テリーもテリーの部下として甘い汁を啜る一派も、
表情が強張るのには充分すぎる理由だった。
テリーが周囲に自慢するために侍らしているテリーの妻──美姫達に、メルティは片目を閉じて静かに微笑んだ。彼女らの顔は赤くなる。そして何人か堕ちた。
「カジノらしく
「悪くないね、この命を賭けるに等しい緊張感。いいね、やろうか」
そして勝負は始まった。
フロップポーカー。
自分のみの手札以外に全ての
ゲームが続いていくにつれ────メルティの
そんな状況下で口を開くのはテリー。
「そういえば、まだ私が勝った時の願いを言ってませんでしたなぁ。私が勝った暁には」
彼は今日一番の醜悪な笑みを浮かべて言った。
「貴女方を私の妻として迎え入れたい」
「うんいいよ。私に······いや、私たちに勝てたら、ね?」
その言葉と同時に、隣に立つグレイとナザレの雰囲気が変わった。
「フォーカード」
「フラッシュ」
「フルハウス」
先程までの負けが嘘かのように、メルティが勝利を拐っていく。
「ん?顔色が優れないみたいだけど、大丈夫かい?
「っ!?い、いえ!大丈夫です!お気遣い、ありがとうございます······」
でも、
(······イカサマがバレてる!いつバレた?負け続きでも崩れぬ余裕を見るに···最初から?最初から見破った上で泳がせていたのか、この女!)
「······ふぅ~~~~」
テリーは怒りを霧散するように息を吐いた。それで冷静になれるのはこれまでの経験からか、もしくは年の功からか。自分の状況を俯瞰する。
(配下の連中はみな、
「
テリーは自分の手札に勝利を確信し、勝負に出る。彼の手札はフォーカード。これ以上ない
そんなテリーを見ながら、メルティは中央のカードと一枚交換する。
「
「······!?ぼ、冒険者···ですか?いやいや、小心者で戦いの才能のない私には向いておりませんよ」
「そうかな?やってみれば案外なんとかなるよ。才能がなくても、周りと比べて幾度となく挫折しても、立ち上がって強くなった人を私達は知ってるから」
メルティはそっと手札を置いて、勝利を告げた。
「ロイヤルストレートフラッシュ」
「立ったまま気絶してる·····!?───!?」
「ストップ、クロノちゃん。そこまでだ」
負けたテリーは激昂して襲撃の指示を出すが、誰一人として動く者がいない、否、美姫達を除く全員が気絶していて誰も動けないことに気づく。それといつの間にか、自分の首にナイフが当たっていることにも気が付いた。
(アイツらは【黒猫】と【黒拳】だぞ!?どうなってる!?)
テリーの保有する護衛の中でも、一番強い手練れ二人は【黒拳】と【黒猫】と呼ばれる暗殺者で、この二つ名を持つ
まあ、クロノはもう一人の···てか
「さあ、君達。もう追いかけて来る者はここにはいない。ここから逃げなさいな」
「「「「「っっ······!!ありがとうございますっ!!!!」」」」」
「き、貴様らぁ······!!この俺を誰だと思ってる!!この
「フフフ、っと失敬。そうだね。君の言い分は間違いじゃない。
「──!?どうして、俺の名を知ってる!?」
「どうしてって······。知り合いの女神様から教えてもらったとしか」
「女神、だと···?」
客として神は来るが、
(第一、俺の真名を知ってる女神などいるはずが───!?)
「君、逮捕歴あるでしょ。超越存在にして全知全能の神様は一度記憶したことを忘れない。ましてや
「~~~~~っっ!?」
メルティが彼女達を引き連れてここに来たのは、その女神様からの依頼だったりする。偶々招待状を貰ったからいいものの。無かったらどうしたのだろうか。それでも神ヘルメス辺りをパシりにして強引な手を使いそうだな、と優しく微笑む女神様の顔をメルティは思い浮かべた。
テリー改めテッドは悪事を暴かれ再び逮捕。そして彼に加担した者も続々と逮捕されたのは言うまでもなかった。
グランカジノでの一件は幕を閉じた。
「何でこうも酷い目に······ってうおっ、メルティとナザレ!?グレイまでなにそのスーツ!どうしてそんなオシャレしてんの!?てかなにその大金どこで手に入れたんだ!?」
「「「カジノで遊んできた」」」
「嘘つけ!どこの派閥を襲撃したんだ!!コイツらの嘘を見破ってくだせぇ女神様!!」
「任せな!······なに!?嘘じゃない、だと······!?マジでカジノに行ってやがる···!」
「······えっ。お、おいおい待て待て。お前らが賭事したらアカンでしょ!何してんの!?」
上級冒険者の能力に比べて、三人それぞれの才能は賭事と相性が良すぎるため絶対に勝てる。むしろ負けるほうが難しく、コイツら三人が組めばたとえ堂々と
俺はチラリ、と高く積まれた金貨の山をみる。軽く億あるよねこれ。いいなぁ。一枚だけでもくれないかなぁ。······なんて、呑気なことは今考えられない。
カジノと、カジノと密接な関係があるギルドから
そんな姿を見てメルティは微笑み、
「団長ちゃん団長ちゃん」
「······ん?」
「ドンマイ♪」
いい笑顔で言い放った。団長ちゃんは気絶した。
「小僧、名前は」
「ベル······ベル・クラネル、です······」
「······気に入った。ベル。お前に最強を教えてやる」
いかに自分が未熟か、酒場の一件で現実を思い知らされ英雄の産声を上げた
ナザレが占いで伏せられた共有カードの内容を予測する。また、相手のカードも予測する。占いに大掛かりな仕掛けは必要ないのでバレない。
グレイが思い浮かべた数字と柄が浮かび上がる(カードの表面上に貼る)シートを製作する。効果は一回きりで使用後透ける。袖の下、片手で作ったためバレない。
メルティが通信用魔道具で二人から教えてもらい、心理戦を繰り広げる。得意分野だから負けない。
このイカサマを団長相手にやったことがあるんだって。団長はボロ負けした(イカサマせずとも負けていた)。
クロノは暗殺技術を用いてテリー(テッド)の部下を次次制圧。メルティが勝ち始めた時にはすでにゲーム会場に。
団長はカジノとギルド、二つの組織からの苦情で怯える夜を過ごす。酔いは覚めた。杞憂。
キリオス。ベルを気に入り拾う。なにしてんねん。