心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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120話 己の心とその行方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルのところからヒータの使い魔によって暖かい光に包まれ……しばらく目を瞑っていると、周りには焦げ臭く……血の臭いが漂い始めた。

 

「ウィン様!?」

 

 朱菜の声が聞こえて目を開くと……目の前には多くの者達が倒れている光景が広がっていた。

 そして自分の足元に倒れている人影も、風の流れで感じ取ることが出来る。

 

「お戻りに……なられたのですね」

「うん……」

 

 朱菜が寄り添うようにしているのは、ヒータだった。

 傷だらけ、という訳ではないが……致命傷を負っている事は分る。

 

「あ、その……リムル様の回復薬でも……効果がないんですっ‼ ウィン様なら――」

「……それは……無理。自分がここに、飛んで来た時点で、ヒータは……」

 

 一生懸命に震える手でヒータの手を握っている朱菜の顔が、絶望に染まっていくのがわかる。

 

 ヒータの命をトリガーに発動したのは、きっと{憑依解放}の罠カード。

 この街にずっと展開していた永続罠カードだ。

 自分のフィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できるカード。

 

 きっと相手を殺す気になれば……こんな事にはならなかったはずだ。

 

 だって、ヒータに致命傷の傷はあっても、苦戦したようなボロボロな姿ではないのだから……手加減なんか、しなければ……ヒータはきっと、生きていた。

 

「ウィン様‼ お戻りになられたのですね」

 

 リグルドが少しだけ申し訳なさそうに、自分に声をかけてくれる。

 

「ウィン様? あの……もうしわけ――」

「ごめんね……自分が争いをして欲しくない、なんて言ったばかりに……こんなことになっちゃったんだね」

「それは違い――」

「違わないよ……きっと、本気で戦っていれば、被害なんて最小限ですんだはず」

 

 いまは、朱菜にどんな顔を向けて良いのかわからない……ヒータだけじゃない。

 この場には、もう一人。

 朱菜にとって一番身近な人物も、息をしていない状態で倒れているのだから。

 

「お願いです‼ ご自分をそんなに責めないで下さい‼」

「そうですぞ‼ これは攻めてきた敵が卑怯な手段を用いて――」

「ごめん……ごめんね、みんな。こんな事になるとは考えてなかった、自分の甘さが、皆を苦しめるなんて――」

「ウィン様‼ 失礼しますっ‼」

 

 パンッと頬に軽い痛みを感じた。

 

 痛みを感じて、初めて朱菜の顔を見た。

 

「しっかりしてください‼ ウィン様は、貴女様は私達の主で、ここの盟主様です‼ リムル様と並び、ここの者達を導いていく御人でございますよ」

 

 強いな……朱菜は。

 いや、こんな役回りをさせてしまっている自分が情けない。

 彼女だって、泣きたいはずなのだ。

 それを証拠に、彼女の瞳は潤んでいて、必死に涙を堪えながら気丈に立っている。

 

「ありがとう朱菜。状況を――ッ‼」

 

 たぶん、ここで異変を感じているのは自分だけだろう。

 

「どうされました?」

 

 リグルドが不安そうに聞いてくる。

 異変を感じた方を睨みつけるように見る自分に、朱菜が不安そうに自分の顔を覗き込んでくる。

 

「あちらは、ここを襲って来た者達が逃げて行った方向……ですね」

『ウィンっ⁉ ゴメン‼ 守れなかった』

 

 アウスが息を切らしながら人込みをかき分けるように街の方から走って来た。

 

「ううん、色々な事を頑張ってくれてたんでしょう……それより、この結界の内側からなんとか結界を張れないかな? 今のままだと……かなり不味い状況になる」

「どう、したのですか?」

「きっとリムルも直ぐに駆け付けてくれる。それまで耐えて欲しい、アウス‼ 街に居た住民や客人をしっかりと守ってほしい」

「ウィン様……どうしたのです?」

『う、ウィンはどうするつもり』

 

 さすがに……これは流石に頭にくるね。

 

「アイツら……この街に居る人を無差別に殺すつもりみたい」

「どういうことですか‼」

 

 リグルドが叫ぶように聞いてきたので、初めて湧き上がる怒りを抑えられずに漏れだすどす黒い妖気を纏いながら、襲って来た奴らがやろうとしている事を告げる。

 

「毒をこの街にまき散らす気みたい」

 

 自分がそう告げると、全員が絶句して声をなくした。

 

「た、大変っ⁉ いそいで――」

「これは、自分一人でやる……手出ししなくていい。皆は街のことに集中して、大丈夫……これ以上、この街に居る人達に手出しは絶対にさせないから」

『何言ってるの‼ ボクも――』

「これは自分の勝手な決定だから、ダメ。皆はリムルの指示に従って」

「なにをおっしゃいます、我らも――」

「これは命令だから、悪いけど……逆らうなら容赦しないよ?」

 

 これは一人で行った行為。

 ここには違う国の人間達も居る。

 

 証言としては十分、彼らはリムルに従ったとすれば……最悪の場合、危険視されるのは自分一人で済むはずだ。

 

 それに、もう怒りという感情の抑え方が、わからない。

 近くに誰かがいて、自分の力を全力で振るった時に巻き込まないという自信がない。

 

 力を抑えることを止めたせいか、自分を中心に嵐のように強い風が吹き荒れ始めた。

 

 こんな事をした奴らには、それ相応の苦しみを味わって貰う。

 何もしていない者達を傷つけ、笑った者にはその痛みを倍にして返してやろう。

 

 ヒナタが言っていた。

 

 魔物だから殺すのだと……。

 

 ならば、そんな理屈で言うのなら……。

 

 こちらは敵とみなして、お前ら全員の息の根を絶ってやる。

 

 怒りのままに、魔物として、お前らを地獄へ……いや自分の糧にしてやる。

 

 背後から、何か声が聞こえた気がしたが……風の音しか聞こえないし。

 

 

 

 

 ==毒をまき散らそうとしている敵拠点。

 

 

 

 結界内にまた留まっている兵士達が笑いながら街にいた者達の話をしていた。

 

「はは、こんな面倒なことしないでさっさとやっちまえば良いのによぉ」

「そうだな、俺もそれには同意だが。お偉いさん方には逆らえねぇよ」

「でもよ、あの街にはまだ人間達だっているんだろう? 良いのか?」

「死んだら死んだで街の魔物が殺したって事にすんだよ」

「後は攻めると定めた日まで街に人間達が残ってちゃあ体裁が保てねぇだろう。毒を撒けば嫌でも街から出ていかずにはいられねぇってこった」

「にしても、結界内だっていうのに嫌に風が強くねぇか?」

「急に強くなってきたな。さっさと準備を完了させて戻ろ――」

 

 その場で苦しそうに喉に手をあてながら、膝をついて倒れる。

 

「ばか、お前なに毒を――」

「違うっ‼ 警戒しろ!?」

「何だ!? なにがっ⁉ ギャアャア――ッ‼」

 

 一人は急に全身を切り刻まれて、血まみれになって転がり回る。

 鎧を着ていようが、関係なしに裂けていく。

 

「なにが起きてる!?」

「わかりません!?」

 

 ゆっくり彼等の下へと歩いて行く。

 

「なに、者だ!?」

「……答える必要、ある?」

 

 なんでこんなヤツらに自分の名を名乗らないといけないのか分からない。

 自分一歩、前へ踏み出すと同時に、敵を一人、八つ裂きにしていく。

 

「ひつ――!?」

「く、来るなっ⁉」

「止まれッ‼」

 

 なにを怖がっているのだろう。

 

「先に、戦いを仕掛けてきておいて……何を恐れてるのかわからない」

 

 こんな覚悟も無い者が居るだけで、怒りが更に溢れてくる。

 

「や、やめてくれ‼」

 

 その言葉を、なぜ始めたお前らが言うのだろう。

 

「なんで?」

「こ、この化け物‼」

 

 よく言う。

 無抵抗だった街の者達を、なにもしていない魔物達を殺し回ったくせに。

 

「それは君達も同じでしょう? 無抵抗な魔物を同じように殺しておいて、自分が化け物じゃないとでも? くだらない……」

 

 逃げようとした者は脚を切り裂いて逃げられないようにしてあげる。

 

「な、なんでこんな――」

「五月蠅いなぁ。全員、生きてるから良いでしょう?」

 

 杖を地面に突き刺し、魔法陣を展開させていく。

 敵である彼らの生命力というライフポイントを自分のモノとするように、本来だったら「コレクト」でカードへと変化させるモノを捻じ曲げるように吸収していく。

 

 倒れている兵士達が口々に何か言っているが、耳に入ってこない。

 最後のほうは、石のようになって風化して砂のように崩れ去っていた。

 

 初めて……命を奪ってやると思って攻撃をした。

 

「……案外、なにも、思わないモノなのかな……」

 

 怒りのせいか、とくに敵である彼らが死んだというだけだった。

 

「この結界なら【多重結界】で十分……毒も有効的に使ってあげよう」

 

 結界の外には、またまだ敵がいる。自分達が作って来た街を襲ったヤツ等が沢山いる。

 無理やりに結界の外へと出て、近くに拠点を作っていた兵士を見つけては同じように狩っていく。

 

 一つ一つ、小さい拠点だろうと、人間達が集まっている場所を目指して進みながら。

 見つけては街の者達にしたように、痛みを与えてから力を奪うように……。

 大きな拠点はかなり離れた位置にあるようだが、先陣で来ていた結界の近くに居た者達は徹底的に狩りつくしていく。

 

 

 

 いくら人間達をやっつけても、晴れない怒りの心。

 

 別に悲しくないはずなのに、何故か頬に水が伝うような感覚がある。

 

 雨など降っていないはずなのに。

 

 

 

 

 

 

 

『ったく……全く面倒な事になっているな……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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