ゼロから始めさせない為の異世界生活?   作:萎える伸える

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 初めましてこんにちは。思い付きで手を出しては読み直して駄作に感じては消す作業を繰り返しています作者です。今回も神作は生まれないでしょう。誠に喜ばしいことです。


まずは寿命を延ばす手段から探しましょう

 

 

『――――』

 

「あーわかったわかった。殺せばいいんでしょ? わーかってるって、ちゃんと殺すよ。――せっかくこの世界に招いて貰ったんだ。それくらい片手間に熟してやるさ」

 

 真っ白い空間。陰すらもない神秘的な場所で一人男が呟いていた。音にならぬナニカの声をその者だけが聞こえているようだった。その内容はひどく物騒なものだったが、不思議と男の声音は明るく、それどころか満ち溢れた歓喜を感じさせるものだった。

 

「あーくそっ。今からわくわくが止まらないよっ。あっちに着いたらどうしようかな。エミリア、レム、ラム、ベアトリスにガーフィール、オットーにロズワール……会いたい人ばっかりだ」

 

 並べ立てられる名前には憶えがある。それは【Re:ゼロから始める異世界生活】と呼ばれるラノベに出てくるキャラクターの名前だ。それは所謂二次元に存在する者たちであり、当然会うことなどできない。しかし男は平然と、それも確信をもって彼らと出会おうとしていた。

 

「あ、そういえば転生する時代って……あ――おい!?」

 

 男が疑念を浮かべてすぐに周囲を漫然と眩い光が包み込んだ。視界が白に染まり、目の前も自分の存在すらも見えなくなったところで、最後に足掻くように男は手を伸ばした。……だが、光が収まったところに男の姿はなく、あるのは影なき純白の空間だけだった。

 

『――――』

 

 何もいないはずのそこに、誰かが佇んでいるような気がした。

 

 

◇◆◇

 

 

 転生して一日目。

 

「あぅ……」

 

 喋れねぇ。

 赤ん坊だからそれは当然だとして、はたしてこちらの言語をまともに話せるのだろうか。

 英語もまともに喋れない自分には難しいように感じて、今から言葉を学び直すことをどうにも億劫に感じた。

 

 

 転生して一週間。

 

 

「あぅ……」

 

 やっぱり喋れない。

 だが、

 

「ああ、おしめを変えましょうね、よしよし」

 

「あぅ……」

 

 母親の言葉は聞き取れるようになった。

 どうやら■■語と大差ないようだ。

 これ幸いと少しの安堵をしながら自分は屈辱とともに下を剥がれた。

 

 

 転生して一か月。

 

 

「あー!」

 

「あら、どうしたの? 今日は随分と嬉しそうね」

 

 密かに喜んでいたつもりだったが、母にはバレてしまったらしい。

 ――今日、魔法を使えるようになった。

 簡易魔法だ。ただ光を灯すだけの魔法。

 しかし、■■生まれの平々凡々な自分にはただそれだけのことが嬉しく感じた。

 

 ――ああ、『リゼロ』の世界に生まれたんだ。

 

 そう思った。

 

 

 そして、転生して十年が経った。

 

 

◇◆◇

 

 

「……ふぁあ」

 

 賑やかな街中を歩いている少年がいる。

 この国ではそれほど珍しくない黒髪に黒瞳。気になるのは着崩した白シャツの下に垣間見える強かな筋肉だった。最近はスラム街などが問題になってきていてスラムの民に対する周囲の目は厳しい。それも商人のものともなれば相当だ。

 そんな情勢の中、着崩しただらしない格好でこの商い通りを歩くことは不用意な行為と言える。そんな見るからに怪しい者と目利きのできる商人は商売をしない。そんな恰好で通りを歩くことは冷やかしに近いが、しかし……

 

「おお、〝ゼロ〟の坊ちゃん。今日は一人ですかい?」

 

「ん……ああ、林商の。ええ、まぁ。今日はなんとなーく色んな店を見て回る予定です」

 

 黒髪の少年に対するとある商店に立つおっちゃんの反応は好ましいものだった。

 それからも彼は至るところで声を掛けられる。

 調子はどうだの、新商品はまだかだのと道行く先で問われる。

 それらに適当に返しながら少年は一通りこの通りを見て回った。

 その後、商い通りの終点であり広場にてその中央にある噴水に腰を下ろした。

 

「……発展、遅れてんな」

 

 そうして呟いたのは、この世界の文明の発展度合いへの苦言だった。

 

「微妙に和風っぽいのは結構だけど、それにしたってぼっとん便所はない。本当にない。……早く水洗式便所を開発しないとな」

 

 少年は商人であり開発者だった。

 異世界のありとあらゆる知識を駆使してアイデアを出し、それを異世界の技術力に落とし込んでこの国を発展させる。齢十である彼が生みだした異世界由来の商品はすでに十を超えている。それによって財布が潤った商人、生活が富んだ民は数知れない。

 彼が行ったのはアイデア出しと魔鉱石の研究だ。

 

「魔鉱石を電池に見立てて適当に回路組んで色々作ってみたけど、未だに水洗式トイレを再現できないんだよな……あれは水で流すとかいう以前にそもそも下水道の整備が必要で……そんなの金のない片田舎な俺の街じゃ早々できるはずもない」

 

 少年の暮らす街はカララギ都市国家の外れにある片田舎の街だ。田舎と言えど商人の国である以上、ある程度商売は盛んだが、それでも技術の発展具合はそれほどでもない。

 

「貴族のいるルグニカやら皇族のいるヴォラキアならそれもできるんだろうけど……ここは良くも悪くも庶民的な町で、そういう風習の国だからな。それこそ昔の■■みたいなものだ」

 

 生まれた時から水洗式で生きてきた少年からすれば考えられないことだが、世界は少年を中心に回っているわけじゃない。一人の男の知識と行動では変えられるものもあれば変えられないものもある。至極当然の摂理だ。

 

「ま、そんなことはどうでもいいんだ。もう割と慣れたしな。そんなことより……」

 

 少年は一つの古ぼけた新聞を買い取った。

 それを広げてとある欄を眺めると、そこにはこんなことが書いてあった。

 

『魔女封印から()()()、封印の祠はいま』

 

「……うん、百年前だね」

 

 それがどういう意味か、わからないものはおるまい。

 原作では四百年前と言われていた『嫉妬の魔女の封印』、それが二日前に刷られた新聞には三百年前と書いてあった。新聞を買うようになって一年。何度も確認しては目を逸らしてきたその事実を、ぼけーっとほのぼのと町を歩いた今日ようやく受け入れられるようになった。

 

 

 ――どうやら原作の百年前に転生したようである。

 

 

「えぇ……スバルが来る百年前って、いくらなんでも時間空きすぎでは? ――そりゃあ『死に戻り』を持ってるあいつを確実に殺す為の準備期間が必要とはいえ」

 

 そう淀みなく明かされたのは、彼がこの世界に生まれ変わる為の条件である、異世界からの来訪者『ナツキスバル』の殺害についてだった。

 

 





 何事も挑戦だよね
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