心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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123話 其々の心と初めの約束③

 

 

 

 

 

 

 

 

 声が聞こえた気がして振り向くけど、後ろには誰もいない。

 風を感じ取ってみても、何処にもそれらしい姿はないし魔力感知にだって何も引っ掛かる様子がないのに、しっかりと耳に聞こえた声がやけに気になる。

 

 

「だれ?」

 

『誰ねぇ……まぁ、名前なんかないけど、光の……今はライナだっけ? 彼女なら知ってるんじゃないか?』

 

 やっぱり誰かいる。

 ただ、声はまるで自分の中から聞こえてくるぐらいに近いのに、傍には誰も居ない。

 

『それよりも、随分とまぁ乱暴者になったじゃないか。今の方がデュエリストとしては近いだろうが……そのままじゃあお前“失格者”だな。ライナじゃないが、まだ前の方がマシだったと思うよ』

 

 何を言っているのだろう。

 声の感じから若い男の子という感じがする。

 それよりも――。

 

「失格者?」

『ライナは認めてたみたいだが、俺から言わせれば失格者だ。お前の性格じゃあ仕方ないとは思うが、デュエルってのは真剣勝負だ。全身全霊、全てをぶつけてこそだって言うのにな。まぁ……怒る気持ちは理解できるけどね』

「なら、ほっといて」

『そうもいかない。ウィン、キミがいまどんな顔をしているか……自分で分かっていないだろう。濁り切った目でただ敵を嬲り殺しにしている人形のように、無機質なキミを放っておいたら、後でライナのヤツが五月蠅いだろう。俺の平穏の為にも、止める権利はあるんだよ』

 

 声の主がそういうと、自分の前に黒い霧が発生してそこから少年の姿が現れた。

 少し短めの髪、左手には引き千切ったのか切れた鎖の付いた枷と鳥の骨のような杖を持っている。

 

「邪魔、するの?」

『さてね。このまま行かせても良いけど……闇に飲まれてるようじゃあ困るんだよ』

 

 ローブを着ているせいで分かり辛いが、彼の片腕が無いように見える。

 

「邪魔、しないでよ‼」

『濁った目じゃ、未来は見えないぜ。少しは俺の話を聞いて欲しいもんだ』

 

 自分が生み出した風の刃を幾つも生み出して目の前の男の子を攻撃したのに、彼はそれに合わせるように、小さい黒い球を当てこするようにしてかき消していく。

 

 次の攻撃に移ろうと杖を掲げた瞬間に全身が鉛のように重くなって、立っていられない程の重力が襲い掛かってきた。

 

「なに、したの……」

『お前も使えるだろう。重力操作だよ、飛ぶ以外にも使い道は色々とある』

「この……」

『今のお前じゃあ無理だよ』

 

 寂しそうな瞳に、冷たさもある目で自分の事を見下ろされながら言う。

 

「じゃあどうしろって言うの‼ ヒータも、紫苑も街の皆だって……」

 

 無理やり押さえつけられながら、目からあふれ出る涙が止まらず、思わず彼に向かって全ての感情をぶつけるように叫んだ。

 

『お前が辛いなら俺が代わりにやってやる。リムルだってもう戻ってくるだろう、リムルに任せるって選択肢もある。周りに頼れば良いじゃねぇか。それか……俺もウィンと一緒に暴れてやるってのもアリだな』

 

 彼は言いながら1枚1枚と言葉が書かれたカードを自分の目の前に置いて見せてくる。

 

『このまま一人でやるというのも、まぁ選択肢の一つだろうな。お前は……どの未来を選ぶ?』

 

 ジッと5枚の並べられたカードを眺める。

 

 選択肢なんて、始めっから自分一人でやるつもりなのだから、彼にだって迷惑をかける訳には――。

 

 最後に置かれたカードに手を伸ばそうとした手を、また別の声が止めた。

 

『ウィン‼ 大丈夫!?』

「ウィン様‼」

『げっ!? なんでアンタが表に出てるのよ‼』

 

 すぐさまゲルドが男の子と自分の間に割って入って、自分の事を守るように立ち塞がる。

 アウスも同じように杖を男の子に構えて威嚇する。

 

「なんで……ここに」

『連れ戻しに来たに決まってるでしょう‼ 一人で突っ走って。勝手に一人で決めて、ウィンだけが辛いんじゃないんだよ‼ ボクだって辛い‼ これ以上、これ以上は誰も失いたくないんだよ‼』

 

「ウィン様、名付けをしてくださった時に仰ったことをお忘れですか‼

 ウィン様が言ったのです‼ 一人でやろうとするなと‼

 皆で笑い合えるように仲間に頼ることや、皆との会話をしっかりしようと‼

 共に笑い合うことを忘れるなと私に言ったのは‼ ウィン様です。

 そんな貴方様が、また私に同じ過ちをさせるおつもりですか‼

 私はもう、あのような辛い思いは絶対に繰り返すつもりはありません‼

 ウィン様と約束をしたのに、他でもない貴女様が約束を破るのですか‼」

 

 ゲルドに名付けをした時の……約束。

 

『アンタ、ウィンに変な事をしてないでしょうね』

『止めてあげただけだよ。俺なりのやり方でね……ただ、先を決めるのは他でもないウィンだろう』

『ふんっ、捻くれ者のアンタがよく表に出て来たもんね』

『僕等の事を調べる様な鬱陶しい奴が、いまは自身の主に掛かりっきりらしくてね。猫の手も借りたいくらい大変なんだろう? それにライナ……君だけ名持というのも卑怯じゃないか?』

 

 ライナと男の子の間に、物凄く火花が散っているように見える。

 

 怒りで色々な事を考えずに、ここまで来たけど……。

 自分の気持ちだけ見て、他の人達の事なんて考える余裕もなかったな。

 

 ゲルドとの約束だってそうだ。

 自分から約束をしておいて、何をやっているんだろう。

 ゲルドだって……知っている痛みのはずだ。同じ思いを自分がさせるところだった。

 

『ほら、今なら自由に動けるだろ……どうするウィン? どれを選んでもお前は一人になれそうにないが。どの未来を選ぶんだ』

 

 彼がおいた5枚のカードを纏めて持ち、懐かしくもある片手に5枚のカードを広げて1枚1枚のカードを確認していく。

 

 彼と共に、敵陣に切り込むのも良いだろう。

 リムルと合流して、一緒に戦う事だって良い。

 皆に託すように、気持ちを伝えたって良いのかもしれない。

 

 戦いから逃げるようなことは……もうしたくない。

 一人で戦うことは、もう選択肢にはない。

 

 5枚の手札。

 どれを選んでも、自分の勝手だし、彼が言うように良いのだろう。

 

 でも、改めてみると……どれも違う気がする。

 

『どうした? その手札を好きに選べよ。どれを選んでも間違いじゃないだろう』

「ウィン様‼ そんなヤツの口車になど乗ってはなりません」

『ウィン‼ 変な事を考えちゃダメだからね。ボク達は――』

『五月蠅いね君達。これはウィンと俺の話し合いだったんだけどね』

『……ウィン』

 

 彼の言葉は甘く、彼の言うように自分が一人になることなどなさそうだけど。

 

「……違う……」

『違う? なにが――』

「やっぱり、どれも違う。皆で笑いたい……」

『皆って……お前、まさか』

 

 こんな手札じゃあなく、自分が思い描く未来は……紫苑やヒータも居る未来だ。

 あの広場で亡くなった皆も、一緒に笑い合える未来を選びたい。

 

「こんな未来は、選びたくない‼ 諦めたくない‼」

『何言ってやがる、それ以外に手札はない‼』

 

 この世界に転生する前に、自分は子供達に何を教えてもらっていた。

 遊戯王という物語の主人公たちは、絶望の様な状況でも未来を諦めずに、1枚のカードから逆転劇だってやってのけたじゃないか。

 

『何をするつもりだ‼』

「デッキを信じて、未来を切り開くのもデュエリスト」

 

 目を瞑ってランダムにカードを……自分のデッキからカードを引くように1枚のカードを生み出してみる。

 

 自分が引いたカードは{手札抹殺}だ。

 手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨て。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

「自分の未来は、自分が決める‼」

 

 手札抹殺の魔法カードなんて、この世界では意味をなさないと思ってたけど、今ほどこのカードに救われる思いを感じる事もないだろう。

 引いたカードを彼に見せる。

 

『手札抹殺……ここで引くかよ』

 

 驚きながらも、彼はどこか面白そうに笑ていた。

 

「ごめんね。ダルク」

『はぁ……べつに……あ? お前、いま』

『あら良かったじゃない、名前つけられなくって拗ねてたんでしょう。ダルク』

 

 ライナが揶揄うようにダルクの額を突いてにやけている。

 

『う、うるせぇ‼ ちげぇって』

 

「えっと、この方は敵ではないのですか?」

 

『あ~、まぁ彼はボクらと同じ霊使いだよ。闇系統を得意としてる』

 

 

 

 

 新たに作られた5枚のカードの中には死者を蘇らせる魔法カードが並んでいた。

 

 

 

「リムルの所に、戻ろう……まだ、やれる事があるかもしれない」

 

「はいっ‼」

 

 気休めかもしれない。

 でも、いま手に作られたカードを、自分は信じたい。

 

 胸に5枚のカードを抱きしめながら、テンペストへと足を向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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