心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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108話 皆の精霊

 

 

 

 

 

 

 

 

 初めは怖がっていたアリスがゲイルの様子を見て、意を決したような顔つきで手を上げながら主張する。

 

「次、私ね!」

「うん、じゃあ行こうか」

「足元を気をつけて?」

 

 そう言って光の道をまた上まで登ろうとしたのだけど、アリスは動かずに自分のローブをクイクイと引っ張る。

 

「んっ!」

 

 なんか手を広げながら、子供が抱っこを強請るような姿勢をしている。

 

「……えっと?」

「ほら、お姫様をエスコートしなさい」

「あ~、ご指名だぞウィン」

『……今回くらいは許してあげるわ。こんどはアタシにもしなさいよウィン!』

 

 もうアリスをお姫様抱っこで登ることは決定になったらしい。

 

「仕方ないな、それじゃあ行きますよお姫様」

 

 アリスに少し風を纏わせ、横抱きして光の道を歩き出す。

 

「……なるほど……」

 

 なんかクロエがチラチラとリムルを見ながら納得したように頷いている。

 

「なんでお姫様抱っこ?」

「だってこの道、怖いんだもん」

「おんぶじゃダメなのかよ?」

「ダメ‼」

「まぁ確かにお姫様抱っこなら下は見なくて済む?」

「もうっ! 先生達ってば乙女心が解ってない!」

 

 何故か子供のアリスからダメ出しをされて、思わずリムルと一緒に苦笑いをする。

 

「ねぇアリス……どんな子が来たら嬉しい?」

「ん~、可愛い子が良いなぁ」

 

 アリスがもしも遊戯王で遊ぶのなら、きっとフェアリーテイルとかマドルチェ、もしくは人形が好きみたいだし、人形テーマのドールデッキかな……しかし、今の手元にあるのはフェアリーテイルくらいしかないんだけどね。

 

「こんな子達だったら嬉しい?」

 

 抱っこしているのでちょっと風霊術でカードを引っ張り出して、フェアリーテイルのテーマで霊使いと相性の良いカグヤと、偶々だが手に入ったラチカのカードを見せる。

 

「わぁ~! なにこの可愛い子達! こんな感じの子ながら大歓迎!」

「どれどれ……なるほどな。たしかにアリスが好きそうな感じだな」

 

【イメージはこんな感じで考えるね】

【あぁ頼んだぜ】

 

 上まで着くと、ゆっくりアリスを下ろして、ゲイルの時と同じように祈ってもらう。

 

 なんかラミリスが不満というか、ジト目で自分とリムルの事を見てくる。

 

「アンタ達、むちゃくちゃするわね……」

「上手くいって良かった?」

「そういう非常識なとこアイツを思い出すのよね」

「アイツ? ああ、さっき話してた光の精霊を召喚した勇者か」

「そう勇者。せっかくこのアタシが精霊の加護を授けて、勇者に認定したってのに、アイツ今は魔王になってるらしいじゃん?」

「……勇者が魔王になったのか?」

「そう‼ 非常識でしょ!?」

「ん? その理屈で言うとラミリスも――」

 

 自分が全てを言い終える前にリムルによって口を塞がれる。

 

【余計な事は言わないように】

【本当のことなのに……】

 

 リムルは慌てたように睨みながら言い聞かせる様に言ってくる。

 自分は口先を尖らせながら、不満だと主張するがリムルは駄目だという感じで首を横に振る。仕方なしに頷いて答える。

 

 

「しかも、めぼしい情報が得られなかったとか言って、八つ当たり気味に炎の上位精霊まで奪ってったのよアイツ‼」

 

 頭を掻きむしるように抱えながら、吠えるように叫ぶ。

 

「……炎の上位精霊?」

「イフリートの事か?」

「え、そうだけど……なんで知ってんの?」

 

 ということは、ラミリスが言っている人物は自分達も知っている名という事になる。

 

「じゃあ「アイツ」ってのは魔王レオン・クロムウェルのことか?」

「そう……だけど。え、なにアンタ、まさかレオンちゃんとも友達なわけ?」

「違う……むしろ、仇みたいなもの?」

 

 自分も静かに呟くと、リムルも頷く。

 ラミリスの方はちょっと良く分からないという感じで首を傾げていたが、リムルはそのまま話を続ける。

 

「なんで勇者が魔王になったんだ?」

「さぁね、アイツも堕落したんじゃないの? アタシを真似してね!」

「それはない?」

「まぁ、アタシの方が強いけどね! 本気を出せばワンパンよワンパン。いや、ホントに――」

 

 ラミリスが自分の強さを主張するようにシャドーボクシングしながら、頑張ってアピールしているけど、レオンの方が強いんだろうなって思う。

 本来の力を取り戻したラミリスを知らないから、何とも言えないけど。

 

「来たみたい?」

「あぁ……来たな」

 

 ゲイルの時と同じ、自我のない下位精霊だ。

 紫色の綺麗な光がピカピカしている。

 

 リムルはアリスの頭に手を置いて、もう片手は下位精霊達を捕食するために手を上げている。

 

「大丈夫かアリス、怖かったらクマのぬいぐるみ出そうか?」

「こっ、子供扱いしないでよね!」

 

 そう言いながらも、さっき自分が出したフェアリーテイルのカード達を抱きしめている。

 

 自分もアリスの背に手をあてて、リムルが統合するのに合わせて魔素のバイバス繋ぎと力を安定させるために、アリスの魔素と馴染ませる。

 

 リムルは取り込んだ精霊達を統合していく。

 

〈告。疑似上位精霊「空」を作成。……成功しました。アリス・ロンドと「統合」しますか?〉

【yes】

 

 リムルのタイミングに合わせて自分も魔素の循環に集中する。

 

「ふぅ……もう大丈夫?」

「よく頑張ったなアリス」

 

 震えていたアリスの体から、自分達の声を聴いてふっと力が抜けていく。

 自分達は笑顔でアリスを見ていると、泣きそうになりながら見上げてくる。

 

【あ、泣く!】

 

 そうリムルが言った瞬間に自分達にアリスが勢いよく抱き着いてきた。

 

「わふっ」

「おおう!?」

 

 驚いている間に、アリスはリムルと自分の方に軽くキスをする。

 

「……特別だからね」

 

 アリスは少しだけ気恥ずかしそうにしながら、人差し指で自分の唇を撫でる。

 

 やっぱりアリスはおマセな子のようだ。

 

「……ありがとさん」

「役得?」

「ひゅーう」

 

 ラミリスもノリの良い感じで後ろから茶化してくる。

 

 アリスが下まで戻ると、次はケンヤの番という事らしい。

 緊張しているのか、少し不機嫌に見える。

 

「大丈夫?」

「へ、平気だって!」

 

 なんというか、男の子だね。

 弱みや不安だっていうのを、あまり見せたくないようだ。

 強がりながらケンヤは一人前へと行き、同じように祈り始めた。

 

「いよー! 元気かい? 始めまして、オイラは光の精霊さ!」

 

 祈ってすぐのタイミングで、なんか妙に明るい精霊が登場した。

 自我もある、上位精霊だ……というか、光の精霊!? たしか光の精霊ってラミリスの話じゃ確か……。

 

「キミ、名前は?」

「ケンヤ……」

 

 ケンヤも驚きで目を開いて、光の精霊を見ている。

 名前を聞かれて、反射的に答えている感じだ。

 

「ケンちゃんかー」

「ちょ……ちょっとアンタ‼ 何しに人の家にやって来てんのよ⁉」

「だって勇者の資質を感じたからね、来ちゃった♡」

 

 ラミリスにも動じず、軽く流すように答える。

 

「ぐぬぬぬ……」

「ラミリスの知り合い?」

「っていうか、この精霊がレオンに召喚されたのと同じヤツなのか?」

「そうだけど……厳密にそうじゃないの」

「そうそう、オイラはケンちゃんの呼びかけに応じて出てきたの。同じ光の精霊だけど、全く別の存在だよ」

 

 そう言いながらケンヤの頭に乗って胡坐をかいている。

 

「よく、分からない?」

「キミのお付きと似た感じだと思えば良いさ」

 

 光の精霊が自分の方を指差しながら言う。

 確かにライナみたいな者だと言われると……何となく想像し易い。

 

「ええと……その子を助けるのに力を貸して欲しいんだが」

「いいよん♪」

 

 この光の精霊は随分と軽い感じのフレンドリーな精霊らしい。

 

「もしかしたら、ケンちゃんも勇者になれるかもしれないからね! 成長するまではオイラが保護するよ。じゃね」

 

 そう言って、手を振りながらケンヤの中へと入り込んでいった。

 

「……勝手に宿った?」

「みたいだな」

 

 しかし、ケンヤに勇者の資質があるっていうのには驚きだ。

 

「先生……?」

「お、おうっ」

 

 最初から最後まで光の精霊のペースにやられたが、コレはコレでケンヤは大丈夫ということなのだろう。

 

「大丈夫、計画通りだ!」

「ホントかよぉ……」

 

 自分とリムルはお互いに目を合わせて頷く。

 

「なんかヘンなカンジ……」

「大丈夫、魔素が落ち着いてる証拠だから」

 

 リムルや自分が魔物達の主だと知れたら、討伐とかされちゃうんだろうか……それは、ちょっと寂しいな……。

 

 四人目はリョウタだ。

 

 ゲイルやアリスと同様で、しばらくは何もおこらない。

 やがて、下位精霊達が降りてくるのも変わらない感じだ。

 

〈疑似上位精霊「水風」を作成。……成功しました〉

 

【関口良太に「統合」してくれ】

〈了〉

 

 さすがに何回かやって慣れてきた事もあって、リョウタもすぐに精霊を宿すことに成功する。

 彼の疑似上位精霊はリバイアサンみたいな見た目になっている。

 

「え……もう、終わり?」

「おう、もう大丈夫だぞ」

「ん、魔素も安定してる?」

「なんか手際よくなってるわね……」

 

 ラミリスが呆れながら言ってくるが、無視。

 

「先生達、ちょっと疲れてる?」

「いや全然」

「うん、問題なし?」

 

 後はクロエだけ。

 

「心配しなくても大丈夫だよ」

 

 心配そうなクロエにゲイルが声を掛ける。

 

「あっという間なんだから」

「そーそー、頭にスルっと入っておしまい!」

 

 それは多分、ケンヤだけだと思う。

 口に出しては言わないけど……。

 

「じゃ、行こう?」

 

 そう言ってクロエを誘う。

 するとアリスの時みたいに、今度はリムルの袖をクイっと引っ張り、ちょっと恥ずかしそうにしながらお姫様抱っこを強請る。

 

「先生、おもい?」

「いや、軽いよ」

 

 女の子ってこういうのに憧れたりするのかな。

 

「先生、あのね……、あのね」

「うん?」

「だ――――い好き」

「俺も好きだよ」

「本当?」

 

 そんなやり取りを傍目に見ながらラミリスがよってくる。

 

「なんかのろけを見せつけられてない?」

「ん~、気のせいじゃない?」

 

 なんか言いたそうな顔で自分の方を見てくるが、何が言いたいんだろう。

 

「ここでお祈りするの?」

「おう」

 

【むしろ、生前に言って欲しかったな】

 

 

【まぁまぁ、今で言われても悪い気はしないでしょう?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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