これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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辞めるか?

「オレのことは7人目でも、単なる荷物持ちみたいな扱いでもいいからな」

 

 オレは、クロエと手をつないで歩きながら、それだけクロエに伝える。オレの目的はあくまでクロエを護ること。べつに無理してまでパーティメンバーにならなくてもいい。

 

 オレの左手に伝わる小さな温かさと柔らかさに、オレはクロエを護ることを再度心に固く誓う。

 

 クロエたちはまだ初心者のパーティだ。たぶんマジックバッグを持っていないだろう。オレの【収納】のギフトでも役に立てるはずだ。そのあたりから説得すれば、最悪でも7人目としてクロエたちのパーティに付いていく許可くらい貰えるだろう。

 

「そんなことさせないわ。叔父さんならきっと大丈夫よっ! まっかしといてー!」

 

 クロエがオレの手を握り返しながら、ニッコニコの笑顔で答える。なんだか嬉しくて堪らないような笑顔だ。なにかいいことでもあったのか?

 

 超ご機嫌状態のクロエを見ていると、オレまで心がウキウキしてくる。なんでも買ってあげたい気分だ。例えば、服なんてどうだろう? 今、クロエが着ているのは、お世辞にも良い服とは言えない。姉貴の収入を思えば仕方がないのだが、ここはオレの出番ではないだろうか?

 

 あぁ、クロエをお姫様のように飾り立てたいッ!

 

 今思えば、オレがクロエに贈ったことのある服なんて、冒険者用の装備くらいしかない。なぜ、オレは今までクロエに服を贈ったことがないのだ。過去の自分を張り倒したいッ!

 

 いや、待てよ。ここはいったん冷静になろう。クロエにだって服の好みはあるだろう。下手な服をプレゼントして、気に入ってもらえなかったら悲しい。

 

 クロエは優しい子だ。きっとなにをプレゼントしても表面上は喜んでくれると思うが、できれば、クロエが望んでいる物をプレゼントしたい。

 

 実際に店に行ってクロエに選ばせるというのも手ではある。これならハズレはないだろう。しかし、サプライズプレゼントとして贈ってクロエを喜ばせたいという思いもある。

 

「ふむ……」

 

 悩ましいな。どうするのが正解だ?

 

 最初はクロエと買い物に行って、クロエの好みを分析するところから始めるのがいいだろうか。年頃の女の子の好みなんて、オレに理解しきれるかどうか……。やれやれ、サプライズプレゼントまでの道のりは遠いな。

 

 そんなことを考えながら、クロエに手を引かれて歩くという至福の時間を味わっていると、行く先にそこそこ大きな商会が見えてくる。ドア口に掲げられた看板には、小麦が描かれていた。大手には及ばないが、中規模のシェアを誇る小麦問屋、リオン商会だ。

 

 クロエとパーティを組んでいる者は、一応裏が無いか調べ済みだ。ここリオン商会の商会長の娘がクロエのパーティに所属しているのも知っている。まずは、ここから紹介してくれるらしい。

 

「叔父さん、こっちよ」

 

 クロエに誘われるように店に入ると、焼き立てのパンの香りが漂ってきた。リオン商会は、パンの販売もしているのだ。

 

「いらっしゃいませ」

 

 カウンターテーブルの向こう、白いお仕着せを着た中年の男が、笑顔を浮かべてオレたちを迎えいれた。クロエは小さくお辞儀をすると、男に向かって歩いていく。

 

「あのー、すみません。あたし、クロエって言います。エル……。エレオノールを読んでもらってもいいですか? 紹介したい人が居るんです」

「承知いたしました。お先に応接間にご案内いたしますね」

「お願いします」

 

 中年の男と会話するクロエの姿を見て、オレは感動に打ち震えていた。あの人見知りだったクロエが、堂々と年上の男と会話している。クロエの成長に乾杯したい気分だ。

 

 思えば、成人してからクロエはめっきりと大人になったな。ちゃんと自分の意志を持って行動するようになった気がする。自分が成人したという自覚がそうさせるのだろうか?

 

「いきましょ」

「あぁ」

 

 クロエに促されて、先導する男の後に続いて店の奥に歩いていく。店の中は人の気配がたくさんあり、活気があった。なかなか賑わっているようだな。

 

「こちらでもうしばらくお待ちください」

 

 応接間に案内されると、すぐにお茶と菓子が用意され、くつろぐことができた。クロエも慣れているのか、優雅にお茶を楽しんでいる。

 

 リオン商会。こちらも一応軽く調べてみたが、裏で悪い奴らとつるんでいるわけでもないし、周囲の評判も上々な商会だった。ひとまずは、クロエの友人の実家としては合格だ。

 

「クロエ、どうだ冒険者生活は? 順調か?」

「うぅーん……」

 

 オレの問いかけに、クロエは難しい顔を浮かべてみせる。なにか問題があるのだろうか?

 

 オレの不安そうな顔に気が付いたのだろう。クロエは笑顔を浮かべて顔の前で手を振った。

 

「違うの。なかなか思い通りにならなくて落ち込んでただけ。あたしもはやく叔父さんみたいに高レベルダンジョンを攻略したいのに、今のあたしたちは、低レベルダンジョンを攻略するのもやっと。なーんか、理想と現実のギャップ? それを感じているの」

「どうする? 冒険者なんて辞めちまうか?」

 

 オレはクロエが冒険者を諦めるなら、それでいいと思っている。むしろ、そうであってほしい。かわいい姪が、冒険者なんて死と隣り合わせの危険な職に就いているなんて心配で仕方がない。辞めてくれるなら万々歳だ。

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