心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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125話 己の我儘

 

 

 

 

 

 

   ▲△▲△視点:ガビル ▲△▲△

 

 

 

 

「リムル様が結界に入られて数時間……あれ以降、連絡はないのですか?」

 

 ベスターが回復薬研究所を訪ねてきたソウカに尋ねる。

 

「ええ」

「呼びかけにも応じられないとは、妙であるな……」

「……私も神聖魔法については知識程度なのですが、浄化結界の性質上、時間が経てば経つほど状況が悪化していく事になるかと……」

「とはいえ、まだ敵部隊の全貌も……」

「おそらく魔法装置か何かが……」

 

 ベスターやソウカ達が知識を出し合ってくれている中で、不安になっているガビルの部下達が口々に相談し始めた。

 

「俺達も動くべきでは?」

「しかし、命令は研究所の護衛で」

「すでに被害も出ているんだ」

「何かの事情で連絡不可能なのかも」

「街の皆が心配だ」

「ヤッ君達もあの中だよ」

「その人数なら我らでも……」

「人間を?」

「結界が消えるのに越した事は……」

「命令に背いても街が救えるなら」

「そうだ」

「我々だってテンペストの一員なんだ‼」

「往きましょうガビル様‼」

「街の仲間達を救うのです‼」

 

 

 勝手に盛り上がり始めて、その矛先が自分の方にまで伸びてきた。

 

 

「そうです、我等なら、ガビル様ならテンペストの救世主になれます‼」

「結界の破壊を‼」

「ガッビール‼ ガッビール‼」

 

 そうして一人が我の名前を叫び始めると、それを皆が叫んでコールが始まった。

 

「兄上、妙な気を起こしては――」

 

 懐かしくもあるが……いまは、不甲斐ない己の過去を思い出す。

 

「聞け‼ 皆の者‼」

 

 大声を出して、コールを続ける部下達を止める。 

 

 自分を信じてくれているのは分る。

 だが、我は繰り返す訳にはいかない。

 

「え……」

「ガビル様?」

 

「……かつて、我輩は己の力を過信し、大局を見る事もせずに無謀な戦いをした……。結果はどうだ、多くの仲間を失い、お前達だけでなく守るべき森の同胞を危機に追いやったのだ……二度と、もう二度と同じ過ちを繰り返したくない」

 

 己の心を部下達に語り、いまはなんとか留まってもらうしかない。

 

「リムル様やウィン様が動かぬのは、何か深いお考えがあるからであろう。信じるのだ‼ リムル様とウィン様、そして街の仲間達を。そして、我等の能力が必要とされるその時まで……今は力を蓄えておけ」

 

 手持つ親父殿から譲り受けた槍を地面にカツンと音をたてながら、部下達全員の顔を見る。

 

「以上である」

 

 

 ==少し、洞窟から出て、暗くなった夜空を眺めていると、後ろから誰かが歩いて来た。

 

「――兄上。立派でした」

「……立派なものか」

「え?」

「何が立派なものか‼ 結局のところは苦しむ仲間を前に、ただ待っていろとしか命じられないのだ‼ 何が‼ 何が…………そうか、親父殿はこんな気持であったか」

 

 オークロードに攻められている時に、あの時に我輩に言った言葉の裏に、どんな気持ちだったのか、考えもしなかった。

 

「なんと……なんと愚かな出来損ないか、今頃になって気付くとはなぁ」

 

 流れる涙を妹に見られぬよう、目を擦りながら夜空を見上げる。

 

 

 ▽▼▽▼視点:ガビル(end)▽▼▽▼

 

 

 ▲△▲△視点:エレン△▲△▲

 

 

 

「念を押すけど、テンペストで待ってるのは戦争だぞ‼」

「命の保証はないでやんす‼」

「そんな事くらい分かってるわよぅ‼」

「あと大変な時だから、メシの期待はしちゃダメなんでやすよ? 買い物とかも無理でやんす」

「温泉浸かってる場合じゃないし、酒飲んで騒ぐとか出禁ものだぞ⁉」

 

 全くカバルもギドも私をなんだと思ってるのよぅ。

 

「そういうの関係なく行くのよぅ‼。苦しんでる仲間のために何もしてあげられないとか、もう二度と御免なんだからぁ‼」

「違いねぇ‼」

「でやんす‼」

 

 リムルさんとウィンちゃんから譲り受けた馬車を馬達に曳かせて、整備されたテンペストまでの道をブルムンドから全速力で向かう。

 

 街道には冒険者やブルムンドからテンペストへ向かう人達の為に、宿屋や交番、工事現場なんかの建物があるのに、人の影は一つもない。

 

「やっぱりここも、もぬけの殻でやんす……」

 

 ギドが宿屋を覗きこみながらドアを押すが、戸締りがされていて中に入ることも出来ない。

 

「宿屋も交番も工事現場も、みんなどこかに避難したんでやすかね……」

 

 ついこの間までは人と魔物が行き交う街道だったのに。

 今は整然とした石畳が余計に物悲しい。

 

「あぁ~~~、お腹減ってもうダメェ……」

「仕方ねぇだろ。店を開けている場合じゃねぇんだからよ」

「だいたい、食料忘れるとか何年冒険者やってるのよぅ‼」

「おま……自分だって後先考えず勢いで飛び出したくせに‼」

「こっちも、色々ピンチでやすなぁ~。とりあえず、また水飲んで空腹を誤魔化すでやんす」

「もうお腹タプタプよぅ」

「こんな姿、シズさんが見たら」

 

 正座させられてお説教されるのが、懐かしいなぁ。

 

「あー、ジャイアントアントに追われた時もなぁ~」

 

 テンペストへ向けて森の中をさまよっていて、食料を落としてお説教され……シズさんの知識をもとに野草や……虫の幼虫を……。

 

「いや‼ 今は非常事態なので飯より先に進むべきですよね‼」

「出発するでやんす‼」

「ちょっと待ってぇ、水が喉元までこみ上げて……うぷっ」

 

 

 ==道中でアピトちゃんに会って、チラホラと情報を知らない旅人を近寄らせないようにしていたり、そこでハチミツを貰ったりして、休憩所で馬達を休ませながら進む。

 

「お疲れ様、回復魔法よぅ」

 

 頑張ってくれている馬達を労い、回復魔法で体調を整えてあげる。

 

「この調子だと今日の夜にはテンペストに着くでやんすね。馬達の頑張りのおかげでやんす」

「ごめんねぇ、無理させちゃって。

「とはいえこっちも強行軍はキツイわ。着いたらまず温泉入って飯食って、ベッドで寝てぇなぁ」

「なによぅ。自重しろって言ったくせに」

「だったらお酒もいいですねぇ~」

「なーに、ちょっとだけなら――」

 

 そんな感じでカバルとふざけ合っていると、音も無く目の前にソウエイさんとソウカさんが現れた。

 

「ご遠慮願いたい」

 

 私達はすぐさまソウエイさん達に向かって土下座し、謝罪する。

 

「不謹慎でした、すみません」

「土下座慣れしてるな。だがそうじゃない」

 

 そう言いながら、ソウエイさんが今のテンペストの状況を説明してくれるが、このまま引き返すように言われてしまう。

 

「待って待って、このまま引き返せってどういう事なのぅ⁉」

「こ、この先は危険です‼ 西方聖教会の騎士達が街への出入りを見張っているんです‼」

 

 ソウカさんに飛びついていると、ギドが落ち着けという感じで後ろから羽交い絞めにしてソウカさんから放そうとしてくる。

 

「西方聖教会!? ファルムス兵じゃないんでやすか?」

「せっかくここまで来たのにぃ‼」

「迷惑はかけねぇ、なんとか街に……」

 

 私達が頼むも、ソウエイさんは冷たく突き放すように止めてくる。

 

「だめだ。貴殿らとリムル様、ウィン様の気の置けない関係はよく見てきた……だからこそ、国同士のいざこざに、ご友人を巻き込むわけにはいかない。リムル様もウィン様も望まれない……リムル様もウィン様……お二人は、いま深く悲しんでおられる。これ以上は……どうか理解して頂きたい」

 

 

 ==ソウエイさんとソウカさんから、食料を分けてもらい、私達はその場に留まってどうするかを、話し合う事になった。

 

 

 

「――で、引き返すしかないんでやすか?」

「西方聖教会の団体様だぞ。「テンペストへ行く」ってだけで難癖付けられて、拘束されるのがオチだ。魔物も憎けりゃ、魔物との取引もご法度だからな、消されるかも」

「上から下まで、オール魔国製装備でやんすからねぇ……しかも、装備や馬車の貰い物全部一色でやす」

 

 

「こんなものなのかなぁ……憧れの冒険者になって、私達なりに頑張ってきて、やっとBランク冒険者になったって。やっぱり私達は大事な仲間の力にさえなれないのかなぁ……リムルさんとウィンちゃんに……会って伝えたい事があるのに……」

「姉さん……」

「……ふー、俺達なりに、か……そういや、この森を旅するのも何度目だろうなぁ。毎回トラブルに巻き込まれて……そのたび誰かに助けられてたよなぁ」

「半分以上は旦那が原因でやんしょ」

「なにイイ話っぽくしてるのよぅ」

「……たまにはリーダーらしい事を言わせてくれよ……。前言撤回‼ 数百人の聖教会が何だってんだ。俺たちゃプロの冒険者だぜ‼ ジュラの森なら庭同然‼ いつも通り、俺達らしく行こうぜ‼」

 

 カバルはギドに馬車の準備をする様に声を掛けてから、何故か森の方に走って行ってしまう。

 

「……なんか、嫌な予感がするでやすよ」

「……でも、私達らしいかもしれないよぅ」

 

 

 ==ソウエイさん達が教えてくれた情報通り、テンペストへの道に聖教会の騎士団が沢山見える。

 

「おーい! とまれーッ‼」

「我々は聖教会だ‼」

「指示に従え! 止まれーッ‼」

「止まれと言っているのが――」

 

 そんな声を無視して、カバルは馬車を全速力で駆け抜けさせる。

 

 なぜなら、私達の後ろからは大量のジャイアントアントの群れが迫ってきているのだから、いま止まってしまったら私達の命が危ない。

 

 森の方からも大きな音をたてて、飛び出して来たジャイアントアントに聖教会の騎士達が驚き戸惑っている。

 

「てッ敵襲――ッ‼」

「うわ~、いきなりジャイアントアントが襲ってきたでやんす~~‼」

 

 ギドの棒読み三門芝居が始まった。

 

「まぁ大変‼ 私達何の罪もないただの旅人なのにぃ~‼」

 

 私もそれに乗っかって、大声で検問をしている聖教会の騎士達に聞こえるように言う。

 

「きっと誰かがうっかり巣穴でも突っついたんだな~‼ 気持ちはわかる‼ 困った困ったどうしよ~‼」

「ああっ、聖騎士の騎士様よぅ‼」

「すごい幸運、奇跡でやんす‼」

「お助け下さい人類の守護者‼」

 

 聖騎士の騎士達はいきなり現れたジャイアントアントの方に目がいき、自分達はそのまま混乱に乗じてテンペストまで走り抜けていく。

 

「怒りで我を忘れているぞ‼」

「待機組を呼べ‼」

「何なんだお前達は‼」

 

「あとはよろしくぅ~ッ‼」

 

「すごいねカバル。作戦通りよぅ‼」

「あたぼうよ‼ こちとら巣穴突きも魔物から逃げ回るのも日常茶飯事だぜ‼」

「あぁッ‼ 一匹追いかけて来てやすぜ‼」

「ゲ――ッ!?」

「な、何やってんだ、ちゃんと働いてくださいよ聖教会の騎士達さん達‼」

「もっと速くだ‼ 頑張れ馬―ズ‼」

「後でニンジンあげるからぁ‼」

「馬房も高級にするでやんすよ‼」

「やっぱ無茶だったのよぅ‼ 死んだらカバルの枕元に化けて出てやる~~っ‼」

「そりゃ無理ってもんだ、何故なら俺も――」

「そのくだり何回やる気でやすか、って、来た来た来た‼」

 

 追い付かれたと思ったけど、すぐにジャイアントアントが雷に打たれたように痺れ始めて動きを止めた。

 

「一体何が起きたでやんすか!?」

「結界よぅ‼ たぶん」

「ファルムスが張った魔物にだけ効くってアレか‼ てことは……おい、見ろよ。やっと着いたぞ、テンペストだ‼」

 

「カバル殿‼」

 

 一番最初に出迎えてくれたのはリグルだった。

 

「商人達から状況は聞いた。何と言っていいかわからねぇが……俺達で力になれることがあれば言って欲しい」

「お心遣いに感謝を……」

「リムルさん‼ ウィンちゃんは‼ 二人はどこぉ⁉」

「エレン殿‼ 申し訳ありません。リムル様は今、一人になりたいと……ウィン様は……ゲルド殿やライナ様にアウス様が迎えに」

「リムルの旦那がそう、言ったのか?」

「えぇ、皆今はお側を離れています」

 

 私達が考えているよりも、深刻な事態だと良く分かるけど……今は、どうしても私の話を二人に聞いて欲しい。

 

「……わかった、しばらく街の外で野宿してるから、人手が入り用ならいつでも声を掛けてくれ」

「ありがとうございます」

 

 それじゃあ、遅い気がする。

 シズさんの時だって……そうだった。

 

「リグルさんお願い、今すぐリムルさんとウィンちゃんに取り次いで欲しいの。どうしても伝えたいことがあるから」

「姉さん、それはちょっと……」

「そうだぜエレン、この人達だって遠慮してるってのに……」

 

 誰に何と言われようとも、私はもうシズさんの時みたいに、何もせず終わりたくない。

 私の覚悟を感じ取ってくれたのか、カバルもギドも頭を下げてリグルさんに頼み込んでくれだした。

 

「リグル殿、俺からも頼む」

「えっ、いやしかし……」

「あっしからもお頼みしやす」

「無理言ってごめんなさい。でも……今のリムルさん、ウィンちゃんには、きっと必要な話だから……」

 

 

  △▲△▲視点:リムル ▲△▲△

 

 

 

 

〈告。検査結果、該当なし。完全なる死者の蘇生に関する魔法は検出されませんでした〉

「……そうか」

 

 横たわるシオンの髪を整えてやるように、そっと顔を撫でる。

 

 ゲルド達もウィンを連れ戻したのか、街に風が吹いてきた。

 

 いつまでも、ここで、こうしてはいられない。遺体はやがて朽ち。魔素に還元されて消えてしまうのだろう。

 

 ――消えて……。

 

 ヒータも、ゴブゾウも、子供達や街の魔物達も。

 

 ヒータとシオンがケンカしながら笑っている姿が脳裏に焼き付いて離れてくれない。

 

「グラトニー」

 

 せめて俺の中で安らかに――。

 

 スキルを発動させようと自分の周りに黒い霧状の魔素を出現させるのと同時だった――。

 

「リムルさん‼」

 

 懐かしく感じるエレンの声が、俺の行動を止めた。

 

「……来てくれたのか、ありがとう。だけど少し待ってくれ。……そろそろ眠らせてやらないと」

 

 エレンやカバル、ギドも街の魔物達やシオンの亡骸を見て声を失っている。

 

「……あのねリムルさん。可能性は低いけど、ううん、殆ど無いかもしれないんだけど。でも、あるのよ‼ 死者が蘇生したという、お伽話が」

 

 ――お伽話?

 

 そりゃただの作り話だろう、なんでそんな話をするんだよ。

 

 やめてくれ、期待したくなるじゃないか。

 

 こいつらのために俺に出来ることが、まだ残されていると。

 

 ……こいつらの、ため?

 

 本当に、そうなのか?

 

 

「リムル‼ ゴメン‼ 自分は……まだ皆といたい、諦めたくないの‼」

 

 ウィンが何時の間にか自分の目の前に来て、俺の手を握りながらカードを手渡して来た。

 

「これ……」

 

 ウィンから手渡されたカードは、カードゲームで使うようなモノ……シズさんの時にも役に立つことがなかったカード{死者蘇生}の魔法カード。

 そして、墓地に置かれたカードを場に蘇らせる、カード達。

 

「この世界でもカードを使って色々出来た……

 シズさんの時には助けられなかったよ……

 でもね、あの時とは違う‼ みんなは身勝手な奴らから命を奪われただけ‼

 明日も皆と笑い合いながら生きていたい‼

 可能性なんてないかもしれないけど……

 一人じゃ、笑えないって思うから‼

 だから、まだ……一緒に頑張ろう。我儘かもしれない、でも、自分はこのままなんて絶対に嫌だ‼」

 

 

 ……そうだな、違う。

 

 俺が、失いたくないんだ。

 

 そして、ウィンも……きっと我儘に、俺と同じ気持ちなんだろうな。

 

「所詮は作り話だって思うかもしれないけどぉ。でもこれは史実に基づいた伝説なの。だから――」

 

「ふ、はははは」

「リムルさん?」

 

「り、リムル?」

 

「いや、悪いな……つい、嬉しくて。死者の蘇生か、まるで夢物語だな」

 

「そう、だね」

 

「でもウィン、お前が居る。それに可能性が零でないなら十分だ」

 

「うん、詳しく聞かせてくれないかな、エレン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

  • ウィッチクラフト
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