ペンダントやリングのようになっているが、微量ながらに輝きを放っていた。
「摘出して作ったんだよ、こちら側の歌姫から。歌姫だけなんだ、泥に干渉されないのは。今のところはね」
「え?」
私は彼女へ振り向く。どういう意味だ。
「記憶でも見たように、我々の世界の歌姫はあの泥、亀裂の封印を解いた張本人でもある。それ故か、泥に飲み込まれることはない。そして彼女から摘出して宝石としてまとめたそれもまた彼女の体の一部として認識しているのか、泥は取り込むこともなく、使い方によっては退けることもできるのよ」
金髪女性は故にと言いながら、懐から ノックを取り出した。
「彼女の血肉と…この世界の天堕ユウカの記憶を基準にし、我々なりに『ファウストローブ』や『アルカノイズ』を忠実に再現して見せた」
「難関だったよ、君の記憶にのみ存在するものを再現するのは。けど今ではできるさ、一部に限るが簡単に」
つまり…『並行世界』の私の前世の記憶をこいつらは覗き見して、【戦姫絶唱シンフォギア】や【マクロス】に登場した武具、装甲、兵器、錬金術を再現したってこと…?確かに、"個性"と呼ばれる特殊能力を誰もが身に宿し、前世の私の世界以上に技術が発展しているこの世界でなら、もしかしたら可能かもしれないって、昔思ったこともあったけど、まさか本当に……?
いやできる。私たちは知っている。消失弾だ。
消失弾は壊理ちゃんの身体から摘出されて作られた、いわば壊理ちゃんの"個性"を物質として分裂させたようなもの。
私たちは実際に見てる…通形先輩はそれを打ち込まれて"無個性"にされている…それらのことが全部、こいつらの言っていることを真実と、『ファウストローブ』も錬金術もその全てが真実だと告げている。
「なんで…幻神だけが……いや、この世界の彼女たちだけが大丈夫なんだ?」
「わからないわ。でも、結果としては証明されている。だから私たちは彼女から摘出して、多くの兵器、技術を再現した。これらが私たちが用いる、終わりなき災禍への対抗手段でもある」
『
そこに私の前世の記憶、知恵、知識が備わったことで力を発揮している……だからってあの泥と、その終わりなき災禍ってのと何か関連性があるようには見えない。
いや、この世界の『
すると次の瞬間、地響きが起こり、降り続けている雨の中、雷が数回、地へ降り注い……え?
「幻神…? どうしたの?」
「
誰かの声が、さっきの地響きと一緒に……そう疑問に思っていたら、突然警報が鳴り出した。
「何事だ!?」
「偵察班から緊急報告!! 終わりなき災禍を封じていた柱が……
端の方で作業をしていた人たちの1人が血相を変えて叫んだ。
それを聞いたアダム以外の人達も驚愕している。
そして映像が目の前に出されれば、記憶の中で起きたクレーターと真上の空中には、世界を蝕むため侵攻するかのように、黒く異質な禍々しい巨大な亀裂が徐々に広がり始め、中心には穴がゆっくりと空けられ始めていた。
「そんな……予測よりも早すぎるぞ…! 局長!!」
「……譲る、全命令権を。僕は用意する、アレを」
「ッ! つまり……」
アダムが金髪女性に命令、つまり指令としての権利を全て譲ると言った。
戦いに背を向けて責任から逃れようとしているのかと怒りを抱いたが、何故か違うと私は思った。
「努力する、すぐに戻れるよう。持ち堪えてくれ、それまで」
「……わかりました。第1種戦闘配置!! 出し惜しみ無用!! 持てる物全てを持って、終わりなき災禍を止めるぞ!! 動け!!」
「「「了解!!!」」」
突然すぎることに私たちは戸惑っている中、イヴちゃんの叫びが聞こえて振り返る。
「どうしたんですか■■さん!?」
視界に入ったのは、ローブを羽織っている彼女が、背面に黄緑の輝きを漏らす黒緑のスラスターウィングを武装していた。
「■■! 貴様何をして…!!」
「——呼ンデイル」
「ッ! うっ!!!?」
瞬間、私は激しい頭痛に襲われた。
だけどその頭痛には微かに何かの声が聞こえている…美音の時と同じように、誰かが……。
「誰、なの…!?」
「幻神…? いったい何を言って——」
私たちを他所に、彼女は一気に上昇して、天井を破壊して外へ飛びだした。
「呼ンデイル……行クヨ」
片手で頭を抑えながら、上を見上げれば彼女だけじゃない。
あのアルビノである子どもたちも、彼女に続くように浮上していた。
「あの子たち…!?」
「ま、マズいっすよ『アリス』さん!! あの子たちまで終わりなき災禍に飲み込まれたら…!!!」
「(まさか一か所に集まるのを干渉する形で見計らって……)」
私たちが驚愕や戸惑いでいる中、彼女と子供たちはおそらく終わりなき災禍の方だろう。
「はっ……
そしてそこへと向かうべく、全員が同じ方向へ向き、彼女を先頭に高速で飛んで行った。
「日陰の歌姫並びに異能格納型幼体が終わりなき災禍へ向かいました! 速度は遷音速程! 接触までの想定時間は約10分弱!!」
「くっ…急ぎ艦の用意を!! あなた達もこの状況となっては仕方がないから、ついてきなさい!!」
「えっ、ちょ、な、なにを…!!」
全員が慌てながら動き、私たちも金髪女性…アリスと呼ばれた女性と蜂沼に連れられて今いる場所を後にした。
「な、何が起こっているんだ! いったい、何が……」
出久くんの困惑している言葉が耳に入る。
でも、本能と状況で彼も私も分かっていることが1つだけある。
——この世界の戦い、その続きが始まろうとしているんだ。
ようやく戦いが始まるかもしれない。
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