問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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第2話

 

 世界の中心であるオラリオは様々な人種、様々な冒険者が集まり一柱の神を主とした派閥を形成する。

 

 派閥の種類はたくさんあり、ダンジョン攻略を中心とした探索系。【ロキ・ファミリア】と【フレイヤ・ファミリア】が挙げられる。ダンジョンで採取した物を加工する生産系。【ヘファイストス・ファミリア】【ディアンケヒト・ファミリア】が挙げられる。他にも、都市の治安維持を務める【ガネーシャ・ファミリア】【アストレア・ファミリア】という派閥も存在する。

 

 代表的な派閥はこの三つであり、どちらか一方に集中する中で、探索系・生産系派閥にも属する異色極まりない派閥が存在する。

 

 【クベーラ・ファミリア】。

 

 エルフの女王にして都市最高魔導士【九魔姫(ナインヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴに匹敵する魔法使いがいるだけ留まらず、かのオラリオ最強である【猛者(おうじゃ)】オッタルと同等以上の戦力を保有する。また、【万能者(ペルセウス)】と名高いアスフィ・アル・アンドロメダを、先読み限定で【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナを凌ぐ実力者もいる。

 

 彼らは一人一人が突出して強く、ゼウス・ヘラに最も近い派閥と日夜噂され、十年近く前から存在する、オラリオでも古参のファミリアである。

 

 

 

 

 

 「一人を除いて、ね」

 

 「こら。卑屈にならない」

 

 書類仕事を終えた後日、俺はメルティを侍らせギルドに向かっていた。街を歩けばやれ【クベーラ・ファミリア】だ!だの、【色彩(しきさい)】のメルティだ!だの、隣の男は誰だ!?恋人か!?···あ、なんだ【宝神の守り番(ヤクシャ)】か(笑)と恐れられ(?)道の真ん中が勝手に開いていく。悲しいことに俺一人で歩けばこうはならんが、仲間の誰かと歩けば必ずこうなる。···あー、グレイは除外。アイツは外に出るのが稀だから気付かれることのほうが珍しい。

 

 あんまり目立ちたくない俺にとって、この時間は嫌いだ。

 

 「団長ちゃんは、私とのデートは嫌かい?」

 

 「周りにギャラリーがいなきゃねー。······マジで消えてくんねーかな」

  

 「こらこら。君だってLv.5、立派な強者だから誇りに思えることなんだよ?······そりゃあ、私達のキャラが濃いから目立たないだけで」

 

 「最後の一言は余計だ」

 

 メルティ筆頭の女性陣は非の打ち所がないくらいの美女美少女だから人気で、同性のキリオスは強くてイケメンで、同じく同性のグレイは貢献度がエグいから市民からはイケメン視されてる(見た者は少ないのに)。

 

 ·····あれ、俺は?

 

 同格の冒険者より強い自信あるぞ!なんなら一つ上の冒険者にだって勝てる自信すらある!

 

 ······あれ、俺は?(二度目)

 

 闇派閥全盛の時代、迫りくる敵から何度同業者と市民を救ったことか。敵幹部だって撃破したんだぜ!

  

 ······あれ、俺は?(三度目)

 

 「思い返してごらんよ」

 

 「ナチュラルに心を読むのはやめて?まずはそうだな」

 

 強い自信。これは、街中で二大派閥が喧嘩を始めたときに仲裁して勝ったことから俺って強くね?と確信を得た。【凶狼(ヴァナルガンド)】と【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】の間に入って、ボコったんだぞ。これでも目立たないってのか?

 

 「そうだね、それは凄いことだよ?でもね」

 

 二人は戦いの末に消耗していた。だから周りからは、弱ってるところを狙った卑怯者、相手が弱ってないと強気にでれない臆病者に映ったんじゃない?

 

 「グフッ!?」

 

 いきなり致命傷を負わせる(正論を言う)やつがあるか。  

 

 でも次は?闇派閥を倒しまくったよ!

 

 「確かに闇派閥を倒してたね。撃破数はもしかしたら副団長ちゃんよりも上かも。でもね」

 

 襲撃されたら市民は避難する。だからか、単純に見てる人がいなかった。それに、敵を倒すよりも仲間や市民を癒すほうが印象に残ると思うんだ。

 

 「···え、つまり?」

 

 「うん、君の活躍は誰も見てないし、なんならひたすら治療してた私の方が目立ってた」  

 

 「グハァアッ!?」

 

 鋭すぎる指摘(ナイフ)に刺され、俺は吐血した。虚ろ虚ろな状態で気付けばギルドに辿り着いていた。

 

 「なんで地上で死にかけてるんですか!?」

 

 隣のメルティは優しく微笑んでいた。

 

 

 

 

 「クエスト?」

 

 書類を提出した俺達は帰宅する──ことなく、担当受付嬢から呼び止められた。

 

 なんでも中堅派閥が失敗に終わったクエストを消化して欲しいとのこと。

 

 「あ、いやクエスト自体は完了してまして、突如として現れたモンスターに襲撃され、そのパーティは重症を負ったのです」

 

 「なるほどね。つまり、被害が拡大する前にそのモンスターを討伐して欲しいわけだ」

 

 「は、はい!」

 

 「どうする?···団長ちゃん、生きてる?」

 

 「生きとるわ。う~ん、そうだな···」

 

 上層中層下層深層と、層を超えるごとにモンスターの質と数、異常事態の数も劇的に増えることでダンジョン攻略は難解なものになってくる。中でも下層は【第二の死線(デッドライン)】と呼ばれ、水源地だけあって地形的不利を強いられる。

 

 下層は個人的に嫌いだ。

 

 「そのモンスターは特定されてるのか?」

 

 「それが不明点が多くて···。目撃者によると、『身の丈以上の大剣を持ち、全身鎧を着込んだモンスター』だそうです」

 

 「···ん?」

 

 「それって冒険者じゃない?」

  

 冒険者に襲われた。これは最近では少ない事例だが、昔はよくあったことだ。今回の事件?は獲物を横取りしようとした奴による悪行では?と俺は思うが···。

 

 「大きさは2Mを優に超えていたそうです」

 

 「なら冒険者と違うか」

 

 「【猛者】は超えてるよ?」

 

 「なら冒険者じゃないか?」

 

 「グルル···と、低い唸り声を上げていたらしいです」

 

 「なら冒険者と違うか」

 

 「獣化した冒険者は上げてるね」

 

 「なら冒険者じゃないか?」

 

 「でも顔付きはモンスターのそれだったと···」

 

 「なら冒険者と──」

 

 「いや冒険者(男限定)は厳つい顔がほとんどだから」

 

 「なら冒険者と──」  

 

 「いや──」

 

 「なら──」

 

 「でも──」

 

 「なら──」

 

 「「「「「「いや長いわ!!!!?」」」」」」

 

 「とにかく!【クベーラ・ファミリア】のお二人に調査及び討伐クエストを受けて欲しいのです!正体がこの際人でも地面の染みにしてもらって結構ですので!」

 

 「どうする、団長ちゃん?」

 

 「どうって、そりゃお前」

 

 「報酬は500万ヴァ──」

  

 「「乗った」」

 

 ((((((は、早い))))))

 

 「·····恐ろしく早い承諾、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね」

     

 「誰だお前」

 

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