これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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イザベルとリディ

 【収納】のギフトの新たな能力が発見でき、オレのテンションは有頂天だった。なにせ、これが実現すれば、オレはパーティの戦力として貢献できるかもしれない可能性を秘めていたからだ。今までの戦闘では役立たずのただの荷物持ちからは卒業できる。これなら、もしかしたらマジックバッグを手に入れた後でも、クビになることはないかもしれない。今までの無力な自分とはおさらばできるかもしれない!

 

 試したい。今すぐにでもこの力を試したいが……。今は我慢だな。

 

 ドシュゥゥウウ! ドシュゥゥウウウ!

 

 最後のゴブリンウォーリアの首を刎ね、ゴブリンの首からドクドクと鼓動に合わせて勢いよく溢れる血を一歩後ろに下がって避ける。

 

 ここは安全の確保された場所じゃない。ゴブリンどもの後続が現れないとも限らないからな。警戒が必要だ。

 

「イザベル! リディ!」

「ベルベル! リディたん!」

 

 戦闘が終わったのを察知したのだろう。クロエとジゼル、エレオノールが、丘を駆け下りて、ゴブリンどもに襲われていた二人の少女に駆け寄ったのが見える。

 

 オレも途中で投げ出したヘヴィークロスボウを回収すると、弦を巻き上げながらクロエたちに合流する。

 

「イザベル大丈夫!? 怪我はない!?」

「リディたんも平気?」

「お二人とも怪我はありませんか?」

 

 クロエたちが心配の声を上げる中、草の絨毯の上に座り込んで、上体を起こした黒髪の少女が口を開く。

 

「おかげさまで大丈夫よ。怪我も治してもらったわ。ほら、リディも皆に元気な姿を見せて」

「んー……」

 

 黒髪の少女の腰に抱き付いた銀髪の少女が、そのほっそりとしたお腹に顔を埋めている。そんな銀髪少女の頭を、黒髪少女は優しく撫でていた。なんだか二人の体格差も相まって、まるで親子のようだな。

 

「あ……」

 

 長い黒髪の少女が、オレの接近に気が付いたようだ。そして、黒髪少女の視線の先が気になったのか、クロエたちもオレの方を振り返る。

 

「お、叔父さん! 肩! 肩に矢が!」

「ん?」

 

 急に騒ぎ出したクロエの視線の先を辿ると、オレの左肩に突き立った貧相な矢に辿り着いた。そういえば、ゴブリンアーチャーに撃たれてたっけか。

 

「どどどどうしよう?!」

「どしよ!? どしよー!?」

 

 慌てるクロエの叫びに感化されたように、ジゼルが立ち上がって驚きの声を上げた。エレオノールも口に手を当てて驚愕を露わにしている。

 

「あぁ……これか」

 

 オレは、左肩に突き刺さったままだった矢を無造作に引き抜く。

 

「叔父さん!? そんな乱暴にしちゃ!?」

「慌てるな、クロエ。刺さってない。下にチェインメイルを着てるからな」

 

 オレはローブの胸元を引っ張って、下に着込んだチェインメイルを見せた。

 

「チェイン、メイル……」

「そうでしたか……」

「おおー! かっけー!」

 

 クロエ、エレオノールが安堵の声を漏らし、ジゼルが目を輝かしてはしゃぐ。

 

「お前らも下にチェインメイルくらい着込んどくといいぞ。いざという時に頼りになる。それよりも、そっちの二人は大丈夫か?」

「助けてくれて本当にありがとう。私はイザベル。名前を訊いても?」

 

 オレは、長い黒髪の少女、イザベルに頷いて返すと、口を開く。

 

「クロエの叔父のアベルだ。怪我はいいようだな。そっちのちっこいのも大丈夫か?」

「んー……」

 

 銀髪の小柄な少女に問いかけたら、少女はイザベルの腹に顔を埋めながら、まるでムズがる子どものような声を上げる。その身に纏う白地に青のラインが入ったぶかぶかの修道服から、この少女が成人した治癒の奇跡のギフト持ちであることが分かる。だが、その体躯の小ささといい、この反応といい、とても成人しているとは思えない。まるで本当に幼い子どものようだ。

 

 だが、ギフトが貰えるってことは、本人が成人していることを神が保証しているに等しい。どう見ても成人しているようには見えないが、あまりツッコミを入れると、逆に神を信じていないのかと藪蛇になりかねないか……。

 

「はぁ……。リディ、ちゃんと挨拶なさいな」

「んん~……」

「もう……。ごめんなさいね。急にゴブリンたちに襲われたから、気が動転してしまったのかしら。この子の名前はリディ。私とリディを助けてくれてありがとう。本当に感謝しているわ」

「ああ……。なんだ。困った時はお互いさまってやつだ」

 

 オレは、イザベルの感謝を軽く受け取る。全てはクロエのためにやったことだ。もし、イザベルたちがクロエの仲間でなければ、オレはクロエの安全を優先しただろう。

 

「えっとね、叔父さん。もう分かってるかもしれないけど、この二人が探していたパーティメンバーなの。まさか、こんなことになるなんて……。叔父さんが居てくれて、本当に良かった。本当にありがとう、叔父さん」

「なぁに。いいってことよ」

 

 オレはクロエの言葉に気をよくすると、イザベルたちを助けることができて良かったと安堵する。自然と顔には笑みが浮かび、オレは左手をクロエの頭へと伸ばしていた。

 

「ふぁ……。お、叔父さん。恥ずかしい……」

 

 オレは、クロエの頭を優しく撫でる。少し顔を赤らめて俯き、上目遣いで見つめてくるクロエの破壊力ったら、きっと王都の城壁すら軽くぶっ飛ばすだろう。個人に耐えられるレベルじゃない。きっと今のオレの顔はでれでれに蕩けてしまっていることだろう。

 

 おじさんがでれでれしたところでかわいくないのは百も承知だが、今だけは見逃してほしい。

 

「そ、それでね、叔父さん」

 

 気持ちよさそうに撫でられていたクロエが、ハッとなにかに気が付いたようにオレの手から離れた。空を切る手が無性に寂しい……。

 

「これから叔父さんがパーティに入ることについて話したいんだけど、いいかな?」

「そうさな……」

 

 今のオレは、クロエのパーティに入ることが正式に決定したわけではない。これからパーティメンバーになる少女たちに了解を貰わなくてはならない身だ。

 

「貴方が私たちのパーティに……?」

「んー……?」

「アベるん、パーティに入るの!?」

 

 初耳だろうイザベルとリディが、首を傾げている。ジゼルは、なぜか目をキラキラさせてオレを見ていた。

 

 一応、エレオノールの了解を貰ったが、オレはあとこの三人を説得しなければならんのだな。クロエの身を護るためにも、是が非でも説得しなければならない。

 

 だが、その前に……。

 

「その前に、まずは移動だな。ゴブリンの後続が現れるかもしれねぇ。とりあえず、王都の中に入るぞ」

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