心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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13話 運命と同郷と爆炎の支配者

 

 

 

 

 

「仕方ないな、簡単な食事でよければご馳走するよ」

「「「え?」」」

 

 前にすれ違った3人が声を揃えて、リムルに注目する。

 そりゃあスライムがご飯を食べさせてくれるっていうのは、びっくりするよね。

 困惑しながら、こっちを見られても困る。

 

「スライムさん達はこの辺に住んでいるの?」

「そうですね。正確には引っ越してきたばかりです」

「この先に町を作ってる途中なんだ」

 

 3人が近くによって話し出した。

 

「魔物の町⁉」

「怪しい」

「でも悪いスライムじゃなさそうでやすよ」

「もう一人は可愛い女の子だよ?」

 

 

【警戒しているな……当然か】

【喋るスライムの時点で怪しさ満点だから?】

【魔物に囲まれてるお前が言うなよな⁉】

【そう言われると、自分が皆の主みたいでヤダ】

【半分は間違いないだろうが……】

【上に立つのはリムルに任せる。友達と遊ぶ方が良いし?】

【責任から逃げるなよ! というか、厄介事は全部俺に押し付ける気満々かよ⁉】

【適材適所?】

【よく言うよ……まぁここは一つ、無害アピールでもするか】

【……なにをする気なの?】

 

 リムルが考え付くネタはあんまり通用するものが無いんだけど。

 

「俺はリムル。「悪いスライムじゃないよ!」」

 

 そういうと仮面の女性が思わず噴き出した感じだった。

 

「どうしやしたシズさん」

「いえ、なんでもない。それより……」

 

 リムルを抱き抱えた。

 

「お邪魔しよう。この子達はきっと信用できる」

 

 噴き出して、尚且つリムルの前世ネタが通じたという事は同郷の人という事になる。あるいは、そういうネタがあると知っている人が身近に居るか。

 

 見た目が黒髪で童顔という感じだし、この人自身が同郷の人と見ても良さそうだ。

 

「町はこっち?」

「はい……まさか、リムルのネタが通じるとは思わなかった……」

 

 3人より先に町の方へと仮面の女性が歩き出す。

 

「あの、自分で歩けるんだが」

「ねぇ、スライムさん達の国はどこ?」

「国なんて呼べる規模じゃないよ?」

「まだ町の名前すら決めてないからなぁ」

「そうじゃなくて」

 

 一拍置いて、小声で続ける。

 

「さっきのはゲームのセリフでしょう?」

「ゲームを知ってる?」

「私はよく知らないけれど。同郷だった子から聞いたことがあるの」

「同郷……」

「故郷はどこ? スライムさん」

「……日本だよ。ちなみに鳥の上に乗ってるウィンってヤツも同じな」

「やっぱり! そうだと思った」

 

 そういって嬉しそうに笑う顔を、仮面を上げて見せてくれる。

 

「私と同じだね。会えてうれしいよ」

 

 ヴェルドラさんやリムルに続いて、運命の出会いってヤツかな。

 

「お腹減ってるなら、町に着く前に少し食べる?」

 

 少し散策していた林檎を4人に一つずつ手渡す。

 

「ありがてぇ」

「美味しそう!」

「助かりやす」

 

 シズさんと呼ばれた子も受け取ってすぐに食べ始めたが……仮面のままよく食べれるな。あの仮面はいったいどうなってるんだろう。

 他の3人も唖然とした様子でシズさんを見ている。

 

 

 

    ★☆★☆   ★☆★☆

 

 

 

 

 シズさんは今回の旅に同行しただけで、元からのメンバーは前に洞窟であった3人ということらしい。

 盗賊職、ギド。頭のバンダナと顔に似合わない俊敏な動きと隠密スキルなどが得意。

 重戦士、カバル。サバサバした性格なのか大物なのかは分からないけど、リーダー的存在らしい。細かい事は気にしないから、色々と突っ込んで進めるんだろうね。

 そして女の子の法術士、エレン。なんか良く分からないけど人間にしては、魔力が高い気がするし、なんか隠している気はするけど……リーダーのカバル同様の性格に近い気がするし、悪い子ではないだろう。気遣いの出来る優しい子だと思う。

 

 ジューと鉄板の上で焼いている肉を喉を鳴らして、食い時を見極めている。

 

 ギドが不意を突いて、エレン寄りにあった肉をサッと突いて口へと運んだ。

 

「あーーー!」

 

 エレンが気付いた時にはもう食べられた後だった。

 

「ギド、ひどーい! よくも私のお肉を‼」

「食卓とは戦場なんでやすよ。エレンの姉さん」

 

 カバルは一人肉を見つめて、まだかまだかとお肉が焼けるのをまっている。

 

「いいわよぅ、じゃあカバルのもらうから」

 

 エレンがやり返す様に、カバル側にあったお肉を引っ手繰る。

 

「ギャ――‼ 丹精込めて育てた俺の肉が――‼」

 

 ぎゃいぎゃいと騒がしい焼肉パーティーと化しているな。

 

「お肉は沢山あるから落ち着いて?」

「……賑やかな連中だな」

「スライムさん、スライムさん」

 

 シズさんがリムルを呼びながら、スライムボディを指差し。

 

「焼けた鉄板、触れてるよ?」

「変な音がするとおもったら、リムル? 美味しいのかな?」

「馬鹿お前! 何を言ってんだよ……はぁ、溶けるかと思った」

 

 リムルは慌てて近くにある水をコップに注いで飲んでいる。

 

「そうならなかったところをみると、熱に対する「耐性」があるのかな?」

「耐性?」

「火や熱に強いっていう感じ?」

 

 火霊使いの状態である今なら、自分も鉄板に触っても熱くないのかな? 目の前の鉄板に手を付こうとして、ガッシリとカルバに手を掴まれた。

 

「おいおい! なにしようとしてる⁉」

「危ないからダメだよ⁉」

「そういうのはもっと、安全に確認していくもんでやすよ⁉」

 

 エレン達に止められてしまった。

 

「異世界から渡ってくる者はその際に強く望んだ能力を得る。それが「スキル」だったり「耐性」だったりするの」

 

〈個体名、リムル=テンペストは「熱変動耐性」を所有しています。並びに、個体名、ウィン=テンペストも「火霊使い」状態の今では「熱変動耐性」を所有している状態であると推察されます〉

 

【あ~……なるほど】

【自分のは分かるとして、リムルはスライム……? なんで?】

 

「前世は刺されて死んだんだけど」

 

【刺されて⁉ その説明ってライナにはしてたの⁉】

【あぁ、そういやお前は気絶してたんだっけか? ライナには説明しているぞ】

 

 自分と同じく、前世の最後を聞いてシズさんもかなり驚いているようだ。

 ……仮面で顔は見えないけど。刺されたと聞いた瞬間にバッとリムルの方を見ていた。

 

「その時、背中が熱いとか血が抜けて寒いとか考えてたから、それで手に入れたんだろうな……そう考えるとウィンって……」

 

 リムルが自分をジーっと見てくるが、特に話すつもりもないので目を逸らす。

 

「そっか……大変だったんだね」

「まぁな」

「リムル、落ち着いたらスキルとか耐性の確認はしとこうね。自分もどんなの持ってるかは良く分かってないんだ」

「そうだなぁ~、最近やたらと忙しかったからな……てか、ライナから聞けば良くないか? 聞けば教えて――」

「くれると思う?」

「……全部は教えなさそうだな」

 

 ちょっと悪戯心が働いて、自分やリムルを驚かせるネタとして黙ってそうな事が沢山ありそうで怖いんだよね。

 

「自分の能力は把握しておいて悪くはないでしょう」

「そうだな」

 

 エレンとカバルとギドはもうお肉戦争に勃発していて、半分くらい戦いになっている。こっちの会話なんか聞いていないだろう。

 

 それを傍から見て、3人一緒にお茶を啜る。

 

「シズさんだっけ、あんたも苦労したんじゃないのか?」

「巨大妖蟻との戦い……炎を操ってた? アレはこっちに来る時に望んだ力?」

「…………いいえ。違う」

 

 死んだとき……いや、シズさんは転生じゃない? 自分やリムルみたいに姿形が変わっているようには見えない。

 思わず聞いちゃったけど……聞かない方が良かったかな。

 

「炎は私にとって呪いだから」

「どういうことだ?」

「私が元の世界で最後に見た光景は、辺り一面の炎。とても怖い音が鳴り響く中、住み慣れた町は紅蓮に染まっていた」

 

 同郷で同じ日本……大火事? いや怖い音が鳴り響くっていうのはサイレンや半鐘なんかじゃなくって、もっと大規模だとするなら……戦時中の日本⁉ って事になるけど。

 

「……もしかして、空襲か?」

「多分、そう。東京大空襲って言われているんでしょ? 私の教え子……、その子も日本出身なんだけど、歴史の授業で習ったらしいね」

 

 仮面を外して、そっとリムルと自分の方へと向く。 

 

「そうか、それで転生してこっち――」

「ねぇ、もしかしてシズさん。転生してない?」

「は? 何言ってんだウィンそんな訳――」

「ううん、ウィンちゃんが正解。私は死んでないよ」

 

【えっ⁉ 若すぎない?】

 

 リムルの言う通りだ。若すぎる気がする。

 カイジンの話では、こっちの世界でも活躍しているはずだ。それも通り名が出来る程に噂が別の国に届いてる。

 

 だとすると……年を取らないって事? なんで若いままなんだろう。

 

「ある男に召喚されたの。でも男が本当に召喚したかったのは別の誰かだったみたいで、とても落胆した様子だった」

 

 ……召喚、ねぇ。

 大抵の物語でも良い話は聞かない。

 

「だから、すぐ私に対する興味を失ったようだったけど。ふとした気紛れからか、彼は私に炎の精霊を憑依させた。それは炎を操る力をくれたけど……同時に呪いでもあったの」

 

 シズさんが自身の手を見て、寂しげな瞳をしていた。

 

「この力……炎のせいで――、私は大切な人達を失ってしまったから。だからかな、人と親しくなるのは少し怖かったんだけど」

 

 カバルやエレンとギドの方を向いて、さっきまでの顔が笑顔に変わっていく。

 

「やっぱり仲間っていいね。最後の旅で楽しい人達と出会えたもの。彼らはお互いを信頼してるし、遠慮なくケンカもするし……いい冒険者だよ。ちょっと危なっかしいけどね」

 

 ――……ん? 最後ってどういうこと? 普通はそんな言葉は使わないと思う。

 

「腹ごなしに散歩でもどうだ?」

「えぇ、お願いしようかな」

 

【リムル……デートの邪魔はしないから、近くに居て良いかな?】

【べ、別にデートとかじゃあないぞ⁉】

【空からみてるだけだからさ……お願い】

【ウィン? ……まぁ、お前もシズさんと話したいんなら別に良いぞ。一緒にランガに乗るか? シズさんもそれくらいは許してくれるだろう】

【あ~、じゃあアペライオに乗ってついて行くね……今日はカンナホークの方しか構って上げられてないから、下手したら拗ねそうだし……】

【そうしてやれ】

【ふふ、デートで盛り上がっちゃったらひっそり離れるから大丈夫……】

【だから違うっての⁉」

 

 ――でもね、リムルの運命の人には悪いんだけど。なんか良くない気がするんだよ。

 不意に出た言葉なのかは分からないけれど、シズさんの口から出てしまった「最後」その言葉の意味が解るまでは、目を離しちゃいけないんだと思う。

 

 今は楽しい気持ちでいっぱいのリムルには、そのままでいてもらう。

 

 きっとシズさんも、それを望んでいると思うし。これ以上は自分が気にしてあげていれば最悪の事態にはならないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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