先生の頭部に、一発の鉛弾がぶつかる
頭蓋が吹き飛び、中身が見える
ゲームでよく見るような赤黒いもの…ではなく、意外に明るいピンク色をしていた
ぐちゃぐちゃにくずれたそれの破片が、私の頬に当たる
生あたたかい、嫌な感触がする
それは、先生の死を知覚させるには、十分な出来事だった
「かひゅっ」
叫びそうになる…が、喉が空回りする
本当に怖い時は声が出せないというのは、どうやら本当らしい
膝が震え、体を支えられなくなり崩れ落ちる
全く接点のない初対面の私を助けてくれる、きっと優しい大人
後悔、罪悪感、自己嫌悪に支配される
何度も、何度も何度も頭の中で言い訳をする
ふと、顔を上げる
先生の頭から、脇腹から、腕から、脚から
黒い粒子のような、煙のようなものが出ていた
■
強い痛みを覚えながら起き上がる
「あ〜、痛い。すごく痛い。こんなことなら庇わなきゃ良かったか?」
「え…先生…?何で生きて…」
「亜人だよ、ニュースで見たことあるだろ?…というか何で皆銃持ってるんだよ、銃刀法はどうなってるんだ」
「あ、亜人?何言ってるんですか?」
「キヴォトスの外では常識なのかもしれませんが…ここキヴォトスでは亜人、と称される存在は確認されておりません」
「銃も、キヴォトスでは携帯をするのが当たり前とされています」
「そ、それより!先生は大丈夫なんですか?」
「問題ない。僕は、不死身なんだ」
■
「あの不良たちを倒してシャーレの部室に行けば良いんだよな?」
「はい、その認識で問題ありません」
「それなら、僕が戦術指揮を執る」
「えっ!?」
「先生ご自身が、ですか?」
「しかし……」
「さっき言っただろ、死なないって」
「ただでさえ人を殺したというのに、その死んだ人間が生き返ったんだ」
「今不良たちは混乱に陥ってるはず。僕が前線に出て混乱を広げ、そこを叩く」
「そんな戦い方をすれば、先生は…」
「数回…いや、数十回か死ぬだろうな」
「そんなの許容出来ません!」
「それじゃあ何か良い策があるのか?」
「君たちだって銃で撃たれればひとたまりもないハズだ」
「僕の命は君たちのよりもずっと軽い、掛けるならこっちだ」
「え?」
「は?」
「…先生、私達別に銃で撃たれても特に問題ありませんよ?」
「はぁ…?」
■
「その輪っか…ヘイローのお陰で耐久力が飛躍していると…」
「はい、そうなります」
「マジかよ…いよいよ本格的に無駄死じゃないか、庇わなきゃ良かった…」
「何か言いました?」
「いや、何も」
「まあ、そういうことなので先生は前線に出なくて大丈夫です!あとさっきは助けてくれてありがとうございました!」
「どういたしまして…なんか怒ってるか?」
「そりゃ怒りますよ!死なないからって命を粗末にしないでください!目の前で死なれたら私たちも目覚めが悪いです!」
「そうか、じゃあ極力死なないようにする…が、戦術指揮はさせて貰うぞ」
「えぇ!?」
「先生、さっきの話ちゃんと聞いていましたか!?」
「分かってる。後方で指揮をするだけだ」
「それなら問題ないだろ?」
「まあ、それなら…」
「分かりました、これより先生の指揮に従います」
「生徒が先生の言葉に従うのは自然なこと、ですね。よろしくお願いします」
「よし!じゃあ行ってみましょうか!」
■
「確認できる範囲で敵は10人、目前に2人、以降4人、4人と続いている」
「各個撃破を意識して行くぞ」
「「「「了解(しました)!」」」」
「早瀬、シールドを張って前に。守月と羽川は早瀬の後ろから向かって右の不良から倒してくれ」
「行きます!攻撃が私に命中する確率は…極めて低い!」
ユウカが前に乗り出し、バリアを張る
不良生徒2人は彼女を集中砲火する…が、後ろの2人に成すすべ無く倒される
「シールドが回復するまで早瀬は不良を肉壁に、2人はそれぞれ遮蔽に隠れて守月は手前に閃光爆弾を、羽川は奥の不良を狙撃してくれ」
「に、肉壁!?」
「早く」
「わ、分かりましたッ!」
「天罰の光を!」
前2人の不良が視界を奪われ、その隙にユウカに倒される
「おい!2人ともやられちまったぞ!」
「マズい、こうなったら“アレ”の連絡をして後ろに合流を…!」
「逃しません」
ハスミの撃った弾丸が逃げようとした不良を捉え、一撃で気絶させる
「すみません、1人逃しました」
「その程度なら問題ない。早瀬、肉壁の耐久力が危ういから交換しておけ。念の為火宮は注射器を」
「…何というか、先生容赦無いわね」
「一度自分を殺されているんです。この位しても許されるでしょう」
「余計なこと言ってないで早く進め」
「分かりましたよ…前3人、後ろ2人ですね。どうします?」
「早瀬は十分接近してから肉壁を前3人に向けて投げて揺動を、そのまま突っ込んで各個撃破。守月は後ろ2人に閃光爆弾を、次いで羽川の狙撃で各個撃破だ。火宮は守月に注射をしてくれ」
「分かりました…行きます!」
「腰を抜かさせてあげましょう!」
「目標補足…撃ち抜く!」
■
「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします」
「……やっぱり、そうよね」
「先生の指揮のおかげで普段よりずっと戦いやすかったです」
「なるほど…これが先生の力。まあ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か」
「それでは次の」
瞬間、地鳴りと重機を動かすような重苦しい機械音が響く
「……うん?この音は…」
「気を付けてください!巡航戦車です!」
巨大なクルセイダーが路駐してある普通車を踏み潰しながら、大きな砲塔をこちらに向け、唸りを上げていた