これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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一対一

「GAUGAU!」

「GRURURURURURU!」

「来なさいっ!」

 

 エレオノールが凛々しいウォークライを上げて、2体のオオカミを迎え撃つ。その様子に、恐れや怯えのような感情は見えない。ただただ真剣な表情を浮かべていた。

 

 ダダダッ!!!

 

 オレは、よくよく狙いを定めると、収納空間からボルトを射出する。

 

 同時に、エレオノールに向かっていたオオカミの内、一体が白い煙と化すのが見えた。

 

 レベル8のダンジョンでも通用したヘヴィークロスボウの三連射だ。レベル3のモンスターなど、断末魔の声さえ上げる暇を与えずに倒せる。オレは、キールの設計したヘヴィークロスボウに絶対の信頼を置いているのだ。

 

「GAUGAU!」

 

 すぐ横を駆けていた仲間が瞬殺されたというのに、オオカミには驚きも恐怖に足を竦めることもない。敵を見つけたら一直線。ダンジョンのモンスターは、まるで感情が無いかのように機械的に感じることがある。どんなに劣勢でも逃げることはないし、自らの命など勘案せず、侵入者の排除を最優先しているように感じられる。

 

 ダンジョンのモンスターというのは、恐れを知らない死兵なのだ。その命が尽きるまで、敵を排除し続ける。

 

 そんな厄介な性質を持ったオオカミと、エレオノールが一対一でぶつかろうとしている。オオカミが高速で迫り、エレオノールが待ちの姿勢だ。

 

 前回の戦闘が終わった後の反省会で、まずはエレオノールにオオカミとの一対一を経験させてみては、という意見が出た。たしかに、いきなり一対二では難しいというのは分かる。

 

 それに、今までゴブリンという人型モンスターの相手をしこたましていたのだ。いきなりオオカミという獣型モンスターの相手では、慣れていない部分もあるのだろう。

 

 まずは、オオカミを相手に一対一での戦闘でエレオノールを慣れさせる作戦だ。

 

「がんばれよ……」

 

 オレは祈るような気持ちでエレオノールを見つめる。何度でも言うが、エレオノールはパーティの要だ。エレオノールが敵の攻撃を凌げれば、オレたちには勝機がある。エレオノールがパーティの生命線を握っていると言っても過言ではない。

 

 ここは、なんとしてもエレオノールに勝利してほしいが、果たして……。

 

「やぁああああああ!」

 

 オオカミが残り一足の距離に入った瞬間、エレオノールが動く。左手の豪奢なラウンドシールドを前に構え、低く前傾姿勢で飛び出す。その行く先はオオカミだ。

 

「GYA!?」

 

 鈍く重い打撃音が打ち鳴らされ、エレオノールとオオカミがついにぶつかり合う。

 

「ぐぅぅッ!」

 

 エレオノールの苦し気な吐息が聞こえた。本来なら、一瞬のできごとだったのだろう。しかし、オレには無限に思えるほどエレオノールとオオカミのぶつかり合いを長く感じた。

 

「KYAUN!?」

「クッ!?」

 

 エレオノールとオオカミが、お互いに弾かれたように後方に飛ばされる。永遠とも思えたぶつかり合いは、引き分けに終わったのだ。

 

 エレオノールは、オオカミとの激突によって大きく弾き飛ばされたが、過剰な前傾姿勢が功を奏したのか、ちゃんと二本足で立っていた。

 

「GUAAAAA!」

 

 しかし、二本足と四本足の差が出たのか、オオカミの方が立ち直りが早い。オオカミは、再度エレオノールに向かって突進をする。

 

「次こそはッ!」

 

 エレオノールもオオカミに向かってラウンドシールドを前に駆け出す。もう一度ぶつかるつもりか?

 

 果たして、エレオノールとオオカミは、二度目の激突に入る。その瞬間―――ッ!

 

「はぁああああああああああ!」

 

 エレオノールのラウンドシールドが、大きく斜めに傾いた。傾いた隙間から飛び出すのは、銀の鋼の輝き。エレオノールの片手剣だ。

 

「GA!?」

 

 エレオノールの傾けられたラウンドシールドに飛び掛かったオオカミは、ラウンドシールドの上を滑るようにしてその軌道を斜めにズラされていく。オオカミの急所である腹が、エレオノールにさらされた。その瞬間に走るのは、エレオノールの片手剣による渾身の突きだ。

 

 エレオノールの片手剣は、面白いほど易々とオオカミの体へと突き込まれていく。まるで熱したナイフをバターに刺しているのかようだ。

 

 エレオノールの得物は、短めの片手剣だ。鍛えているとはいえ、まだまだ初心者冒険者の少女の片手の腕力で、オオカミを貫くには、普通なら威力不足だろう。

 

 だがエレオノールは、オオカミの突進の勢いも利用することで、それを可能にした。

 

 エレオノールが、ラウンドシールドでの正面からのぶつかり合いにこだわったのも、それが理由だろう。全てはオオカミを倒すためのエレオノールの策略だ。

 

「G……G……」

「ふんっ!」

 

 片手剣が深々と胸に突き刺さったオオカミは、もはや満足に声を上げることもできないようだ。エレオノールが片手剣をひねり回すと、声も無く白い煙へと変わった。

 

「よしっ! やりましたわっ!」

 

 エレオノールが、勝利の喜びを噛み締めるように呟くのがここまで聞こえた。

 

「ふむ……」

 

 あの調子ならば、一対一では問題無いか。しばらく一対一での勝利を積み上げ、エレオノールにオオカミ相手の勝利に慣れてもらう。それは、エレオノールにとって、大きな自信になるだろう。

 

「その後だな……」

 

 そして、その後は、一対二の戦闘に慣れてもらう。少しずつ、少しずつ前進していこう。オレたちには、なにも焦る理由は無いのだ。

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