▲△▲△視点:アウス▲△▲△
ゲルドが力強い拳にテントの中から外へと吹き飛ばされ、崖下まで転がっていく。
「くそっ、この豚野郎」
腐食の効果もある拳で打ち込んだのに、もう回復しているところを見ると。たしかに「生存者」の再生能力は凄いみたいだ。
「なるほど「生存者」の再生能力は確かに強力だ」
ゲルドは転げ落ちた男の場所まですぐに移動し、体勢を立て直す前に頭を掴んで持ち上げる。
「は、放せっ」
「どこまで耐えられるか見てやろう」
そのまま何度も右手で何度も力強く殴りつけていく。
「やべてくで‼ やべてくださいっ……冗談だっだんでずぅ、本気じゃなくて。助けでください」
ついには命乞いを始めだした。
『よく言うね……冗談で相手の命を奪っておいて。自分が許されると思ってるのかな?』
『ふむ、やはり心は子供のままなのではないでしょうか? 言動も幼稚っぽい感じでしたし』
「……呆れた男だ」
「ゲルドよ、あちらも終わったようじゃ、そろそろ戻るとしよう」
「今、終わらせます。戦意を失った者を甚振る趣味はない」
ゲルドの言葉を聞いて助かったとでも思ったのか、顔を上げて少し笑っているが……すぐに絶望の表情へと変わる。
「一撃で頭を割る、安心しろ痛みはない」
今まで防具のみ出していたゲルドが、重く大きな片手斧を取り出して構える。
「ひ……ひいいいっ」
なんとかその場から逃げ出そうと、動かない足でもがきながら進もうとしているが、ゲルドはしっかりと狙いを定めて振りかぶっていく。
『あれは……』
『新手ってヤツかな?』
ゲルドの片手斧を防壁の魔法で止めた者が現れた。
「ふむ……生き残ったのはショウゴのみか。儂としたことが、魔物共の力を見誤っておったようじゃのう」
「ら、ラーゼンさん。俺を助けに……」
「当然じゃ、お前はファルムスの大切な戦力なのじゃからな……しかし、なるほど。ショウゴ達では勝てぬ訳じゃ。鬼人族にオークロード……いや少し違うようじゃが、脅威度は同じか、まさかカラミティまでおるとは思わなんだ」
逃がす前に捕らえた方が良さそう。
『ロックウェーブ‼』
「ぬっ⁉ 魔女まで居るのか‼ このままでは分が悪い、一度引くとするわい」
逃がさないようにとゲルドも近付いて捕らえようとするが、その前にハクロウの叫び声が響いた。
「止まれゲルド‼ レイ‼」
その声を聴いて何とか踏みとどまると、次の瞬間には相手の居た場所で爆発が起きる。
『トラップってやつね』
『戦い慣れた方ですね……やり辛いです』
「罠魔法じゃ、魔法障壁と同時にしかけたようだの……あやつ、ただ者ではないぞ」
「カカカッ、鋭いジジイよ。伊達に年は食うてはおらんか」
「貴様のような老いぼれに言われたくはないのう。で、何をしに来た? よもや、やつを助けにきただけとは言うまい?」
「いいや、そのまさかよ。こう見えて、これは大切な体でな。無下にするわけにはいかぬのよ……でだ、お主らを相手取るのも、ちと手間だしの、ここは去るとしよう」
妙に粋がったお爺ちゃんだけど……戦闘の実力で言えばボクやレイよりも上だろう。
経験という差は、かなり大きいね。
『ようは逃げるってだけですよね?』
『そうね、でも手を出しちゃダメだよ……アイツ、自分の身体に何か妙な仕掛けをしてるからね』
「ほう……流石は魔女殿というところかのう……生きておれば戦場でまた見えることも――――」
「それはない」
ラーゼンと呼ばれたお爺ちゃんの言葉を遮って、ハクロウが告げた。
それに訝しげにハクロウを見ながら黙り込むラーゼン。
「貴様が向かう戦場には、我らが主達が向かわれるからのう。お主らはやり過ぎたのじゃ、決して怒らせてはならぬお方を激怒させてしもうた、同情するぞ……楽には死ねぬじゃろう」
「カカカッ、つまらんハッタリよ。一応、耳に留めておこう、ではサラバじゃ」
そう言うと、黒い渦に吸い込まれるように居なくなった。
「宜しかったのですか? あのラーゼンとかいう魔法使いを逃がしてしまって……」
「良くはなかろうが、戦えばワシか貴様か、下手をすれば全員が死んでおったやも知れぬ」
『それで正解だとボクも思うよ。あの魔法は少なくともボク一人じゃあ防げない』
『それ程の魔法を? 私にはさっぱり分かりませんでした』
「なんと、それほどの使い手とは……」
「彼奴め、自らの死をトリガーにした核撃魔法を仕込んでおった。アウス様も気付いておったが、この眼がなければ見抜けなんだがな。ワシが言うのもなんじゃが、食えぬジジイよ」
逃げた者達は気になるけど、向こうには最も強く信頼できるウィンとリムルが居る。ハクロウの言葉そのままに、同情するよ。
あの優しいウィンとリムルを怒らせたのだから。
『さて、ボクらは自分達の仕事をしよう。生け贄が足りなかった時に備えて生きたまま石化させている訳だし、後は……ウィンやリムルなら亡骸からも何かしら得られるかもしれないしね』
「任せてくださいっす」
『それじゃあ私はベニマルに連絡をしておきます』
「それでは、戻るとするか」
▼▽▼▽視点;アウス(end)▼▽▼▽
△▲△▲視点:ウィン▲△▲△
杖に座りながら、リムルの隣でリムルが空に作り出した器を見つめている。
スライムボディのリムルみたいに青く透き通った色で、水を含んだように潤っている。
空に無数の水で出来たような器が浮いているのに、下にいる人間達は全く気付く様子がない。
そこから水滴のように、小さな水玉が落ちていき、下に居る人間達の間に留まっている。
「なんだぁ、この水玉……」
【リムル様、ウィン様。結界の魔法装置の破壊、四方とも完了しました。こちらに負傷者はいません】
【そうか、よくやった。街の広場でシュナとミュウランを手伝ってくれ】
「後は、自分達がやるだけだね」
「あぁ、お前はここに居て良いのか?」
「遅れてくる部隊はまだ遠いからね、見届ける時間くらいあるよ」
「別に心配しなくても――まぁ、良いか」
「ふふ、手出しはしないからさ、安心してよ」
「心強いよ……俺達の支配領域を荒らした人間共。罪はお前達の命で贖ってもらう」
リムルの静かな怒りと思いに答えるように、
空に浮く器から太陽の光を集めた様に、
一瞬だけ線香花火みたいに光ったかと思ったら、次に瞬間には光の線となって下にいる騎士団達を光の柱が貫いていく。
まさに神の怒りに焼き貫かれていくように……。
「神々怒……名をメギド、正にって感じだね」
空から様子を見ていると本当に良く分かる、多くの者は気付かぬ内に貫かれて倒れ。
その様子に戸惑い、何が起きているのかを必死に探ろうとしている者もいる。
「ぎゃあああぁ、う、腕……俺の腕がぁ……‼」
「テンプルナイツ、総員整列‼ 密集防御陣形にて、多重対魔障壁を発動せよ‼」
動きは良いが……それじゃあ遅いね。
「神聖なる力の前には如何なる攻撃も無力であると敵にしらしめるの、だッ――」
指揮を取っていた魔術師のリーダーが頭を光に撃ち抜かれて絶命する。
その様子を間近で見ていた魔導師たちが取り乱し、障壁を張って立ち止まっているなんて事が出来るはずなく、恐怖でその場から逃げ出すように、散り散りになり始めた。
だれもが逃げ始め、中には仲間を押し倒しても助かろうとする者も出始めた。
その瞬間から、きっとファルムス王国軍にとって、長くそして短い悪夢が始まったようだ。それはまさに天災だろうね。
でも、その怒りを生み出したのはファルムス王国……君達の利己なる思いからだ。
魔物だろうが人間だろうが、相手をちゃんと見なかった国のトップに立つ者達が愚かだったからこうなった。
リムルや自分は対話を望んだのにね……話もせず、ただ武力で初めに攻めてきた己の愚かさを、思い知ればいい。
老兵も新兵も関係ない。
悪意ある者も。
そうでない者も。
弱者も強者も。
等しく、その命を奪っていく。
光を視認すれば、誰かが死んでいる。
不幸な者は考える余力のある者だろう。
何故なら恐怖を悟る猶予があるのだから。
《確認しました。ユニークスキル「心無者」を獲得……成功しました》
どうやらリムルがユニークスキルを獲得したみたいだ。
「ムジヒナルモノ? なんだそりゃ」
「さぁ、「大賢者」さんに後で教えてもらえば?」
「それもそうだな、それじゃあ行ってくる」
「ん、頑張って?」
「お前もな、そろそろ行くんだろう」
「うん、お互いにやりきろうね」
「あぁ、気をつけていけよ、ウィン」
「リムルもね?」
手を振りながら、リムルと別れて、自分の狩場へと向かう。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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