心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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122話 其々の心と初めの約束②

 

 

 

 

 

   ▲△▲△視点:アウス▲△▲△

 

 

 

 

 

「か、家事だ――ッ‼」

「あいつら、火種を家に‼」

「このままじゃ燃え広がるぞ‼」

「水‼ 早く水を‼」

『そんなんじゃ間に合わないよ!!』

 

 こういう時にエリアが居てくれれば、頼りになるんだけれど……いや、この結界内で無理に水霊術なんか使わせたら、命が危ないか……。

 

「こんな時の為に作っておいた放水ポンプだ‼」

『カイジン!? ありがとう』

 

 ドワーフの皆がなんとか動かそうとするけれど、この放水ポンプは片側を5人程、反対側を含めれば合計10人で持ち手を上下に漕ぎながら動かす。

 

「カ、親父さん。こいつえらく硬いぜ!?」

 

 ドワーフといえど、片側一人二人では少し勢いよく動いてはくれない。

 

「片側4~5人で漕ぐんだ! 魔物の町だぞ、力自慢の奴らなら――」

『カイジンさん――いまは……』

「ぐっ……すまねぇ」

「み、皆、ぐったりしてるっすよ⁉」

「俺達だけでもやるんだ‼ リムルの旦那とウィンの姐さん、最初っから面倒を見てきた町だぞ‼ 燃やしてたまるか……燃やされてたまるかぁ‼」

 

 ボクも参加するけれど、重くてホースの先から出てくる水の勢いは弱くチョロチョロと弱く流れて来るだけだった。

 

「ち、く、しょうが~~~~っ‼」

「手伝うぜ、旦那‼」

「お前さん……‼」

「英雄ヨウム団、只今参上でさぁ‼」

 

 ヨウムの仲間達がポンプを息の合った掛け声で動かして始めると、ホースから勢いよく水が噴き出し始めた。

 

『やったっ‼』

「出たぁ‼」

「アウスの姐御。自分達は手桶リレーで消火しやす。ここは大丈夫ですから、他の場所へ応援に行ってあげて下さい」

『でも……』

「アウスの姐御を必要としている場所は他にもあるでしょう。行ってくだせぇ」

『……ごめ――』

「こういう時はな、ありがとうって言って。任せてくれりゃ良いんすよ」

「よく来てくれたな、アンタら‼」

「この街は俺達のヤサっすからね」

「さ、作品の聖地でもあります」

「それに……見損なってほしくないんすよ! 人間のこと」

 

 ウィンの事を止められなかった自分が情けなくて……。

 何か出来ないかと駆け回っていたけれど……。

 

 この場所を好いてくれている人間達も居るんだと、改めて感じ取れる言葉に救われる。

 ウィンのしていたことは、間違いじゃないと……胸を張って言える。

 

『ありがとう、ここは任せるよ! 避難所は御巫達がいる神社だから‼ あそこなら結界が張られてる、子供や怪我人なんかはそっちに誘導してあげて‼』

「分かったぜ、他ん所は宜しく頼むぜアウスの姐御‼」

 

 

 ==カイジン達やヨウムの仲間達に強く頷いて、まだまだ避難が済んでいない場所へと走る。

 

 

 ボロボロになった建物が崩れ落ちる下に、子供のゴブリンが居た。

 

『あぶな――』

「うへあぁぁあぁ‼」

 

 そこへボクよりも早くに丸いサングラスをした人間が飛び込みながら、子供のゴブリンを救い出していた。

 

「よし‼ 叫び声はカッコ悪いが、よくやったビット‼」

「か、軽いもんしゅよ」

「もう「ビビりのビット」が無茶をして‼」

「こっちの荷車に‼」

 

 人間の冒険者とガビルの部隊にいた者達が協力しながら、避難民を救助活動をしてくれている。

 

『皆さん‼ 大丈夫ですか⁉』

「俺達はな……でも……」

「だめ‼ やっぱり魔法が使えない‼」

 

 傷だらけで倒れているホブゴブリンの女性を、魔道師の女の子が治療しようと頑張っているが、魔法が一切使えないと涙声で叫んでいる。

 

「アンチマジックエリアってやつか⁉」

「じゃあ魔物達が弱ってるのはなんでなんだ!?」

「この回復薬を使え‼」

『貴方はっ⁉』

「いいんですか、ミョルマイル殿」

「かまわん‼ 怪我人に回復薬を使わんでいつ使う‼ ミョルマイル商会、半期に一度の出血大サービスだわい‼」

 

 子供達は荷車に乗せつつ移動し、けが人は動ける者達が背負って安全な場所へと避難させてくれていた。

 

『ミョルマイルさん……いつこちらに』

「おぉアウス様‼ ご無事でしたか。なに、こちらで商売を本格的に始めようと色々と準備をして今日ついた所ですよ……まさか、こんな事になるとは、思いませんでしたが」

「だいたい、なんだアイツら‼ どこの兵だ!?」

『……ファルムス』

「なるほど、裏で噂が流れてたアレか」

「それで魔物の国で「魔物は認めん」って暴れ回ったのか⁉ ただの暴徒じゃねぇか‼」

 

 ウィン……ここにも、しっかりと怒ってくれている人間が居るんだ。

 なんで、一人で行っちゃうんだよ……。

 

「くそッ‼ さっき一発かましてやりゃよかった!」

「お前には無理だビッド」

「無理ね」

「無理」

「一人二人殴ったって、何にもならんわ。あいつらは国に仕える兵士だ。生活のため、家族のために、命令通り働いてるにすぎんわい……」

「中には、疑問を持っている者も、いると信じたいですね」

 

 正直、自分にはそこまで考えられる余裕はなかった……この惨状を起こした奴らに、怒りという感情はあるけど。

 そう思うと、思わず握りしめた手に力が入ってしまう。

 

「なんすかさっきから、じゃあこのまま、黙って見てろって言うんすか⁉ 旦那そいつぁあんまりで――」

「いいや、誰が……誰が黙るもんかい‼」

 

 ビッドと呼ばれた丸サングラスの男の言葉を遮って、ミョルマイルさんが叫びぶように言葉を発した。

 

『ミョルマイルさん』

「ワシは怒っとる、怒っとるんだ‼ 商人として、人として。筋道を通さん阿呆共のやり方は、断じて許せん‼ ガルド。ミョルマイルは幹部の方々の所に赴き、協力を申し出る‼」

「我々、商人組合もお供します」

「俺達も‼」

「安心しろアンタら、旦那が動けば悪いようには――」

 

 そうビッドがテンペストに住まう者達に声を掛けようとして振り返ると、言葉をなくしたように目を見開いていた。

 

『ごめんね、ビッドさん』

 

 まだ自分がここにいる事で緩和されているが、人間達を見るテンペストの住人達は……騒動の原因である人間達に、まだ戸惑い、恐怖が残っているようだ。

 

「いや……そうっすよね。旦那……俺っち。魔物の皆さんに、怯えた目で見られたっす」

「……ワシらはこれから、彼らとの信頼関係を結んで行かなきゃならん。それが商人としてのワシの役割だし、冒険者であるお前のやる事だ……少なくとも、ここにいるアウス様に、子供達は、ワシらの事を見てくれとる……ここからだぞ……ここからだ」

 

 ミョルマイルさんに背中を思いっきり叩かれて、ビッドも覚悟を決めた顔付になっていく。

 

「アウス様、皆が集まりそうな場所はどこでしょうか」

『避難所か……あるいは、中央広場』

「では……中央広場へ案内してくだされ。我々だけで動くには、少々問題がありますからな」

『わかった、ついて来て』

 

 いまは、ミョルマイルさん達の覚悟に感謝しよう。

 

 

 

 ==中央広場までミョルマイルさん達を案内してくると……そこには、各場所で被害にあった大勢の仲間達が集められていた。

 

 

 

 

 

 

「これは……」

 

 ミョルマイルさん達は言葉も出ないようで、広場に横たわる者達を見つめていた。

 

『……あれ、ゲルド?』

 

 立ち竦んでいたゲルドに一早く気付いたのは台車に乗っていた子供のゴブリンで、ゲルドの姿を見て嬉しそうに駆け寄って行く。

 

 その声にゲルドが振り向き、お互いに良く知りあった仲のようでゲルドが抱きかかえると、ギュッと子供のゴブリンはゲルドに擦り寄り、顔を埋めていた。

 

 亡くなった者達を見つめているゲルドの妖気が怒りの感情によって乱れ始めた。

 

『ゲルド‼ 落ち着い――』

「ゲルド」

 

 子供のゴブリンがゲルドに涙目で見つめながら、声を掛けるとようやくゲルドが落ち着きを取り戻してボクや子供のゴブリンを見つめてくれる。

 

 

 大通りの近くに出ていた屋台を見つめているホブゴブリンのハルも、壊された屋台を見て立ち尽くしていた。

 

「ハルちゃん! よかった、無事だったんダナ‼ 体は大丈夫?」

 

 ゴブイチが気遣うように声をかけ、明るく話しかけている。

 彼はなんというか、相変わらずにマイペースだな。

 

「ゴブイチさんも‼ 私はなんとか動けます。でもお店は……」

「……酷いんダナ」

「ここにはよくリムル様もいらしていたのに……」

 

 ハルは悲しそうに壊れた屋台やお店を見つめながら言うが、ゴブイチの方は壊れた屋台から使えそうな野菜なんかを背負った籠に入れていく。

 

「……? なんで野菜、抱えてるんです?」

「壊された屋台やお店から、かき集めたんダナ。まだ十分、食材になる」

 

 それを聞いてか、ハルが泣きながら怒り始めた。

 

「……ッ!? こんな時までお料理の事なんか、考えなくても‼ 街も壊されて、ボロボロで、しん……死んじゃった仲間もいるのに‼」

「……こんな時だからダヨ」

 

 止めに入ろうとしていたボクの足が、ゴブイチの力強い言葉で立ち止まる。

 

「おかしな結界やら、襲撃者やらでみんな元気をなくしてる……。こんな時こそ、食べなくちゃ、お腹を満たせばきっと元気も湧いてくるから」

 

 別にゴブイチが叫んで威圧した訳でも、ハルの事を強く るようにいう訳でもないのに、彼の言葉がしっかりとボクの耳に、心に聞こえてくる。

 

「……ボクにはこの事態を何とかする力なんかないヨ。でも、出来る限り、みんなの『日常』を支える――それがボク達、裏方の戦いなんダナ……それに、ウィン様が言ってたんだな、美味しい料理は笑顔を作るって。またみんなで笑って過ごせるように、ボク等が今頑張らないと……手伝ってくれるかナ? 炊き出し」

「……はいっ‼」

 

 いまのウィンは……やっぱり一人にしちゃいけないんだ。

 無理やりにでも一緒に行くべきだった。

 

 それにウィン、ここにいる仲間達は決して守られるだけの存在じゃないよ。一人一人、しっかりと強く生きている。

 

『行かなきゃ……ウィンを止めてくる』

「……アウス様。私もお供します」

 

 いつの間にかゲルドが後ろに立っていた。

 

 

 広場にはいつの間にか、リムルが戻って来ていて大勢が集まっている。

 

「ミュウランだったか、貴女の処遇についてはひとまず保留だ。悪いが宿に軟禁させてもらう。エリア、頼めるか」

『任せて、この馬鹿二人も変な事しないように見張っておくからさ~』

「詳しく状況を知りたい、会議室で話を聞かせてくれ」

「リムル様、よろしければワシも会議に参加させてもらえませんか。今回の件について、外の者の視点で、お話できるかと」

「あんたは――、来てたのか……あぁ、助かるよミョルマイル」

 

 そう話が進んで行く中で、リムルに走って寄っていく。

 

『リムル‼ あの、ボクはウィンの所に行きたいんだ‼』

「アウス……そういえばウィンどうした?」

『ウィンは、その……』

「ウィン様は、私達を守る為に……敵を討つって出ていかれました」

 

 ボクが言葉に詰まっていると、シュナも辛そうにしながら出なかった言葉を代わりに伝えてくれる。

 

「ウィンが……一人でか!?」

『止めようとしたんだ……けど、ウィンは自分一人でやるって言いだして』

『あんのおバカっ⁉』

 

 ライナの叫びが、虚しく周りに響いた。

 

「リムル様、私もアウス様と共にウィン様をすぐに連れ戻してきます。私も、私もウィン様の下へ行かせてくださいッ‼」

「ゲルド」

『必ず、ウィンを連れて帰るから――』

「分かった、ウィンの事はお前達に託す。絶対に連れて帰って来い」

『アタシも行くからね‼ 全く、引っ叩いてどれだけ心配をかけたか、教えてあげるんだから』

『ん~、私は行けないからさぁ。私の分までよろしくね、アウス、ライナ、ゲルド君。頼んだよ』

『では私は街の警備に付きましょう。皆さんが会議に集中出来るよう街中の事はお任せ下さい。心強い友も出来ましたからね』

 

 レイが遅れてくると、その後ろに小さな女の子達を3人連れて微笑みかけている。

 

「一人で突っ走ってるアホを頼むぞ、お前ら」

 

 リムルが嬉しそうに微笑み、ゲルドとボクの背中を押すように軽く叩いて気合をいれてくれる。

 

『うん、行ってくる』

 

「はっ‼ お任せ下さい」

 

『全くもうっ‼ 心配ばっかり掛けるんだからウィンは……やっぱりアタシが一緒に居てあげないとダメダメね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

  • ウィッチクラフト
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