心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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138話 復活祭と合言葉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、起きたかよ』

 

 少し懐かしく感じる声を聴いて、ゆっくり目を開く。

 眩しくて、始めはぼやけていた視界がハッキリとしてくると、赤く燃えるような髪の色をした女の子が、自分のオデコを撫でながら笑いかけてくる。

 

「ヒータ?」

「あっ、ウィン様も起きましたか‼」

『あぁ起きたみたいだ』

「リムル様もお目覚めになられたのですね。おはようございます、リムル様‼」

「……おはよう、シオン。無事に生き返ったようでなによりだ」

「ヒータも……良かった……」

『はは、悪かったよ。心配かけて』

 

 シオンとヒータが少し自分たちから離れて、縁側の襖を開けていく。

 

「はいっ、リムル様とウィン様のお陰で‼ ご覧ください……我ら一同、一名も欠落もなく無事に生還いたしました‼」

 

 庭先には殺されたはずの皆も、しっかりと元気な笑顔を向けて自分とリムルを出迎えてくれていた。

 

 皆、地面に膝を付きながら、お辞儀してくれている者や、子供達は手を振ってお礼を叫んでいる子達もいる。

 

【よかった……】

【本当に、良かった……ウィン、ありがとうな】

【こちらこそ、リムルが居てくれなかったら……皆を助けられなかったよ】

【にしても「大賢者」のヤツ、円周率並みの成功率などと心配させやがって……】

【それはリムル一人だった場合でしょう。自分も居たし、自分のスキルがあれば成功率は跳ね上がるって言ってたよ?】

 

「はい、ご挨拶は一人ずつですよ」

 

 なんかシオンが張り切りながら、お礼を言いに来た者達を整列させている。

 

「リムル様‼ ウィン様‼」

「ベニマル」

「良かった、もうお目覚めでしたか。色々と報告があるのですが……その前に、目覚めた後の約束を覚えておいでですか?」

「そういえば……そんな話もしてたっけ?」

「あぁ、そうだったな」

 

 リムルが理性のない魔王になっていないか、合言葉で確認する約束。

 

 意地悪な合言葉だけど、確かに理性を確認するにはいい方法ではある……紫苑がちょっと可哀想だとは思うけどね。

 

 まず初めに紅丸が「紫苑の料理は?」と問い、その答えが「クソ不味い」とリムルが答える事で成立する合言葉……紫苑達を生き返らせるっていうのに……その本人のネタ……基、弱点と呼べる苦手な事を合言葉にしたのだ。

 

 まぁ、合言葉を決めた時に紅丸は別の思いもあったみたいだから、その時は自分も何も言わなかったんだけどね。

 

 紅丸は「怒って文句を言いに目覚めてくれれば」なんて思いも込めてなんて言うから。

 

「もちろん覚えてるよ」

「えっ⁉ 本当に言うの?」

「では問います。「シオンの料理は?」」

「くそま――」

「え? 私の料理がどうしましたか?」

「せめて紫苑が居ない所でやれば良いのに……」いや、この場で聞いた紅丸は分かっていて、あえて紫苑がいる近くで聞いたな。

 

 その証拠に、紅丸はリムルの事をニヤニヤして、どうリムルが答えるかを待っている。

 

【ま……まずい‼ おいウィン‼ この状況は非常にまずい‼ なにかないか⁉】

【……巻き込まないで?】

【薄情者‼ クソッ、ベニマルのヤツ、嵌めやがったな⁉ なんだ、あの顔】

【そりゃあ、楽しんでるんでしょう】

【お前も楽しんでないか⁉ 落ち着け俺、こんな時こそ「大賢者」だ。おい大賢…………ん、あれ?】

 

 何故かリムルが固まった。

 

【大賢者が無くなっている⁉ あと知らないのが増えてる⁉】

【あ~、スキル……自分のもどうなって――――え? なにこれ?】

 

〈告。ユニークスキル「大賢者」は、アルティメットスキル「智慧之王」へと進化しました。並びに個体名ウィン=テンペストのユニークスキル「遊戯王」もアルティメットスキル「遊悠久王」へと進化しています〉

 

「え⁉」

「……知らない言葉が沢山?……」

 

 なに……デキウスって? というより、リムルの方もラファエルに進化してるって何? そして一番の問題は究極能力ってどういうことだろう……。

 

〈急を要する案件のためラファエルが対策を提案します〉

 

「えっ、あ、うん」

 

 なんかもう考える事を止めて、「大賢者」さんから変わったラファエルさんの声にリムルは必死に耳を傾けている

 

「久々に食べてみたいのだろう、お前の日頃の努力を確かめてくださるそうだ」

 

 リムルが必死に対策をラファエルに教えてもらっている間にも、紅丸は着々と外堀を埋めるように紫苑が料理を振る舞うように促している。

 

「なるほど‼ それで私に料理しておけと言ったのですね。さすがはベニマル様です」

 

 物凄く嬉しそうにしている所悪いがシオンさん……あなた、騙されてます。

 

「リムル様のための料理だからな、無論俺は遠慮す――」

 

 紅丸が紫苑の料理を断ろうとしている所に、リムルが割って入る。

 

「待ちたまえベニマル君。合言葉だったね」

 

 紅丸は嫌な予感がするのか、冷や汗をかきながらリムルの方を向く。

 

「もちろん、覚えているとも」

 

 物凄く良い笑顔をしながら、リムルがニッコリと微笑み合言葉をゆっくりと、そして声を大にして発言する。

 

「ベニマル君が決めた合言葉は確か……「シオンの料理はクソ不味い」だったかな」

『だはは、言うなベニマル……くふ、くっくく。そりゃあ劇物だからなぁ、仕方ない』

 

 紫苑の背後から、空気がガラスのようにひび割れた音が響く。

 そしてヒータよ、空気を読んで欲しいな……更に紫苑の機嫌が悪くなっていくじゃないか‼ 自分まで巻き込まれたくないんですけど……。

 

 

「ま、待てシオン‼ リムル様は目覚めたばかりで混乱されておられるのだ‼」

「わかりましたベニマル様……いえ、ベニマル」

 

 わぁ~、紫苑が笑いながら背後に悪魔というか、死神を背負っているような迫力がある。

 

「私はウィン様の直属なので敬称は不要でしょう。それよりも貴方がそんなに私の料理を食べたがっていたとは……遠慮など無用、満腹になるまで堪能させて差し上げましょう」

 

 逃げ出そうとしたリムルを紅丸は必死に抱きしめて、逃がさないようにしている……自分もこの場に居ては巻き込まれかねないので、早く逃げようとしたが……リムルのお得意である糸によって絡めとられた。

 

 まぁ、仕方ない。

 それにしても……前の「大賢者」さんだったら罪のないゴブタを生け贄に捧げたような、無理矢理回避という感じだったのに対して、ラファエルさんに進化した影響なのか……今回は自然な回避。

 

 完璧なカウンターブローという見事なアドバイスだ。

 

 そして多分、自分が逃げようとしたのも見越して、被害と食べる量を減らす為に自分を逃がさないようにアドバイスもしていただろう。

 

 いつの間に糸で自分と繋いだんだろう。

 ……影かな。

 

「……俺、死ぬかも……」

「美味しくなってるかも?」

『それはないだろう……アイツの料理だぞ?』

「ははは……まぁ、頑張ってくれ」

 

 そんなやり取りを楽しそうに眺めて居たお礼を言うために並んでいたゴブリン達が、庭先から待ってくれていた。

 

「リムル様、ウィン様。我らもご挨拶を……」

「ん、ああ。もちろんだ」

「うん、皆も無事に戻って来てくれて嬉しい」

 

 生前と変わらぬ知識と人格。

 彼らは皆、エクストラスキル「完全記憶」を獲得している。

 

「これで何度死んでも、復活して見せますよ」

「こらこら」

「体は大事にね」

 

 自分やリムルが眠っている間に、皆はギフトなるモノを授かったらしい。

 他にも臨んだスキルを獲得しているかもしれない。

 

 

    ★☆★☆

 

 

「リムル様‼ ウィン様‼ お目覚めになられて、このリグルド‼ 幸福感に胸を絞めつけられて、もう、このリグルド‼」

 

 なんか興奮のあまり、リグルドの会話がループしている。

 

「心配かけたな」

「ふふ、ごめんね」

「とんでも御座いません‼」

「しかし……」

「瓦礫がほとんど、片付いているのも凄いけど……これってお祭り?」

 

 自分達の屋敷から外に出て街中を歩いて見回っていると、なにやら物凄くお祭りムードの飾りがチラホラと見えて来ていた。

 

「目覚めたばかりで本調子でない者もおります。それにユーラザニアからの避難民もそろそろ到着予定だとか……それで炊き出しの準備を進めていたのですが――」

 

 そうか、ミリムがなんかユーラザニアに宣戦布告していたという報告を受けている。

 自国のことで手一杯だったから、完全に抜けてたよ。

 

『なによ‼ 私達だって活躍したのですから、主様がお目覚めになられたいま、街を盛り上げる使命があるのです。ずっと結界を張っていたからストレスが溜まって仕方ないなんてことはありませんわ』

『そうだそうだ~、それに主様は楽しいことが一番好きなんですから、私達が率先してやらないでどうするんですか‼』

『……同意。盛り上げて迎えるべき』

 

 なんて中央広場で御巫達が盛り上がっている。

 

「あんな感じでして、ただ……リムル様とウィン様がお目覚めになられたということで、急遽、祭りという感じにしました‼ 御巫様方のいう事も、もっともですからな」

 

 ただ、お祭りが好きなだけじゃ……とも思うが、全力でお祝いしたい気持ちもしっかりとあるようだし、お祭りでも良いかなって思う。

 

 楽しいからね。

 

【ユーラザニアの様子については、後で避難民の代表に話を聞こう?】

【それも、そうだな】

 

 ふと、物凄く良い匂いが鼻をくすぐってくる。

 

「うわ、めちゃくちゃ良い匂い」

「すっごく美味しそう?」

「炊き出しはシュナ様が陣頭指揮を執っておられます」

 

【朱菜の料理って、なんだか長いこと食べてないよね?】

【そうだな、今日は旨いものが食えそうだ】

【………リムル、それはどうかな?】

 

『あ~あ、シュナ姫さんの旨いメシの匂いを嗅いでたのに、別のヤツが来やがったぜ』

 

 ヒータが残念そうにリムルを見ながらニヤついた。

 

「リムル様~。お料理の準備が整いました‼ さ、お席へどうぞ」

 

 紅丸もガッシリと掴まれ、逃げられない様子だ。

 

 

「くそっ‼ こうなったらお前らも一緒に道連れだ⁉」

 

 

 リムルの怨念でも籠ったかのような糸が絡みついて、自分とヒータを縛る。

 

『なっ⁉ 卑怯だぞリムルの旦那‼』

「放してリムル⁉」

 

「何言ってるんだ、シオンが蘇った祝いも込めて、食べてあげるべきだろう。なぁシオン‼ ウィン達にも食べて欲しいよなぁ‼」

 

「えぇ‼ 心を籠めて作りますから、是非ともウィン様達もお食べ下さい。それにヒータ、アナタには私の料理の腕がどれほど上がったか、見せてあげるわ」

 

『劇物の腕が上がったら、そりゃあもう兵器だってんだ‼ 放してくれリムルの旦那‼ 生け贄にはウィン一人で十分すぎるだろうが‼』

 

「あ、酷い‼ リムル、放しちゃダメだよ‼ でも、自分の事は逃がしてよ‼」

 

「そんな都合の良い話はねぇ‼」

 

「そうです、リムル様もウィン様もヒータ姐さんも、一緒に食べましょう‼」

 

 

 もう紅丸の目が血走っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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