△▲△▲視点:レイ▲△▲△
まず初めに飛び出したのはゴブタとリグルのお二人です。
「ゴブタ‼ 俺達は異世界人以外をやるぞ‼」
「了解っす」
「烈震脚‼」
次にゆっくりと動き出したのがゲルド。
足を思いっきり地面に向かって踏み出し、ゲルドを中心として丸い波紋が広がっていくように地震のような振動が、この場所一帯を揺らし始めた。
その揺れで騎士団達が怯み、鎧と大きな盾を持っている者達が一歩と下がっている。
「戦争を吹っ掛けて来たにしては、覚悟がなっとらんのぅ」
『ゲルドのお陰で物凄く取り乱していますね。私達も行きますか?』
『レイとボクは別の仕事があるでしょう。ハクロウやゲルドに任せなよ』
「ほっほっほ、アウス様の言う通りワシらに任せて、アウス様達は己の役目を」
そう言ってハクロウお爺ちゃんは敵を見定めながら、戦場化した場所から離れて立っている若い男の方へと向かって行く。
「怯むな‼ 急いで態勢を整えろ‼」
場を何とか諫めようと鼓舞していた指揮者を、リグルと相棒の狼さんで食い破って、一瞬にしてその場を混乱の渦に巻き込んでいく。
ゴブタは身の軽さを十二分に活かしながら、多くの兵士を刈り取っていく。
ゴブタの一撃はしっかりと喉や足など、致命傷や急所を的確に切り裂いていく。
「ちょっと……なによこれ。ウチ、テントに戻ってるから、この騒ぎじゃ声も届かないし」
「……いいねぇ」
異世界人と思わしき若い黒髪の男女がテントの前で話していて、女の方はテントへと入って行ってしまう。
ゴブタが男の方に気を取られ、殺気が増していく。
きっとあの男がゴブゾウを殺した人物なのだろう。
「安心するがいいぞ、ゴブタ殿」
「ゲルドさん」
「あの者にはオレが、鉄槌を下してやろう」
異世界人の男は余裕そうにゲルドを見ているが……スキルの使い方に自信でもあるのでしょうが……ハクロウお爺ちゃんやウィンみたいな、強者という感じが一切しませんね。
「このっ‼ お前らみたいな小娘が‼ なぜ下賤な魔物共と共に行動している‼」
『五月蠅いです』
思わず周りにいる騎士達の顔を切り刻んでしまった。
『ボクのも少しくらい残しておいて欲しいな』
そう呟くアウスの方は、もう魔道師たちが無残な姿で地面に横たわっています。
まだ息のある者もいるようですが……地面に挟まれていたり、埋もれて身動きの取れない者なんかも居ます。中には地割れした割れ目に足を挟まれている者も……。
『私よりもアウスの方が沢山倒してますよね?』
『ヒータやシオン達にした仕打ちに比べればまだマシでしょう。ちゃんと開戦の合図って感じで来てあげたんだから。というか、地割れやロックブラストだけでここまで動けなくなる程度の魔導師しかいない方が悪いよ』
『それも、そうですね』
そう言いながら、自分も歩みを止める事無く仲間達を苦しめている元凶のクリスタルがある場所を目指して歩くついでに、邪魔な敵を排除していく。
「ひぃぃっ⁉ や、やめて――」
『無抵抗の市民を攻撃しておいて、どの口が言うんでしょうか?』
「それは、俺じゃな――」
「聞いてない、聞いてないわよ‼ こんな強いなんて――」
「私達の魔法も武器も、全く通用しないじゃない」
『さて、キリキリと情報を吐いて欲しいんだよね、ボクも忙しいからさぁ。あぁ、何も知らないなら知らないって言って欲しいな……そうすれば――』
「た、助けてくれるのか⁉」
『ん? うん。生け贄としてしっかりとウィンの所に届けてあげるよ』
「え? そん――」
『余計な時間はかけたくないんだよ。知ってるものは生かしてあげても良いんだけど……少なくともボク達の知らない情報を持っていることが条件だけど』
ヒータや街での事をアウスもしっかりと怒っているようですね。
容赦なく地霊術で、余計な事や叫びまわっている敵を屠っていき、魔法系を扱える者やスキルを所持していそうな者は、アウスの地霊術で石化させながら捕らえています。
『……やる事がえげつないです。今後はアウスの事を怒らせないように気をつけないとですね。石化は流石に嫌です』
『こらレイ、聞こえてるぞ~。別に仲間には使わないってば』
ハクロウお爺ちゃんの方は、なんかにこやかに話をしている。
雰囲気は物凄くピリピリしている様子だ。
「――へぇ、生き残ったんだな、爺さん。尻尾を撒いて逃げれば良かったのに」
「フォフォフォ、こう見えてワシは負けず嫌いなんじゃよ。それに――」
細目の青年が歩いてハクロウお爺ちゃんに近づいていくと、剣を一気に抜き首を狙って横に薙いだが、ハクロウお爺ちゃんはそれを止めた。
「……はっ」
「――天狗になった若造というのは、不愉快極まる」
殺気にあてられてか、細めの青年が飛び退いてハクロウお爺ちゃんの剣を退けた。
「は、はは。笑わせるね、この前は僕の剣技に手も足も出なかったくせに……粋がるなよ」
細目の青年が冗談に構えを取って、実体を持たないような剣撃を飛ばす。
「ひゃっははははぁ‼ 馬鹿がまた騙されやがったぜ。躱せるもんなら――――……」
ハクロウお爺ちゃんの振るった斬撃の光の線しか見えなかったけど、剣撃はハクロウお爺ちゃんを閉じ込める檻の様に沢山あったのに、いつの間にやら消えている。
さすがに私も驚いて見入ってしまった。
「……嘘だろ?」
ハクロウお爺ちゃんはもう終わったかのように、剣を終い、少しだけ鍔鳴りの音だけが聞こえた。
「なんで無傷なんだよ⁉ まったく動けなかったくせに!?」
「動けなかった? ふむ、そうか……やはりお主にはみえなんだか。少なくとも見込みある弟子の一人は、何をしたかは理解しておるようだが、お主では無理か」
ハクロウお爺ちゃんが私の方をチラッと見ながら、すぐに目の前にいる細目の青年に視線を戻す。
「は……? 何を言って……え?」
細目の青年の顔に傷が出来初め、すぐに無数の刃に切り刻まれていく。
あれはハクロウお爺ちゃんを囲んでいた剣撃を、青年の方へと弾き返して出来た傷だろう。
『すごいです……』
『流石は、ハクロウだね。あんなのボクにだって無理だよ』
仕事が終わったとばかりに、アウスがクリスタルを壊して戻ってくる。
「はぁっ……はあああッ‼ なんで!?」
「なんでじゃと? ワシはただ、お主の剣を弾き返しただけじゃ」
「ふざけるなよ‼ あの数を弾けるワケないだろ‼ それに……」
「……「空間属性の攻撃にどうやって干渉したのか」かの? 簡単じゃ、この目があればな。お主の攻撃は軌道が目に見えるそれと異なる、逸れることを見越した上で軌道を読んだまでのこと、一度受ければ、どう軌道が変わるかは予測できる。ワシの動きを目で追うことすら出来ぬ、未熟者の剣ならばな」
『可能なの?』
『私に聞かないでください……「空間属性」ですか……ウィンに相談すれば、何かしらのヒントくらい掴めるでしょうか?』
『いや、レイもあんな感じの化け物になられても、それはそれで面倒そうなんだけど』
「そうじゃ、空間属性で受けた傷は薬や回復魔法が効きにくい。早く適切な処置をせねば血の流れが止まって壊死するぞ」
ハクロウお爺ちゃんが相手を煽る様に笑いながら、ケガの心配をしてあげている。
「……れ」
挑発に乗ってしまった細目の青年は、刀身が抜けた剣から空間属性の剣を作り出したのか、透明な刀身が持ち手の柄から伸びている。
「黙れよ、クソジジイ‼」
急に雰囲気の代わった青年が目を見開いて、ハクロウお爺ちゃんに迫っていく。
青年の動き的に、大降りでハクロウお爺ちゃんの動きを読んで斬撃を当てようとしているようだけど、あれでは懐に潜られて斬られる。
横に大きく薙ぐ攻撃をハクロウお爺ちゃんは前に出て潜り込み、案の定……青年の首を目にも止まらぬ速さで切り裂いた。
「……え?」
「……知っておるぞ、お主。住人を殺める時、わざと急所を外し相手が苦しむのを楽しんでおったな。まぁ、その癖を見抜かれて、ヒータ様に手痛い一撃を貰って情けなく逃げたらしいのぅ」
『どういうこと? もしかして彼ってまだ意識があるの?』
『多分ですが、ハクロウお爺ちゃん。あの青年が思考高速化をして引き延ばされた時間を狙って切り裂いたんじゃないかと思います』
『ふ~ん……まぁ、ヒータのお返しをしてくれたんなら、何でも良いや』
「冥土の土産に教えてやろう。ワシのこの眼は「天空眼」という、お主の「天眼」とは格が違うわい。引き延ばされた時間の中、己の為した業を味わいながら逝くがよい」
ハクロウお爺ちゃんの方の戦いは終わり、後はゲルドの方だけだ。
「くそっ」
ゲルドは全身を鎧で覆い、盾で相手の攻撃を悉く防いでいく。
「っち、てめー卑怯だぞ‼ 自分だけ完全武装で恥ずかしくねーのかよ⁉ こっちは武器も持ってねぇってのによぉ」
「……意味が解らぬ」
「男なら素手で戦いに来やがれ‼」
「……これは戦争なのだぞ? 持てる力を出し切る事こそ、相手への礼儀だ」
「偉そうに説教たれてんじゃねぇ‼ この豚が‼」
必要にゲルドの盾の一点を狙って何度も同じ場所を攻撃していく異世界人の男。
「もう一丁‼」
「……む」
ゲルドが持っている盾が砕け始めた。
「はっはぁ、ザマー見やがれ‼ 盾がなきゃ次は防げないだろうが」
「なるほど、無策に見えた一点集中の攻撃はこれが狙いだったか」
ゲルドは冷静に判断しながら、手を空中に伸ばしていき、別の空間に繋げた穴から新たな盾を取り出して構える。
「は……!? なんだよそれ、汚ねーぞ‼」
「何が汚いのだ、言っただろう。これは戦争なのだ、と。故に貴様がいかに卑怯な真似をしようともオレもその全てを許してやる」
「舐めやがって、わぁーったよ、本気でやってやる」
上着を脱いで動きやすくしたのか、息を大きく吸い込み、異世界人の男が身体強化をし始めた。
「行くぜェ‼」
態勢を低くしてから、一気にゲルドの盾の前へと飛び出して、体重や威力を乗せた拳を盾に思いっきり打ち込んでいく。
「ム……」
ゲルドの盾はカリュブディスの鱗で作られた盾なのに、それを一撃で破壊するのは少し驚きだ。
「ははははッ、どうしたどうした!? 手も足も出ねぇじゃねーか‼」
異世界人の男はゲルドの鎧を砕こうとしているけど、あまりにも周りが見えていない。
『アレってバカなのかな?』
『まぁ実力的にはヒータやシオンを弱らせなければ勝てない人達ですから。実力的には相応なのでは? それにあの時は相手を倒さないように気を付けなければならなかったですしね……私は、破ってしまいましたが……』
『それで正解よ、ウィンもボクからもお礼を言ったじゃない』
街に戻って来てから、また騎士団達がやってきて、街の人達を急に殺し始めたので、思わず手に懸けてしまったのだ。
その場に居た警備隊の少女も、自分と同じように敵兵を殺していた。
異世界人の男はゲルドの背後から腐食させる攻撃が襲ってきているのに気付かずに、攻撃を続けているせいで、腐食攻撃の触手に触れてしまっている。
「ぎゃあああっ‼ てぇ……手が‼ 足がァあッ!?」
「貴様の肉体強度はなかなかのものだ。だが、腐食には弱いようだな」
「ふ……ふしょく……?」
ゲルドは冷たい目で男を見下ろし、その目に異世界人の男が震え始めた。
「ゲルドよ、まだ終わっておらぬのか?」
「ハクロウ殿」
「クソッ‼ キョウヤは一体何してやがる‼」
「お主のお友達なら、ここじゃ」
そう言ってハクロウお爺ちゃんがキョウヤと呼ばれた細めの青年の頭を投げて渡す。
初めは投げ渡されたモノが何か分からずに、目を向け、ようやくそれがキョウヤと呼ばれる男の頭だと理解したのか、情けない声を上げながらテントの方へと走って行く。
『あそこって……』
『まぁ十中八九……もう一人の異世界人の女性がいたテントね』
自分達も後を追うと、中には仲間だったはずの女性を殺し、力を奪い取って回復をしている外道が一人いただけだった。
「……そこまで落ちたか」
《確認しました。ユニークスキル「生存者」を獲得》
「黙れよクソ虫どもが、腐食だったか、んなもん怖かないね、俺は力を手に入れた‼」
「……どうやら買いかぶっていたようだ。貴様は武人ではない」
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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