心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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11話 裁判と英雄王と茶番劇

 

 

 

 

 

 

 職人の当てが見つかってめでたしめでたし……という訳にはいかない訳で、しっかり警備隊の人達がお店まで、お迎えに来てしまっている。

 

 あんな性格でも一国の大臣ですからね。見逃されるはずもなく、全員が連行されました。

 

「兄貴にリムルの旦那……何をやっているんだよ」

 

 物凄く呆れた顔でカイドウさんが詰め寄って来るけど、カイジンさんは頑固にも鼻から息を噴き出しながら。

 

「ふん! バカにお灸を据えてやっただけよ!」

 

 なんて言うだけで、反省するという態度にはならなかった。

 そんな訳で自分達は王宮へと連行され――その2日後に裁判が始まった。

 

【ちょっとヤバいかな⁉】

【武装国家ドワルゴン。現王のガゼル・ドワルゴ様ね】

【あぁ、この男。間違いなく強い‼】

【アレは相手にするの面倒そう。自分の能力とか無効化されると思うな】

 

 スキルか装備品か……こっちの力はあんまり通じなさそうだ。

 少なくとも操るのは不可能だろう。憑依覚醒状態で、最低でも瀕死かそれに近い状態にしないと能力でのコントロール下には置けないだろう。

 

 まぁ、元々のスキルかなんかで無効化されるのが目に見えてるから、そんな事を狙っても無意味そう。あの王様に勝つなら別のアプローチで優位に立たないと負けは確実だ。

 

 

 それにしても、この場で自由に発言が出来るのは伯爵位以上の貴族だけ。当事者のリムル達ですら王の許しなく発言は出来ない。

 発言した時点で「有罪」冤罪も何も関係ないんだとか。

 

【おっかないね】

【色んな意味でね】

 

 自分達の意見を代弁する弁護士が居るのだが……これがまた胡散臭い。

 全身から漂うオーラから、外見も飛び出す言葉も語る話も全てが胡散臭い。

 

【あれって絶対にベスターって人の回し者?】

【いや、人を見かけで判断しちゃいけないな、こう見えてめっちゃ敏腕かもしれないし】

 

 リムルも絶対に自分と同じ考えのはずなのに、淡い希望に縋っているようだ。

 

 

「――――と、このように。店で寛いでおられたベスター殿に対して因縁をつけ、カイジン達は複数で暴行をくわえたのです」

 

【うおおおおい⁉】

【ほらね、どう見ても回し者】

 

「事実か?」

「はい! 店側からも調書を取ってございます」

 

 ベスターという大臣の方にチラッと目をやると、重症でも負ったかのように包帯でグルグルにされている。腕なんか折れていないだろうに固定された状態だ。

 

【あの野郎……買収しやがったな、あんな怪我してねぇーだろ】

【うん……そうだね】

【ウィン? どうしたんだ?】

【ちょっと、変かも?】

【は? なにが?】

 

 この裁判自体が茶番なのかな。

 受け答えが適当だ、そもそも王自身が弁護士の話を聞いていない気がする。

 話を纏めている者も、さっきから裁判の進行している人達もどこか関心の無い視線で弁護士とベスターの方をチラ見している事が多々ある。

 

【よく解らんが、カイジンから聞いていた通り狡い男だな】

 

 

 

 

 ▽▼▽▼==拘留中の一室==△▲△▲

 

 

 

 

「俺は昔、王宮の工作部隊の団長でな、ベスターはその副官だったんだ。ヤツや侯爵家の出でな。庶民の出である俺に従うのは面白くなかったんだろう」

 

 当時からよく衝突も多かったとカイジンは語る。

 

「そんな時だ、功を焦ったベスターの独走で一つの大きな企画……“魔装兵計画”がポシャっちまった。で、俺は責任を取って軍をやめざるを得なくなった」

「ベスターはお咎め無しか?」

「あぁ、奴が軍の幹部連中を抱き込んで、偽の証言まででっち上げてな。全ての責は俺一人にあるんだとよ」

「うわぁ」

 

 幹部の人達も貴族出が多かったんでしょうね。

 ベスターに賛同して協力をしたって事は、カイジンさんへの嫉妬が殆どだろう。

 

「んで、こいつらは当時に俺を擁護してくれてな。揃いも揃って不器用なくせして、必死に俺を庇って。一緒に軍を追われた」

 

 腹を抱えて当時を思い出したのか、噴き出したように笑い出した。

 

「だが、まぁ……ヤツも別に悪人ってわけじゃないんだ」

「え、アレで?」

「ウィン……分かるけど辛辣だな」

「まぁあんなんを見た後だししゃあねぇが。俺とは馬が合わなかったが、もともとは研究熱心で努力家だ。功を焦ったのも王の期待に応えようとした結果だしな」

 

 カイジンさんは昔のベスターを見ているし、その時に見た彼は真面目でまだ普通の人だったのかもしれない。

 

「俺が旦那についてここから消えりゃ、ヤツも少しはマシになるだろうさ」

 

【……そんなもんかね】

【そんな願いが、カイジンさんにはあるんじゃない?】

 

 

 

    △▲△▲  ▽▼▽▼

 

「王よ! この者達への厳罰を申し渡し下さい」

 

 

【――ってカイジンは言ってたけどさ。ぜっっったい悪人だろコイツ‼ これヤバいんじゃないか? 発言が許されないんじゃ事実無根だと主張することも出来ないし……】

 

 カイジンさん達も青い顔をしているようだが、自分は別の考えでいる。

 というのも、裁判が開始されてから最初の方はベスター達を見ていた王様は、今は興味を失ったかのように見ていないし、ベスターや弁護士の話を聞いていない。

 

 では何を見ていたかというと……自分やリムル……そして、カイジンさん達だ。

 こっちを見た時に何か変な感じがしたから、受け流しちゃったけど不味かったかな。そこから更に興味を持たれてしまったかもしれない。

 

「……カイジンよ」

「……はっ!」

【お! なるほど、王の問いかけには返事してもいいのか】

 

 呼ばれて緊張しながらもカイジンさんが立ち上がる。

 

「久しいな、息災か?」

 

 その声の掛け方は……優しく、懐かしむようであった。

 カイジンはすぐに跪いて頭を下げる。

 

「は! 王におかれましても、ご健勝そうで何よりでございます」

「よい、それよりも。戻ってくる気はあるか?」

 

 ――やっぱり、この裁判は茶番劇だ。

 

 王様自身もカイジンさんとは話をしたかったのだろう。でも平民のカイジンさんに王様自らが出向く事は出来なかったと見ていいと思う。

 

「恐れながら王よ。私は既に主を得ました」

 

 チラッとリムルと自分の方に視線を向けて、王の目を真っすぐに見据える。

 

「王の命令であれど、主を裏切ることは出来ません」

「……で、あるか」

 

 そう答えた王様は、分かっていたという感じであった。

 ただ、少しだけ言葉の端っこに寂しさがあった気がする。

 

「判決を言い渡す。カイジン及びその仲間は国外追放とする。今宵日付が変わって以後、この国に滞在する事を許さん。以上だ、余の前より消えるがよい」

 

 王の一喝で裁判は閉廷した。

 

【あれが王の覇気ってやつか】

【そうだね……でもさ、ちょっと寂しそうに見える】

【そうだな、俺にもそう見えたよ】

 

 きっとベスターの嘘や捏造した証拠も、全部知った上で色々な事を見ていたのかもしれない。ベスター自身も、王の様子に驚いていた感じだったしね。

 この後にどんな展開になろうと、それはベスター自身が招いた問題だ。なにがあったとしても助ける気はサラサラないんだけどね。

 

 

 

  ―――――――――★☆★☆  ☆★☆★――――――――

 

 

 

「いやー一時はどうなることかと思ったが、ま、概ね予定通りだな!」

「出禁になったけど?」

「それはそれ、本来の目的は果たせたのだから良いのだよウィン君」

「はいはい、そうですね」

 

 自分達がドワルゴンから追い出されて、森の方でキャンプをしているリグル達の元へとカイジンさん達を案内する。

 

「ご無事で安心しました。それにしても裁判とは……」

「俺の日頃の行いが良かったから助かった感じだけどな」

「よく言う……」

 

 リムルのヤツ、その前にあった門前の騒ぎの話をなかったかのように話している。

 まぁそれには自分も賛成だから、これ以上のツッコミはしないけど。

 ライナやアウスに知られたらどうなるか……考えたくもない。

 少なくとも、リムルはお説教されるだろうけど、それに巻き込まれる形で自分の方にも絶対に小言が何重にもなって押し寄せてきそうだ。

 

「こほん。そうだ、まだ紹介してなかったな。彼が武具制作職人の――」

 

 くるっとカイジンさん達を見ると、驚愕と顔色を青くして固まっている。

 

「嵐牙狼族に驚いているのでは?」

「あぁ、なるほど」

「みんな、威圧しちゃ。メだよ?」

 

 自分がそういうと、嵐牙狼族達が急に大人しくなってこっちに擦り寄ってくる。

 

「わゎ! どうしたの? まぁとにかく、初めて見るドワーフ達だけど、これからは仲間になるんだから優しくね」

「あ、ウィン様! 髪の手入れを十分にしていませんでしたね」

「肌の手入れも……帰る前に念入りにしないとダメですね」

 

 確かにサボっていたけど、気にするほどの事じゃあないと思うんだけど。

 

「帰る前に整えておかないと、ライナ様やアウス様が黙っていませんよ」

「お、お願いします」

 

「あはは……頼むなお前達。ウィンの事はゴブリナ達に任せるとして、続けるぞ。三兄弟の長男。ガムル、腕のいい防具職人だ。次男、ドルド。細工の腕はドワーフ随一って話だぞ。三男、ミルド。器用で建築や芸術にも詳しい」

 

 こっちはせっせとゴブリナ達に世話をされている間にドワーフ達の自己紹介が終わっている。当の彼等はまだ放心状態である。

 

「約束したのはカイジンだけだったんだがな、どうせ全員国元にはいられなくなった訳だし。スカウトしちゃった」

 

「さすがはリムル様」

「さて、じゃ帰るとするか! ほんの数日なのにゴブリン村が懐かしいよ」

 

【ねぇリムル……何かわすれてない?】

【俺もなんか忘れている気もするが……ま、たぶん気のせいだな】

 

 思い出せないので、それ以上気にせずに帰路につこうとした時だった。

 

「ひどいっす――――‼」

 

 ゴブタが嵐牙狼族に乗ってドワルゴンから走ってくる。

 

【……あっ】

【思い出した⁉】

 

 すっかりとリムルも自分もゴブタの事が記憶から抜け落ちていた。

 

「お、おぉゴブタ」

「リムル様あんまりっすよ。怖い兵隊さんが来て泣きそうだったっす!」

「いや悪い……ごめん、今度綺麗なお姉ちゃんのいっぱいいる店に連れていくから」

「ホントっすか⁉ 絶対っすよ⁉ 約束っすからね‼」

「お、おう……」

 

 リムルから約束を取り付けた事で、すぐに機嫌が直って飛び跳ねている。

 

【……単純? でもドワーフ王国は出禁だよ?】

【言ってやるな……当分先の話だとでも言って誤魔化そう】

【それよりもさ……嵐牙狼族ってドワーフ王国に連れてってないよね?】

【あぁ、目立つからな】

【乗って帰って来たよね?】

【だな……一体どうやって……ま、いっか】

 

「さー、帰るぞみんな!」

「おー!」

 

 考えるのを放棄したな。

 まぁ自分もさっさと帰ってゆっくり寝たいし……いいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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