これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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すごい!

「ちょいなっ!」

「GUGA!?」

 

 エレオノールと向き合っていたゴブリンウォーリア。その最後の一体をジゼルが背後から斬り倒す。

 

 背中を斜めに斬られたゴブリンウォーリアは、断末魔を上げて、ボフンッと白い煙となって消える。そして、辺りには静寂が訪れた。

 

 数えるのも億劫なほど居たゴブリンたちの群れは、全て駆逐されたのだ。

 

 だというのに、少女たちは真剣な表情を崩さず、武器を構えて洞窟の奥の曲がり角を注視している。

 

 ゴブリンたちの援軍を警戒しているのだ。

 

 オレはその様子に満足感を覚えていた。戦闘が終わった直後というのは、隙が生まれやすい。誰もが、勝利と言う美酒に酔いたくなる瞬間だ。

 

 今回、次から次へとゴブリンたちの集団に襲われたからだろう。少女たちは、オレが言うまでもなく、武器を構えて警戒を続けている。戦闘が終わった直後こそが危険だということを、体で理解したのだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 静けさに満ちた洞窟の中に、肩で息をするような吐息が木霊する。少女たちの疲労は、頂点に達しているのだろう。本当は、なにもかもを投げ出して、体を休めたいに違いない。

 

 それでも、次の戦いを見据えて、緊張を解かない少女たちに姿には、感動を覚えるほどだった。

 

「もういいだろう。戦闘終了だ」

 

 オレは、ゴブリンの来援がないことを確認すると、戦闘の終了を告げた。少女たちの緊張が解け、各々が警戒しながらも武器を収めていく。

 

「はぁー……」

 

 誰かが吐いた深い息が、先程までこの場を支配していた緊張感の高さを示しているようだった。

 

「ふむ……」

 

 オレは右手で顎の無精ヒゲを撫でながら、今回の戦闘を思い返す。

 

 今回の戦闘を通して、少女たちはいくつも気付きを得ただろう。その気付きは、成長へとつながる大切なものだ。どうか大事にしてほしい。

 

 そして、今回得たものは、少女たちの気付きだけではない。オレ自身が、大きな気付きを得た戦闘だった。

 

 オレは右の拳を強く握る。成功の実感を強く感じた。

 

「ははっ……」

 

 必死に抑えなければ、大声で笑って、地面を転げ回っていたかもしれない。それほどの享楽をオレは感じていた。

 

「成功だ……」

 

 ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!

 

 目を瞑れば、今でも鮮明に思い出すことができる。

 

 激しい破裂音を響かせて登場したのは、目には見えないほど高速で飛翔するボルトの群れだ。オレが一発一発ヘヴィークロスボウで撃ち、収納空間に眠らせておいた凶弾の群れ。

 

 その凶弾の群れが、ゴブリンたちの手足を、頭を、腹を、砕き、弾き、千切り飛ばす。まさに暴力の嵐。

 

 事前に何度も確認したし、こうなるだろうという予想も立っていた。

 

 しかし、実際に実戦で試すのは初めてだった。

 

 パーティメンバーの少女たちには柄にもなく大見得切ったが、本当は、当然のように緊張したし、喉はカラカラだった。もし、思ったように機能しなかったら……。不安は拭いきれなかった。

 

 ゴブリンたちをボルトの嵐で一掃した時に感じたのは、興奮ではなく安堵だったことをよく覚えている。

 

 よく狙い通り機能してくれたと、オレはいつもは毒気付いていた神様ってやつに、珍しく感謝を捧げたくらいだ。

 

 我事ながら、自分勝手過ぎて笑っちまうな。

 

 今頃、ゾクゾクと熱い興奮と実感が背筋を昇ってくる。

 

 意味も無く叫びたい衝動に駆られるが、しかし、ここは努めて冷静になるべきだろう。オレの新しい技“ショット”は、まだ一回しか実戦で成功していないのだから。

 

 そんな感慨に耽っていると、ドンッと腹のあたりに軽い衝撃を感じた。

 

「ねぇねぇねぇ! アベるんっ! アレすごかったね! アレ! ドババババーッてゴブリンたちをぶっ飛ばしたやつっ! アレ何? ねぇねぇー。教えてよー!」

 

 ジゼルだ。ジゼルがオレの腹に抱き付いて、まるで物をねだる小さな子どものように小刻みにジャンプする。その顔はキラキラの笑顔を浮かべて、大きな緑の瞳は、ピッカピカに輝いていた。

 

 頬を薄く赤らめて、潤んだ瞳で上目遣いに見つめてくるジゼル。余程、興奮しているようだ。

 

 若い娘が、こんなに体を密着させて……。はしたないと思ってしまうオレは、古い人間なのだろうか?

 

「落ち着けジゼル……」

「これが、落ち着いていられますか! アレは何よ!? 貴方、あんな切り札を隠し持っていたの!?」

 

 そう言ってオレに詰め寄ってきたのは、スカートにリディをくっつけたイザベルだ。

 

「べつに、隠してたわけじゃねぇが……」

「まぁまぁイザベル。おかげで助かったではないですかぁ」

 

 オレに詰め寄るイザベルを、どうどうと諌めてくれたのは、まだ肩で息を弾ませているエレオノールだった。

 

「でも、エル! あんな切り札があるなら、事前に共有してくれてもいいと思わないかしら?」

「いや、それは……」

 

 たしかに、イザベルの言う通りなのだが、一度も実戦で使ってないものを共有して、いざという時使えなかったら無意味だ。せめて一度は成功してから、ちゃんと選択肢に加えたいところがあった。

 

 今回はぶっつけ本番になってしまったが、イザベルの言う通り、事前に皆に周知しておいた方がよかったかもしれない。

 

「まぁまぁ。アベルさ……んにも、敢えてわたくしたちに伏せることを選んだ狙いがあるでしょうしぃ……」

 

 エレオノールがオレの援護をしてくれるが、オレはそんな狙いなど考えても居なかった。

 

「あははは……」

 

 とりあえず、オレは笑ってごまかしておくのだった。

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