俺達友人A.B.C.D.E   作:I'mあいむ

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本当に久し振りの更新です。新生活で色々忙しかった………書かなすぎて拙作となりましたがどうぞ。


Bの苦難

この世には友人キャラというものがある。

 

主人公が居て、ヒロインが居るような、そんな物語において主人公の隣で騒ぐ人達。

 

「三浦君」

 

知的で、主人公の恋愛に興味はなく、ただここぞって時に背中を押してくれるしてくれる存在。

 

「雪野さん」

 

だけどその友人キャラがただのピエロだったらどうだろうか。キャラとしての仕事をこなし、神の手先として動き続けるだけの奴隷。恋愛物語の裏にある戦いが、彼らの日常の外側があるとしたら、それをどう思うだろうか。

 

「「ふふふ」」

 

これはそんな友人キャラに転生した者達の、日常をお送りする話だ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「なあ昨日の音───」

 

「なんか銃の────」

 

ガヤガヤと騒がしい日常の中、重力が増すかのような、倦怠感に似た湿気が纏わりつく。それでもホームルーム前の教室はやけにうるさい。この年代のガキ共はまだ体力が有り余っているらしい。

 

「なあ一真」

 

「……何?」

 

チラリと読んでいる本から視線を前に移す。すると肩肘を付いている男が見える。

 

俺に話し掛けて来た男の名前は三浦康生。この世界に数多く存在する主人公の1人。顔は俺からすればイケメン。分かりやすく言えば、漫画やアニメに登場するような、二次元特有の整った顔というやつだ。

 

成績はそれなりに優秀、スポーツもそこそこ。ただこれと言って特徴の無いこいつは、周りからは冴えない奴という評価らしい。俺の前世ならモテモテだったろうに。物語的にはその方が都合が良いんだろうな。

 

そんな冴えない主人公の友人キャラであるのが俺こと場次一真。前世で死に、神によって転生させられた人間だ。三浦と比べても更に冴えない顔。眼鏡とそれを隠すような前髪の暗そうなオタク、それが俺だ。それでも笑顔を頻繁に浮かべるようにはしているし会話自体は普通。勉学は前世のお陰もあって優秀な成績を納めている。言ってしまえば暗いが知的、他からの評価はそんな感じのところだろう。

 

「……あー、うーん」

 

「……話が無いのなら読書に戻っても良い?」

 

「いや待ってくれ!」

 

まあ、この飾った口調もその印象を加速させる要因だろう。こいつの友人キャラを命じられた時にこの口調にせざるを得なかったからな。

友人キャラというのは命じられた主人公に合うような、物語に求められるような性格にその都度変えなければならない。時に愚直な馬鹿に、時におちゃらけた女好きに、時に根暗なオタクに、そして時に知的な誰かになる必要があるのだ。

 

二つ三つを同時に受け持つ時は何度も性格を変更しなければならない。しかもそれを互いの主人公に気付かれてはいけないのだから、気苦労は絶えないものだ。

 

「実は最近、気になる人が出来て……」

 

「色恋沙汰?聞く相手を間違えてるんじゃない?それじゃ」

 

「だから待てって!?」

 

まだ何かを言うべき時ではない。俺の役割はこいつの背中を押すこと。重要な場面にならない限りは後ろで眺めていれば良い。

 

「はぁ……それで話って?」

 

「おっ、やっと聞く気になったな」

 

……どうでも良い奴の惚気話を聞かされて嬉しい人間なんてこの世にいるか?

 

情報は出来るだけ集めておいた方が良いから聞くが、面倒なことに変わりはねえんだよ。

恋愛なんて、俺自身は一度もしたことが無え。他の奴らが色恋沙汰をしている時も、俺は只一人で眺めていた。どんな時も、傍観者だった。

 

「その……雪野さんなんだけどさ」

 

「へぇ、雪野先輩」

 

知ってるさ。お前がそれを言う前から、ずっと好きだったことも。気になり始めたのも最近なんかじゃなくて、一年くらい前からだったことも。

本当、分かりやすい反応するよな。

 

「ああ、そうなんだよ。それでさ、今度デートに誘おうと思うんだけど……」

 

実際はもう誘ってるのも知ってる。だから相談したんだろう。相手はあの雪野明里、か。三年の中で最も有名な先輩だ。恋愛のれの字も知らないような俺でも分かる。美人で器量が良いとはああいうことを言うんだろうな。

 

明るく、誰にでも分け隔てなく、そういう人。人気なのも頷けるというものだ。

 

しかし本人に関係なく、彼女の後ろには黒さがある。噂は絶えず、火のない所に煙も立たない。それをどうにかするのは誰かって、嫌な話だ。

 

「成る程、頑張って下さいね」

 

「いやそうじゃなくて」

 

「……はあ、つまり?」

 

「デート、何処に行ったら良いと思う?」

 

「………さっきも言ったけど、聞く相手を間違えてると思うんだ」

 

本当はアドバイス程度なら出来る。知識だけなら前世の頃からいくらでもあるから。周りの話を聞いていれば自然と身に付いてた。

だが俺に出来るのは応援だけだ。それ以外にすることなど無い。

それだけはいつも変わらない。

 

「……そうだよなあ」

 

お前が今まで恋愛をしたことがなかったのも知ってる。しかしこれから知っていかなきゃいけないんだ。お前は、主人公だからさ。

 

「マジで、どうしよっかなあ」

 

なあ、お前がこれを知ったら、どう思うんだろうな。

 

湿り気の酷い、梅雨の苦難だった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ねえねえ」

 

「……はい」

 

「三浦君ってどっちが好きだと思う?」

 

「……はぁ、知らないよそんなこと」

 

「えー!三浦君と仲良いんじゃないの~!?」

 

本当、どうしてなんだろうなあ。隣の家のお姉さんが、今や何処ぞの物語のヒロインとは。俺が普通の男子学生だったなら3日は飯が喉を通んねえな。

 

現状を整理しよう。

 

俺が担当している主人公、三浦康生。俺の友人だ。

そしてそのヒロインが雪野明里。隣の家の姉ちゃんだ。ガキの頃から付き合いがある。

 

そして現在、その主人公とのデートの為の服選びに来たと。そういうわけだ。

 

なんだこれ。

 

「ほら、これとかどう?」

 

「あー、きっと気に入るよ。彼なら何でも」

 

二週目の人生。二週目の学生生活。二週目の思春期。奇跡的にそうだったから良かったものの、ここまで美人の姉ちゃんが同級生に取られたなんて考えたらな。脳破壊も良いところだ。

 

「なにそれ!そういうこと言ってるんじゃないよ!」

 

「はぁ……なら、これとかどう?彼は清純そうなのが好きそうだけど」

 

「あー、うーん………」

 

「?」

 

何をそんなに悩んで……え高ッ!?なんだこれっ!?こんなすんのか最近の服!?

 

これ一つで二万かあ……女性の服は高くつくとは思ってたが……仕方ねえな。

 

「取り敢えず着てみれば?」

 

「え?あ、うん、そうするね!」

 

いやはや、まさかそこまでするとはな。まあ、仕方ないか。大体お洒落をするってのは金がかかるもんだし。………とはいえなあ、ここまでするとは。俺の時代とは違うな、全く。

 

「おー、似合ってるんじゃ?」

 

「まあ、そうだね」

 

やっぱ値段が引っかかるんだろうな。気に入らない訳じゃあないんだろう。

 

予想通り似合ってるしな。……まあ、この顔なら何でも似合うか。歯切れは悪いがにやけてるのが見える見える。

 

「じゃあ次はどうするの?」

 

「え?」

 

「取り敢えず一通り見たし、買うのはまた今度で良いでしょ。悩むだけ悩めば?」

 

「そっか……うん、そうする。あ、一旦お手洗い行ってくるね」

 

「はーい」

 

そう言って遠ざかっていく背中が見えなくれば、俺も用事を済ませねばならない。

 

ヒロインの恋愛を応援するのも友人キャラの仕事だ。隣の家の姉ちゃんへのプレゼントともなれば尚更だろう。

 

「…すいません、これ包んで貰えますか?」

 

…………高えなあ。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「ここに居て良いの?君」

 

暑い暑い夏の日。日も暮れた祭りの夜。俺は、項垂れているそいつに話し掛けた。

 

「え?…一真?」

 

活気で溢れて騒がしい筈の喧騒が、人気の無い神社からは遠く聞こえる。

 

「うん。それで、どうしてこんなところに居るの?」

 

「……それは………よく分からない奴らが来て、雪野さんが行っちゃって、それで」

 

よく分からない奴らなんて、そんなこと無いだろ。察しはもう付いてる筈だ。ここら辺じゃ有名な話だろ。

 

「そうじゃなくてさ」

 

「え?」

 

「そういうことじゃなくて、別に事情を聞きたいんじゃなくて……」

 

やりにくいんだよなあ、こういうの。スパッと言えるような性格のキャラが良かったんだが、生憎と求められてるのは違うらしい。

 

「何が言いたいんだよ」

 

「だから、あー…………」

 

「………」

 

「…君が居るべき場所は、違うんじゃないかって思ってさ」

 

友人キャラの役目は、主人公の背中を押すことだ。お前らが踏み出せない一歩を、背中をひっぱたいてでも進ませること。損な役割と言えばそれまでな、そんな仕事だ。

 

「……だからって、どうしろってんだよ。もうどうしようもないだろ」

 

「察しは付いてるんじゃないの?あの人の噂も、この町で有名なあの家も」

 

「……それは」

 

点と点はもう線で繋がっているだろう。ただお前は行きたくないだけなんだ。何か理由をつけて躊躇っているだけ。それだけだろ。

 

「行ってきなよ。行ってみれば、変わるかもしれない」

 

「………」

 

これでも駄目なら……少し痛いぞ?

 

「……………はぁ……ほら!立って!」

 

勢いよく背中を叩く。全力ではなく、少しだけ力を込めて。

 

「痛って!?何すんだ!」

 

痛いだろうなあ。昔から人を殴るのは慣れてるんだ。こんなところで悩んでるお前が悪いんだよ。

 

「らしくないことしてる暇は無いんだ。待ってる人がいるんだからさ」

 

こっちは自分の命がかかってるんだ。行って貰わなきゃ困るし、成功しなきゃ死ぬんだよ。お前をウジウジさせる理由なんてこれっぽっちも無い。

 

「!?……そうだな。そうだよな!こんなに考えてる暇があるなら俺は…………分かったよ、行ってくる!」

 

「ああ、行ってらっしゃい」

 

さて、ここからが仕事だ。俺のやるべきこと。その大詰めとなる。

 

雪野明里の家はカタギでなはい。所謂ヤ○ザだ。

この町でも有名な、ここら一帯を縄張りにしている奴ら。それなりに敵も多く、聞く噂の中には黒いものも混ざっている。

 

最近はそれが特に酷い。どうやらマフ○アだかなんだかと抗争中だとのこと。勿論関係のある連中は狙われるし、深夜になったら銃声が聞こえることも時折ある。

 

そんとこの組長の一人娘、お嬢ちゃん、それが雪野明里だ。

 

ことの経緯は単純。敵対組織に拐われたってとこだろう。それをどうにかする為に動くヤ○ザと、このアドバンテージを上手く活かしたいマ○ィア、そして雪野明里を救おうとする主人公。

これは三つ巴と言っても良いのか?

 

きっと主人公は上手くやるんだろう。そういう筋書きなんだろうから。そこまで俺がサポートせねばならないのなら、俺の人生はここまでだ。まあ、何とかなるだろう。

 

それにしても、何の縁なんだろうな。そんなところの隣に住もうと思った今の両親も、こんな状況を自分で作って楽しむ神の考えも理解出来ない。

 

ただ一つ確かなのは、背中を押したのなら後始末もするべきということだ。

 

「クソッタレ……」

 

生き残れるのか。それが分からねえのが一番の問題だ。

 

相手の数と戦力の正確な把握は出来ていない。不安しかないが、やるしかないのは変わらないしな。

 

「ああほんっと、クソみてえだ……」

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「…………成る程、それで二人は愛でたく結ばれたと」

 

今日もまた、日常が回る。少し暑さの落ち着いたホームルーム前の教室は、もう蝉の音も聞こえないのに騒がしい。

 

「む、結ばれ……うんまあ、そう、だね」

 

「そうっ、すね……はい」

 

何を恥ずかしがってるんだこいつらは。もう付き合ってる癖に今更だろうが、全く。

 

結局、俺は無事に生き残った。連日続いた抗争も終結させ、彼らも結ばれた。神の求めるハッピーエンドとはこういうものだろう。俺の仕事は果たした筈だ。

 

「へー、じゃあもう良い?」

 

「え?」

 

「それだけ?」

 

「は?逆にこれ以上何がある?」

 

「「………」」

 

もうこれ以上こいつらの話は聞きたくないものだ。興味の無い奴らの惚気話など堪ったもんじゃない。そうでなくとも色々うんざりしているのに。

 

「大体、人の惚気話なんて聞いて楽しいとでも?こっちは最近寝不足でストレスが溜まってるんです。それともな」

 

「ああ!分かった分かった!ごめんって!」

 

「なんか、申し訳ないことしちゃったみたいね…」

 

全くだ。お前らの後始末にどれだけ時間と労力がかかったと思ってる。危うく死にかけたんだぞ。

 

「そう思うのなら、さっさと先輩も戻ったら?そろそろ時間も来そうだけど」

 

「え?あっ本当だ。じゃあ私は戻るね。また後でね、三浦君」

 

「はい、また後で」

 

俺はまた視線を落として本を読む。文字の羅列を追って、少しでもこのクソッタレな現実から逃避するのだ。

 

そうすればこの喧騒も空気に混じって消えていくだろうから。

 

「そういえば、その怪我どうしたんだ?結構酷そうだけど」

 

「……転んだんだよ。盛大に」

 

巫山戯た世界だ、全く。

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