心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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10話 打ち上げとエルフ……大臣?

 

 

 

 

 

 リムルが体の中で生成した長剣を納品し終えて皆で一息ついていると、カイジンさん達がニコニコ顔で此方に近寄ってくる。

 

「リムルの旦那のお陰で無事に納品できたんだ。ご馳走させてくれや」

「打ち上げ?」

「良いよそんなの」

 

 リムルには味覚がないからなぁ。ご馳走と言われても特に嬉しくはないだろう。

 ちょっと面倒くさそうに渋るリムルに、他の面々がそうだという感じの顔で何かいい場所を思いついようだった。

 

「綺麗なお姉ちゃんもいっぱいいるからさ! エルフの子がやってる店なんだ」

「そそっ、若い娘から熟女まで!」

「……(コクコク)!」

 

 そう話を振られた途端にピタリとリムルの動きが止まって、スライムボディの片側が耳の形に大きく変わる。

 

 ――アレは絶対に無意識に変わってるね。

 

 ゴブタは見るまでもなく、嬉しそうな顔でリムルに詰め寄っている。

 

「あ~、なんだ……飯は本当にうまい店なんだ……ちょっと女性が多い店だが」

「ほぇ? 別に問題ありません」

「そ、そうか」

 

 何故かは知らないけどカイジンさんが言い訳っぽく自分から目を逸らしながら言う。

 おかしい、別に表情には出ていないはずだし。前世では男だったし男が好きってより女の子の方が良いんだけどな。

 カイジンさんには、自分が不機嫌になっているように見えたのだろうか。

 

「ウィン様はそういう事に寛容なお方っすから」

「まぁウィンもむさ苦しい男よりも、綺麗どころの方が好きだろうしな」

「そうなんすか⁉」

「理解が深いんだな、お嬢ちゃん」

 

 どうしてもちゃん付けされて、女の子って感じの子供に見られる事になれない。

 

「ウィンで良い……お嬢ちゃんはヤダ」

「あ~……お嬢じゃあダメかい? どうも名前の呼び捨てってのは慣れなくてな」

「ちゃん付けじゃなければ……別に良い」

 

 色々と驚かれながらも、カイジン達は馴染みのお店なのか足取り軽く自分達をお店の方へと案内してくれる。

 リムルとゴブタなんかは楽しみ過ぎて鼻歌交じりにカイジン達の後を追っている。

 

 女の子になるとこういう微妙な視線も向けられるんだな。

 前世の事を知ってるのはリムルとヴェルドラさんだけだし、仕方ないんだけど。

 

 

   ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

「「「「いらっしゃいませ――!」」」」

 

【うひょ――――⁉】

【やっぱり綺麗な人や可愛い人ばっかり】

 

 カイジンさんの言っていた通りに、自分とほぼ変わらない背丈の子から綺麗なお姉さんまでエルフというだけあって、整った顔立ちに綺麗な肌をしている。

 

 お店的にもアレなのか、女性たちの服装は薄着で肌の露出度が高い。

 

「うわぁ、可愛い!」

「スライムだぁ!」

 

 リムルはお店の女性達に大人気だった。

 色んな子に抱きしめられている。本人もすっごく嬉しそうにしながらエルフさん達に身をゆだねながら、全身で、何かを堪能しているようだ。

 

「ふふ、こういうお店は初めてよね。ご飯も美味しいから食べて食べて」

「魔法使いさんなの⁉ その年で凄いね!」

「ん? ん~? その様なモノ、かな?」

 

 自分も同年代っぽい子達から詰め寄られて話がマシンガンの様に飛び出してくる。

 ご飯は文句のつけようが無い程に美味しいから、別に気にならない。

 

 ――というよりも、こっちの世界に来てからまともな料理を食べた事がなかったから、それに感動しているだけかもしれない。

 

「えーと…… 楽しんでくれてるみたいでなによりだ」

 

 カイジンさん達が羨ましそうに自分とリムルを見てくる。

 

「……っ⁉ はぁ、あの……おバカ」

「どうしたの?」

「ふふ、別に大丈夫よ。こういう手合いは慣れっこだからね」

 

 妙な気配が漂ってきたから弾き返したのだが、その妙な気配はリムルの「魔力感知」であった。エルフの子達に全力で色々なラインを見ようと頑張っているらしい。

 ただ、彼女達は強かにもエルフであるという事だろう、絶対に見られないラインを熟知しているようで、必死になって探ろうとしているリムルを上手く躱している。

 

【はっ⁉ あ、いや、その。すまない】

【羽目を外し過ぎないように…………次は、処すよ】

【りょ、了解であります‼】

 

 自分に「魔力感知」を弾き返されて、ようやく我に返ったらしい。さすがに自分の方にも探りを入れてくるとは思わなかったが、無意識下だったようだ。

 

「いや本当、旦那には感謝してるんだ、お陰でドワーフ王への面目が立つ」

 

 こうしてドワーフとエルフが仲良くお酒を飲んでいるのをみると、本当に一緒の国で仲良く暮らしているのだなと分かる。

 もう殆ど宴会的なノリになってきているけど、楽しそうなこの空気は実に良いと思う。

 

 自分はバーカウンターの所でチビチビとカクテルを飲んでいる。本当はお酒を頼んだのだけれど、お姉さん達から言い笑顔でカクテルを勧められ、子供でも飲めるモノを出されてしまった。

 

 ……まぁ、美味しいから良いんだけどね。ここは子供らしく騙されてあげよう。

 

「しかし恐れ入ったよ、俺の渾身の一振りがまさか数秒で量産されちまうとはね」

「カイジンの一振りがすばらしかったからな、俺はそれを複製しただけだ。あんたは最高の職人だよ、カイジン」

 

 こういう事がさり気なく言えるから、リムルは凄いのかな。

 カイジンは照れくさそうに髭を触っている。

 

「それでな、旦那。村に来ないかと誘ってくれただろ? あれなんだが……」

「あ、ママさんさっきの美味しいのおかわりもらえる?」

「お、おい旦那⁉」

 

 リムルらしいというか、気遣いも流石だ。

 カイジンさんの口から言わせるような事もしないで、分かり易く話をそらした。

 露骨だけど、カイジンさんだってイヤな感じはしないだろう。

 

「スライムさん、味わからないんじゃなかったの?」

「キレイな人にお酌してもらえたら、何でも美味しくかんじるんだよ」

「あら、お上手」

 

【やっぱり誘わないんだ】

【カイジンはこの国の職人だしな、王に恩義もあるだろう】

【結構すごい人だよね、王の居る場所に行けて、直截な謁見できる様な人だよ。人材としては最高級で替えのきかない人物だよ】

【だからさ、義理堅い性格のようだし。無理を言って困らせたくない】

【ふふ、リムルがそういうなら、別に良いよ。もう十分な見返りは貰えたようだしね】

【いや、まぁ、そうだけど】

 

 ちなみにだが……ゴブタは暴走しそうって事でお留守番になりました。

 カイジンのお店でリムルにより簀巻きにされている。

 

「ねぇねぇ、スライムさん達。これやってみない?」

「ん?」

「なんですか? その大きなガラス玉? ……水晶?」

 

 黒髪ロングのエルフお姉さんが占い師みたいな感じで登場した。

 

「私これ得意なんだよ? けっこうすごいって好評なんだから」

「へ、へぇ」

 

【それを使って一体どんな妙技を……⁉】

【リムルって時々さ、おバカになるよね】

 

 アレを使ってやる事なんて、占い以外の何があるのだろうか。

 

「占いよ」

 

【あ、なんだ……】

【本当に何を考えてたの?】

【な、なんでもない。わかっていたさ】

 

 ジト目でリムルを見るが、決してリムルはこちらを向いてはくれなかった。

 

「何を占ってくれるんだ?」

「そうねぇ、何がいい?」

「スライムさんの「運命の人」とか!」

 

【え?】

 

 なんか驚いている感じだけど、これは何が映るか見ものだね。

 

「面白そう」

「それいいかもー」

 

 自分両隣に座っている子達も占いの話に賛同している。

 

 リムルも良いと頷いて、お姉さんが占いを開始する。

 

 実際にリムルの運命の人ってどう出るのかが気になるというのもある。スライムだし、魔物の子が出るのか、それとも人間の女の子が出るのかすっごく気になる。

 

 ――そもそも、スライムに性別ないんだけど……男の人とか出てくるのかな。

 

 考え始めると興味が尽きない。

 

「あ、映った!」

 

【嫁か⁉】

 

 ぼんやりと映し出されてきた映像は人族の子供達と、それを宥めているお姉さんだ。

 日本を思い出す面影に、黒髪の子達が多い。

 メインで映し出されているのは、黒髪のお姉さんだ。小柄で華奢そうなだが女性らしいしっかりとした体のラインに優しそうな顔。左目の下に何やらひっかき傷みたいなモノが見えるが、あとは良く解らない。

 

 リムルも興味津々でジーっと水晶を覗き込んでいる。

 

「おい、その人もしかして……爆炎の支配者。シズエ・イザワじゃねえか?」

 

 カイジンさんが知っているのか、驚きながら水晶を覗き見ている。

 

「有名なのか?」

「自由組合の英雄だよ。見た目は人間の若い娘さんだが何十年も活躍してたんだ」

 

 名前の響きが……日本人っぽい気がする。

 

「今はもう引退してどっかの国で若手を育ててるんんじゃなかったかな」

「英雄……」

 

 一緒に映っていた子供達が多分……育てているという子達なのかな。

 

「スライムさん運命の人、気になるんだ?」

「え? あ、いや」

「ずるーい」

 

 気にならない訳じゃあないんだろうな。

 それに同郷者なら、自分だって会ってみたいと思うしね。

 イザワ・シズエってどういう漢字で書くのかな「静江」と言うのが王道だろうか。名字に関しては幾つかあるから分からない。

 

 そんな話をしていると、他のお客が入って来た。

 

「おい女主人! この店は魔物の連れ込みを許すのか?」

「い、いえ。魔物といいましても紳士的なスライムですし……」

「なにぃ?」

 

 中立国家というが、こういう輩は何処にでも居るんだな。

 

「スライムは魔物じゃないとでも抜かすか⁉」

「まずいな……大臣のベスターだ」

 

【ほう、あいつが……】

【カイジンさんが居るから此処に来たのかな? それとも常連客?】

 

 まぁ、此処に来ている時点で怪しさは増すばかりだね。

 

 

 つかつかと歩いて、バーカウンターに座る自分の横に置いてあった水が並々と入っているピッチャーを取ってリムルにぶっ掛けた。

 

「ふん! 魔物にはこれがお似合いよ」

「た、大変……っ!」

「……大丈夫だよ、お姉さんこそドレス濡れなかった?」

 

 自分が手に持っているグラスに軽くヒビが入り始める。

 

「ウィンちゃん?」

「……っ⁉」

 

 自分の近くにいたエルフの子達には気付かれたかもしれない。

 かなり抑えているが、ほんの一瞬だけ魔力が手から漏れた。

 

【……ウィン、手は出すなよ】

【………………リムルが言うなら……今は我慢する】

 

 水を被った本人が耐えているのに、ここで自分が手を出しては意味が無い。

 それに相手は一国の大臣だと言うし、下手に暴れてこのお店やカイジン達に迷惑が掛かるだろう。それだけは絶対に避けなければならない事は解っている。

 

 お店の子達も困惑している者や、大臣を睨む者もいる。

 それだけでも、こちらからすれば嬉しいモノだ。

 とにかく自分はこれ以上に乱されない様に、心を落ち着けるべく目を閉じて一息。

 

「いいよ、大したことじゃない」

 

 リムルや自分が何も言わずにジッとしていると、ガタンと誰かが立った音がした。

 大臣が何事もなかったかのように、自分の隣にピッチャーを置く。

 

「おや、カイジン殿。あなたもこの店に――」

 

 ドゴッ‼ ――という鈍い音が部屋中に響いた。

 

 慌てて音のした方を向くと、カイジンが大臣のベスター氏を殴り飛ばしていた。

 その光景にエルフ達は驚き、ドワーフたちは良くやったとハンドサインで親指を立てている。自分とリムルは呆気に取られて動けなかった。

 

 力いっぱいに殴られたベスターは机の上を転がりながら壁端にぶつかった。

 

「よくも俺の恩人にケチつけてくれたな」

「き、きっ、貴様‼ 誰に向かってそのような口を……」

「あ゛あ゛っ⁉」

「ひっ」

 

 カイジンさんの圧に負けて速攻で店の外へと逃げて行った。

 

「お、覚えてろ……!」

 

 そのセリフを聞く日が来るとは思わなかった。

 去っていったベスターを見送ったカイジンさんがゆっくり店のドアを閉める。

 

「悪かったなママさん、店を汚して」

「それはいいけど……」

 

 

「カイジンさん……良いの? 相手は大臣なんでしょう?」

「この国に居られなくなるんじゃないのか?」

「なに、俺の帰る場所はあんた達が用意してくれるんだろう?」

 

 

 少し瞬きをして、リムルの方を向くと彼もこっちを見ていて、嬉しい気持ちからか、お互いに笑いがこぼれてきた。

 

「……でも、王のために頑張ってたんだろ?」

「へっ、やっぱりそれを気にしてたのかい。恩人を蔑ろにしてお仕えしたところで、王が喜ぶもんか。ここで応えなきゃ俺は王の顔に泥を塗っちまう」

「ふふ、嬉しいね」

「あぁ……」

「だから、旦那達について行かせてくれ!」

「……わかった。実はその言葉を待っていたんだ」

「だと思ったぜ、わはははは」

「よっしゃー、飲み直しだー」

「おー」

 

 

 

 

 

 

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