色々とくだらない理由とか事情とかあって大学を諦めた河灯 泉だよ。
イベントが始まるぞー!
頑張るぞー!
……まず人生を頑張りましょうか。
ともあれ。
久々に書いたので勘が戻らないというか、忘れちゃってたというか。
それでも「かまわねぇさっさと書いて読ませろ!」って方は下へスクロール。
どうぞ。
「演習?」
「あぁ、ラングがどれだけ戦えるのか俺も気になるしな」
「楽しみね。実戦しかやったことないし」
「……そう、か。付いて来てくれ」
「はーい」
それから兵装を再び身に着けて外に連れ出してもらう。
なぜかもう普通に歩けるようになっていた。そのぶんどこかしら別の情報処理速度が落ちたけど。
「本当に水上機はいらないのか?」
「補助アームの力加減がまだよくわからないからいいよ。壊すと悪いし」
「その……オッゴ、だったか。それは開発できないのか?」
「妖精さんたちの話では少し難しいね。不可能ではないって言ってたけど。大気圏内重力下じゃただのパンジャドラムもどきにしかならないだろうから、とりあえずは様子見かな」
ホバー機能を追加できれば水雷艇に近い運用もできそうだけど。
「あ、そういえば。艦種はどうすればいいの?」
「補給艦か工作艦……か?」
「ちょっと手を加えれば水上機母艦にもなれるけど」
「それは追々決めるとするか」
「はいです」
なんて会話をしていたら着いた。
演習場だ。
5km四方のエリア、その四隅に結界を張るブイが浮いているけど裸眼での目視は難しい。私? 超余裕で揺れ具合すらもくっきりと見えますが?
ここで受けたダメージは入渠せずとも元に戻るシュミレーション的な不思議技術が使われているそうだ。妖精さんの科学力は理不尽に不条理だと思う。
「利根、筑摩。この子が新しく仲間になったラングだ」
「うむ。よろしく頼むぞ!」
「どうぞ、よろしくお願いしますね」
「よろしくねー」
姉妹だろうけど……どっちが姉なのかな。よくあるひっかけ問題を前にしているような微妙な気分。
「戦艦組は非番だったから、二人にはラングがどれだけ戦えるのかを確かめる手伝いをしてもらう」
「しかし、見たところ主砲も副砲も見当たらんが……まさか白兵戦紛いの肉弾戦をするとは言わぬよな?」
え、殴り合いは駄目っすか。
「……えーっと」
30mmガトリング砲は弾かれるだけだろうし、対艦ミサイルは補給ができるか怪しい。だからと言ってメガ粒子砲をぶっ放したら危ないのでは。
「オーバーキルしても大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
こっそり背中に乗り込んで計測機器を準備している妖精さんに確認すると「へーきです、たぶん?」とのこと。たぶんって……いいのかな。
「それじゃ、指定位置に向かってくれ。最初は運動性能の確認だから利根と筑摩はゆっくりでいいぞ」
「わかったのじゃ」
「了解しました」
二人は仲良く手を繋いで水平線の彼方を目指して進んでいく。ちょっと羨ましい。
私は他の姉妹と会ったことがないから。
「らんぐさんのーほんきーみてみたいー?」
「いいよ。私も全力を試してみたいと思ってたから。あ、提督は危ないから下がっててね」
提督が私から十分離れたことを確認すると、意識を内なる制御関連のマニュアルに向ける。
(安全確認、よし。後部ブースター燃焼開始……脚部スラスター調整中)
ぼぅッ!
軽く吹かすだけで後ろの温度が跳ね上がる。これで焼き芋やったらどうなるかな。
……消し炭になるだろうなぁ。
「出力問題なし、動力炉……異常なし。システム、オールグリーン。バランサーは……七割くらいか。これは動きながらの微調整が必要かな」
「ラング。どんな感じだ?」
「大丈夫。度肝を抜いてあげられるよ」
「ははっ、そうか。ならば見せてもらおうか、公国の
「なんだろうすごく馴染みのあるセリフ……」
なんて軽口を交わしている間に、機関が温まってきた。
「よし、まずは巡航速度で真っ直ぐ進んでくれ」
「りょうかーい! ビグラング、発進!」
「いぐにっしょんっ!」
バゥッ!!
水柱を後ろに置き去りにしてぐんぐん速度を上げていく。
「ふぁ~、やっぱりこうして走ると風が気持ち良いわぁ~!」
まるで長年地球にいたかのような自然な気分。
大気なんてついさっきまで知らなかったはずなのに。
まぁ、悪いものでもないから、気にしない気にしない。
「妖精さん、いまどのくらい?」
「やく35のっとですー?」
「あはははははは! うん、全然わかんないや!」
それ、宇宙速度でどのくらい?
(時速換算、約70キロ?)
……ごめんやっぱりよくわかんないや。
「ねぇ提督。これって速いの?」
『あー……うちの最速くらいだな、追いつけるのは』
頭に被っているビグロの耳あてに内臓されている通信機から提督の声が聞こえる。
なんだか少し声が震えているような?
「あ、速いんだ」
『それで巡航速度なのか?』
「そう、じゃないかな。まだまだ出せるよ!」
『ん……そうか。無理はしないように、全力を出してみてくれ』
「らじゃー!」
無理なんてしない。
ただ、全力を出すだけさ。
(エンジン全開、フルブースト!)
――その瞬間、音は私を見失った。
「あっ」
そして次に、私は方向を失った。
「あばばばばばばばbqwせrてゅじこpッ!?」
ぽーんぽーんばっしゃばっしゃごろんごろんざぶざぶと傍から見ていたらさぞや愉快なことになっているんだろうなぁ、なんてどこか落ち着いて考えながらも私の視界はブラックアウト。
海に沈まない仕様でよかったようなよくなかったような。
意識が落ちる前に聞こえていたのは妖精さんの「きゃーきゃー」という緊張感のない悲鳴だった。
『おいラング!? どうした、なにがあった! 返事をしろ! 誰かー! メディィィィィック!! 明石さーん!』
『……のう、筑摩や。なんだか我輩らの出番が消えたような気がするのじゃが』
『きっと気のせいですよ。ええ、たぶん』
【あぁもうバランサーがまだ完全じゃないって言ったばかりじゃないか! まったく、このおてんば娘は……えぇいこうなったら僕も早く動かないといけないな……】
……誰の声だったか。
それはとても懐かしい声。
いや、私の意識でつい数時間前まで一緒だった人……。
……中尉。
まだだ! まだエタらんよ! ……たぶん!