心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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134話 ウィンの狩場と薔薇色の姫戦士

 

 

 

 

 

 

 

 

 リムルの方はもう心配はいらないだろう。それに「大賢者」さんも付いている事だし、あとはテントの中に隠れている者達や、何とか逃げ延びている者達を狩れば終わる。

 

 

「さてと……アレが遅れてきている部隊?」

 

 かなりの速度で飛んできて、見えてきたのは白い鎧と少し古びた鎧をしっかりと纏っている一団が列をなし、テンペストへ向けて進軍してきている。

 

 数的にはリムルが襲撃している場所にいた数よりも少ないようだけど、パッと見では特に違いはない。

 

 あの団体を一気に屠るのは大変そうだ。

 団体だし、もしかしてゴブリン突撃部隊みたいなイメージで落とし穴のトラップを使えば、多くを巻き込めるのか……少し試してみよう。

 

 テンペストの防衛を考えるなら、蟲惑魔みたいな仲間が居てくれると心強いな。

 

「自分も、開戦の合図と行きますかね」

 

 杖に乗っていた腰を上げて、自分自身をスキルで浮かせながら周りの風を全身に纏うように力を籠める。

 

 彼らがやった事への怒りと、彼らが始めた戦争という愚かな行為を……、思い知れ。

 街の者達が感じた、恐怖と痛みを与えてあげよう。

 

「無慈悲なる怒りの嵐よ、愚かなる者達に裁きの刃を我と汝が力の下に裁きを下す‼」

 

 さぁ、風の中で踊り狂いましょう?

 一緒に遊びきれたら、逃がしてあげる。

 

「黒風『テンペスト・ダンス』」

 

 杖を空へ掲げて、周囲には嵐が止むまで逃げられないよう結界を張り閉じ込める。

 周囲からは黒い風と緑色の光る風が渦を巻いて暴れ始めた。

 

「なっ‼ 何だっ⁉」

「総員、敵襲だ‼」

「敵を探せ‼」

「はやく多重対魔障壁を発動せよ‼」

 

 やってることはリムルが攻め込んだ時に取った防御陣形を変わらずに行っているけど、それは風霊術の前では無意味だよ。

 少なくとも、抑え込む事なんて出来ない。

 やるなら、風を打ち消して進んでくるか。

 死を恐れずに風の中を突き進むか。

 あるいは、風に喧嘩を売って、自身の魔法をぶつけて相殺を狙う以外に防ぐ術はない。

 

「なっ‼ 障壁を抜けて風が‼ ぎゃあああぁあ⁉」

「どうなってる!?」

「知りません、しっかりと魔法は……きゃぁああぁぁ⁉」

「オイオイおぃ‼ 話が違うじゃねぇか‼ 楽な魔物狩りじゃ――」

「ひッ⁉」

 

 ある者は手足を切り刻まれて絶命し、ある者は首から死神の鎌にでも薙いで斬られたように頭が吹き飛んでいく。

 そんな光景を前にして、平然と持ち場に立っている者は一人もおらず、虫の巣でも突いたように地べたを走り回る騎士達を空から眺める。

 

「くっ‼ どこに……空!?」

 

 ただ、何人かは戦い慣れた者達が居たのか、自分の事を見つけて向かって来る者達もいる。

 

「た、隊長!?」

「お前達は自分の事だけ考えろ‼」

「た、助けて下さい⁉」

『御免なさいね。弱い貴方達に手を差し伸べているほど、余裕は無いの』

「そんなっ⁉」

『あんな人、初めてです……凄いッ‼』

「待てッ‼ ロゼ、勝手な行動は――」

『私は行くので失礼しますね。あの方ならば……私がここへ呼ばれた理由を知っているかもしれない……だって、同じ匂いを感じる……』

 

 混乱している中で、ただ一人の少女だけが自分に向かって走ってくる。

 

 あまりにもこの戦場で他の騎士団達と違い過ぎて目に付いた彼女の容姿は……どことなく、レイに似ている気がする。

 白がメインの鎧で覆っている騎士団や兵士達の中に、黒い軍服みたいな恰好。

 長い銀髪で赤眼の綺麗な容姿に、片刃の武器は赤に近い桃色で染まっている綺麗な得物だった。

 

 ロゼと呼ばれた少女について行こうと、その後ろを走る騎士達は多分だけど隊長格の者達が多いのだろう。

 

 敵がいたのだから、退かず向かって来る根性は大したものだけれど……。

 

「……ん、ただ突っ込んで来てるだけ?」

 

 よく分からないが、考えがあるのかな。

 

 デッキホルスターからトラップカードを取り出し、場に伏せておく。

 

 自分も下に降りて、相手が自分の張ったフィールドに入ってきたら落とし穴や連鎖破壊(チェーン・デストラクション)を発動させる。

 

「居たぞ‼ あれが……魔国連邦の主か」

「やっぱり、無策?」

 

 自分を視認出来る位置に来たことで安心したのか、それとも自分が居る位置は安全地帯だとでも思っているのかもしれない。

 

 立ち止まった事で簡単に落とし穴に引っ掛かってくれるので有り難い。

 

『なっ‼ いつのまに!?』

 

 壁際にワイヤーを掛けてギリギリで落とし穴を避けたロゼに、落とし穴の範囲外に居た騎士達を今度は鋭い刃の付いた鎖が襲い始める。

 

 心臓を貫くように次々に騎士達を撃ち抜いていき、鎖に繋がれるようにしてカードへと吸い込まれていく。

 

『やはり、貴女様は他の者達と違うようですね』

 

 チリッとした視線を自分に向けながら、何とか落とし穴から這い上がって来た。

 

「やっぱり……閃刀姫のロゼ?」

 

『ふふ、ふふふ……やっぱり、貴女様は私を知っているのですね⁉ 何故かは知りませんがこの世界に生まれ、戦い抜いて来ましたが……私のルーツを知る方が居てくれた……この喜びは計り知れないでしょう。そして、そのお力も、私のマスターとなるに相応しいほど……しかし……しかし、何故か気に入らない匂いがします』

 

 なんか物凄く面倒な子と会ってしまったかもしれない。

 

 閃刀姫の話って、なんかレイとロゼの立場って敵同士で、ロゼの方の勢力である機械達が暴走だか、ロゼを見捨てたかでレイと共闘して、その世界を守る的な話だったはずだ。

 

『貴女のマスターは私で十分なはず……いや、ここは貴女を連れ帰ってしまえば問題ないのでは……そうすれば、上司にも怒られずに済みますか……まぁ、連れ帰れるかと言われれば、やってみないと分かりませんが……』

 

 楽しそうに物騒な事を笑顔で語る姿に自分は若干引き気味に聞く。

 

「ん~、ごめんね。無理かな?」

『む……そうですか、残念です。でも、私は貴女を諦めきれないので……正々堂々と、勝負をお願いします』

 

 うん、この子は変な所でズレている気がする。

 

 杖を構えると、嬉しそうに武器を構えて襲い掛かってくるのだが……レイに比べると些か劣る。

 

 攻撃自体は鋭いのだけれど、フェイントや軌道が直線的過ぎて読みやすい。

 

『くっ‼ 当たりませんね⁉ さすがはマスターに相応しいお方です‼』

「よっと……これは、こっち……それじゃあ反撃、いくよ?」

 

 素早い動きで翻弄しようとしてきているが、殺気も素直過ぎて次に何処から攻撃が飛んでくるかが分かる。

 背後に回られた瞬間に、風霊術の圧縮弾を撃ち込む。

 

『グっ⁉ そんなッ‼』

 

 今度は杖に風を纏わせて、槍のように突き出す。

 

『これはっ⁉』

 

 防御姿勢を解いて、すぐに回避するロゼは正解だけど、後ろに居た仲間達は突き出された風の矢を受けて、絶命していく。

 

『はぁ、はぁ、はぁ……危なかった、です』

「そうだね……でも、不正解」

 

 ロゼが立っている場所は粘鋼糸によって作った罠の上。

 

『なっ‼ こんなモノ!? き、斬れない⁉』

 

 少しでも体重が掛かると簀巻きして、自由を奪う。

 ハクロウなら少ない動きで粘鋼糸だろうと斬ったかもしれないけど、ロゼはどうも動きに無駄があり過ぎる。

 刀のような武器を振るのも大振りが多い。

 細かな動きで最小限の斬撃を放ち、粘鋼糸を素早く斬るような技量は、まだ身につけていないのだろう。

 

「……ん~、それじゃあ君は生かしてあげる……でも、その前に『コレクト』」

 

 もしかしたら、イビリチュアあたりに何かされている可能性も考えて、ロゼをコレクトでカードにしてから、しっかりと彼女とは後で話し合おう。

 

 ……なんか面倒事が増える可能性もあるが、今は時間が惜しい。

 

『私を負かすとは……本当に凄いです。仕方がありません、敗者である私は貴女に命をお預けするほかありませんもの』

「なんで嬉しそうなのさ……」

『ふふ、お気になさらず。また、お会いしましょうね、マスター』

 

 ロゼをカードに戻し終えると。初めに出していた魔法とロゼと暴れていた余波に巻き込んでもう息のある者はいないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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