問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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第4話

 

 「──うっ、く。やられた···」

 

 突如現れたモンスターによって吹き飛ばされ、団長ちゃんと分断された。  

 

 あのモンスターの特徴を聞いたとき、強化種の中でもぶっちぎりの個体だなと思ったし、第一級二人だけで勝てるといった甘い考えは持っていなかった。一人遠征中のキリオスちゃんと合流しての勝ちだな、と予想していた。しかし結果はこうだ。

 

 想定を遥かに超えていた。それだけだ。

 

 「······くそっ」

 

 ()()()()()()()()。杖を握る手が強まる。今の私は普段の私より余裕を持てず冷静になれていないのだ。

 

 下の階層に落ちただけなら追いかければいいだけの話だし、団長ちゃんのことだから簡単には死なない。

 

 ではなぜ余裕を失ってるのか?

 

 答えは目の前にあった。

 

 「()()()()()()()()()()()···!」

 

 25階層から、【巨蒼の滝】から双頭竜が落ちてきた。

 

 

 

 

 コーネリウス・アイルゼンヴァハ。

 

 才能が尖りに尖った問題児集団、【クベーラ・ファミリア】を率いる団長こと、【宝神の守り番(ヤクシャ)】の名前である。

 

 全員が"団長"で呼ぶ理由は単純に、下の名前も家名もフルネームもただただ長いからである。決して敬われているからではない。悲しいことに、長いという理由で"団長"呼びが定着してしまったのだ。

 

 まあ、それは置いといて。

 

 突然だがここで、もし他派閥に所属していたらというIFストーリーを紹介しよう。

 

 中堅以下の派閥に所属していれば、その人の良さから慕われる団長であったし、【フレイヤ・ファミリア】所属であれば、副団長として団員達を気遣いながら【猛者】を始めとした幹部陣の良きライバルを張れていた。【ロキ・ファミリア】所属だと、強さを苛烈に求めた幼き【剣姫】が懐き英雄視するほどの兄貴分になっていた。

 

 他派閥であれば英雄になれていた。が、残酷は非常である。

 

 その気になれば僕達三人を一人で相手取れる、と【勇者(フィン)】に言わしめ、【猛者】を差し置いてゼウス・ヘラに最も近いと噂される【覇王(はおう)】キリオス。

 

 詠唱一つで色んな魔法に変化させ、暗黒期には死者蘇生と見紛う治癒魔法で人々を全快させる伝説を残した【色彩】のメルティ。

 

 貧村を困窮から救い発展させ宗教団体の教祖として祭り上げられた彼女は、人々を洗脳させ尊厳を踏みにじる神の思惑を徹底的に潰し何も出来ないまま降伏させた【神託の巫女(デルフォイ)】ナザレ。

 

 造り出した魔道具でモンスターによる被害を食い止めるだけではなく、売り物に出した冒険者用装備で死傷者数を減らした【才師(プロフェッサー)】グレイ。    

 

 暗殺者を育成していた神の最高傑作にして、神の洗脳を自力で解いた天才。脱退して入団後すぐ派閥を襲撃する敵派閥の情報を掴み、一人で敵派閥を壊滅させた【黒殺(こくさつ)】のクロノ。

 

 彼は入ったファミリアを間違えた。迎え入れる団員を間違えた。自己評価が低く周りから評価されないのは、周りが凄すぎるだけの話である。

 

 しかし、コーネリウスは後悔していない。彼らの才能に嫉妬しないなんて言えば嘘になる。てか毎日してる。だが、それでも個性豊かな彼らを嫌いになれなかった。

 

 『今日は勝てそうな気がしたんだ。でもディーラーがこれまた超一流でね。神である私の予測を上回ったんだ、凄いよね。君の貯金ほとんど持ってかれちゃった☆』

 

 『この俺が書類仕事、だと···?雑事は団長の座を譲ると同時に貴様に任せたはずだぞ』

 

 『団長ちゃん団長ちゃん。娼館行ったはいいけど怖気づいて、何もせず引き返したって本当?······ぷくく、昨晩はお楽しみでしたね(笑)』

 

 『団長。大変言いづらいのですがその······。本日は"凶"が出てます。ふふっ···"今日"だけに、ぶふぅ!』

 

 『団長氏!自動で卵を割ってくれる装置を開発しましたぞ!これさえあれば殻を割る手間が省くというもの。···え?開発費は自分で出したのか、ですか?それはもちろん······派閥の役に立つものですから、団長氏の財産から捻出したに決まってるじゃないすか!HAHAHA!』

 

 『···ん(訳:じゃが丸くん一緒に食べたいから、買ってきて』

 

 そう。今でも鮮明に思い出せる。クベーラに散財され、キリオスはサボり、メルティから弄られ、ナザレから下らない洒落と共に絶望を与えられる。グレイは開発欲?が止まらないし、クロノは可愛い(激甘)  

 

 俺は···。

 

 お、俺は······。

 

 俺、俺は、俺は······!!

 

 「だぁあああああああああ!!やっぱりお前ら(※クロノ除く)が死ぬほど大っっっ嫌いだ畜生がッッ!!」

 

 下の階層に落とされてすぐ戦闘が始まり、魔法が無い俺の切り札であるたった一つスキルを使用しても届かなかった。

 

 血を流し、骨が折れ、スキルのせいで身体中が痛い。半分気絶した状態で流れた仲間達の言葉。それで意識が覚醒して叫んだのが今現在。

 

 目の前にはこれといったダメージが見当たらないモンスター。俺は立ち上がった。立ち上がってスキルを叫ぶ。

 

 「【限界突破・昇(リミットオフ・オーバー)】」

 

 【限界突破・昇(リミットオフ・オーバー)

 ・自身のレベルを一段階引き上げる  

 ・自身のレベルを二段階引き上げる

 ・自身のレベルを三段階引き上げる

 ・昇華時間は耐久に依存

 

 これは見栄だ。天才と肩を並べていると自信が持てる俺だけの、凡人の剣(スキル)

 

 「······行くぞ!」

 

 「フゥーッ、フゥーッ、フゥゥゥゥ!!」

 

 最終決戦(ファイナル・ラウンド)の開幕だ!

 




次回、決着!
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