問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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第3話

 

 27階層。

 

 ダンジョンにおける下層に位置し、中層よりも強力なモンスターに加え、周りが水源地となっているため地形的不利を強いられて厄介極まりない。また、下層名物【巨蒼の滝(グレート・フォール)】という見応えある大きな滝があり、階層主アンフィス・バエナが上ったり下ったり忙しなく移動していたりする。

 

 ···あんまり思い出したくないことだが、数年前にこの階層は、闇派閥との決戦場所として選ばれた。首謀者は暗黒期から悪名を轟かせた【殺帝(アラクニア)】に【白髪鬼(ヴェンデッタ)】。階層主すら巻き込んだ大規模怪物進呈(バス・パレード)を引き起こし、これによってギルド傘下の大勢の冒険者が······キリオスの日課···日課?である一人遠征の日と被ったから、戦死者は出たらしいけど、数人は生き残れたらしい。

 

 当の本人は25階層から27階層まであの滝を紐なしバンジーをしたという逸話を残した。

 

 『丁度いいアンフィス・バエナ(足場)があったから飛び乗った』 

  

 『なんで無事なんだよ、お前』

 

 キリオスの馬鹿は、足場があったのだから飛び乗るのは当たり前のことだろう?と、さも当然のような顔をしていた。でも、え?違うの?みんなはやるよな?的な、むしろこう思ってたっぽい。

 

 そんなことを思い出しながら、俺とメルティはこの階層に辿り着いた。

 

 「情報が正しければ、このエリアで間違いないよな?」

 

 「そうだね。『【巨蒼の滝】の正面、開けたエリア』だからここ以外ないね」

 

 目の前には滝、そして開けた空間。よく階層主との戦闘で使われるエリアであり、冒険者の行き帰りに使われる正規ルート。

 

 ここで襲われたらしい。それにしても──

 

 「···『身の丈以上の大剣を持ち」

 

 「···全身鎧を着込んだモンスター』」

 

 「「そんなモンスター、いるぅ?」」

 

 モンスターが武器を持つことは珍しくない。自然武器(ネイチャー・ウェポン)なんてものがあるくらいだし、なんなら冒険者の武器を拾うことだってある。だから前者に関しては別にいい。問題は後者。

 

 「鎧なんてあったかなあ?」

 

 「自然武器の類いでは聞いたことないね」

 

 「拾って着たとかはない?」

 

 「モンスターが自分で紐を結べるかな?」

 

 「なら体質······もといイレギュラーか、固い甲羅を持つモンスターを補食したら上手い具合に鎧になった」

 

 「荒唐無稽···と言いたいところだけど、ここは未知の迷宮(ダンジョン)だから有り得ない話じゃないね。だとすると、補食されたモンスターはクリスタルタートル?」

 

 「ブルークラブかもしれない。鎧を形成するのだってたくさん補食する必要があるだろうし、それに亀より蟹のほうが出現率が高い···気がする。なんなら集団で行動するタイプだし」

 

 「なるほど」

 

 と、俺達は予想を立てて敵の姿を捉えていく。こういう時ナザレが居てくれたら楽なんだけどなぁ。預言でズバッ!と的中してくれるし。

 

 「おや、私じゃ役不足かい?」

 

 「なんで分かるんだよ」

 

 「【色彩】のメルティと恐れられ敬われ愛されるそんな私が行使する魔法をとくとみよ!」

 

 「聞けよ」

 

 俺を無視し、彼女は右手を伸ばし()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは天才発明家(グレイ)天才魔導士(メルティ)が『道具片付けるの手間だよね。じゃあ異空間創ってそこに収納しとこっか(笑)』って軽いノリで発明された合作にして傑作の指輪型魔道具。右手の人差し指に付けられた【空間収納装置】である。

 

 「【願いは届く】」

 

 そしてメルティの口から詠唱が紡がれる。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()彼女だけの魔法にして、攻撃時には砲撃魔法、防御には障壁魔法、回復には治癒魔法へと、()()()()()()()()()姿()()()()()願望魔法

 

 「【星に願い、海に祈り、地には導き、人には癒しを与える我が権能】」

 

 彼女の魔法は人々を圧倒させ、

 

 「【貴方の願いは私の想い。私の願いは貴方の想い】」

 

 神々の好奇は今も昔も色褪せることはない。

 

 「【夢を見る者達よ。私の願望を讃えなさい】」

 

 よってランクアップ時の神会では、

 

 「【ディア・ホープ】」

 

 満場一致の【色彩】が与えられた。

 

 そして魔法を唱えた彼女の指から現れたのは、一本の糸。

 

 「ん~、シンプルに【道標(アリアドネ)】ってところかな」

 

 彼女の"探す""見つけ出す"という願いは、ゴールに導く一筋の糸へと変化した。その糸は右へ左へ揺れている。

 

 「これを辿れば目標に到達するのか?」

 

 「うん。で、後は倒すだけだね」

 

 「よしよし。······残る問題はモンスターの強さか」

 

 目撃証言を聞く限り、下層ですら珍しい異常個体だ。しかもモンスターを補食しているとするならば強化種でもある。その場合、適正レベルを優に超えているのでLv.5の俺でも負けるかもしれない。

 

 「まあメルティがいるから大丈夫かもだけど···」 

 

 「任せてよ!と言いたいところだけど、鎧がどこまで固いのかが問題なんだよね。一応貫通できる魔法を願うけど」

 

 彼女はそう言うが、メルティは(俺より高い)Lv.6。あの【九魔姫】と肩を並べる強者だ。全力でメルティの魔法を宛にしよう。

 

 「駄目そうなら逃げよっか」

 

 「そうだ──ね?」

 

 メルティの表情が固まった。

 

 「ん?どうした?」

 

 「()()()()()()()。凄い勢いで」

 

 「んんっ?」

 

 糸が縮んできてるそうな。ドシンドシンドシンドシン、何かが足音立てながら全力疾走している音が──

 

 「アアアアァァァァァァ!!」

 

 「「────ッッ!!!?」」

 

 鼓膜が破れるんじゃないか、というぐらいの咆哮が階層に響き渡った。

 

 これは強く保ってないと意識を持ってかれる!周りのモンスター達が泡吹いて倒れて、放たれる威圧感はこれまで戦った階層主達に既視感を覚えさせる。

 

 「これは······不味いかも」

 

 「ああ······マジでヤバい」

 

 目の前にいるモンスターは正真正銘の怪物だった。推定5Mある巨躯に、膨れあがった筋肉。その上から覆われている鎧、らしきもの。クリスタルタートル、ブルークラブ、その両方を補食したのだろう。モンスターの鎧はその両方で形成されていた。また、両腕には黒色の岩盤が張り付いており、手に持つ大剣は血液のように赤黒く、生き物のように脈打っていた。

 

 いやあの腕、オブシディアン・ソルジャーじゃね?深層種──の!? 

 

 「ガアアアアァァァァ!!」

 

 「うおぉぉおお!?」

 

 「きゃあぁぁああ!?」

 

 あのモンスターは、俺とメルティの間に()()()()()()剣を叩き付けた。だから当たらなかったけど、床が限界を迎えて崩壊した。

 

 メルティは風圧によって横に飛ばされたが、俺とモンスターは下へ落下した。

 

 ニヤリ、とモンスターが嗤った気がした。

 

 あかん、分断された。

 




 目標のモンスター。
 種族:モンスター
 所属:ダンジョン、???
 Lv.7上位
 備考:ベースはフォモール。知能はないが知性はある(異端児じゃない)。補食したモンスターの特性を受け継ぐ能力を持つ異常個体。普通なら魔石を喰わないから気付かないが、たまたま強化種になれたことでこうなった。深層からすぐ下層へ進出したため、クリスタルタートル、ブルークラブなどの下層中心のモンスターを喰った。発見された時はLv.4並みの力しか持たなかったのだが、とある研究者(ダンメモ見てね!)によって例の胎児を植え付けられてLv.7上位へと昇華した。強くなりたい!なら喰えばいいんじゃない?という思考。強者を求めてウロウロしてたら団長と出会った。一騎討ちで戦って補食したい。

 脈打つ大剣
 備考:製作者と研究者の合作。生きた精霊を使用した外道の業物。無垢の精霊にダイダロスの呪いが合わさって混じったことで在り方が反転し、変色した(Fateの聖杯とアンリマユみたいなイメージ)。不治の呪詛は当たらなければ大丈夫だが、この大剣は不治に加えて弱体化の呪いを魔素にして散布する。【精癒】持ちは常時魔素を取り込むので相性が悪い。
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