心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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117話 霊術と心の炎

 

 

 

 

 

 

 

  ▲△▲△視点:ヒータ▲△▲△

 

 

 

 いきなり街中に結界が張られて、多くの魔物達が力が抜けた様に座り込んでいる。

 

『クソッ!? 御巫達と今後の対策を話し合ってたら、いきなりこれかよ‼』

 

 宣戦布告も無しに攻め込んで来るなんてな。

 理性ある奴らのやる事じゃねぇぜ、そこらに居る獣と変わらねぇじゃんかよ。

 

 安全地帯は御巫達がいる神社だ。

 いま結界を張らせて、避難場として住民の保護が優先……。

 

『ったく、アウス達は何してる!? 空も飛べねぇしよ』

 

 走りながら幹部共を探しているが、見当たらねぇ。

 

『おい! 動けるものは神社に避難しろ‼ 多少なりとも力に余裕があるヤツは火消に回れ‼ 項垂れてねぇで動け男共‼ 下向いてる暇がどこにある‼ 耳ぃすませて周りの声を聞いてみやがれ‼ 情けねぇ面してるヤツはオレがぶっ飛ばすぞ‼』

 

 オレの声を聴いて黒頭巾を被ってるゴブエモンだったっけか、顔を上げてオレの方をみてくる。

 

『この辺のことは任せるぞ‼ ゴブエモン‼』

「はいっ‼」

 

 良い面になってやがるから、アイツなら、きっと大丈夫だろう。

 

 なにが起きてるかは分からねぇ。

 だが自分はコイツらの上に立って指示する立場だ。

 混乱してるヒマも、動揺して立ち止まってる時間もねぇんだ。

 

『考えろ‼ 今、何をすべきか‼ 己の身はしっかり守れ‼』

 

 正直、誰かにって言うよりもオレがオレ自身に向かって鼓舞しているだけだが、それでも誰かが声を聴いて動いてくれたら、それで良い。

 

「この街は! 魔物に汚染されている! 我らの神ルミナスは魔物の国など断じて認めぬ! 故に‼ 聖方聖教会の助力を受け、武力をもって制圧する!」

 

 馬に乗って街を駆け回りながら剣を振り回している騎士が叫んでいる。

 

『ふざけんなっ‼ テメェらが勝手に暴れて攻め込んで来てんじゃねぇか‼』

 

 悪態を付いて走りながら進んでいると、誰かが争っている音が聞こえてきた。

 

「シオンっ⁉」

 

 その場には女と若い男二人。

 

 ゴブタやハクロウが切られて様子で倒れている。

 

『テメェら!? なにしてやがる!?』

「ひゅ~、こっちも良い女じゃん。胸は残念なようだが、気の強そうなヤツだな」

 

 シュナは切られて倒れているゴブゾウに寄り添い、シオンは子供を庇った様で、子供に被さる様にして倒れている。

 

『これをやったのは、テメェらか?』

「あぁ、だったらなんだ? 魔物が居たから殺しただけだろうが?」

「そうそう、先に変な事をしてきたのはそっちなのよ~」

 

 見下すようにゴブタやゴブゾウ達を見て、嫌らしく笑っている。

 

『そうか……この結界もそっちの策だろうなぁ』

「さぁ、なんのこと?」

『だって、お前ら全員、弱そうだもんよ。動けないようにしてからしかケンカも売れない様な雑魚だろ……』

 

 オレが挑発するように言うと、目の前の人間達三人が露骨に苛立った様子をみせる。

 

「ヒータ様! ダメです」

『るせぇ⁉ こいつ等を許すなんぞ出来っかよ‼』

「それでも! 人間との――」

『こいつらは全員、敵だ! 人間じゃねぇよ、こんなことただの獣と同じだ』

 

「はっ、威勢がいいなぁ女。遊んでほしいのか?」

「魔道師でしょう、軽く痛めつけてやろうよ」

「少しは口のきき方ってヤツを教えてあげないとね」

 

『なめんなよ……お前ら全員、オレ一人で十分だってんだ。騎士共含めて、全員ここから追い出してやるよ』

「無理です! ヒータ様!? 魔法はいま使えないんですよ!」

『シュナ様よぉ。なんでオレ達が霊術師って言われてっか知ってるか?』

「……いえ、ウィン様も含めて、よく知りません。けど――」

『殺さなきゃ……良いんだろう。追い出すだけだ、コイツら全員――炎の恐怖を叩き込んでやる。手は出すなよ……これは、オレが勝手にやることだかんな。それになぁ――』

 

 本来の力は出せねぇが、ここで何もせずに居たら――。

 チラッとシオンの方を見る。

 

『ここで黙ってるなんざぁ、後で笑われるのだけは勘弁ならねぇんだよ』

 

「ちっ、痛めつけて泣かせてやるよ。後で楽しんでやるぜ、お前もなぁ‼」

『火円美、拳衝‼』

「避けて下さい‼」

 

 糸目の兄ちゃんが生意気そうな男に叫ぶが、遅い。

 自分の拳に炎を宿し、一気に燃え上がらせていく。

 

「だゎ! あっちぃ!?」

『その炎、そう簡単に消えねぇぜ』

「わわっ‼ ちょっとこっちに来ないで!?」

「まったく、ここは――」

『爆炎衝‼』

「っち、面倒な‼」

 

 炎の拳を地面に着けて、辺りに火を生み出す。

 

「ヒータ様!? ここにはッ‼」

『問題ねぇよ。言ったろうが、火霊術は、ただの魔法じゃあねんだって』

 

 周りに放った炎は燃え広がりながらも、ゴブタやハクロウなど倒れている仲間には一切の傷を負わせていない。

 逆に守るように彼らの体を包んで、静かに燃えているだけで熱も感じないだろう。

 

 そして周りにいる騎士達には物凄い熱が襲い掛かっている。

 

「この術は、いったい……これって……」

 

 シュナは綺麗だと思ったのか、触って確かめるような仕草をしている。

 

「まさかっ⁉ ヒータ様!?」

 

 この炎は自分が生み出した分身体みたいなもんだ。

 今の状況で魔法も、魔素も使えない状態で使えばどうなるかなんて考えればすぐに止められるだろうが、悪いが、止まる気はねぇよ。

 

『……悪いな、コイツら全員を追い出すまで、止めねぇぜ』

 

 そう言いながら、笑ってシュナを見る。

 

「この、調子乗ってんじゃねぇよ!」

「早くその生意気な小娘をやっつけてよね!」

「そうしたいのは、山々なんですけどね」

『はっ、ほら見ろ。テメェらは自分より弱い奴にしか相手できねぇ雑魚じゃねぇかよ』

「このっ⁉ うざってぇんだよ‼」

 

 殴り込んで来た生意気そうな男の腕を掴んで、一気に燃え上がらせる。

 

「ぐあぁあぁぁ! 放せ、放せクソが‼」

「きゃあぁぁあ!? 熱いっ! 顔が焼けちゃう!」

「このっ――」

『お前が一番厄介そうだからな。近付いて来てくれて感謝するぜッ‼』

 

 細目の男による攻撃は甘んじて受けるしかなかった。

 刺された部分が妙に熱いが、それだけだ、今はコイツらに……恐怖ってヤツを植え付けてやれれば、いいんだ。

 

 突き刺された刀身を掴んで放さない。

 

「なっ⁉ この!?」

『思い知れよ……痛みってヤツをなぁ‼』

 

 自分の体を使って足元から火柱を発生させる。

 

 こいつ等を巻き込む様にして、少しでもダメージを与える様に――。

 

『ぐぁっ⁉』

 

 どこからかボウガンが撃ち込まれて、肩に刺さったせいで刀身を握っていた手と、生意気そうな男の腕を掴んでいた手を放してしまった。

 

「クソっ‼ この――」

「今は、逃げますよ」

「この……あんた、覚えてなさいよ‼ 絶対に泣かしてやるからね‼」

『まだやんのか? いいぜ、これから先は命の保証はねぇけどな』

 

 手に平を前に翳し、炎の渦を作り出しながらゆっくりと迫っていく。

 さすがに炎の熱さを思い出してか、全員が一歩、一歩と下がって逃げ腰になっていき、最後には悪態を付きながら街の外へと駆け出して行った。

 焼け爛れた腕や顔を抑えながら、生意気そうな人間達を追い払った。

 

『へっ、ざまぁ見やがれってんだ』

「ヒータ様!? しっかり、しっかりしてください‼」

『あ~、わりぃな……ちょっと力が入んねぇんだわ……他の、奴らは無事か?』

「はい……はい。被害は最小限ですから……」

『あの阿呆は、大丈夫かよ?』

「シオンは……その……」

『ったく、やっぱ糸目男、アイツが厄介だったな。ゴブタやハクロウは?』

「二人はまだ、息はあります……重症ですが……」

『多分、なんかしらのスキルだろうけど、傷口になにか微量に感じやがる。こりゃ、普通に治療したんじゃ治んねぇな……リムルを頼った方が良いだろうぜ』

「もう、喋っちゃダメです、傷が……」

『ウィンに、ちょっと謝っといてくれねぇかなぁ。眠くってよ』

「それはご自分で伝えてください‼ ヒータ様!? ――――っ‼ ――――」

 

 ウィンは怒るからなぁ。

 アイツは……争いごとが嫌いだからなぁ。

 でもまぁ、仲間があんな扱いを受けてたんだ……きっとウィンだって怒るだろう……仲間を傷つけたヤツをぶっ飛ばすのは、オレの役目だ。

 大丈夫、ウィンなら許してくれるよな……、さすがに、疲れたぜ。

 

『わりぃ、先に、休むぜ……後は頼むぜ、ウィン』

 

 空に伸ばした手を、誰かが掴んでくれるが……視界が歪んでいて、誰かは分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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