クロエの告白に紳士的に? 多分、先生として答えたリムル。
ただ、リムルの呟いた――。
「せめてあと10年経ってから言って欲しかった」
という言葉を聞いて、思わずジト目で見つめてしまった。
「な、なんだよ」
「犯罪者?」
「ちげぇって!」
なんか物凄く取り乱しているが、そろそろ始まるのでクロエの方に集中しよう。
リムルは動揺している心を落ち着けるように、大きく息を吸っては吐いて、集中力を高めていく。
祈りを始めたクロエに同調するように、今までの精霊が現れる感覚とは全く違う。
「……クロエ!?」
「クロエ‼」
気付いた自分とリムルは急いでクロエの下へと向かう。
「え?」
自分達の声を聴いてか、クロエが振り返る。
その後ろに現れたのは、精霊の気配ではなく……どちらかと言えば精神によって姿を形作っている存在だった。
「精霊……なのか?」
「違う‼ アレは精霊じゃないよリムル!?」
〈否。上位精霊と同様のスピリチュアルボディーですが、存在力が違います〉
自分の叫びと「大賢者」さんの説明が殆ど同時に発せられる。
「精霊に呼びかけたら、よく似た別の何かが現れたってことか⁉」
「分かんない……」
「おいラミリス‼ こりゃ一体……」
そんな話をしている間に、現れた幽霊みたいな存在がリムルの前へと移動して、キスをするように抱き着いていく。
というより、キスをした様に思う。
「リムル! なに惚けてるの!」
「そうよ! させないよ。アンタの好きにはさせない‼ 何もせずに今すぐ帰りな‼」
ラミリスが両手を上げて、黒い球を作り出して幽霊みたいな存在へと攻撃を開始する。
攻撃を回避しながら、何故か自分の方を見ながら、なんか妬みというか……嫉妬? まぁ良く分からないが、睨まれていることは間違いない。
そのまま、幽霊みたいな存在はクロエの後ろへと移動して、クロエに宿ってしまった。
「……クロエ、大丈夫?」
「えっと? はい、別に?」
すぐにクロエの下に駆け寄って確かめるが……分かる事は、崩壊に向かう魔素が安定している事くらいだった。
さっきまでの圧倒的な存在感がウソのように消えている。
「クロエ、本当に何ともないか? どこか痛かったり苦しかったりしないか?」
「う、うん。平気……」
「そうか、良かった」
「さっきのは、なに?」
これ以上は調べても分からないので、ラミリスの方を見て聞く。
「わっかんないわよ! ……アタシも詳しくはわからない! でもアレはヤバイやつよ。存在自体に時間軸のズレを感じた。たぶん、アレは未来から来たのよ」
「この時代に未来から?」
「そう、この時代に現れた理由なんて、知らないけど……」
「クロエに宿った? それが目的?」
「その可能性は高いでしょうね。でも、それ以上はわからないわよ。あ~~~~っ、きっとこの時代での干渉が切っ掛けで、未来が大変なことに……」
「……ふ~ん」
「ふーんて、アンタね! これがどんな大変なことかわかってんの⁉」
大変そうなのは分かるけど、いま分からない事を気にしてもしょうがない。
「わかるわけないだろ? 説明してるラミリスにもわかってないのに」
リムルが冷静に言い返すと、自分自身で分かっていないのはラミリスも理解しているからか、それ以上は言い返せず、肩を落として項垂れていく。
「でも、ちょっとは……」
「ん~、いまは良しとしない? クロエも助かったし?」
「そうそう、クロエが助かったことを喜ぼうぜ」
「え?」
自分とリムルが気付いているのに、ラミリスは気付いていなかったみたいだ。
フヨフヨとクロエの所まで寄っていき、ジッと周りを飛び回りながらクロエの事を観察していく。
「ホントだ……魔素が安定してる。これなら崩壊の心配はないよ」
「精霊じゃなかったみたいだけど……良かったのかな?」
「結果オーライだ。これで皆が生きていけるんだからな」
皆は精霊が宿ってるのにクロエだけ別の存在。
ちょっと心配だし、なにか良い感じのカードでも渡してお守りにでしてもらおう。
デッキホルスターからデッキを取り出して広げる。
「ウィン先生?」
「ん~、これ……かな」
自分のデッキから一枚、カードを取り出してクロエに手渡す。
「……これは?」
「お守り。それにこれからは未来を見て、皆で楽しく暮らしていこう?」
「へ~、良いな。貰っておけよ。ウィンのカードはマジでご利益あるぜ」
「うん! ありがとう」
「あ、リムル……カード守るケースとか作れない?」
「あ~そうだな。ガラスケースみたいなのになっちまうが良いか?」
「それで十分?」
自分が渡したカードは{精霊術の使い手}そして、ケース内にもう一枚だけ忍ばせることにした。{精霊の鏡}というトラップカードだ。
【なに入れたんだ今?】
【気休め程度だけどね、何かしらの魔法から対象を移す効果があるカードだよ】
{精霊の鏡}
プレイヤー1人を対象とする魔法の効果を別のプレイヤーに移し替える。
【さすがに、さっきの存在は気になるからね。気休め程度でも、何も無いよりはマシでしょう?】
【確かにな】
「はい、これで雨なんかの水に濡れても大丈夫?」
「俺達からのプレゼントだ」
そう言うとクロエは大事そうに胸に抱き、笑顔で頷く。
「後で皆にも渡さないと、だね?」
「そうだな、人数分は作っておくか」
アリスはフェアリーテイルの子達かな。
リョウタは……リバイアサンと……電気海月……かな。フィッシャーマンの方が喜ばれるだろうか。
まぁ、表にフィッシャーマンが来れば、後は忍ばせておけば大丈夫だろう。
ゲイルには……コレかなぁ。
一枚だけだが、ドラグマの{教導の騎士フルルドリス}があるんだよね。
彼なら気に入ってくれるだろう。
其々をリムルが作ってくれたケースに入れる。
「リムル先生ー! ウィン先生ー! クロっちー!」
生徒達が光の道を駆け上がってくる。
「クロっちも大丈夫、だったんだよな⁉」
「ほらぁ、あっという間だって言ったじゃない!」
『はぁ~、ようやく終わったわね』
「ねぇ、皆にプレゼントがある?」
そう言って喜んでる皆の下へ行き、クロエと同じようにケースに入れたカードを其々に渡していく。
「わぁ~、可愛い!? ありがとうウィン先生!」
「いいですね、この騎士! スゴク良いです!」
「カッコいい! フィッシャーマンって言うんだ!」
『良いチョイスじゃない』
「……あれ? 俺のは?」
「ケンヤ、ちょっと手を握ってくれる?」
「別に良いけど、なにするんだ?」
ケンヤには今持っているカードでは思いつかなかった。
だからどうせなら、ケンヤ自身に引いてもらおうと思ったのだ。
少しだけケンヤの魔素と自分の魔素を使い、新たなカードを生み出す。
光の中から生まれた、一枚のカードがクルクルと回転しながら自分の手元にやってくる。
「何がでたんだ?」
「なによその能力!? 初めて見るんだけど⁉」
リムルとラミリスがよって来て、生み出したカードを覗き込んでくる。
「お! そのカードなら俺でも知ってるヤツじゃん!」
『へぇ~、そいつに選ばれるなんて、なかなか将来は有望なようね』
「なんか怖くない? 黒いし……ドラゴンよね、その絵って」
「……そっか、ケンヤには確かに、このカードがピッタリかもしれない?」
「なぁなぁ! どんなカードが出たんだ? 俺にくれるってカードなんだろ?」
ケンヤに渡す為に生み出されたカード。
それは{真紅眼の黒竜}レッドアイズ・ブラックドラゴン。
「うぁ~、カッコイイじゃん! やった!」
ケースに入れてケンヤに渡すと、物凄く喜んでくれた。
でもケンヤには少しだけ、勇者という可能性を見出された彼に伝えておきたい事もある。
「そのドラゴンはね。可能性のドラゴンって呼ばれてるの」
「可能性?」
「そう、可能性……勝利のドラゴンじゃなくってね」
「勝利じゃない? どういうこと?」
「ん~、今は分らなくてもさ、覚えておいて」
「良く分かんねぇよ。ウィン先生」
ケンヤの頭を撫でながら言うと、何故か気恥ずかしそうにしながら手を払われてしまった。
ケンヤなら勇者と呼ばれても、レッドアイズが居れば大丈夫かもしれない。
「ラミリス、ありがとう? 寛容な精霊女王様のお陰で……子供達の未来が、明るくなった?」
頭を下げて、しっかりとラミリスにお礼を言う。
すると何故かラミリスが驚きながら顔を赤くして、アタフタしだした。
子供達も自分に習ってか、ラミリスを取り囲むように感謝の思いをぶつけるようにお辞儀していく。
「「「「「ありがとうございました‼」」」」」
「わっ! ……ばっ、ばっかも~~~~、そんなのいいってば~~~~」
顔の前で手をワチャワチャさせながら、感謝された事が恥ずかしいのか飛び回って恥ずかしさを紛らわすようにしている。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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