心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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115話 動き出す思惑の足音

 

 

 

 

 

 

   ▲△▲△視点:レイ△▲△▲

 

 

 

「師匠! 今日は模擬戦なんてどうっすか」

「ほう? 模擬戦とな?」

 

 この前、食堂で話していた内容だろうと思いますが……四対一ですか、ハクロウお爺ちゃんなら問題はないでしょう。

 不確定要素は、あのミュウランというウィザードですが。

 

「今日という今日は、イヤンと言わせてやるっすよ! 覚悟はいいっすかジ……師匠!」

 

 なんとも絶妙にキレのない挑発でしょう。

 

「ゴブタらしいですね」

「ほっほっほ。その意気やよし、久々に実戦に即した稽古をつけてやろう。レイはしっかりと皆の動きを見ておくのじゃぞ」

『はい! 楽しみです』

 

 私が戦闘に加わらないと聞いて、ゴブタは小さく「第一関門は突破っすね」と冷や汗を拭いながら言っている。

 

 ただ、その後にゴブタはミュウランというウィザードの方をチラ見していたので、何かしらの策があると見て間違いないでしょう。

 彼女の方も、ゴブタから目を逸らして気まずそうにしています。

 

「では始めるとするかの」

 

 ハクロウお爺ちゃんが一瞬でゴブタの方へと移動し、横なぎの斬撃を背後に倒れながらギリギリで躱している。

 

『……やっぱりゴブタは凄い』

 

 あの動きを見切っている訳ではないようだけれど、しっかりと躱している反応と反射神経は凄い。

 

「……液状化」

 

 ミュウランが呟くと、ハクロウお爺ちゃんの足元が沼みたいな状態になっていく。

 

「む……」

「掛かった! 今のうちに一斉に――」

 

 ヨウムが嬉しそうに叫ぶが、その時にはもうハクロウお爺ちゃんは移動している。

 

「「あれ!?」」

「あのジジイ、どこに……」

 

 いやゴブタ、それにヨウムもなんで驚いてるんだろう。

 修行中にハクロウお爺ちゃんが説明してくれた、移動方法の事を忘れているみたいだ。

 

「ジジイじゃと?」

 

 ゴブタはキョロキョロ探している間に、沼地から飛び上がっていたハクロウお爺ちゃんがゴブタの脳天目掛けて木刀を軽く叩き落とす。

 

「イヤンっす」

 

 あ~、お爺ちゃんって言えばまだ許してくれかもしれないのに、ゴブタも懲りないね。

 

「嘘だろ⁉ なんで普通に動けるんだよ‼」

 

 ゴブタが気絶して倒れていくのを見ながらヨウムが叫ぶ。

 

『瞬動法だよ』

「瞬動法じゃ。教えたはずじゃがのう」

 

 声を掛けられ、ヨウムが振り返った時にはハクロウお爺ちゃんが木刀の柄をヨウムのお腹目掛けて、突き出していた。

 

 無防備にお腹に一撃を入れられたヨウムは、そのまま蹲って倒れた。

 遅れて飛び出したグルーシスが飛び掛かるように木刀を振り下ろすと同時に、ミュウランが魔法で黒い靄を作り出してハクロウお爺ちゃんとグルーシスを覆う。

 

「む、これは……」

『ふ~ん、ブラインドかな。視覚を奪う魔法だね』

『アウス……こちらに来て良いんですか?』

『まぁ、ちょっとね……』

『良い腕だね。しっかりとグルーシスとハクロウを閉じ込めるようにしてる……密度も濃いし、あれなら見えないだろうね』

『そうですね、ただハクロウお爺ちゃんには効かないみたいですが』

『グルーシスは匂いや音で反応してるのかな』

 

 黒い霧の中で木刀を打ち合っている音が響く。

 

「フラッシュバン」

 

 ミュウランが今度は黒い霧から一気に閃光と音が強く響く魔法を発動させた。

 

『お、上手い……暗闇で瞳孔が開いていたら、怯ませるくらいは出来たかもしれないね』

『ですね~、まぁ思惑とは別の方が掛かってしまってるようですけどね』

 

 ハクロウお爺ちゃんは目を瞑ったままで、グルーシスの方が顔を手で覆いながら転げ回っている。

 

「ぐおおおおおお! 目が、目があっぁぁぁぁ!」

「嘘でしょ!? ちょっとまさか……」

 

 ミュウランが動揺しながらグルーシスの見ている。

 

「何をやってるのよ、この馬鹿っ‼」

「ほっほっほ。どうやら閃光を凝視したらしいのぅ」

「ええ……そのようです」

 

 ミュウランは頭に手を置きながら、グルーシスの事を見ている。

 

「続けるかね?」

「……いえ、私達の負けです。攻撃役の三人がこの有り様ではもう、なにもできないでしょうし」

「ほほほ、見極めの早いお嬢さんじゃな。何かとっておきの大魔法があるのなら、試してみても良いのじゃぞ?」

「……いいえ、私はしがない旅の魔導師。そんなものありませんわ」

「そうかね? ……まぁええわい。ところでヨウムを見てやってくれんかの。最近、成長著しいものでな、つい強めにうってしまったわい」

「ええ、向こうで休ませておきます」

 

 そう言ってミュウランはヨウムを起こしながら、なんとか木の根元まで運んでいった。

 

『……で、いつまで寝ているフリをしているのですか?』

「まったくじゃのう。起きているのは分かっておる、厳しくいくぞ」

 

 私とハクロウお爺ちゃんから声を掛けられて、身体をビクッと反応させているグルーシスとゴブタが、気まずそうに起き上がってくれました。

 

『良かったです、皆の戦いを見ていたので私も疼いてしまって』

「ほっほっほ。しっかりと鍛えてやらねばのぅ」

 

 

 

 ▲△▲△視点:レイ(End)▲△▲△

 

 

 ▽▼▽▼視点:アウス▼▽▼▽

 

 

 

「……気がついた?」

 

 なんともまぁ様になるお二人さんだ。

 ミュウランは少し心配そうにヨウムを見つめているし、ヨウムは気持ちよさそうに寝ている。

 ここにエリアが居たら五月蠅くはしゃいでいるに違いないね。

 

「ああ……こりゃいい。師匠にやられた甲斐があったってもんだ」

「何言ってるのよ。貴方は人間なんだから、無茶して死んだって知らないわよ」

「ははは、まるでミュウランは人間じゃないみたいな、言い方だな」

 

 そう言われ、ミュウランの表情が一瞬だが曇った様に見えた。

 

「これ本当にいいぞ。出来れば毎朝ここで目覚めたいもんだ」

 

 にこやかに言うヨウムのセリフに、ミュウランの顔が少し赤みを増す。

 

「馬鹿、冗談言える元気があるなら早くどいて頂戴」

 

 ミュウランがぺちっとヨウムの額と叩く。

 

「寄宿舎に戻りましょう。今日はロンメル達と魔法戦の勉強をする約束でしょ」

「あでで、わかったって。……冗談じゃねぇんだけどな」

 

 そんな二人が寄り添って歩く姿を、こっそり見送りながら僕は天気の良い空を見上げる。

 

『はぁ……たく、どうしようかな』

『迷うくらいなら止めとけ』

 

 いつの間にか背後に立っていたヒータが、吐き捨てるように言う。

 

『……そういう訳にもいかないだろう。なんか良く分からない連中が動き回ってるって報告が最近は増えてきてるんだから』

『確かにな……でも、アイツもきっと苦しんでるぜ。あの顔は悪い奴が出来る顔じゃねぇもん。ヨウムに任せてみねぇか』

『彼に……か?』

『どうせリムルの旦那も居ねぇし、ウィンも居ねぇ。何かきな臭いことがあるってのは分かるがよ、事態は後手の後手だ。ならアイツも被害者だと考えて動いてる方が、後にすぐに動き出せるってもんだぜ』

『それで大変な事態になったらどうするつも――』

 

 色々と考えることが多すぎて最近は嫌な考えがチラついていたせいか、思わず色んな事が口から洩れそうになったのに、それをヒータは分かっているかのように遮った。

 

『それをさせねぇ為に、オレ達がいるんだろうが……ヨウムはリムルやウィンが信じた人間だ、ならアイツが想ってる女くれぇ、アイツに任せるのが筋だ』

『ヒータみたいに、真っすぐ考えられないよ……』

『だはは、そうだな。アウスは面倒なことをごちゃごちゃと考える悪いクセがあっからな……まぁ、なんだ。お前は如何に最悪な状況にならないようにするかだけ、考えとけよ。オレはオレらしく皆を守ることに徹してやっからさ』

 

 笑いながらボクの背中を叩いてヒータはボクの前を歩いて行く。

 

『まったく、もう少し言い方ってないの?』

『ハッ、お前の性格なんてお見通しだってぇ~の。荒っぽいことはオレに任せとけよ』

 

 

 

 

 ▽▼▽▼視点:アウス(End)▽▼▽▼

 

 

 

 ▲△▲△視点:エリア▲△▲△

 

 

 

 

『やっほ~、元気にやられたのかなぁ~』

 

 仲睦まじく歩いて来たヨウムとミュウランを見て声を掛ける。

 

「エリアさん。えぇ、ハクロウさんにやられてしまいました」

「あの爺さんは相変わらずだ」

『ふ~ん、その割には仲良さそうに歩いちゃって~。見せつけてくれるねぇ』

「もう揶揄わないでください。先に部屋の方に行ってます」

『顔真っ赤にしちゃって可愛いなぁ~』

 

 良いねぇ、あの可愛らしい反応は実に良い。

 

「………………なぁ、エリアさん。少し良いか?」

『ん~、良いよ~』

 

 ミュウランが居なくなってから急に真面目な顔になったヨウム君。

 さて、彼はどこまで気付いているのか私も気になるし、丁度良いかもしれない。

 自分の何時ものテンションを崩さずに、ヨウムを連れてちょっと移動する。

 

 少し歩きながら、あんまり人がいない場所へと移動する。

 

「あのよ……アンタ達がミュウランを怪しんでいるのは、分かってる。アイツが何か隠してるっていうのも、何となくだが分かる。で、でもよ、アイツは良い奴なんだ……」

『ふ~ん、それって私達に何か関係があるかなぁ~。それでテンペスト、ウィンや私達が大変な目にあっちゃったらどうしてくれるのかなぁ~って思うな』

 

 意地悪な質問だというのは重々承知。

 でも、男の子ならしっかりとした意思を見せてくれないと、私は信じ切ることが出来ないよ。

 

 ――さぁ、ヨウム君、貴方はなんて答えるかな。

 

「俺が……俺がミュウランを見てる。アイツが何かしたら、俺が何とかする! だから頼む、ミュウランを見守ってやってほしいんだ」

 

 意外にも真っすぐな言葉だった。

 飾らずに言うヨウムの姿は素直にカッコイイと思う。

 

『ん~、それは私の一存じゃ無理かなぁ』

「あ、そう、だよな……すまねぇ」

『でもね~。私個人としては、信じてあげても良いよ。カッコ悪い姿を見せてまで頼んで来たヨウム君に免じてね』

 

 それに、こんなラブラブ展開を見過ごせない。

 えぇ私個人としては、全力で観察……基、ラブストーリーを堪能……じゃなかった、応援しようじゃないか。

 

「あ、ありがとう! エリアの姐さんだけでもそう言ってくれて嬉しいぜ」

『ん~、多分だけど私だけじゃないよ? ……でもね、男なら発した言葉には責任を持ってね。しっかりと彼女を見ていてあげなきゃ、ダメなんだからね』

「分かってる! ぜってぇにミュウランから目をはなさねぇよ」

『それならヨシとしよう』

 

 

 後でアウラに何て言おうかなぁ。

 

 ヒータも実は乙女チックな所があるし、先ずはヒータから仲間に引き込もうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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