問題児集団を束ねてるのは間違ってる   作:新人作家

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生きてます。


第7話

 

 激戦での負傷がもう癒えた。だから今日が俺の退院日。それにしても器の昇華(ランクアップ)ってすごいのね(n回目)。予想だと一週間過ぎると思ったのだが、治療院に運ばれておおよそ五日で全快した。一週間も五日も誤差とは思うが、器の昇華に加え腕のいい聖女様がいるお陰で治りが速い速い。

 

 「と、言うわけで、お世話になりました」

 

 「······」

 

 自業自得とはいえ──いや自業自得だったかは不明だが──とにかくメルティの件があってから、すごい睨んでくるんだよなこの聖女様。正直入院中はずっと恐くてズキズキ胃痛に悩まされてたんだげども、胃が痛い!だから治せ!なんて、キリオスみたいに言い出せる度胸ないし、胃に穴開いたら開いたで退院日が遠退くから、気合いでどうにかするしかなかったんだよなぁ。

 

 まあ、久し振りに歩むお日様の下はそれを忘れさせてくれるほど、晴れ晴れするほど気持ちがいい。これから溜まりに溜まった書類仕事が待っていると考えると、すごく憂鬱な気分になるが、それはそれ。ずっと入院よりは断然マシだね!

 

 「おい、【宝神の守り番(ヤクシャ)】!貴様のとこのグレイに伝えておけ!『いい加減、貴様が調合する回復薬のレシピを教えんか!改宗でも可!』となぁ!!」

 

 この神は本当に···。

 

 「ジジイ様。例えあのアホ──グレイが作った物でも、レシピはうちの派閥の財産となりますし、回復薬は色んな店に卸して一つの商品として取り扱っております故、教えることはできません。また、グレイが居なかったら【クベーラ・ファミリア】がマジで詰むので改宗はダメですお失せくださいませ」

 

 「宝神(クベーラ)の眷属が、よもや宝の持ち腐を実行するとはどんな洒落だ?いや待てジジイ様ってなんだ!?お失せくださいってなんだ!?神に対して不敬にも程があるぞ!」

 

 うーむ、丁寧さを心掛けたつもりだったのだが、ロクデナシ(クベーラ)との対話の癖がでたか。だから口が悪いのはクベーラのせいなんですジジイ様。

 

 それとグレイに関してだが、

 

 『利益の何割かを貰えるんなら、何売っても別に構いませんよ。団長氏の判断に任せるッス』

 

 競争とか貢献だとか、アイツはそういうのにとことん興味ないから、研究費及び開発費の足しになるんなら別に、という感じである。そのため俺が好き勝手決められるので、需要があり尚且つ量産可能な物品を売り払って派閥の金として貯蓄している。

 

 グレイに限ってないとは思うが、レシピを世に公開して同じ作品を作ろうが自分を超えることはできないだろう、という余裕の表れだろうかとたまに考えてしまう。

 

 『ぎゃはははははは!!感度3000倍の媚薬ってなんスか!手の平で煽っただけの微風で死ぬじゃないスか!これ誰に試そうか!っぱ、団長氏以外いないっしょ!そうと決まればさっそく───あ、団長氏にナザレ氏こんにちは今日はお日柄も大変よろしぎゃああああああああ!!?』

 

 うむ。あのアホ(グレイ)に限ってそれは絶対ないな。

 

 

 

 

 

 

 代わり映えしないオラリオを、ボンヤリ眺めながら歩く。

 

 装備を着込んでダンジョンに向かう冒険者、自分の商品をアピールする商売人、キャキャ笑いながら走り回る子ども達に昼前から酒を飲む神···てあれうちの主神じゃね?知らない振りしとこ。

 

 やっぱ平和が一番だなぁ、としみじみ思うけど·······俺が堂々と歩いてんのに、何でアクションの一つ起こさないの?我、Lv.6になったんぞ? 

 

 それでも誰か一人くらい俺の噂をしてるだろ。暗殺計画企ててたり、あらぬ罪を被せて社会的に殺そうとしていたり。

 

 さあ、聴かせてくれ。聴かせてくれお願いします!

 

 「【覇王】がLv.8に······」「【猛者】と二強だったのに」「もはや"王"者は名乗れまいて」「【フレイヤ・ファミリア】超えか?」「いや人数差があるし」「でもよ、あの【色彩】がLv.7になっちまったんだぜ?」「それなら魔法で蹴散らせる···のか?」「ちっ、王族妖精(ハイエルフ)を慕わぬ忌々しい俗物が」「メルティたん······ハァハァ···」「なんにせよ、【ロキ・ファミリア】はもう終わりだな」「ああ、最大ならともかく、最強は【フレイヤ】か【クベーラ】のどちらかだからな」「ちくわ大明神」「誰だ今の」

 

 oh······

 

 研ぎ澄まされた聴覚で聴く限り、俺の噂はない。【覇王】だとか【色彩】だとか、ロキは終わりだとか言ってるがそれは抗争に発展するから止めてほしい。変態が沸いてるが、そこは気にしないことにする。

 

 「はぁ···」

 

 俺は自分の影の薄さに溜め息を吐いた。

 

 「【宝神の守り番】······いえ、コーネリウス・アイルゼンヴァハ。少しいいかしら?」

 

 「え?」

 

 「貴方に依頼があるの。協力してくれな──」

 

 「喜んで」

 

 「食い気味に来たわね」

 

 サングラスを掛けたいかにも怪しい(胸デカ)女神に誘われたので行ってきます。

 

 べべべ、別に声を掛けられたのが嬉しかったとか、胸がバインバイン揺れてエロいとか、そんな理由じゃないんだ──あ、ちょっ待っ、柔っ、エッッッッッッッ。

 

 

 

 

 

 【戦いの野(フォールク・ヴァング)】。

 

 バベル上階に住む女神フレイヤ本来の住処であり、彼女の眷属である【フレイヤ・ファミリア】が日夜殺し合いをしている戦場でもあるこの場所は、何人も寄せ付けぬと言わんばかりに殺伐としている。   

 

 そのため、好奇心旺盛な神々みたいな物好きでも、下手に近付こうとはしなかった。

 

 ······例外を除いて。

 

 「たのもー!!」

 

 「ちょっ、マジかこの神」

 

 グラサン掛けた(爆乳)女神と、それに付き従うように現れた同じくグラサンを掛けた貧弱そうな男。門番を神威で怯ませた隙に気絶させた不審者二人は、地獄の門をくぐって声高々に叫んだのだ。

 

 美神の眷属は門が開いたことに驚くことはなかったのだが(客人など興味がないために)、「たのもー!!」発言にようやく顔を向けた。そして、神々の言う道場破り、つまり宣戦布告の掛け声だと気付き、殺気を放つ。

 

 ちなみに殺し合いをしている理由は、女神の愛を独占したいからという、何とも頭が悪い理由からである。

  

 

 

 俺はこの状況に頭を抱える。

 

 退院日だというのに誰も迎えに来ず、街の住民はキリオスやらメルティやらの話で持ちきりだからか俺の噂を誰もしない。そんな中、俺を認知していた女神が居てくれたことに舞い上がり依頼を受けてホイホイついていったのだが──

 

 「【宝神の守り番】テメェ、何の真似だ·····?」

 

 「ランクアップしたらしいが······その程度で我々に勝てると踏んでの蛮行か、愚人」

 

 「·········ふひっ」

 

 あああああああああああ!!!?

 

 俺達の周りを取り囲むように殺気立つ冒険者達。中でも【女神の戦車】と【白妖の魔杖】は格段だった。怖すぎて変な声でた。

 

 「ふひっ、と言ったのか?」

 

 「笑ったのか?」

 

 「笑われたんだろ」

 

 「【覇王】【宝神の守り番】に殺されかけたんだからな、うちの副団長様と参謀様は」

 

 「「······ッッ!!」」

 

 馬鹿野郎煽る奴があるか。

 

 やベーよ、お前らもお前らでなんか反論しろよ。知ってるんだぞこっちは。怒りで沸点超えた人間は黙ることをな。でも襲いかからないってことはまだ大丈夫ってことだよな?それか、デメテル様がいるから制止(ブレーキ)が効いてるってことなのか?   

 

 「······」 

 

 当の本神(デメテル様)はなんか黙ってるし。

 

 ここは一つ、事情を説明しつつ当たり障りのないことを言って穏便に済ます!

 

 よし、GO!

 

 「──一日だけフレイヤ様を貸してください」

 

 「「死ぃねぇえええええええええええええ!!!!!!」」

 

 「「「「「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」

 

 「なんでだぁあああああああああああああああああ!!!?」

 




スキルによるダメージは、普通の怪我と違って治りが遅い。ランクアップによる回復速度の向上によって、僅か五日で退院できました。

たくさんの店に卸している。つまり、どこか一つの店だけにアイテムのレシピを公開するのは不公平だよね、てこと。全員に公開してもいいと思うけど、団長はう~んてな感じで悩んで公開してない。
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