これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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白狼②

「やぁああああああああああ!」

 

 オレの見つめる先で、エレオノールがウォークライを上げながら、白狼へと突撃していく。その後ろには、赤毛の尻尾を揺らしたジゼルが駆けていくのも見える。

 

「GURURURURURU!」

 

 白狼は、鼻頭にシワを寄せ、その大きな牙を剥き出しにして唸っていた。その姿は、まるで小山のように大きい。先程片付けた並みのオオカミも、人間の成人男性くらいには大きなはずだが、それが、まるで親子に思えてしまうほどのサイズ感だ。

 

 そんな巨大と形容するのも不足なほどの白狼に向かって、エレオノールは怯まずに駆けていく。その胆力だけでも大したものだとは思うが、オレはエレオノールにその先を望んでいるのだ。

 

「強固ッ!」

 

 エレオノールの凛々しい声と共に、その体から淡い黄色の光の粒子が放たれる。エレオノールが、その身に宿したギフトの力を使ったのだ。

 

「さて……どうなるか……」

 

 オレは、頭の中の良くない妄想を振り払い、祈るような気持ちでエレオノールの背中を見続ける。

 

 できることなら、一度でコツをものにしてほしいが……。

 

 白狼が大き過ぎるため距離感覚が狂うが、もうそろそろエレオノールと白狼がぶつかるだろうという所で、ついに白狼が動き出した。

 

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

 白狼が、その巨体からは想像もできないほど機敏に動く。その巨大で獰猛な咢を大きく開き、まるでエレオノールを丸呑みにしようとするかのように襲いかかった。

 

「ふッ!」

 

 エレオノールの息遣いが、離れた位置に居るオレの耳朶を震わせる。

 

 ガキンッ!!!

 

 オオカミの咢が閉められるその瞬間、エレオノールが、右に大きくサイドステップを踏んだのが見えた。

 

「くっ!?」

 

 完全には避けられず、白狼の肩にぶつかって、弾き飛ばされたように空中に投げ出されるが、エレオノールは、白狼の咢に囚われることはなかった。

 

 エレオノールのギフトは、自身と装備品を強固にするギフトだが、まだギフトの成長があまり進んでいない今、白狼に噛み付かれたら大怪我は免れないだろう。

 

 エレオノールは、まるで高所に張られた一本のロープを渡るような、本当に危ない綱渡りをしているのだ。

 

 白狼の肩にぶつかって、弾き飛ばされてしまったエレオノール。地面に足を着くことには成功するが、飛ばされた勢いを殺しきることはできず、ゴロゴロと後ろ向きに地面の上を転がってしまう。

 

 そんな無防備な姿を、レベル3ダンジョンのボスである白狼が見逃すはずがない。

 

「GAAAAAAAAA!」

 

 白狼の左腕がエレオノールへと伸ばされる。その手には、鋭いカギ爪が見えた。あんなものが大質量を伴ってぶつけられたら、エレオノールの細い体など、簡単に引き裂かれてしまうだろう。真っ赤な血と臓物をぶち撒ける潰れたトマトのようなエレオノールの姿を幻視し、喉に貼り付いたような重たいものを感じてしまう。

 

 助けに入るべきか? いや……。

 

「ちぇいっ!」

 

 相変わらず奇抜なかけ声と共に、白狼の伸ばされた左腕目掛けて銀光が走った。揺れる赤いポニーテール。ジゼルだ。エレオノールの陰に隠れるように駆けていたジゼルが、白狼の左腕に横から斬撃を浴びせたのだ。

 

「GYAU!?」

 

 白狼の左腕から、まるで吹き出る血のように、白い煙が吹き荒れる。かなりの深手を負わせたようだ。しかし……。

 

「GAU!」

 

 白狼の左腕の勢いは止まらず、未だにエレオノールに向かって伸ばされていた。ジゼルの斬撃をもってしても、白狼の攻撃を止めることはできなかったようだ。

 

「しゃげ……」

 

 これは援護に入る他ない。オレが、そう判断を下した瞬間――――ッ!

 

「ふあッ!」

 

 エレオノールの声と共に、その体が勢いよく右へと跳ねる。他の行動はすべて捨て、回避に全力を傾けた、その身を草の絨毯に投げ出すような跳ね跳びだ。これなら回避できるかッ!?

 

「ぐっ!?」

 

 エレオノールの苦しげな呼吸の声が耳朶を打つ。回避できたかと思ったが、白狼の左腕がギリギリ足に掠ったらしい。エレオノールの体が、少し軌道を変えながらも地面に投げ出され、そのまま前転。なんとか立ち上がり、体勢を立て直すことに成功する。

 

 ホッとひとまず胸をなでおろしたいところだが、攻撃が掠った足の様子が気になるが……。

 

 エレオノールが攻撃をもらったのは、おそらく、左足。だが、今はエレオノールの紺色のロングスカートで隠れていて容態が分からない。左足を変に庇ったりはしていないし、エレオノールのギフトの力も働いていたので、大丈夫だとは思うが……。

 

「リディ、エレオノールの治癒を」

「んっ……!」

 

 さすまたを構えていたリディが、片手をエレオノールに向ける。たったそれだけの動作で、エレオノールの体が明るい緑の光の粒子に包まれる。リディのギフト【小さな癒し手】が発動した証だ。これでひとまずはいいだろう。あとは……。

 

「GRURURURURURU!」

 

 忌々しげに牙を剥き出し唸る白狼。コイツをどう始末するかだな。

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