これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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なんでも

「それで、言い訳はあるかしら?」

「………」

 

 浴室での事件の後、広く豪勢な広間で、オレの裁判が行われていた。オレを見る少女たちの視線は厳しい。イザベル、クロエはオレを責めるように眉を顰め、意外にもジゼルが真っ赤になった顔を恥ずかしげに伏せている。エレオノールなんて、静かに泣いているくらいだ。リディ? リディはイザベルの後ろに隠れて姿が見えない。言外に顔も見たくないと言われているようだ。

 

「ちょっと待ってくれ! たしかに、その、なんだ……見ちまったのは悪いけどよ? そもそも、先に風呂に入っていたのはオレだぜ? なんでオレが責められなきゃいけないんだ?」

 

 さすがに理不尽だと思うんだが、少女たちの厳しい視線は、これっぽっちも和らがない。

 

 ダメだな。皆、感情的になっている。理論よりも感情を優先している状態だ。このままではオレの許される未来など絶対にこない。オレの味方になってくれそうな姉貴は、オレたちの様子を見ながらクスクス笑ってるし、まったく頼りになりそうにない。

 

 オレは、このメンバーの中では理論派のイザベルを見つめて口を開く。今のオレに圧倒的に足りないものは、味方だ。今のままでは一対五だからな。一人でも味方に引きずり込みたいところだ。それには、まだ比較的理性的なイザベルが一番の気がした。

 

 イザベルなら弁も立つ。味方になってくれれば頼もしい。

 

「頼むから、考えてもみてくれよ。オレが先に風呂に入ってたんだぜ? オレが先に入ってることにお前らが気が付けていれば、この事故は防げたんじゃないのか? 本当にオレの落ち度なのか?」

「黙りなさい、変態! と、言いたいところだけど、アベルの言葉にも一理あるのかしら……?」

「ちょっ!? ベルベル!?」

「ん~……」

 

 イザベルの言葉にジゼルが驚きの声を上げ、リディがイザベルのスカートを引っ張って抗議する。

 

 たしかに、オレもイザベルならば話を聞いてくれるのではと思ったが、予想以上に簡単に靡いてきた。このまま味方に引きずり込みたい。

 

「そうだろ? オレはわる……」

「でも! 脱衣所に入った時、叔父さんの脱いだ服も籠に無かったし、シャワーの音も聞こえなかったもん!」

 

 イザベルを味方に付けようと更に口を開いたら、声を遮るようにクロエがオレを指さして声を上げる。

 

 クロエは顔を真っ赤にしてオレを睨むように見ていた。それだけでオレの心は大ダメージだ。いつだったか、干してあったクロエの下着を見た時も、半日口をきいてくれなかったクロエだ。裸を見てしまったのだから、どれほどクロエの心を傷つけてしまったのか分からない。

 

 本当なら、今すぐにでもクロエに謝って許しを請いたいところだ。だが、そんなことをすれば、オレが全面的に悪いと認めることになる。危機が迫っている今、できる限り少女たちとの間にシコリは残したくはない。

 

「クロエはこう言っているけど、なぜ貴方の脱いだ衣服が無かったの? それさえあれば、私たちも貴方が浴室に居ることを察知できたはずよ?」

 

 クロエの言葉に、イザベルがまた視線を厳しくし、オレを見つめる。このままではマズイのは分かるが、オレに言い訳や言い逃れはできなかった。

 

「……その、なんだ……。つい、いつもの癖で収納空間にしまっちまったんだ……」

「つまり、貴方は脱いだ衣服を隠したわけね?」

 

 イザベルがオレを問い詰めるように無機質な声で問う。先程まではオレの味方になってくれそうな雰囲気があったのに、今では微塵も感じない。やはり、腹の底ではイザベルも裸を見られたことを怒っているのか?

 

「“隠す”なんて、言葉に語弊があるだろ……。オレに悪意は無いぞ? 本当に、無意識にしまっちまっただけなんだ。わざとじゃねぇ」

「でも、脱いだ服は脱衣所の籠に入れると決まっていたでしょう? これは、貴方が決まりを破った結果、引き起こされた悲劇なのよ。情状酌量の余地はあるでしょうけど……ね」

「そんな……。頼むよ、イザベル」

「そんな縋るような目で見られても……。その、私だってあなたに素肌を見られて恥ずかしかったのよ……?(しかも、あんな油断した状態で……。まだお手入れが行き届いていないのに……」

 

 イザベルの声が急に小さくなり、後半部分が聞き取れなかった。なにをブツブツ言ってるんだ? やっぱり怒ってる?

 

「はぁー」

 

 イザベルは深いため息を一つ吐くと、オレから視線を外して後ろを振り返る。

 

「皆、アベルについては思うことはあるでしょうけど、今回は許してあげましょう。私たちだって、もっとよく確認すれば、事故を防げたと思うのよ」

 

 なんと、望みは潰えたかと思っていたのに、イザベルがオレの擁護をしてくれた。

 

「でも……」

「分かってるわ、ジゼル。でも、恥ずかしい思いをしたのは全員一緒よ。それに、思い出してみてほしいの。私たちのリーダーのアベルは、悪意を持ってこんなことをしない人よ。本人が言うように、本当に私たちに害意があったわけじゃないのよ」

 

 イザベルの説得に、少女たちが口を噤む。不満の言葉を呑み込んでいるのだろう。まったく、オレは何をやっているんだ? イザベルがこの場を治めてくれたことは、とてもありがたい。だが、そのせいでクロエたちが不満を飲み込んで我慢してくれている。オレの不注意が原因なのに。

 

 オレにも罰があってもいいはずなのに。クロエたちにばかり不満を抑え込むのはフェアじゃない。

 

 相手は多感なお年頃の少女たちだ。裸を見られたなんて、そりゃもう大事件だろう。それを不満も言わずに抑え込めと言うのは、いくらなんでも不憫だ。

 

 オレは姿勢を正してクロエたちに頭を下げた。

 

「すまなかった。言葉だけじゃ足りねぇ。オレにできることなら、なんでも言うことを聞くつもりだ。本当にすまなかった」

「「「「「今、なんでもって言った?」」」」」

 

 少女たちの目が怪しく光る。

 

「お、おぅ……」

 

 オレは気圧されるように頷いてしまった。

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