心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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114話 先へ進む為の卒業

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供達が精霊を宿してから一月くらいは経っただろう。

 リムルやライナと一緒に様子を見つつ、魔素の安定をしっかりと確認しながらも一般の授業をリムルと一緒になって教えてきた。

 

「――子供達はもう大丈夫だ。一月以上、様子を見たが魔素は安定している」

「そのようですね」

 

 いまは自由組合の本部。ユウキに報告をしている最中である。

 

「他の教師達も皆驚いていましたよ。僕だってそうです……本当に、一体どうやったんです? リムルさん、ウィンさん」

「企業秘密?」

「そうそう、色々と頑張っただけだよ」

 

 子供達には、ちゃんと理由を話して今回の精霊関係の話は内緒という事にしてある。

 そもそも、勇者や英雄になるべく召喚された子供達だ。

 上位精霊の力を宿しているだなんて知れわたったら、又ぞろぞろとお偉いさん達が、子供達を利用しようとするに違いないからね。

 

 これ以上、あの子達が他人や国などの利己に振り回される訳にはいかない。

 

 ユウキもある程度は察してくれているのか、少し息を吐きながら自分達を見てくる。

 

「……さすがはリムルさん達だ。シズ先生も浮かばれますね……。でっ、どうやったか僕にだけ教え――」

「ダメ」

「無理?」

 

 どうしても聞きたいユウキに強めに言って聞かせる。

 

「え~、リムルさんもウィンさんも、結構ケチですよね」

「それが漫画をくれた相手にいうことかね?」

「ごめんなさい!」

 

 リムルがユウキに強く出れるのって、その前世で見た漫画の所だけな気がする。

 

 最近……というか、学園で授業をしていると偶にユウキが様子見にやってくるのだが、彼は何かとリムルや自分に、学園の子供達と同様のモノを着るように勧めて来たりする。

 

 しかもご丁寧にクラスの名入りの、子供っぽい体操着からスクール水着まで色々だ。中にはランドセルなどの、小物が入った段ボールを持ってきていた事もある。

 何故かは知らないが、秘書の女性もノリノリで進めてくるので逃げるのに必死だった記憶もある。

 

 ちなみに、よく行くパティスリーにシュークリームを求めて行くのだが……そこで秘書の女性と良く会ったりもする。

 あれはユウキの好物を買いに来ているのか……もしくは、あの秘書さんの好物の可能性があるかもしれない。

 

「さてと、じゃあ俺達は子供達のところに戻るよ。ライナだけにも任せておけないからな、先生をやるのも、あと数日だしな」

「しっかりと子供達に教えないと、だね?」

「ちゃんとお別れ、すませてくださいよ。あの子達、リムルさんやウィンさんが帰るって知って、暴れてたんだから」

「ん、わかった?」

「あぁ、わかってる。しっかりと話し合ってくるさ」

 

 リムルはスライムボディから人型になって、ユウキの部屋から一緒に出て手を振りながら自由組合を後にする。

 

【しっかし……魔物になった俺が人の子と接するなんて、転生したばかりの頃は夢のまた夢だったはずなのになぁ】

【まだまだ大変だよ? 人間の国と交流して、魔国連邦の更なる発展の基盤を作るんでしょう? それに自分も色々と作りたいモノがあるし……】

【……お前はもうちょっと玩具から離れような。便利なモノもあるけど……】

【ムっ、リムルも楽しそうに遊んでるよね?】

【ウィンも俺も、祭り上げられた時はどうなるかと思ったが、どうにか盟主として、立ち回ってこれたって事で、いいのかな】

 

 テンペストが絡む話は流石に喋りながらというのは、この街では無理なので基本的に思念伝達での会話が主になっている。

 

 そんな感じで自由組合本部から帰る途中、よく買い物をするお店によってケーキやシュークリームを買い、料理人のオジサンにお別れ会に出すケーキを注文したり、ミョルマイルに会いに行って、ゆっくりと子供達とパーティーが出来るような会場なんかを紹介してもらったり。

 

 なんとか子供達のご機嫌を取りながら、テンペストへ帰る準備を進めていく。

 

 

 

 夜になってミョルマイルが自分達の事を聞いてか、食事なども食べれるお店を貸し切りにしてくれた。

 

「すげー! こんな店、初めてだ!」

「先生様様だね」

 

 ケンヤとリョウタは素直に感動しているが、ゲイルや女性陣からの視線が自分とリムルに刺さってくる。

 

「いや……ここって、高級酒処ってか、夜の店じゃん……」

「学園に知れたら、クビ?」

 

 ミョルマイルの事を説明して、あのスカイドラゴンが襲って来た時に助けた人物だと説明することで、何とか納得してもらえた。

 

「今日は貸し切りですので、ご心配なく。変に外に漏らす様な輩はいませんよ」

 

 ミョルマイルがにこやかに説明してくれる。

 

「先生達っていつもこんな店に通ってるのかしらね。いやらしい」

「そうなの⁉」

 

 アリスが揶揄うように言ってくる。

 

「通えるかよ。俺達の給料明細を見せようか?」

「あら? スラ……リムル様にウィン様」

 

 占いのお姉さんが自分達に気づいて、物凄く嬉しそうな笑顔で駆け寄ってくる。

 そういえば、彼女には無事に帰って来たと伝えてはいなかった。

 

「おや、顔見知りかね?」

 

 ミョルマイルが下品な笑みを浮かべながら、リムルの方をチラチラと見ている。

 

「やだ店長。前に二度ほど」

 

 占いのお姉さんは少し本当のことを交えながら、重要な部分は誤魔化して伝えてくれる。

 

「ふ~ん……」

 

 クロエのジト目がリムルに突き刺さり

 

「へー」

 

 アリスの蔑むような目が自分達を見つめてくる。 

 

「さっ! いまは楽しむ時だと思うな!」

「そうだぞ、ほらほらデザートもいっぱいあるから、皆で食べようぜ」

「話題を逸らしたわね」

「うん、そらした……大人の悪い手口だ」

 

 そんな冗談交じりのパーティーを過ごし。

 寮に帰ってからも、遅くまで皆でゲームなんかをしながら過ごす。

 

「あ、雪……」

 

 ふと外の方を見ると、白い粉雪が見えて思わず呟いた。

 

「わぁほんとだ! みんな見て!」

「雪が降ってる!」

 

 一番に窓際に駆け寄って行ったのはクロエとアリスだった。

 

「本当だ!」

「ちょっと! 押さないでよ!」

「待って、ボクも見る!」

「つもりかなぁ」

「シズ先生も雪がすきだったよね」

「めちゃくちゃはしゃいでたよね~」

「雪合戦は死ぬかと思った……」

「あははは、やったやった」

 

「もしかしたら、戻ってくるんじゃないかな!?」

「そうだよ!」

「シズ先生が好きだった雪だもんね」

 

 

 子供達がは騒いでいて、だれが言ったかは聞き取れなかったが……その言葉が自分達の胸に刺さった。

 

「きっと今夜、シズ先生は――」

「……戻ってこれない」

『リムル! アンタっ⁉』

 

 それは今言うべき言葉じゃない――っ!

 そう、自分も思ったが、同時にリムルの思いも知っている……きっと、間違っている事は、リムル本人が一番に理解しているだろう。

 

 リムルの表情を見れば……それだけは痛いほどに解るから……。

 

「え?」

「なぁに? リムル先生」

「いま……、何て?」

 

 もう、子供達は大丈夫……未来を見て生きていける余裕もある。

 でも何も教えず、シズ先生の事を伝えないのは、正しいのかっていう葛藤は前からあった。

 でもリムルは見たくなかったんだろう、明日でも良いとも思う。それを言ってしまうと来週か、一月後か、春まで待っても……自分達はテンペストに帰ってしまうのに? それで良いのかと……。

 

「シズ先生は、戻ってこれない。亡くなっているんだ」

 

 リムルが選んだ選択は、今で――。

 シズ先生を無垢に、何も知らずに待ち続けるのを、見たくないんだろう。

 

 その気持ちは、自分も解るから……、リムルを止める言葉が出なかった。

 

「ふざけないで‼ なんで、そんなこと言うのよ‼」

 

 一番最初に動いたのはアリスだった。

 

「やめろアリス!? リムル様は……」

 

 ランガも飛び出し、諫めるように叫ぶ。

 

「うっさいランガ、ハウス! シズ先生が死んだとか、言っていいことと、悪いことが――」

「……本当なの……ごめんね」

 

 リムルは無防備に胸倉を掴まれながら、何も言わずに目を閉じた。

 なんとかアリスとの間に入ろうと手を入れているが、リムルが阻止するように手を伸ばしてくる。

 

「アリス! アリスもういい!」

 

 殴ろうとしたアリスを止めたのは、意外にもケンヤだった。

 

「アリスちゃん!」

「アリス!」

「私達は大丈夫だから……だから……」

 

 男であるケンヤやゲイル、リョウタがアリスを止めるように体を掴み。

 クロエはリムルの方に抱き付いている。

 

 段々と落ち着いてきたのか、息を吐きながら今度は泣きながら自分とリムルに抱き付いてくる。

 

「ごめん……ごめんなさい、ごめんなさい」

「お、おい」

「アリス?」

 

 自分とリムルは殴られる覚悟があったのに、抱き着かれるとは思っていなかったので戸惑いの声が出てしまう。

 

「リムル先生、ウィン先生。なんとなく、わかってました……シズ先生の事」

 

 ゲイルがゆっくりと話し始めた。

 

「その仮面を持ったリムル先生が現れた時……ひょっとしてって」

「だけど、信じたくなかった」

「頭んなかごちゃごちゃでさ、何が本当かわからなくって」

「そのまま考えないようにもしたけど……けど」

「迷宮から帰ったあたりで、やっぱりそうなのかなって」

「ごめんなさい」

 

 ちょっと意外だったけど……子供達もしっかりと感じ取ってたんだね。

 

「……なんで俺達に何も聞かなかったんだ、今まで……」

「だって……」

「だって?」

 

 クロエが自分達の顔を真っすぐに見ながら、言う。

 

「シズ先生の話をする時、リムル先生もウィン先生も、いつもすっごく嬉しそうだったから……」

『そうね、彼女の話を聞いてる時とかってウィンもリムルも楽しそうに聞くものね』

 

 先生と言っておきながらも、自分達が気遣われていたんだね。

 

「でも、ざ、残念……です……」

 

 ゲイルが絞り出すような声で続ける。

 

「もう僕達は大丈夫だと。シズ先生を安心させたかった」

 

 

 その後は、皆でシズさんとの思い出を語りあった。

 自分とリムルは、ほとんど聞き役だったけど。

 愉快な話、悲しい経験。

 嬉しい出来事、辛い現実。

 正直、引いたエピソードもちょっとあったかな。

 

 

 濡れた頬が乾くまで。

 夜更けと共に笑顔に変わるまで。

 

 

 しっかりと話を聞き、恩師シズさんからの卒業であり――自分達にとっては、この自由学園での、役目の終わりを意味する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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