心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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129話 種と個人

 

 

 

 

 

 

 じゃれ合っているヨウムとグルーシスは放っておいて、ミュウランが自分とリムルの下へと寄ってくる。

 

 

「その、リムルさん……いえ、リムル様、ウィン様。どんなに言葉を尽くしても感謝を伝えきれません。忠誠を誓えというのなら、私はそれに従うわ」

 

「ん~、別にいらない?」

「いや、それはいい」

 

 リムルとほぼ同時でミュウランに答えると、くすっと笑いながらも、胸に手をあてて自分達の目を見てくる。

 

「……では一つ、伺ってもいいでしょうか?」

「うん、いいよね?」

「あぁ」

「事情はどうあれ、私がこの街に被害をもたらした要因なのは事実。命を救ってもらえる理由はありません。その、なぜなのでしょう…?」

「別に善意でそうした訳じゃない。貴女を助けた方がヨウムの助力を得やすくなるという打算もあった」

 

 リムルが未だにじゃれついているヨウムの方を見る。

 その視線をミュウランが追うと、ちょっと頬を赤らめている。

 

「このクソ狼がっ‼」

「はぁん?」

『いつまでやっているんですか?』

 

 レイがグルーシス達をゲンコツして止めているが、その横ではエリアがホクホクした笑顔でヨウム達の言い争いを楽しんでいた。

 

『良いじゃん、良いじゃん♪』

『エリア、アンタは少しくらい自重しなさい』

『なんで俺がこんな事をしなくちゃいけなんだよ』

「……ヨウムには後々にやってもらう役回りがある、っていう理由もあるよ?」

「ウィンの言う通りだし、なによりも貴女の魔法知識と技量は当てにしている。ウィン達の霊術は独自過ぎてな……扱い辛いんだ」

『ぶ~ぶ~、リムル君は一言余計だと思うなぁ~』

『事実だろうが、ウィンはスキルのこともあって利便性や応用は効くし、他の霊術も使おうと思えば使える……俺達は基本的に単体の属性がメインになっちまってるんだからな』

 

 ライナ達の言い合いを見ながら、ミュウランが微笑ましそうに眺めてから改めて自分やリムルを見ながら真剣な眼を向けてくれる。

 

「もちろん、協力は惜しみません」

「あとひとつ、正直俺の中では、これが一番大きな理由かもしれない」

「それは……?」

「死んで生き返るなんて、よくある話だろ。ここらで一発、事例を増やしておきたかった、それだけだ」

「カッコつけ?」

「違う‼」

 

 そんな感じでリムルを揶揄いながらも、自分もデッキホルスターから一枚のカード、{死者蘇生}の魔法カードを引きぬいて、胸に抱く。

 

 

 ==こちらの事情が終わってすぐ、タイミングを見計らったように朱菜が皆を集め終わり、会議室にて待っていると呼びに来てくれた。

 

 

「心配かけたな、これより会議を行う」

「えっと、勝手に飛び出して御免なさい」

 

「既にリグルドから通達されていると思うが議題は、今後の人間に対する振る舞いと、殺された者達の蘇生についてだ」

「二つの議題を話し合う前に、前提として皆に伝えておくことが一点ある」

「俺とウィンは、魔王になる」

「以上、じゃあ、始めよ?」

「先ずは皆の人間に対する意見を聞きたい」

 

 一人一人の顔を見ながら、少しのあいだ発言を待つと。

 

「……私は人間を許せません。強き者に従うのは不服ではありません、だが……あれは不意を突いた侵略、卑怯者に払う敬意など持てません」

「私も……人間に対し、これまでと同じように接することが出来る自信がありません。商人や冒険者の中にああいった者が、また潜んでいないとは限りませんもの」

 

 司法担当のルグルドやリリナ。レグルド、ログルドが人間に対しての思いをぽつぽつと語り始めていく。

 

 そんな中で壁端にたっていたゴブタがジッと俯いて顔を上げて、こちらを見てくる。

 

「……オイラは、ゴブゾウ達を殺したファルムス王国の騎士達はキライっすけど、ヨウムさんや部下の人達は同じ師匠の下で、同じ釜の飯を食った仲間っす。あいつらとは違うって断言できるっす」

 

 その言葉に白老が少し微笑み、ヨウムが嬉しそうにゴブタを見つめていた。

 すんっと鼻を啜りながら、しっかりと発言してくれるゴブタには本当に感謝しかない。

 

「俺もゴブタに同意します。カバル殿達はここを案じて駆け付けて来てくれました。彼らは信頼できる友だと、俺は思います」

 

 今度はリグルがゴブタの発言に続いて、カバル達の事を例に挙げながら語る。

 

「……迎撃に助力を申し出てくれたのはミョルマイル殿や人間の冒険者達でした。「人間」とひとくくりに話すべきでは、ないのではないでしょうか。彼らの中には信頼できる者もいれば、そうでない者もいる」

 

 リグルドが重い口を開くように、ミョルマイルや冒険者たちのことを忘れないようにとリグルに続いて語る。

 

「しかし当面は人間との交流は全面禁止にすべきじゃないか?」

「いや、それではブルムンドと、これまで築いてきた信頼も失いかねない」

 

 そこから皮切りに、一気に皆が意見を出し合っていく。

 

【なんかすごいね、リムル……。こんな目にあって尚、彼らは人間との共存を真面目に考えてくれるなんてさ……】

【あぁ、嬉しいな……愛すべき俺達の仲間は……家族と呼べる大切な者達だ】

【……リムルってヨウムやミュウランみたいに、人を本気で愛したこと、あるの?】

【おい‼ 失礼だろう‼】

【えぇ~、だってユウキの時の反応を見るに……どう――】

【それ以上は言うなよ、お前だって似たようなもんだろう‼ あっ‼ 目を逸らすな‼】

【ねぇリムル……皆にさ、言っちゃわない?】

【……俺達の、前世か?】

【うん、このまま黙ってるのも、その、なんか……】

【そうだな、良い機会かもな】

 

「……あのな皆。俺は、いや、俺達は元人間の転生者なんだ」

「いわゆる――、異世界人? そう呼ばれる者達と同じ世界の人間なの」

 

 会議室に集まる面々が自分達の言葉を聞き、驚いた顔を全員がこちらを見てくる。

 

「リムルさん……ウィンちゃん……」

 

「向こうで死んで、こっちに生まれ変わったんだ。俺はスライムとして」

「自分は魔女? として」

「……最初は寂しかった、俺はこのとおりスライムだから、目も見えず耳も聞こえず、何をすべきなのかもわからず、ひたすら草や鉱石ばっか食って気を紛らわせていた」

「リムル……自分には、その、ライナが居てくれたから、まだ良かったんだ」

『ふふ、まぁほっとけない子だったしね。黙ってるより話しかけた方が早かったしね』

「期せずして、友と呼べる存在にも出会えたんだが、訳あってそいつは、すぐ目の前から消えちまったんだ。そこに居合わせたのがウィンだったのは、本当に幸運だったよ」

「そんな自分達にも、仲間が出来たの。リグルド達ゴブリンに紅丸達……どんどん増えていったね」

「……嬉しかった、誰かから頼られるなんて久しぶりだった。何をすべきなのか、目標を見つけたきがした。進化したお前達が人間に近い姿になったのは、もしかしたら俺達の願望が影響したのかもしれない」

 

「だから「人間を襲わない」というルールも、自分達はそういう理由で作ったの」

「俺達は人間が好きだと言ったのも、元人間だからだ」

「まぁ、今更公開しても、取り消すことは出来ないけどね……でも――そのルールのせいで君達が傷つくのは、自分もリムルも本意じゃなかったんだよ」

「……俺達は魔物だけど、心は人間だと思っていた。だから自分の思いを優先して、人間の街に長居してしまった」

 

 子供達や、人間の生活をもっと早くに切り上げて、帰還していれば。

 避けられたかもしれない――。

 

「すまなかった、全ては俺の責任だ」

「俺達、ね。リムル」

 

 そう自分達の心根を語り終えると、しばらく沈黙が続く。

 

「いいえ、それは違います」

 

 意外にも沈黙を破って、最初に声を出し……尚且つ、違うと否定してきたのは朱菜だった。

 

「わたくし達にも、いつまでもリムル様、ウィン様が守ってくださるのだという甘えがあったのです。その結果が、あの惨劇でした。断じて、リムル様やウィン様がお一人で抱える問題ではございません」

「シュナ……」

「でも……」

「先に妹に言われるとは、情けない限りだ」

 

 次に口を開いたのは紅丸だった。

 

「結界でリムル様やウィン様との繋がりが絶たれた時、常にあった万能感が消え去り、胸中には寄る辺を失った動揺が広がった。留守を預かっていたというのに、心のどこかでリムル様とウィン様に頼っていた。惨事を未然に防げなかった原因は俺にあります」

 

 そう語る紅丸の言葉を聞いて、リグルが勢いよく立ち上がる。

 

「待ってくれベニマルさん‼ それを言うなら警備責任者の俺の失態だ」

「いや……初めて道を通る者には、目を光らせておくべきだった」

 

 リグルの言葉を止め、頭を抱えながら今度はゲルドが発言する。

 

「俺が入国時の審査をもっとくまなくやっていれば……」

「いや、それなら私の法の整備が……」

「私だって」

「オイラ、相手を煽りすぎたかもしれないっす」

「いや、あれは仕方ない」

 

 皆が自分やリムルを責めるのでもなく、自分の失態だと口々に言いだした事に驚いてしまい、意外な方向に話が進み始めている。

 

「ちょっと待て皆‼ 元を正せば俺の身勝手が……」

「それを言うなら自分も……」

 

 皆の会話を遮って自分達が悪いと言おうとするより前に、白老がゆっくりと立ち上がり、自分達の言葉を遮った。

 

「リムル様、ウィン様。お二方がご自分の思いを優先したからといって何も問題はございませんぞ。今回の件はワシら全員の油断、そして弱さが原因じゃ。あのような不埒者に好き放題にされてしまったのは、ワシ等の怠慢であろう‼ 違うか‼」

 

「しかし……」

「皆、でも……でも……」

 

『あのね、ボク達はリムルとウィンについていきたくて、勝手に一緒に居るんだよ?』

「身勝手、大いに結構ですとも。リムル様、ウィン様は我らの唯一の主。人間と仲良くしようと魔王になろうと、あなた達の身勝手が我らの進むべき道なのです」

 

 リグルドとアウスが優しい目をしながら、それが全てだというように真剣な瞳で語る。

 

「……元人間が主とか、嫌じゃないのか?」

「普通は、その、嫌いになったり……しない?」

 

 自分とリムルの言葉が良く分からないという感じで、ゴブタが思いっきり首を傾げている。

 

「リムル様はリムル様だし、ウィン様はウィン様っすよね?」

「それは、そうだが」

「魔物であれ、人間であれ、わたくし達がお慕いしているのは、リムル様、ウィン様ですよ。前世がどうのと言われても、関係ないかと」

 

 朱菜が机に乗っているスライムボディのリムルを優しく抱き抱え、自分の横に座ってくる。

 

「……そうか」

「……そう、なんだ」

 

「あれ、リムル様、ちょっと溶けてるっすか?」

 

「うるさいな! 少し休憩だ‼」

 

『あら~、ウィンってば泣いて良いのよ~』

 

『泣き虫だな、お前……』

 

 

 

 ライナとダルクが揶揄うように自分の顔を覗いてくるので、そっぽを向いて違うと否定してやるが、ニヤニヤ顔を向けられているのが、二人の顔を見なくても良く分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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