問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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第21話

 

 ベル・クラネル。

 

 迷宮都市オラリオに来て僅か一ヶ月で、慈愛に満ちた竈の女神(ヘスティア)を主神とする新人冒険者(ルーキー)。団員は他にいないため零細派閥であり、冒険者になって一ヶ月のためかアビリティは充分に育ってない。そのため浅い階層でしか満足に探索できない。

 

 次の雇用主(カモ)として彼を調べ──()()()()()()()()()()()()()()()()()()──リリルカ・アーデはサポーターとして同行することにした。

 

 が、

 

 「······ベル様は、冒険者になって何ヵ月でしたっけ?」

 

 「?およそ一ヶ月?」

 

 「恩恵(ファルナ)を授かったのはいつですか?」

 

 「?およそ一ヶ月?」

 

 「ここは何階層ですか?」

 

 「?およそ九階層?」

 

 何がおよそだ馬鹿野郎!喋る前に疑問符浮かべやがって!とリリルカは叫びたい気持ちになるのを抑える。お前おかしいと指摘したとしてもこのトンチキ兎は常識がすっぽり抜けている。だから何言っても無駄になって徒労に終わる。

 

 これなら他の冒険者(バカ)相手の方がよっぽど気楽である。

 

 などと考えているとベルの背後からモンスターの影。

 

 「······ッ!」

 

 リリルカは咄嗟にボーガンで狙いを定めたが──

 

 「っと」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、撫でるように首をハネた。

 

 ここは九階層端にある小部屋(ルーム)で、通路は片道しかないため当然誰もこない。足元に積もっているモンスターの遺灰にモンスターの出血痕は、彼が持っていた魔道具(マジックアイテム)を用いてモンスターを集めて狩り尽くした証拠である。

 

 こんな破天荒な行動をとるのは以前サポーターとして同行した【クベー──うっ、頭が!?

 

 一連の動作を見たリリルカは、冷静に不意打ちを対処して危ない危ないと笑顔を浮かべる彼に少しブルっときた。

 

 

 

 

 

 

 サポーターは稼ぎが低い。それはモンスターと戦う能力がないため、雇用主である冒険者から直接貰う必要があるからだ。

 

 冒険者は傲慢で礼儀に欠ける人物が過半数。礼儀を重んじるのは極々少数。そのため、録に働きもせず自身に寄生して稼ぎに集ろうとするサポーターを下に見る。

 

 難癖つけて搾取し、危なくなれば囮に使われる。そして暴力をふるわれないように常に機嫌を損ねないように気を配る必要もある。そして、手元に一割でも収入を貰えば御の字といえるサポーター業。控えめにいってブラックである。

 

 リリルカは、()()()()()()()()幼少の頃からサポーターとして働いていた。それは抗えない神酒(ソーマ)の魔力で依存していたのもあり、酔いが醒めてからは脱け出すための金も必要だった。

 

 そのために傲慢な冒険者から虐げられるのを我慢し続けた。

 

 サポーターをする必要がなくなった今でも、そんな冒険者を見るとイライラする。イライラするから、サポーターに成り済まして分からせる。

 

 傑作だった。

 

 下に見ていた者に、虐げられた者に、命乞いをする情けない冒険者共(バカ)が。

 

 そして次に選んだ冒険者。如何にも純粋で年上から好かれそうな白髪紅目の兎風の(ヒューマン)。調べた限りでは潔白だが······どうせ裏があるとリリルカは判断し、化けの皮を剥がそうと接近するのだった。

 

 まあ、剥がしたら剥がしたらで兎の形をした化け物が現れたんですけどね(笑)

 

 おのれ、ベル・クラネルッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 窓から青空が見える。涼しい風も吹く。正直退屈すぎる入院生活でも、この時間は好きだったりする。押し付けられる事務仕事も、ギルドからやってくる始末書の数々をこなす日々でもこの時間は好きだった。

 

 「そういやー、元気にしてるかなぁ」

 

 「······?」

 

 普段は外に出るのも億劫だと言ってる癖に、こうしてわざわざ見舞いにグレイは来てくれた。嬉しい。嬉しいからグレイに喋り掛ける(?)

 

 「ほら、俺達のサポーター募集に応募してくれた子」

 

 「······誰ッスか?たくさんいたッスけど」

 

 本当にたくさんいたね、神々の言う出会い厨が。メルティ目当てできた冒険者ども(本職(サポーター)もいるにはいた)は鬼の形相をしたキリオスに涙を流して震えてたねって、違う違う。

 

 「ほらほらあの子だよあの子。キリオスが唯一褒めた()()()の!名前はごめん、忘れた!」

 

 「······あぁ、耐えきれず下層からノンストップで地上まで上がりきったあの?」

 

 「そうそう!そんでキリオスが『奴を貰う』ってんで珍しく本気になって、でも結局動いたのは俺で、協力してくれたクロノの嗅覚でようやく発見して本拠地(ホーム)に挨拶に伺ったら──」

 

 「難癖つけてきた団長らしき男を半殺しにした挙げ句、弾いた剣が神ソーマに当たったんスよね。団長氏は神をも手を掛けられる狂人として民衆に──」

 

 「正確には前髪に、だ。······まあ、反論できないから民衆に恐れられたけども」

 

 そして『天才達より目立とうとした結果、取り返しのつかないことをしたイキリ野郎』と、民衆からは思われた。でも僅か一ヶ月ほどでこの評価は消えたけど。謎だ。

 

 この一件でギルドから【ソーマ・ファミリア】と接触することを禁止されたんだっけ。勧誘しろと言ったキリオスからはもちろん、なぜかクベーラから非難されたんだよな。神ソーマが司るのは酒。あの女神は無類の酒好きだから()()()()()()を飲みたかったのに飲める機会を失ったことに怒ったのかもしれない。

 

 ギルドから不穏な動きを見せて民衆を不安にさせたって建前で罰金はあったけど、意外なことに【ソーマ・ファミリア】がこの一件を使って突っ掛かることはなく、嘩両成敗にしようということで手打ちになった。あの時の俺はLv.6じゃなかったが、少なくとも下層に行ける程度の実力はあった。だから大金でも何でも用意できる自信があったのに、あの派閥で二番目に強い団長代理の──ちゃ、ちゃんー······なんとかさんが大丈夫だって。

 

 団長さんが治療院送りにされている間に環境を変えるぞって息巻いてたね。そういえば悪い噂とかあんまり聞かなくなった。

 

 今はいいか。話を戻すとキリオスが本気になったってことはサポーターの中でも非凡な才能があったのだろう。勧誘はできなくなったけど、俺の酷評はなんか知らんが綺麗に消えたし、うちの派閥に不利益を被った訳じゃないからいいんだけど。

 

 「グレイはさ、うちにサポーターいる?」

 

 「いらないッス」

 

 「その心は?」

 

 「自分が戦わないといけないから」

 

 言外に嫌だと言う男に呆れる。グレイは課せられた義務を無駄だと捨て嫌う性格(たち)で、好きな時に好きな魔道具(マジックアイテム)を作ることに心血を注いでいる。なので、遠征やら探索を避ける傾向にある。別にサボってもいいのだが、引きこもりは不健康だと俺は思うので、趣味用の予算を減らすと脅して引っ張っている。健康だとかなんとかで引っ張りだすのは、恩恵(ファルナ)を授かった者からするととんだありがた迷惑だと思っているはずだ。俺も思うもん。

 

 しかし、だ。()()()()L()v().()4()()()()()()()()()

  

 「()()()()()()()()?」

 

 「ははは。これは面白い冗談ッスね。でもね団長氏、自分は戦闘とかからっきしなんで無理ッスよ」

 

 「「······」」

 

 俺もグレイも、それ以上口にだすことはしなかった。

 

 「ベルは?」

 

 「ベル氏ならダンジョンッスね。なんでも契約したサポーターと連日探索してるッスよ」

 

 「精がでるねぇ。アイツの実力なら上層はもう制覇できるんじゃね?」

 

 「速いッスね」

 

 「速いねぇ」

 

 あの攻略の速さはキリオスを彷彿とさせる。でもどっちが速いかと言われると、

 

 「「キリオス(氏ッスね)」」

 

 キリオスは冒険者としての才能と、努力が必ず実る才能と、立てた目標を必ず実現させる才能を持つ天才だ。アビリティの成長速度が速いベルでも、上層制覇をやらせたらならキリオスに軍配が上がる。もちろん同じLv.1で、ならだ。

 

 当時は闇派閥とか、他派閥の襲撃とか、神々の嫌がらせとかたくさん邪魔が入ったから思うように進めなかったんだよなぁ。あの時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、色んなものに邪魔され続けるキリオスに流石に同情した。

 

 「ま!みんなが元気ならそれでいいか」

 

 「楽観的ッスねー。見た目だけなら一番元気じゃないのに」

 

 「ほっとけ、最近忙し過ぎたんだよ。何もかも忘れて休みたいの」

 

 グレイが怪しい笑みを浮かべた。

 

 「······クベーラ氏が散財、キリオス氏が金庫破り、グレイ氏が本拠地で火炎石暴発、メルティ氏ナザレ氏クロノ氏が中層下層で暴れ回り冒険者から苦情の嵐」

 

 「ま!?······いやグレイ氏はお前だよ!?そんでお前が一番ヤベェことしてんじゃねぇかッ!!」

 

 最悪だよ。

 




転機
リリルカのランクアップだけではザニスに妨害されて環境の変化は訪れない。団長が挨拶にきたおかげ。

【ソーマ・ファミリア】
派閥環境は整いつつあるが、主神は働かないし過激派はまだいる。以前よりマシと言ったところ。団長チャンドラ。追放されたザニスの行方は不明。

グレイ
団長のお見舞いに。ディアンケヒトの勧誘は適当にあしらった。火炎石の暴発はわざとではない。

団長
退院したくない。



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