問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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第10話

 

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 賭博場(カジノ)経営者(オーナー)であるテリー一派との賭事の際に、メルティがぼかして伝えた言葉である。つまらない嘘を吐く男を黙らせる牽制。君のお宝を全て強奪するね、っていう宣戦布告。この二つが思いの外効いたのか、全員の表情が強張った。

 

 テリーもテリーの部下として甘い汁を啜る一派も、()()()()()()は上手く隠していたつもりだったのだろう。だが、()()()()()()()()()()()()知られている。

 

 表情が強張るのには充分すぎる理由だった。

 

 テリーが周囲に自慢するために侍らしているテリーの妻──美姫達に、メルティは片目を閉じて静かに微笑んだ。彼女らの顔は赤くなる。そして何人か堕ちた。

 

 「カジノらしく賭博(ゲーム)をしましょう。勝者は敗者に願いを聞き入れてもらうのです。使うのは最高額の賭札(チップ)。足りないのであればお貸しします」

 

 「悪くないね、この命を賭けるに等しい緊張感。いいね、やろうか」

 

 そして勝負は始まった。

 

 

 

 

 

 フロップポーカー。

 

 自分のみの手札以外に全ての賭博者(プレイヤー)が使用できる共通カードが卓の中央に配置され、この共通カードと手札で手役(ハンド)を作る。

 

 不正(イカサマ)は今のところない。メルティ、ナザレ、グレイそれぞれの上級冒険者が手先を観察した結果である。また、疑っているのは自分達だけではなく向こうも。テリーお抱えの手練れ二人がメルティの手元を監視していた。

 

 ゲームが続いていくにつれ────メルティの賭札(チップ)だけが減っていく。

 

 そんな状況下で口を開くのはテリー。

 

 「そういえば、まだ私が勝った時の願いを言ってませんでしたなぁ。私が勝った暁には」

 

 彼は今日一番の醜悪な笑みを浮かべて言った。

 

 「貴女方を私の妻として迎え入れたい」

 

 「うんいいよ。私に······いや、私たちに勝てたら、ね?」

 

 その言葉と同時に、隣に立つグレイとナザレの雰囲気が変わった。

 

 

 

 

 「フォーカード」

 

 「フラッシュ」

 

 「フルハウス」

 

 先程までの負けが嘘かのように、メルティが勝利を拐っていく。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、彼女の快進撃にただただ狼狽えることしか出来ない。反則(イカサマ)を疑ったが、監視役の彼らは首を横に振るだけだった。

 

 「ん?顔色が優れないみたいだけど、大丈夫かい?()()()()()()()()()が美味しかったのかな?飲み過ぎはよくないよ」

 

 「っ!?い、いえ!大丈夫です!お気遣い、ありがとうございます······」

 

 恩恵(ファルナ)を授かった冒険者に、生半可な反則(イカサマ)は通じない。彼らは特定の酒を飲むことで、自身の手札を仲間内で共有する。別に自分が勝てなくても、相手以外の誰かが勝てればいいのだ。

 

 でも、

 

 (······イカサマがバレてる!いつバレた?負け続きでも崩れぬ余裕を見るに···最初から?最初から見破った上で泳がせていたのか、この女!)

 

 「······ふぅ~~~~」

 

 テリーは怒りを霧散するように息を吐いた。それで冷静になれるのはこれまでの経験からか、もしくは年の功からか。自分の状況を俯瞰する。

 

 (配下の連中はみな、賭札(チップ)を失くして負けた。残るは自分だけ。このままでは当然負ける。どうすれば打破できるだろうか。······!これは!?)

 

 「全賭札投入(オール・イン)!!」

 

 テリーは自分の手札に勝利を確信し、勝負に出る。彼の手札はフォーカード。これ以上ない手役(ハンド)だった。豪運だろうが見透かされていようが関係ない。これならば勝てる!と思ったのだ。

 

 そんなテリーを見ながら、メルティは中央のカードと一枚交換する。

 

 「逆境(ピンチ)でも敗色濃厚だろうと、勝負を諦めないその姿勢。君、冒険者より冒険者に向いてるよ。故に惜しい。外道にならず、冒険者という道に進めば、中堅派閥の団長にまでは登り詰められただろうに」

 

 「······!?ぼ、冒険者···ですか?いやいや、小心者で戦いの才能のない私には向いておりませんよ」

 

 「そうかな?やってみれば案外なんとかなるよ。才能がなくても、周りと比べて幾度となく挫折しても、立ち上がって強くなった人を私達は知ってるから」

 

 メルティはそっと手札を置いて、勝利を告げた。

 

 「ロイヤルストレートフラッシュ」

 

 

 

 

 

 「立ったまま気絶してる·····!?───!?」

 

 「ストップ、クロノちゃん。そこまでだ」

 

 負けたテリーは激昂して襲撃の指示を出すが、誰一人として動く者がいない、否、美姫達を除く全員が気絶していて誰も動けないことに気づく。それといつの間にか、自分の首にナイフが当たっていることにも気が付いた。

 

 (アイツらは【黒猫】と【黒拳】だぞ!?どうなってる!?)

 

 テリーの保有する護衛の中でも、一番強い手練れ二人は【黒拳】と【黒猫】と呼ばれる暗殺者で、この二つ名を持つ暗殺者(アサシン)は数多くの人間を抹殺してきた一流の殺し屋。彼らがやられている事実に困惑し絶望した。

 

 まあ、クロノはもう一人の···てか()()()()()()()()()()()()彼女(クロエ)より暗殺の才能がある実力者。名を騙る偽物しか知らないテリーが知るよしもなかった。

 

 「さあ、君達。もう追いかけて来る者はここにはいない。ここから逃げなさいな」

 

 「「「「「っっ······!!ありがとうございますっ!!!!」」」」」

 

 「き、貴様らぁ······!!この俺を誰だと思ってる!!この賭博場(カジノ)経営者(オーナー)だぞ!?貴様らが名を馳せた冒険者だろうと、娯楽都市(サントリオ・ベガ)の権力さえあれば踏み潰せるんだぞ!!」

 

 「フフフ、っと失敬。そうだね。君の言い分は間違いじゃない。娯楽都市(サントリオ・ベガ)の実権があれば、私達といえどキツイ罰則は免れないだろう。───まあ、本当に君がそこの人間であるのなら、の話だけどね。ねぇ、()()()()()()()

 

 「──!?どうして、俺の名を知ってる!?」

 

 「どうしてって······。知り合いの女神様から教えてもらったとしか」

 

 「女神、だと···?」

 

 客として神は来るが、反則(イカサマ)を容易く見破れる超越存在(デウスデア)の神ゆえに、この部屋には一度足りとも通したことがない。ましてや女神などと···。

 

 (第一、俺の真名を知ってる女神などいるはずが───!?)

 

 「君、逮捕歴あるでしょ。超越存在にして全知全能の神様は一度記憶したことを忘れない。ましてや()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「~~~~~っっ!?」

 

 メルティが彼女達を引き連れてここに来たのは、その女神様からの依頼だったりする。偶々招待状を貰ったからいいものの。無かったらどうしたのだろうか。それでも神ヘルメス辺りをパシりにして強引な手を使いそうだな、と優しく微笑む女神様の顔をメルティは思い浮かべた。

 

 テリー改めテッドは悪事を暴かれ再び逮捕。そして彼に加担した者も続々と逮捕されたのは言うまでもなかった。

 

 グランカジノでの一件は幕を閉じた。

 

 

 

 

 「何でこうも酷い目に······ってうおっ、メルティとナザレ!?グレイまでなにそのスーツ!どうしてそんなオシャレしてんの!?てかなにその大金どこで手に入れたんだ!?」

 

 「「「カジノで遊んできた」」」

 

 「嘘つけ!どこの派閥を襲撃したんだ!!コイツらの嘘を見破ってくだせぇ女神様!!」 

 

 「任せな!······なに!?嘘じゃない、だと······!?マジでカジノに行ってやがる···!」

 

 「······えっ。お、おいおい待て待て。お前らが賭事したらアカンでしょ!何してんの!?」

 

 上級冒険者の能力に比べて、三人それぞれの才能は賭事と相性が良すぎるため絶対に勝てる。むしろ負けるほうが難しく、コイツら三人が組めばたとえ堂々と反則(イカサマ)しても絶対に見破れない(経験談)。

 

 俺はチラリ、と高く積まれた金貨の山をみる。軽く億あるよねこれ。いいなぁ。一枚だけでもくれないかなぁ。······なんて、呑気なことは今考えられない。

 

 カジノと、カジノと密接な関係があるギルドから苦情(クレーム)が来るんだろうなぁ、頭を地面に擦り付けて相手の靴をペロペロしたら許してくれるかなぁ、と思いながら胃と頭の痛みに悶え苦しみ掌を地面に付けた。

 

 そんな姿を見てメルティは微笑み、

 

 「団長ちゃん団長ちゃん」

 

 「······ん?」

 

 「ドンマイ♪」

 

 いい笑顔で言い放った。団長ちゃんは気絶した。

 

 

 

 

 

 「小僧、名前は」

 

 「ベル······ベル・クラネル、です······」

 

 「······気に入った。ベル。お前に最強を教えてやる」

 

 いかに自分が未熟か、酒場の一件で現実を思い知らされ英雄の産声を上げた英雄候補(ベル・クラネル)は、都市最強の戦闘狂(キリオス)と邂逅する。

 




ナザレが占いで伏せられた共有カードの内容を予測する。また、相手のカードも予測する。占いに大掛かりな仕掛けは必要ないのでバレない。

グレイが思い浮かべた数字と柄が浮かび上がる(カードの表面上に貼る)シートを製作する。効果は一回きりで使用後透ける。袖の下、片手で作ったためバレない。

メルティが通信用魔道具で二人から教えてもらい、心理戦を繰り広げる。得意分野だから負けない。

このイカサマを団長相手にやったことがあるんだって。団長はボロ負けした(イカサマせずとも負けていた)。

クロノは暗殺技術を用いてテリー(テッド)の部下を次次制圧。メルティが勝ち始めた時にはすでにゲーム会場に。

団長はカジノとギルド、二つの組織からの苦情で怯える夜を過ごす。酔いは覚めた。杞憂。

キリオス。ベルを気に入り拾う。なにしてんねん。
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