心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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116話 始まりの声と音

 

 

 

 

 

 

 

   ▲△▲△視点:レイ▲△▲△

 

 

「わぁああっ⁉」

 

 急に聞こえた悲鳴が森に響き、急いで向かっていると先には、街から子供達が森に遊びに出たというので、探していた最中の事だった。

 

 少しすると金属音がぶつかり合う音が聞こえる。

 

「何をしてるんですか‼」

 

 狼の獣人の女の子と翼の生えた女の子、それに人間の少女がゴブリンの子供達を庇う様にして、鎧を着た男達との間に入っている。

 

 アレは確か、最近になって警備隊の仕事を手伝ってくれていた子達だ。

 

「ちっ、仲間が近くにいやがったか」

「獣人族と有翼族、それに人間……のガキか」

「子供達はどうです!?」

「この子はひどい怪我だわ」

「他の子は大丈夫なの」

「早く手当てを……!」

「あたしに任せて」

 

 ふむ、人間の女の子は回復魔法が使えるようですね。

 

「リカバリー」

「応急手当はしたけど、ちゃんとした治療が必要よ」

「どうしてこんな事をするです!? この子達がなにをしたって言うですか‼」

 

 獣人、たしかライカンスロープという種族の女の子が叫ぶように言う。

 

 それを嘲笑うように鎧を着た男達が笑い出した。

 

「はははっ、なんか言ってら」

「ははは、どうしてだってよ。そんなもん、魔物だからに決まってんだろ?」

「忌まわしい魔物が怪我しようが、死のうが何か問題があるか?」

「むしろ一匹でも多くこの世から滅するべきだろ?」

「安心しろ、全員ちゃんと殺してやる」

「まずは良い毛皮がとれそうな、お前だ!」

 

 獣人の女の子は短剣を振るって、相手の剣を切断した。

 

『良い腕前ですね。ハクロウお爺ちゃんが褒めるはずです』

 

 少し前から話題にチラホラと上がっていた少女達は、きっとこの子達で間違いはなさそうですね。

 

 殺気を向けるも、すぐに自分を御して獣人の少女は短剣すぐに収めてしまった。

 

「……ネム、子供たちを連れて先に行くです」

「わかったの」

「ここは私とステラで――」

『私もお手伝いしますよ』

 

 そう言いながら出ていくと、少し驚いた顔でこちらを向く。

 

「魔物ごときが、舐めた事を! やれ‼」

『少女一人に大人が三人で襲うなど、紳士的とも言えないですね』

 

 獣人の少女は身軽に躱していたので、私はすぐに剣を振り下ろしていた男達の得物を全て木端微塵に打ち砕く。

 

「アナタは、レイ様……ですか⁉」

 

 不用意に剣を下げている兵士の剣を足蹴にしてへし折りながら、喋りかけてくる。

 

『やはり良い動きですね。そうです、そういう貴女達のお名前を聞いて宜しいでしょうか? ハクロウお爺ちゃんから話は聞いていますが、ね』

「フォスです……援護、ありがとうございます!?」

 

 自分自身も無手で対応しながら、掌底などで相手の体制を崩して武器破壊に集中していきます。

 

「こっ、こいつら。武器だけ……っ⁉」

「ふざけやがって‼」

「お前、魔物には使えない神聖魔法を使ってたよなぁ。って事は、人間だよなぁ? 人間は殺したらまずいなぁ……でも、魔物が殺した事にすれば――」

「あんたたちの話なんて聞く気はないわ。まずは一発、あの子の分よ!」

 

 もう一人、彼女の方はフォスって子とは違い殺気を隠そうとも御そうともしていません。

 

「そして、これでお終いよ!」

「ステラ! 避けるです」

 

 殺そうとしていた所をフォスが割って入って止めた。

 

「フォス!? ちゃんと周り見なさいよ!」

「殺すのは、ダメですステラ」

 

 そう言われてステラと言われた子の殺気が静まりました。

 

「テンペストの……リムル様とウィン様の思いは、魔物と人間の共存共栄なんです」

「なによ! すっきりしないわね!」

「このクソガキが‼」

 

 後ろを向いていながら、ステラは騎士の手首に手をあて、相手の力を利用するように投げ飛ばした。

 

「はぁ!」

『上手いですね。良い体術です』

「褒めても何も出ませんよ!」

 

 この分ならば私の加勢は必要なかったかもしれませんね。

 

 この場に居た兵士や騎士の武器は全て使い物にならない状態にするように、動きましょう……。

 

 自分も加わった事で、あっという間に敵さんの武器は全てへし折って攻撃手段をなくしてあげることに成功しましたが……さて、これからどうしましょうかね。

 

「もう降参するです。武器は破壊したです、このまま引き返すです」

 

 敵兵の偉そうな騎士が折れた剣を見つめながら睨みつけてくる。

 

『まだやりますか? 次は手加減をしませんよ』

 

 殺気を混ぜてと剣気と共に飛ばしてやると、目の前にいる者達が悲鳴を上げて一歩下がった。

 

「クソがあぁあぁぁ‼ 調子に乗りやがって‼」

 

 折れた剣を地面に投げ捨て、こちらに向かって指差してくる。

 

「このままで済むと思うなよ! 絶対に殺してやる! 毛皮にしてやるからなぁ‼」

 

 

「……人間と戦ってしまったです」

『そうですね、それは私も同罪ですよ。それよりも、戻りましょう』

 

 あんな者達が居たという事は、何かが起きているはず。

 街の方は、大丈夫でしょうか……。

 

 

 

 ==そうして子供達と街に戻って来たと同じくらいでしょうか……急に、街を覆うように結界が張られて行きました。

 

 

 

 

  ▽▼▽▼視点:レイ(end)▽▼▽▼

 

 

 ==同時刻、別の場所で==

 

 

  ▲△▲△視点:エリア△▲△▲

 

 

 ベニマル君が通信水晶でソウエイ君から情報を聞いているが、ちょっと空気が悪い。

 最近はきな臭いことが多すぎて、情報を集めようにも上手く廻ってない気がする。

 

「ファルムス王国が戦争準備?」

 

【そうだ、だがファルムス王国と表立って敵対している人間の国はない。どこに仕掛けるつもりか、探らせているが……】

 

「わかった、何か掴めたら報告してくれ」

【了解】

 

「何か、あったのですか?」

「うむ……、先日から五百名程の武装した人間が、ここへ向かっているのが報告されたのだ。その後ろから、更に……数は分からないが……彼らの所属先をソウエイ殿に探ってもらっていたのだが」

 

 腕踏みしながら、唸る様に俯くリグルドさんにアウスが眼鏡を直しながら続ける。

 

『……やっぱり、きな臭いよね』

「あぁ、リムル様に知らせよう」

 

 ベニマル君の言葉に全員が頷いて答える。

 

「リグルを呼んできてくれ。対応を誤らないよう、警備隊に注意喚起しておく」

「はい」

 

 リリナさんがすぐに動き出して、部屋の外へと走って行った。

 

「ではリムル様にお繋ぎする準備を……」

 

 そうリグルドさんが通信水晶を弄ろうとした時だった。

 

 ジ……ジジジ――っと音が流れ始めた。

 

【――ます。応答――……ます】

 

 通信状況が悪いのか、乱れた映像から徐々に姿が映し出されていく。

 

【こちら獣王国ユーラザニアのアルビス。テンペストの幹部の方。応答願います。緊急の要請でございます】

「アルビス殿!?」

 

 リグルドの言葉に皆の視線が水晶に集まった。

 

「ベニマルだ。緊急と言ったな……用件を聞こう」

【我が国ユーラザニアは、一週間後。魔王ミリムとの交戦状態に入ります】

「……何だって?」

『どういうこと⁉』

 

 ベニマルとアウスが声を上げながら通信水晶の方へと駆け寄る。

 

【ついては貴国にて、避難民の受け入れを頼みたいのです。突然の要請、申し訳なくおもいます】

 

「おい、待て。そりゃ一体どういうことだ!?」

『そっちの状況はどうなってるの⁉ なぜミリム様が――っ⁉』

 

【ど……か、願いま……】

 

 ブツっと通信水晶の映像はそこで途切れた。

 

『……っ⁉ ごめん、ちょっと出てくる』

『エリア‼ こんな時にどこに!?』

『気になることがあるのよ‼ 確かめたことがね』

 

 今は緊急事態という事で、悪いけど悠長に部屋のドアから出ていく気はない。

 窓を開けて、そこから杖で空を飛ぶ。

 

 嫌な予感がする。

 

 何をしようとしてるのか、聞かなきゃいけない。

 

 お願いだから、お願いだから早まらないでよミュウランちゃん⁉ 無理やりでも聞き出さなきゃダメだったんだ。

 

 急いで姿を探し回るけど、なかなか見つかってくれない。

 

 

『見つけた‼』

 

 見つけた場所に急降下していくと、そこにはグルーシス君も居た。

 

「どこ行くんだミュウラン」

「グルーシス……。なぁに? 何か用? いや、用っつーほどじゃねぇんだけどな。例の話、知ってるかなと思ってさ」

「例の話?」

「食堂に新作のお菓子が出るようになったって話だよ。シュークリムルとかいう名前で、すげぇ美味いらしい。暇なら今から食べに行かねぇか?」

 

 真剣な話かと思ったら、何聞いてるのよグルーシス君。

 

「ん? どした?」

「……いえ。せっかくだけど実は昨日もらったばかりなの、それに今は急いでいるから……」

「もしかして、ヨウムか?」

「え、ええ」

「あの野郎。また抜け駆けかよ」

「ともかく、私はちょっと用事があるから。また後で……」

「後で? 本当に後で会えるのか?」

 

 出ていくタイミングを逃しちゃったじゃいのグルーシス君のせいで……とか思ってたら、急にグルーシス君が真面目な顔で語り出した。

 

「さっき俺に不自然な連絡がきたんだよ。獣王国ユーラザニアが魔王ミリムから宣戦布告を受けたってな」

「魔王ミリムが?」

「ああ、なんでも一週間後に攻めにくるとかなんとか」

「大変じゃない、あなたは帰らなくていいの?」

 

 ミュウランちゃんは作戦自体を知らない……とぼけている部分もあるが、全体の流れは知らない感じがする。

 

「らしくねぇと思わねぇか?」

「え?」

「魔王ミリムだよ。“破壊の暴君”と呼ばれちゃいるが、道理のわからない方じゃない。かつてカリオン様は魔王ミリムをそう評していた」

「……あなたの主、魔王カリオン様が逆鱗に触れたのかもしれないわね」

「まぁ、それは無いとはいえねぇけどな。お二人の性格を考えると、第三者の意思が介在してるって方がよほど自然だ」

「おかしなことを考えるのね。第三者だなんて、根拠はあるの?」

「獣の勘といわれちゃ、それまでだけどな。ユーラザニアの友好国テンペストで、出自のはっきりしない魔人が宣戦布告のあった、まさにその日に、人目を忍んでなにか成そうとしている」

 

 グルーシス君もしっかりとミュウランちゃんを見ていた一人だったってことだね。

 

「答えてくれ、ミュウラン。お前、誰の命令でここにいるんだ?」

「……そう、私が魔人だと気付いていたの……普段は鈍いくせに、こういう時は鋭いのね」

「誰の命令で何をするつもりかは聞かねぇ。でも、今はやめておけ。この国の上層部は今ピリピリしてるんだ。俺はユーラザニアの客だからと、教えてもらった。数日前から人間の武装集団が接近しているらしい」

「……それは、知らなかったわ」

「余所者が怪しい動きをすれば、捕らえられちまう。だから今は大人しくしてろ」

 

 そう言って止めようとしてくれるグルーシス君に背を向け、逃げるように歩き出したミュウランを止めるように、自分もその場へ降り立った。

 

「アナタは……」

『エリアよ、ミュウランちゃん。魔人ではないけど、同じ魔女ではあるんじゃない?』

 

 これはただの、私の勘。

 でも外れてはいないはずだ。

 それを証拠に、ミュウランちゃんは下唇を噛んで自分を見てくる。

 

「やるしかないのよ……私に他の選択肢はないの。邪魔をするというなら……殺すわ」

 

 そいうとミュウランちゃんが風を巻き起こして変身する。

 

「うおっ⁉ ミュウラン、お前……。どうしてそこまで‼」

『……まさか、死ぬ気じゃないよね⁉』

 

 私がそう聞くと、彼女は何も答えなかった。

 

「何故だ!? 命がけでやらなきゃならねぇほどのことなのかよ⁉」

『貴方の主は一体、何を企んでるの⁉」

「黙りなさい! それ以上喋るなら、本当に殺すわよ」

 

 そう吐き出すようにいうミュウランちゃんの言葉に、何も言えなくなってしまう。

 

「その話、詳しく聞かせろよ」

『え⁉ ヨウム君!? なんで――』

「エリアの姐さんが言ったんだろ。見ててあげろってさ」

 

 そう言いながらヨウム君は何も手に持たず、無防備に歩いてミュウランちゃんの方へと歩き始めた。

 

「ミュウラン、何か事情があるなら話せ。俺が守ってやる」

「馬鹿なの⁉ この姿を見たらわかるでしょ? 私は魔人なのよ⁉」

 

 そう言い放ち、突き放そうとするミュウランちゃんの言葉なんか知らないと、ヨウム君は歩む速度を緩めることなく進む。

 

「それがなんだってんだ。種族だなんだなんてのは、本人の魅力とは全く関係のない話だ。この国の主がスライムや魔女だと知った時、俺はそれを痛感したんだよ」

 

 ミュウランちゃんは殺すと言葉にしながらも、手を出してこない。

 

「お前が好きだ、ミュウラン。惚れた相手を守りたいってのは自然な感情だろ」

 

 ヨウムは変わらない笑顔でミュウランちゃんに語り掛ける。

 

「……い、今までの私は貴方を騙すために造り上げた虚像にすぎないのよ! 貴方が惚れた相手は実際には存在しないわ‼」

 

 取り乱して叫ぶミュウランちゃんは、ヨウムを追い払うように手を振りかざすが……ヨウム君はその手を掴んで抱き寄せる。

 

「安心しろミュウラン。俺は死ぬまで、お前に騙されてやる。最後まで信じれば、それは真実と変わらんからな」

「…………離して」

「あ、すまん」

「なにどさくさ紛れに抱きしめてるんだよ!」

「いや、この流れなら許されるかと思って」

「許さねぇよ、俺が‼」

「なにぃ、お前カンケーないだろ‼」

「ありがとう、ヨウム」

 

 

 なんであんな悲しそうな顔で笑ってるのかを考えるべきだった。

 ミュウランちゃんが従ってる理由って……もしかしてヨウム君だったの⁉ 自分の命なんか始めっから差し出す覚悟だったの⁉ そんなのダメだよ。

 

『馬鹿ッ‼ なんで⁉ なんでよミュウランちゃん⁉』

 

 

「ミュウラン‼」

 

 自分の声とヨウム君の声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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