おっぱい。
男性女性、または人間以外の動物が持つ身体的特徴の一つであり、産後分泌される母乳は、乳児を育てる際に用いられる。さらに母性の象徴であるおっぱいは、子供を落ち着かせるリラックス効果があり、成人男性(一部女性)ですらおっぱいに魅了され、おっぱいを欲しいものにするために日夜己を磨き続ける。愚の骨頂である。
「ほ~ら、団長ちゃん。おっぱいでちゅよ~」
あの激戦から帰還した俺達は今、てか重症の俺だけが治療院の
【
まあ、そのためソロでの迷宮探索では使わず、優秀な回復役がいない場合も極力使わないようにしている。メルティがいなかったあの激戦では正直賭けだった。
このスキルは効果からして普通じゃない。普通のスキルを持つキリオスとメルティの経験談によれば、スキルというのは疲れるだけ。痛みが伴うのは、
同じスキル(または魔法)を持つ人は、俺と同じ苦痛を味わってるんじゃないかな。仲間だね。
そして三段階目を使用し、メルティが回復してくれたとはいえ再度スキルを使ったがために、身体中が阿鼻叫喚の地獄絵図を繰り広げるくらい悲鳴が上がってる。
俺は治療院のベッドで一人、今もずっと痛みに悩まされている。
そしてメルティは俺のベッドで、
な ん で や ね ん。
な に し て ん ね ん。
「団長ちゃん、おっぱい好きでしょ?」
「うん、それで?」
「見せてあげる」
「そっか。うん、なるほど、ね······」
全ッ然、意味分からんッ!!え、なにコイツ何がしたいの!?俺に気でもあるんか!?
さらにコイツ、見せるだけ見せて触れさせないよう徹底している。下着で強調されるおっぱい、おっぱいの揺れ、おっぱいの匂い、普段露出しないおっぱいの露出。こちらの情欲を煽るよう完璧に計算され尽くしている。
メルティの種族はエルフである。高潔潔癖で有名な
そしてここは本拠地ではなく、治療院である!!
「何やってるんですか貴方はッッ!!」
「ナニってそれは······。団長ちゃんに早く元気になってもらいたくて······あ、ここは元気になってるね、偉い偉い♪」
「~~~~ッ!!」
彼女は都市最高の治癒師である。また、聖女と言われるくらいの高潔さと慈愛を併せ持つ。
そんな彼女が怒りで血管を浮き彫りにするほどまでに、目の前の
「【色彩】のメルティ、貴方は今後一切未来永劫出禁です!!」
「ちぇっ」
時は同じくして、
「君たちの力の本質は、人を不幸にするものではなく、人を幸せにするものだ。······というわけでナザレぇ、クロノぉ。カジノ行こうぜ!荒稼ぎしようぜ!破産するくらい楽しもうぜぇ!!」
「「お断りします/ん(断る)」」
「ちぇっ」
時は同じくして、バベル前。
「······」
「······」
そんな様子を冒険者が生唾を飲んで見守り、神々は面白いもの見たさに嬉々として見守っていた。
一面に緊張が走り、先に口を開いたのは──
「······何か用か、猪野郎。用がないのなら······いや用があっても失せろ」
キリオス。言葉に苛立ちが混じっているのは、女神の自由勝手な行いを正さずイエスマンに成り下がり、振り回されることを喜びとしているコイツらが嫌いだから。だからロキとフレイヤの抗争では無関係のキリオスが鬱憤を晴らすために参加し、大暴れした。
『うちの眷属達が···特にヘディンが瀕死の重症を負ってるのだけど······え、なんでヘディンを重点的にボコボコにしたの?どう責任とるの?とれるの?』
『その前に街中で暴れ回るな。戦えない民がいるんだぞ』
『そんなこと考えてないでしょう貴方。······フフ、貴方、私の眷属にならない?そうしたら今回の──』
『くたばれアバズレ』
『アバッ──!?』
一同絶句。
前々から仲が悪いとは噂されていたが、この件でバッチバチに仲が悪いことが世間に露見された。フレイヤ派とクーリア派が対面すると、住民達は身構えて緊張が走ってしまう。
まあ、今苛立っているのはダンジョン探索に行こうとしているのに、目の前に立たれて邪魔されているからである。休めや。
そしてキリオスは強さを我武者羅に求める冒険者。昇華前なら辛うじてあった関心も、自分より格下となったオッタルにはすでに失っていた。
それを感じ取れないオッタルではない。
「超えるぞ俺は。【フレイヤ・ファミリア】の団長として、あの方の眷属として再び最強に返り咲く」
「
そんなオッタルの決意をバッサリ切り捨てる。
「神意は絶対、最強に拘るのは寵愛を得るため、か。······フン、
「現に、辛うじてあった勝機も今回の俺達のランクアップで失くなったからな」
「お前ごときが最強になると口にするな。烏滸がましい」
言うだけ言って、言葉を失ったオッタルの横を通りすぎた。
最強だと思っていた自分が、後から冒険者となった男に追い抜かされ、その男から見た自分はすでに眼中から無くなっていた。
「コーネリウス・アイルゼンヴァハ···!」
最近Lv.6となった【クベーラ・ファミリア】団長にして、彼らが最も信頼する男。
そして、
レベル差を覆して数多の強者に勝利した男。
オッタルから見たコーネリウスの心象は、積み上げてきた偉業から判断しても、
そんな男に勝てばもしかしたら······。
オッタルの標的は、キリオスからコーネリウスへと変わった!
時を同じくして、
コツコツ、と靴音を出しながら歩く一人の男。
「第一級冒険者の中でも、一番弱い【宝神の守り番】を、
研究者であるミュラーは苛立ちげに独り言を呟いた。
たまたま見つけた、捕食したモンスターの特性を獲得する
「どうして。どうして【覇王】が出てくるんだよ···!」
オッタルと並ぶ都市最強のLv.7、【覇王】キリオスの登場で台無しにされた!
【宝神の守り番】のスキルはおそらく
キリオスさえ現れなければ、まだまだ研究もできて強くできたのに!【英傑】【女帝】さえも超えられると思ったのにぃ···!
「どうして現れるかなぁ。勘か?戦闘で培われた勘?それとも天性の?どちらにせよ、非科学的だよねぇ、嫌いなんだよねぇそういうの」
そして彼は辿り着く。
椅子に座り、自身の机と向き合って──気付く。
「ん?んん?んんん?」
──位置が、変わっている。
「······誰だよ勝手に動かした馬鹿は。下っ端か?【殺帝】か?もしかして神タナトス?困るんだよね勝手に動かされると。あ~も~、腹立つ!」
ミュラーもそうだが研究者含む生産職という人間は、自分の成果と道具を己の半身と同義と捉え、それ故に勝手に弄られることを嫌悪する。
自分の中で、これといったもの、決められた場所というものがあるのだ。
「ふむ、
「!?」
怒り心頭のそんな中で聞こえる声。ここには自分以外誰もいないはずで、自分に馴れ馴れしく話しかける人物など、神と【殺帝】以外いない。
男の声がした。
「ナザレ氏から団長氏が危ない!と聞いた時は驚いたッスけど···自分はキリオス氏みたく腕っぷしに自信がある訳でも、メルティ氏みたいな魔法が使える訳でもない。ただの非力な非戦闘職。何にもできないんですよねぇ」
「······」
「まあ、結果的に団長氏は助かったから一安心、これで落ち着けるってもんですよ。そう思わないッスか?」
さっきからこの子供は何を言ってる?背丈からして子供と判断したけど、
いまだに困惑するが、ここは敢えて観察に徹することにする。研究者らしく物事を観察し考察する、ミュラーはこれで冷静になれる。
·····ん?ハーフ?
「
「······ん?ああ、そういえば名乗ってなかったッスね。はい、正解です」
「───」
【才師】グレイ。天才的、時にとち狂った発明品を世に排出し世の発明家の度肝を抜く男。また、研究者の自分から見ても彼の頭脳は目を見張るものがあり、分野は違えど尊敬に値する今を生きる偉人!
そんな人物が目の前に?僕の道具を自分の使いやすい場所に入れ替えて?僕の研究成果を熱心に?うわ、うわっ、うわぁ~感激だ!泣きそう。
ミュラーは怒りを忘れて、目の前の人物に憧憬だとか羨望だとか敬意だとかもう色々とぐっちゃぐちゃの感情を向ける。
要するにファンなのだ、コイツ。
はっ!これは色々聞けるチャンスなのでは···?うわぁ、どうしよ。頭の中が混乱して何も思いつかない!こういう時は観察に徹して冷静に······そうだ!
「【才師】グレイ!質問いいですか!?」
「? どうぞ~」
「どうやってここに?」
「
「ん?」
「ナザレ氏の占いは凄いッスね。知りたいこと、見つけたいもの、その手のことなら何でも応用が効くんだから。本当に便利、自分にも欲しいぐらいですよ~」
「───」
ミュラーは言葉を失う。
「自分の頭で考えた訳でもなく?自分が創った発明品で探しだした訳でもなく?【神託の巫女】の占い?······ハァ~、
そんなものに頼らない。自分の頭で解決する。【才師】グレイはこうあるべき、という強い願望がミュラーの中にある。酷く失望し腹の奥からどす黒い殺意を沸かす。
要するに厄介ファンなのだ、コイツ。
「······自分からも質問いいですか?」
「もういい、もういいよ喋るな。憧れなままで死ねよ」
懐から取り出した短剣を、頭の上から振りかぶる。Lv.4で格上だとしても、例の怪物が持っていた大剣から造られた
グレイのアビリティで最も低いのは耐久。そして、ミュラーは彼より低レベルだが、この剣でなら関係なく殺せる。
刺そうとして──
「
「───ッ!?」
──止まる。
人が出していいようなものじゃない、底冷えするような純粋な──そんな視線を向けられた。それだけで動きと、呼吸が止まる。
「
今にも殺すぞ!って酷い目をしてすげぇ早口で語る。【
コイツも厄介ファンなのだ、要するに。
「貴方の研究テーマは【怪物×精霊】。団長氏達が戦ったあの怪物がそうなのでしょう」
「は、ははは、そうだ。あの怪物には精霊の──」
「
「──あ?」
「確かにアレは──いや、
「···?──!?」
グレイが立つ背後の空間に、ポッカリと穴が開く。魔法を行使した素振りはなかった。魔法?スキル?それが発明品であることをミュラーは知る由もない。
「な、な···な······」
液体のような、毛並みのような、穴から這い出てくる得体の知れないナニカ。全長は現段階でも5Mは優に超えている。
「なんだよそれぇ!?」
「ん?これは生物型の【世界崩壊装置】ッス。団長氏には見つかったら殴られるだけで済まないから絶対秘密なんですけどね♪」
這い出るナニカは、ゴポリ、と泡のような音を立てながらミュラーを目掛けて迫り来る。
「ヒッ、うわぁぁぁぁぁ!?」
そして、断末魔ごと呑み込んだ。彼は死んだのだ。呆気ない終わりである。
ナニカ改め【世界崩壊装置】を収納し、グレイは準備に取り掛かる。
「
【クベーラ・ファミリア】で
ヘディンをボコッた理由。鼻につくから。近くにいたから。以上。
【世界崩壊装置】。姿形が定まっていない全てを呑み込むやベー生物型(自立型)魔道具。モンスターと精霊を中心に構成しており、魔力でも電力でもエネルギーさえあれば半永久的に動ける。ヤバいスライムだと思って。