これは収納できるのか?   作:くーねるでぶる

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報酬

「おいこら! 見てんじゃねぇよ!」

 

 そんなことを言うわけにもいかず、オレは受付嬢の居るカウンターテーブルへと歩き出す。ダンジョン攻略の報告と、戦利品を買い取ってもらうためだ。

 

「なーんかさ、めっちゃ見られてない? とくにエルエルとベルベル」

 

 冒険者たちの視線が、自分たちに集まっていることに気が付いたのだろう。ジゼルが不思議そうにエレオノールとイザベルを見る。

 

「不埒な視線よ。鬱陶しいわね」

「そうですねぇ。反応しないのが一番ですぅ」

 

 イザベルとエレオノールは、自分の体のどこに視線が集まっているのか把握しているようだ。不機嫌そうな声で吐き捨てている。

 

 女性は視線には敏感だと言うが、イザベルとエレオノールの二人もそうらしい。仮にそうなったとしても、すぐに逸らしてはいるが、たまに二人の胸に視線を奪われるオレとしては、気付かれていないことを願うばかりだ。

 

 冒険者パーティ『五花の夢』のオレ以外のメンバーは女性だ。このあたりは、敏感過ぎるほどに過敏な問題だからな。オレは、女性の胸をジロジロ見ていたなんて、そんなしょうもない理由でパーティを追放されたくない。

 

 

 ◇

 

 

「今回けっこーいいんでない!? 金貨四枚なんて大金、初めて持ったよー。うひょー! 金貨重たーい!」

 

 冒険者ギルドの受付嬢にダンジョンのクリアと色違いの討伐を報告。戦利品を売って得た報酬は、金貨20枚を超えた。色違いモンスターである黒狼の毛皮が思ったよりも高く売れたのだ。

 

 パーティーメンバーである六人で等分すると、今回の報酬は、一人頭、金貨4枚を超えた。今までで最高の稼ぎだろう。ジゼルがはしゃぐのも無理はない。

 

「でも、黒狼は貴方一人で倒したのでしょう? 私たちまでその報酬をもらうのは、不公平ではなくて?」

 

 はしゃぐジゼルたちを温かい気持ちで見ていたら、イザベルが水を差してくる。それを指摘するということは、自分の報酬が減らされるのも覚悟の上だろう。前々から思っていたが、イザベルは高潔だな。貰えるものは病気以外貰っておけばいいのに。

 

「パーティでの行動中に得たものは、パーティで等分するのが揉めない秘訣なのさ。個々の働きに応じて報酬を払うってのは、実は問題が多い。メンバー間で報酬に多い少ないなんて差を付けちまうからな。不和が生じやすいんだ」

「そうかもしれないけど、個々人の意欲は上がるのではなくて? 働かなければ報酬が低いんですもの、自分から能動的に動くようになると思うのだけど」

 

 イザベルの考えも分からなくはない。たくさん働いた者は、より多くの報酬を得るべきという考えも分かるし、パーティの成長が停滞しないように報酬を原動力にしようという考えも分かる。

 

 だが、この考えには、実際にやってみないと見えてこないような、隠れている大きな落とし穴があるのだ。

 

「その考えは、意外と危険でな。不思議なことに、人間、欲をかくと失敗するんだ。パーティの連携には、個々人が必要なことをするのも重要だが、不必要なことをしないというのも重要でよ?」

「不必要なことをしない……?」

 

 このあたりは、前衛だと理解が早いのだが、後衛であるイザベルには馴染みが薄いところだな。

 

「この場合の不必要なことってのは、無理とも言い換えられるな。例えば、エルが無理に敵を倒そうと欲をかいて、逆に大怪我しちまったりな」

「わたくしはもう無理はしませんよぅ」

 

 恥ずかしそうな、拗ねたような顔で零すエレオノール。

 

 今回の冒険で、オオカミに翻弄され続けたエレオノールは、無理をしないことを学んでくれた。これは大きな戦果だと個人的に思っている。

 

「まぁ、全員が自分勝手に動けば、パーティの連携なんてすぐに破綻しちまう。個々の働きよりもパーティの連携の方が大事だからな」

「そういう考えなのね。でも、なかなか納得しがたいわ」

 

 納得しておけば、自分の報酬が増えるというのに。イザベルにはなかなか同意しづらいらしい。

 

「まぁ、貰えるものは貰っておけ。お前らにはオレに借金もあるしな。その返済の足しにしとけよ」

「そうそう。せっかくアベるんがくれるって言うんだから貰っておこうよ!」

「んっ……」

「分かったわよ……。なんだか気持ちが悪いけど」

 

 オレの言葉にジゼルとリディが頷き、渋々といった様子でイザベルも頷いた。

 

「さて、報酬も分配したし、飯にしようぜ。もう遅い時間だし、ここで食っていこう。皆、ダンジョン攻略がんばったからな。今日はオレが奢ってやるよ。好きなもん注文しろ」

「やたー! ありがと、アベるん!」

「ありが、と……」

「よろしいのでしょうか? ご馳走になりますぅ」

「何食べようかしら? ステーキでもいいの?」

 

 オレの奢り発言に華やぐ女の子たち。その中の一人、イザベルが眉を寄せてオレを見た。

 

「待って。今回は私たちも報酬を貰ってお金があるもの。いつも奢られっぱなしというのも……」

「うるせぇよ。せっかく男が格好つけてるんだ。黙って奢られとけよ。その方がかわいげがあるってもんだ」

「かわっ!? あ、ちょっと! もうっ!」

 

 オレはイザベルの声を背中にテーブルへと歩き出したのだった。

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