問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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1話 1章

 

 「くぁ···」

 

 俺は執務室の椅子にもたれながら、大きく欠伸をした。熱く眩しくもない日差しが背中に当たり、窓から流れ込む風がポカポカしてて気持ちいい。眠たくもなる。

 

 が、机の上に積まれた書類の山が目に入って眠れない。事務仕事できる癖に、いっつも俺に押し付けるんだよなぁ。お前らが思ってるより暇じゃないんだぞこっちは。

 

 はー、やだやだと溜め息吐いて辟易していると、

 

 「団長ちゃん、ここに居たんだね。探したよ」

 

 「やあ、メルティ。俺に用でもあった?」

 

 執務室にやって来たのはエルフのメルティ。キラキラサラサラの長い銀髪と濡れた紅玉のような瞳が特徴で、これぞ大人の女性って感じで口調も仕草も余裕を感じさせる。そして顔もいいもんだから、男のみならず同性からめっちゃモテる。本拠地に(愛の)手紙が届かない日はない。

 

 あと年齢は知らん。それなりに長い付き合いだけどマジで知らん。

 

 「各々から伝言を預かってきたんだ」

 

 「伝言?」

 

 「そう伝言。みんなから君宛にね」

 

 「みんなから、か······えぇ···」

 

 

 「ふふ、露骨に嫌な顔をするね」 

 

 俺達のファミリアは主神一柱、俺含め団員六名だけという少なすぎる人数で運営しており、世界に一つしかないダンジョンを保有しているこの都市──オラリオじゃ最もありふれた探索系派閥である。それも、人数だけ見れば結成仕立ての零細と遜色なく、吹けば飛ぶタンポポみたいな軽さ。いつ壊滅してもおかしくない。てか、いっそのこと飛んでいきたい。

 

 奴らのお守りから解放されるならね。

 

 無茶なダンジョン攻略を繰り返して、幾度となく戦争仕掛けられて、時には暗殺謀殺もやられて。それでも負けなかったし死ななかった。んで、気付けばなってたんだよね。

 

 ロキとフレイヤに並ぶ最強にさ。

 

 「だって君らはさぁ」

 

 アイツらの伝言の何が嫌なのかって、極論言えば強い奴ってさ、性格アレなんだよね。自分の意見が絶対的なものだと思って周りを無視し、あちこち好き勝手に引っ掻き回す。俺が団長の理由だって、そう言った理由からだし。名誉以前に面倒くさいから。アイツらの談だ。

 

 だから伝言一つ聞きたくないね。絶対ろくなものじゃない。

 

 

 まあ、書類仕事しながら聞いちゃうんだけど。

 

 「じゃあまず一人目ね。ゴホンゴホン、ンッンッ。『酒が呑みたい。今夜酒場行こ。有り金全部失ったから奢って欲しいな♡』」

 

 「いいね、俺も行きたい。でも、主神のアンタに奢るのはなんか癪だからパスで」

 

 脳裏に過るのは俺達の女神、宝神クベーラ。目につく物全て買うくらいの勢いで浪費し、毎度の如く金欠になって小遣いをせびる。神室はガラクタで散乱して汚部屋、いや一種のダンジョンへと昇華している。誰かの部屋を物置として使い始めたら換金所へ行って売り払うというルールは、俺達団員の暗黙の了解になった。基本的に仕事をしない駄女神。

 

 ······まあ拾ってくれた恩は感じてるんだよ、みんな。付け上がるから全員内緒にしてるんだけど。

 

 「二人目ね。『ダンジョンに行ってくる。しばらく帰らない。だから貴様に留守を預けるぞ』」

 

 「······遠征から帰還したのいつだっけ?」

 

 「昨日だね」

 

 「馬鹿かアイツは」

 

 脳裏に過るのは、俺達の中で一番の戦闘狂、キリオス。プライドが高く傲慢な面があるが、武芸百般の天才で頭がキレる問題児。いつも先陣きって戦い道を開き、味方側だと心強さと安心感を振り撒いてくれる。とある美の女神の求愛をバッサリ切り捨て暴言を吐き散らした過去あり。それで反感を買って襲撃された過去あり。

 

 アイツのせいで俺達にまで飛び火が飛んできたんだよなぁ。

 

 「三人目。『ごめんなさい団長。書類仕事手伝いたいけど、今日は災厄の相がでてるから無理です』」

 

 脳裏に過るのは、凄腕の預言者、ナザレ。神託と遜色ない高精度な預言を授かる体質(?)で、全部的中している。未来を知る預言の影響か、行動の先読みが得意なので戦闘ではそれを活かしている。枝分かれする運命を選択する力があるとかないとか。その昔、宗教団体の教祖として君臨した過去あり。

 

 「預言って回避できるよね?」

 

 「ものによるね。今回は預言を授かった時間からそれが起こる時間が短いから、回避は無理なんだってさ」

 

 「いつあの子から聞いたの?」

 

 「執務室に入る直前」

 

 「あらま」

 

 災厄の相の運勢が出てる執務室に居るんだよなぁ俺達。

 

 「四人目ね『ふひひ、団長氏。今回の発明は素晴らしいですぞ!なんとこの狂化装置、あらゆる恐怖を忘れるだけではなく、アビリティを一時的に増幅するのです!!というわけで団長氏、試しにこれを···え、副作用?この装置にはないですよないない。あるわけないじゃないっすかメルティ氏······でも強いてあげるなら頭がパーっになりますね、はい』」

 

 「アイツもろとも今すぐ壊せ」

 

 「もうやったよ」

 

 「流石」

 

 脳裏に過るのは、自他共に認めるオラリオ一の発明家、グレイ。魔法大国や世界最高の教育機関である学区を主席の成績で通い、数々の発明品を産んで世に出した鬼才にして、すぐに奇行に走る奇人。馬鹿と天才は紙一重を地でいくやベー奴。外に出たがらない引きこもり。代表作は『自動生産装置』『自動防御結界装置』『防熱防寒防音防腐防防防装置』。中でも『自動防御結界装置』によって、都市外でモンスターの被害に苦しむ人が減ったとかなんとか。

 

 よく奇行に走るけど、あの強い奴以外無関心の戦闘マシーンキリオスも認めてるぐらい凄いんだよなぁ。

 

 「五人目ね。『······ん』」

 

 「了解」

 

 「え、なんで通じたの?怖っ」

 

 脳裏に過るのは、暗殺を生業としていた元暗殺者、クロノ。コイツも例に漏れず天才で、暗殺者を育成していた邪神の最高傑作と謳われたほど。俺達の派閥が壊滅させて仲間にした。一個上に姉がおり、足を洗って酒場で働いている。

 

 彼女とは心の友だから、口数少ないけど通じるんだ。

 

 「伝言は以上だよ」

 

 「そか」

 

 クベーラは浪費、キリオスはダンジョン、ナザレは逃走、グレイは消滅、クロノは日向ぼっこ。

 

 ざっと纏めるとこんなものだろう。浪費馬鹿と戦闘馬鹿と発明馬鹿のトリプル馬鹿は放置でいい。クロノは······遠征中戦闘と平行して索敵係もしてもらってたからしっかり休んで(激甘)。ナザレは──災厄の相ってなんやねん。

 

 「もう運命は決まってるってことだよな」

 

 「そうだね」

 

 執務室が災厄に見舞われてるってことか。ナザレ本人は預言で未来を知ったから回避できた。回避できる運命だった。

 

 「あ、数字ミスってるよ。こことここ···ってあらま、清書で出さないと駄目だから一から書き直しだね」

 

 「うそん」

 

 「私が協力しても夜までかかるよこれ」

 

 災厄の相ってこれかぁ···。

 

 「あーあ、これは大変だどうにかしなければ·····あ、私は急用思い出したから後は──ひっ」

 

 「手伝ってけよメルティ···!」

 

 メルティはわざわざ伝言を伝えに執務室に入室したから、この運命を回避できなかった。

 

 運命を回避できたりできなかったり。法則が未だに理解できん。

 

 そんなことを思いつつ、俺とメルティは書類仕事に取りかかった。

 




クベーラ 
種族:神
性別:女
役職:主神
備考:都市外で団長と出会い、眷属に誘って派閥を結成する。金遣いが荒く、ガラクタ(たまにお宝)を買い漁る。団員から捨てられるが仕方ないと割り切り別のガラクタを買い始める。尚、売られたガラクタは眷属の酒代となっていることをまだ知らない。仕事しない駄女神。

???
種族:只人 
性別:男
役職:団長
Lv.5
備考:スキル一つで第一級冒険者になった強者。凄すぎる仲間に囲まれているため自己評価低め。取り柄がない平凡な男だと他派閥から嘲笑されることもしばしば。尚、その嘲笑を本人が聞いたら本当のことだと苦笑いし、団員が聞いたらもれなく全員ぶちギレる。

メルティ
種族:妖精 
性別:女
役職:団長補佐(秘書みたいなもの)、幹部
Lv.6
備考:副団長がアレなせいで副団長と同等な権力を持つ。保有する魔法が何でもできることから、周囲から万能魔法と噂される。自分が美人であることを自覚している美人。モテる。

キリオス
種族:只人
性別:男
役職: 副団長
Lv.7
備考:仕事しない副団長。強さを追い求めるあまり都市最強と比肩する強さを得る。プライドが高い彼は上に立つ男を選び、団長を団長だと認めたきっかけは、レベル差が"2つ"あったにも関わらず自身に勝ったから(本気で殺しにいった)。

ナザレ
種族:只人 
性別:女
Lv.4
備考:預言的中率100%(回避しなかった場合)。団長は預言をよく重宝し、過去に派閥が全滅する預言を回避したことがある。どっかのカサンドラさんと違って信じてもらえる。

グレイ 
種族:半妖精、半小人
性別:男
Lv.4
備考:妖精と小人の両親を持ち、研究者と生産職だった両親の背中を見て育って今に至る。両親と種族の長所両方を引き継いだ天才。都市外のあらゆる町や農村をモンスターの脅威から救ったため外では英雄視されている(本人は知らない)。団員の武器、薬、魔道具は彼が作っている。

クロノ
種族:猫人
性別:女
Lv6
備考:都市外で暗躍する闇派閥の元暗殺者。団長暗殺任務に失敗し、絆されて仲間になった。酒場で姉と再開を果たす。純粋に冒険者としての才能もあったので、レベルで団長を越えた。ショタコンではない。

【クベーラ・ファミリア】
少数でありがらもロキ・フレイヤ両派閥に並ぶ最強派閥へと至った。過去に他派閥が潰そうとするも返り討ちにし、闇派閥による襲撃でさえもものともしなかった。誰を警戒しているか?という質問を両派閥の団長にしたところ、フィンはキリオスを、オッタルは団長を指名した。
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