「私は魔法大国特別査問委員会、勧誘部及び技術開発部所属、カンユ・スルーと申す。【クベーラ・ファミリア】団長である貴殿に折り入って話がしたいと思い、参上した」
「うん。久しいねカンユ」
「ああ、そうだな」
魔法大国はその技術と叡智の一端を探るべく、こうして使者を送って取引を持ちかけてくる。
カンユ・スルーは以前グレイを誘拐しようとしたアルテナから謝罪として送られた使者。もう二年くらいの付き合いになるかな。
「単刀直入に言わせてもらう。グレイ殿が開発したこの魔道具を譲って貰えぬだろうか」
「ほう?」
「無論、報酬は出し惜しみしない。······このくらい出すぞ」
「ほう!」
カンユは人差し指と中指を立てた。つまり二百万ヴァリス!やったぜ。
「ふっ、その反応を見るに取引成立だな。あの老人共に嫌みを言われず済みそうだ」
「それはよかった。それよりどう?茶でも飲んでく?なんならどっか昼飯行く?奢るよ」
「いや遠慮しとく。コーネリウス、貴殿らと関わるのは仕事だけで充分なのでな。この全自動卵割装置······だったか?有り難く頂戴する。ではな」
そう言って足早にホームから立ち去った。しっかし、あんな魔道具に大金はたいてまで欲しがるとは。魔法大国はよく分からん。
庭で魔道具を暴発させたベルを尻目にそう思った。
「私はアールヴ王家より遣わされたイヤーナ・ヤーツッスと言う。【色彩】のメルティは偉大なるハイエルフ様より指名され、アールヴ家名を授かることを許された。喜べ、貴様の仲間は下民でありながら多大な誉れを得たのだ!」
声高々に演説するエルフ、イヤーナさん。その瞳には狂気染みた信仰心を感じる。俺は静かに聞いた。
彼の言い分を要約すると、王族の一人が伴侶としてメルティを選び、彼女をアールヴ王家に迎え入れるという申し出。
うん。
「却下」
「なぁ!?」
当たり前だろ。
彼女が選ばれた理由は大方、エルフでLv.7へと至った功績目当てだろう。メルティを嫁にすることで、エルフの考える偉大さをより対外的にアピールできるし。
逆に【
そんで何が誉れだ。自分等の価値観を押し付けやがって。
「崇高なあの方に選ばれたのになんだその態度は!?エルフとしてこれ以上の名誉はないのだぞ!」
「彼女はそんな名誉より冒険者の道を選んだんだ。そして俺の仲間でもある。そんな理由で手放す訳ないだろ」
「そんな理由だと!?貴様、我らエルフを敵にまわすのか!」
敵になったところでどうするんだよ。こっちにはLv.8がいるんだぞ。仲間のコネ使って逆にエルフを孤立させてやろうか。多分いけるし。
全く意に返さない俺に何を思ったのか、イヤーナさんは叫び散らす。
「ハッ、そうか!所詮貴様ら同様あの女は力に溺れ欲にまみれた薄汚い蛮族!私はそもそも反対だったのだ!何がLv.7だ!何が聖女だ!大方、あの女は貴様らや他の男共に身体を売って成り上がった売女なのだろう?同胞の恥さらしぼがぁ!?」
股間を蹴りあげ、鳩尾に一発、そして顎に裏拳をかました。イヤーナさんの瞬きの間に行われた
手加減してあるから死にはしてないし、痛みに悩まされることになるが後遺症は残してない。念のため棚に置いてあった酒を浴びせ、外に運んだ。
「!?イ、イヤーナ様!?」
「彼は立ち眩みかなんかでよろけて棚に突っ込み、落ちてきた酒瓶が頭に当たって失神したんです。命に別状はありません」
「そ、それは···申し訳ない···」
俺は部下にそっと近づき、小声で呟く。
「これは余談だけどそのお酒ね、
「!」
もちろん嘘。そんな高級品、棚に置いてあるはずない。置いてあったらクベーラに飲まれてるし。
「いや別にいいんですよ?高級品と言ってもまた買えばいいだけなんですし」
「っ···!」
「まあ、高級品だけあって値段が高く、手に入れられるか怪しいけどそれはそれ。そんな神様が作られたお酒よりも、遠路はるばる来訪してくださったイヤーナさん優先ですしね」
「ぐぅ···!」
「どうかお気になさらず」
結果、彼らは帰った。後日、詫び状とお詫びの品として
「·········」
「魔道具の売買はあらかじめ許可取ってますから、別に税金は納めなくてよくて、メルティに関しては仲間の名誉を守りつつ
「·········」
「いや~秘密にしてたんですが流石ギルド長!その長耳は伊達じゃないッスね!よっ、色男!」
「·········」
「すんません」
ギルド長にしこたま怒られた。なぜバレた。
カンユ
誘拐の謝罪として送られた使者。話が分かるこの人を団長が指名した。魔法大国との取引は金になるから続けてる。仲はいい。
全自動卵割装置
年甲斐もなくキャッキャウフフとはしゃぐ老人共がいたそうな。こういう魔道具を売ってる。
イヤーナ・ヤツッス
典型的なエルフ。そしてリヴェリアの親戚(つまり王族)の直属であることから、さらに磨きが掛かっている。部下から外され、門番となった。ヤツッス家から無能の烙印を押された。
神酒
嘘。仲間を侮辱したしね。