青春珍道中~休息処~   作:安部礼司

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どうも。安部礼司です。
今回は全く物語の時間列とは異なるものです。予告通りこちらに移動しました。


零れ話 第一回魑魅魍魎の会 ※戸羽視点

 本日2/14。それは唐突に知らされた。

 

 「放課後、予定が無い者は生徒会室に集合」

 

 ・・・こんな紙をホワイトボードにわざわざ張らなくとも、いつもそこで好き勝手にしているのではないか。と思ったのは恐らく自分だけではないだろう。

 

 

 

 

――――――――――

 

 「集まったか。ではこれかr」

 「ちょっと待て。何でお前が仕切ってんだ?」

 

 唐突に集められたよくわからない会議にはいつも通りの生徒会メンバーと原田、そして何故か相田と先輩方の総勢10人が席に着いていた。その中でおもむろに会議を進めようとした原田に対し、相澤が思わず原田の発言を妨げる形で声を出していた。

 

 「何でもなにも、今回招集したのは俺だし」

 「初耳…というか、あの紙には誰からの招集かも書いてなかったよな?」

 

 俺もそうだが、西川も彼と同じ気持ちだったのか首を傾げている。一方で、岸と木ノ原と相田、そして新垣先輩以外の年上勢はこの招集の意味を知っているのか何食わぬ顔で各々座っていた。唯一新垣先輩だけは何故か苦笑いというか引き攣った顔をしている。

 

 「今回はズバリ『第一回 魑魅魍魎の会』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 『魑魅魍魎の会』。どうやらフリーである人々の恨みや嫉妬を込めながら話し合う会議らしい。簡単に纏めればこれだけの事を、10分程の時間と労力を使って力説している時点で称賛に値するだろう。むしろこの時から会議は始まっているのか。

 

 

 「つまり、モテない者たちの集まりか」

 「そんな直球に言うなよ相澤~。…俺たち、仲間だろ?」

 

 とても簡潔に特徴を言った相澤が、その言葉に反応した岸と原田を鬱陶しそうに見ていた。

ふむ。

 「たしかに、少なくとも俺は『フリー』だが、そこまで相手が居る人を恨んではいないぞ」

 

 

 

 

 

・・・

 

 「というわけで、改めてもう一度。これから『魑魅魍魎の会』を始める!」

 『お~!』

 

 結局、あれから更に『モテない者たちの嫉妬とは』といった事を1時間ほど説教(?)された。おかげで相澤、西川、俺のSAN値は既にゼロに近い。俺たちがそんな中でも相変わらずテンションが高い他のメンバーは何処からあの気力が出ているのだろうか。

…やはり恨みや妬みといった負の感情なのだろうな。

 

 

 「司会は主に俺、原田が務めさせていただきます。今回のテーマですが…今日は何の日かご存知ですね。はい、岸君」

 「バレンタインデーという、チョコレート業界の深き、醜き陰謀でございます!」

 「その通り、本日はバレンタインデーです。というわけで、ここではそれぞれこの日にまつわるエピソードや思い入れについて語ってもらいましょう!順番は役職順で(会長→副会長→庶務→会計)お願いします。その後相田ちゃん、先輩方2年生(田辺、新垣、川島)、そして最後に俺でいきます」

 

 

 「まずボクからか~。とりあえず、バレンタインだからお菓子が安くなることについては賛成かな。いつも高いってわけじゃないけど、消費税が上がった分の取り返しができる今がお得!って感じが好きだよ~。あと稀にス○ートパラダ○スが安くなったりするからボクとしては助かってるよ~。」

 

 

 「俺?う~ん…。貰っても義理チョコが多いからな。これまで特にこれといったエピソードは無いかな。別に普段から甘い物を食べているわけじゃ無いから、バレンタインの季節だからって意識したことは無いかな。」

 

 

 「ふフ負…これまで生きてきた中で本命なんてないぜ…。俺の幼馴染(男)はかなり貰ってるくせに…『格差社会』という言葉を学んだのはこの体験からだったぜ。後は(中略)。

 ま、こういった感じが俺のこの日にまつわる思ひ出かナ」

 

 

 「(やばい、あいつ相当病んでたんだな)俺か。・・・思い入れというか何というかだが、俺はあまりチョコを食べないんだが、チョコは姉貴の好物でさ。俺が貰ったチョコの大半をアイツが食べちまうんだよな…。だから気持ちだけ貰うって感じのチョコ。というか贈り物かな。…(ただ、どうしても食べたいチョコは取っとくがな)」

 

 ・・・?相澤、なんか含みのある言い方だな。まぁ岸の後の順番じゃあ委縮するのも無理ないか。と、俺か。

 

 「特にこういった経験は無いな。普段お世話になった、あるいは面倒を見た後輩とかにお礼代わりに渡されたりすることはあってもそれ以外、恋愛感情みたいなものでは無かったな」

 

 

 「次は私?今年は相澤にあげたのと同じ部活の人に渡しただけだよ。『いつもお世話になった人に~』って」

 「ちょっと待って!何で相澤にあるのに俺には無いの相田ちゃん!?」

 「いや~、確かに原田君にも色々お世話になったけど、それ以上に相澤には世話になってるからね~。むしろチョコだけで返せるのかってぐらいいつも頼ってるから」

 

 

 自分に無かったのが余りにも衝撃的だったのか、あるいはこんなにも身近にチョコレートの受け渡しが行われていた事を受け入れられないのか、原田はそのまま固まってしまった。

 しかし、そんな彼を放置して話し合いは進む。

 

 

 「私は誰にもあげなかったな~。あげる人いなかったし。あ、でも友達同士で交換はしたな」

 

 

 「そうなんだ。…このシーズンはチョコレートが安くなるから私は好きだよ。でもこれまで『本命』はあげた事が無いな~。でも義理チョコは毎年結構作ってるよ。今日も持ってきたから皆で食べよ?」

 

 

 「「よっしゃ、キター!!!」」

 

 

 新垣先輩の発言によって、今まで朽ちていた原田と甘党生徒会長が歓声をあげているが、それでも気にせずに話し合いは進む。

 

 

 「私は貰う派だね。あげる事はほとんど無いけど、昔から何故かよく貰うんだよね~。だから『バレンタイン』というと、チョコを『あげる』日じゃなくて『貰う』日って認識が強いかな」

 

 …確かに、この人はよく貰いそうだ。姐御的な意味で。

 

 

 「お。最後か。俺は話すと長いのだg」「このハゲも俺と同じ境遇を辿った。以上」「おぃー!!!」

 

 

 最後の出番なので張り切っていた原田だが、哀れな事に岸に自らの話題内容を驚異的な短さに要約されたため絶望したような顔で呆然としている。

 個人的には再び、いや三度長い話を聞かされると思うと岸に感謝したいぐらいだ。

 

 

 

 

 

 「要するに、昔からある『ドキ☆バレンタインデーに好きな人に告白!』的な展開ってそう滅多に無いって事だよな」

 

 

 各々が騒いでいるこのカオスな場所で、相澤が先程まで続いていた話からこのように呟いた。

 彼の言う通り、そのような展開はほとんど現実では存在しないだろう。そうだよなーと皆が相槌を打つ中で、この会の主催者とその幼馴染から殺気が漏れ始めた。

 

 

 「…?どうしたんだ、二人とも?」

 「「     」」

 「え?なんだって?」

 「「いたんだよ。そういう奴が過去に」」

 

 

 

 

 

 『え~!!!???』

 

 

 

・・・・・

 

 簡潔に話を纏めると、どうやら二人が中学二年生の時、よく集まっていた男子達と共に例年通りバレンタインの日の夕方近所のラーメン屋で食事をしていたらしい。ちょうど食事も終わりいざラーメン屋を出ると、同じ学校でそれなりに人気があった女生徒がその中の一人を店の前で待っていたそうだ。

 後の展開はまぁ…察してくれ。ともかく、それがきっかけで今でもこういった集いをやりたいと思い本日招集をかけたらしい。

 

 

 「いや~、でもそんな展開がまだあったんだな」

 「あの時は正直目が点になった…。」「たしかにな。目が点になるっていうのをあの日ほど実感した日は無かったな。」

 「…それで?件の彼は今どうしてるの?」

 「奴ですか?まだ続いてますよ。この学校じゃないけど、近所でよく見かけますから」

 

 

 通りでこの集まりに意気込んでたわけか。本当に嫉妬とは恐ろしい感情だな。このエネルギーをもう少し別の場所に使えば何かしらの変化が起きるのではないだろうか。

 

 しかし…。色恋沙汰か。俺自身まだ経験したこともないし、今のところは書籍や映画からの刺激のみで満足している。けれどいつか俺も含め皆も所帯を持つことになるのだろう。その時いつ、どこで出会う人が伴侶となるのだろうか。大学の同級生や職場の同僚、もしくは先輩・後輩かもしれない。

 

 

 もしかしたら、この高校に居る誰かと誰かが…なんてこともなくは無い。『一期一会』。今この瞬間を想う時が来るのだろうと考えながら、皆が持ってきた菓子に手を伸ばした。

 




 早い話、バレンタインデー特別篇です。本当は第一回目をクリスマスの日にやりたかったのですが、忙しく出す余裕がありませんでした。クリスマス編もいつか出してみたいですね。
 そして今回は主人公以外の視点ですべてやりました!意外に難しかったです…。今後もこういった話をちょくちょく書いて『休息処』に載せたいと思います。
 皆さまはこういった経験はあったでしょうか?また次回見て頂けると幸いです。
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