心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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102話 大商人とスカイドラゴン

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇリムル……残ってても良かったんだよ?」

「お前一人に良い格好をさせてたまるか!」

「そうは言ったってさ、リムルは魔物ってバレやすいんだよ? どうするの?」

「……素性を隠しつつ、西方聖教会に目を付けられないよう気をつける」

 

 だからどうやって? と、言いたいが……下は混乱の渦だし早く倒してしまった方が良いだろう。

 

「それじゃあ、先に行くよ?」

「あぁ、気を付けろよ」

 

 頷きながらもう一体の方へと向かう。

 

 頑張って逃げている馬車が一台。

 ただ、至る所がスカイドラゴンの放ったブレスで道がデコボコになっているせいで、上手くは逃げ出せないようだ。

 

「うおおっ!」

 

 ブレスをギリギリで回避とはいかず、馬車から飛び降りて何とか事なきを得たオジサンが地面を転がっていく。

 

「ひ……」

 

 さっきまで乗っていた馬車は粉々に破壊され、馬車から飛び散った商品らしきモノを一生懸命にかき集めて、懐に抱いていく。

 

「こんなところで、死んでたまるかい」

 

 なんとも逞しい人だ。

 多分、商人さんだろう。

 その近くにまた別の反応があり、一人は気配が薄く、もう一人は子供みたいだ。

 

 とにかくスピードを上げて、彼らの方へと飛んで行く。

 

「うわぁぁぁん」

「子供……‼」

 

 商人さんも気付いたらしく、子供の親が倒れているのだろう。

 血の匂いがする。

 まぁ、この辺り一帯はかなりケガ人が多いから、そこかしこから血の匂いはするのだが、子供の近くで、泣いている子が一生懸命に起こそうとしているなら、親だろう。

 

 商人さんは迷ったよう立っているが、何かを決心したように子供の下へと走る。

 

「ぬおおおおぉっ」

 

 太った商人さんの足音は大きく、ドスドスと一生懸命に走っている。

 

「邪魔だどけぃ!」

「わっ」

 

 ちょっと強引に子供を親から突き離して、ポンとビンの栓を抜いて倒れている親に液剤を全て体に掛けたようだ。

 

「お……おじさん、だれ? おかーさんになにしたの⁉ ねぇ……っ!」

「頼む……効いてくれ……」

 

 願う様に子供の親を見ている商人さんに、子供も親の方を見る。

 

「うう……ん。あ……あれ……? わたし……」

「おかあさん‼」

 

 商人さんは驚いた様な顔をしながら、瓶を見つめ。

 子供と母親は無事だったことを喜んで、抱き合っているが……そういうのは安全が確認できてからにしてほしい。

 

 自分よりも先にスカイドラゴンは獲物を見つけ、活きのいい商人さんの後ろへと舞い降りていく。

 

「おじちゃん、うしろ……」

「わかっとるわい!」

 

 子供が振り返った時には既に後ろに迫っているドラゴンに取り乱しているが、商人さんは目一杯の虚勢を張りながら、声を張り上げる。

 

「……ワシを誰だと思っている。こんなつまらぬ場所で死ぬ男ではないわ。貴様等は邪魔だ、さっさと行け!」

 

 助けられた母親も子供も、嘘だと解りながら頷いてチラチラと商人さんを見ながらも、一生懸命に王都の小さな門の方へと走って行く。

 

「へぇ、男って感じの人だね……」

 

 目を閉じてジッと恐怖に耐えながらも、しっかりと両足で立っている男の商人さん。

 それを真後ろから吹き飛ばそうと、ブレスを吐こうとしているスカイドラゴンの脳天に思いっきり高密度の空気砲を放つ。

 

「ギリギリ、セーフ?」

 

 地面に叩きつけられて、ドラゴンの体が少し宙に浮いた。

 あまりの出来事に、ようやく振り返ってドラゴンの方を見て目を見開いている。

 

「ん~、もうちょっと遠距離の魔法訓練しないとダメかも……精度が低くて、近くに人がいるとどうしても躊躇しちゃう?」

「し、少女……」

 

 それにしても……ドラゴンか……まだコレクションに無い種族なんだよね。

 丁度良いし、このスカイドラゴンには自分の贄になってもらおう。

 

「光の護封剣、発動?」

「カード? なんだ、あの魔法!?」

 

 光の剣がスカイドラゴンを取り囲み動きを封じる。

 それと同時に、杖を地面に突き刺して「コレクト」のスキルを展開して魔法陣をスカイドラゴンの足元へと広げていく。

 

「人を玩具みたいに遊んだ報いだね。次は君が遊ばれる番だよ?」

 

 ふと、地面に転がっているビンが見えた。

 

「あれ? このビン……ウチで出してる回復薬?」

 

 これを持っていたのは、ちょっと小太りな商人さんのはず。

 そう思って振り返ると、パチクリと目を真丸に広げて自分の方を見てくる商人さん、まだ逃げずに佇んていたようだ。

 ちょっと頬が赤い気がするが、きっと逃げ回ったりなんだりで大変だったのだろう。

 

【おいコラ、何を遊んでるんだ? 俺の方は終わったぞ】

【あ、ごめん、いまドラゴンをコレクトしてる最中? それよりさ、テンペストからハイポーションを大量購入した人っているの? なんかウチで出してるハイポーションを沢山持ってる商人さんがいるんだけど?】

【あ~、居るぞ。大量購入したブルムンドの商人が……たしか、イングラシアに行くとか言ってたが、そこに居るのか?】

【うん、目の前に……】

 

「女神……」

 

 なんか商人さんが夢でも見てるのか、女神と呟いている。

 

 グッ……グキャ……。

 

 自分が与えたダメージとコレクトにより魔素を吸われているのに、まだ起き上がるだけの力があるみたいで、スカイドラゴンは苦しみながらも立ち上がろうとしている。

 

「あぶっ……」

「ん、大丈夫。もう攻撃はできないから」

 

 商人さんに微笑みながら言って、少しだけスカイドラゴンの真上から押し潰すように風の衝撃波を当てる。

 ついでに杖を地面にカツンと強く当て、コレクトでスカイドラゴンの全てをカードの中へと吸い込ませていく。

 

「さすが厄災級? 良い感じの力が宿ってる?」

 

 これで、ドラゴン族の限定解除もされただろう。

 

「お、いたいた。名前は確か、ミョルマイル……だっけ?」

 

 リムルが大人バージョンの姿でこっちへやってきて、商人さんを見て言う。

 

「もう一人居たのですか……というか、ワシの事を知っておられるのか? いかにもワシがミョルマイルですわい」

「やっぱりそうか。俺の名前は……くはっ!」

 

 名前を名乗ろうとしたリムルの脇を小突いてやる。

 

【リムルのおバカ‼ 名前を名乗ってどうするの⁉】

【そうだった、正体を隠すつもりで大人に変身したのに】

 

「名前は?」

「ええっと……」

「自分はウィン……こっちは、えっと」

 

【回復薬の顧客を見つけて舞い上がったのは理解出来るけど、どうするの⁉】

【だ、大丈夫】

 

 しどろもどろになりながら、リムルが思考を巡らせていく。

 

「通りすがりの、しがない教師ですよ」

 

【このおバカぁ! 全然隠せてないじゃん!?】

 

 思念伝達を飛ばしながら睨んでやると、リムルは気まずそうに視線を逸らせてこちらを見ようとしてくれない。

 

「……さっき「ウチの回復薬」と言っておりましたな。もしや魔国連邦に縁があるのですかな?」

 

 リムルはペロッと舌を上に出した、前世で見たキャラみたいに明後日の方向を向いている。

 

「それにウィン様と申されましたな……それは、魔国連邦を纏めているお一人のお名前」

 

 ここまで知れ渡っていないと思っていて気が抜けていた。

 この商人さんは、自身でテンペストまで買い付けに行っていたような人物なんだから、情報収集として自分の名前くらいは知っていても不思議じゃなかった。

 

「……まぁ、今から誤魔化すのは無理?」

 

 そう諦めて言うと、商人さんは緊張と驚きの顔を自分とリムルに向けてくる。

 

「お目にかかれて光栄です。リムル=テンペスト様、ウィン=テンペスト様」

「え?」

「リムルの名前も知ってる?」

「名前まで、よくわかったな」

「ええ、あの街の住人達は、あなた方の話ばかりでしたからな。人の姿の時の似顔絵まで見せてくれましたし。巫女様方は、ウィン様がどういう人なのかとか、特徴的なことまで教えてくれました」

 

 商人さんの説明を聞いていて、リムルも自分も顔から火が出そうな程に恥ずかしかった。

 

「ずいぶん慕われておいでだ、ワシも懇意にさせて欲しいもんです。ぜひ、お礼も兼ねてご馳走させて頂きたい。イングラシアにはワシの出資している店もありますので――」

 

 そうやって商人さんと話し込んでいると、スカイドラゴンを倒した事で落ち着いたのか、門番さんがこちらに歩いて来ていた。

 

「おい、そこの三人! 怪我はなさそうだな。少しいいだろうか」

 

 警備の騎士だ、少しまずい。

 

「知性のある竜が無差別に人間を襲うとは思えんのでな。詰め所で話を聞かせてくれ」

 

 自分はある程度なら隠し通せるし、バレたとしても精霊としてだから、そこまで問題にはならないが……リムルだけは不味い。

 西方聖教会に知られるかもしれないリスクがある。

 

「聴取かね、ワシをミョルマイルと知ってのことか?」

 

 商人さんが自分達の前に出て、警備の騎士とリムルの間に入ってくれる。

 

「え……」

「おい、その人はいいんだ」

 

 なんか上司っぽい騎士が走ってやってきた。

 

「失礼しました、ミョルマイル殿。こいつは新人で……」

「教育がなっとらんようだな」

 

 そういって先輩騎士の手に何かを……お金!? それを渡している。

 えっと、賄賂ってことかな。

 

「弁えろ! この人はブルムンドの大商人のガルド・ミョルマイル氏だ」

「す、すみませんでした」

「聴取には応じてやろう。ただし、この方々は帰してやってくれ。ワシの護衛としてここまで一緒にきてもらったのだ。身元はワシが保証する」

 

 さっきまでの驚きや戸惑いでオドオドしていた人とは別人みたいに、堂々と胸を張って騎士達とやり取りをしている。

 

 

「もちろんですミョルマイル殿。ご協力感謝します」

「うむ、では行こう。ここまで助かりましたぞ、次の機会も是非」

「ん、いつでも?」

「またのご利用を」

 

 すごい……助けたのに、助けられちゃった。

 

「護衛のお二人。美人に美少女でしたな」

「だはは、そうじゃろう! ワシも驚いたわい」

 

 そんな話をしながら、王都の方へと歩いて行ってしまった。

 

「先生――――‼」

「なんだよ先生! 今のめっちゃカッコいいじゃん‼」

「ちょっとなによその格好‼ カッコイイじゃないの‼ というか、ウィン先生もさっきのなに! あんな事も出来たの⁉」

 

 子供達が笑顔で目をキラッキラに輝かせて抱き着いてくる。

 

 自分もリムルも少し勢いにおされて戸惑ってしまう。

 

「どうしたの? リョウタ?」

 

 リョウタはミョルマイルさんの方をチラチラと見ながら、こちらへ歩いてくる。

 

「さっきのおじさんが擦れ違う時に、こんなの渡してきました。先生達にって」

「ミョルマイルが?」

 

 

 

 

 リムルが手に取って受け取ったモノは――。

 

 

「名刺?」

 

「ん? 裏面になんか走り書きしてある。これは……住所だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

  • ウィッチクラフト
  • エクソシスター
  • 蟲惑魔
  • 妖怪少女
  • 六花
  • 海晶乙女
  • アロマ
  • ティアラメンツ
  • 白き森
  • イビルツイン
  • ドラゴンメイド
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