最奥まで二人で来ると、懐かしい気持ちになってくる。
「今、だしてやるよ――ヴェルドラ」
「少しはあの時より、成長してるかな」
「はは、大丈夫だって」
【ラファエル、“無限牢獄”を解除だ」
〈了〉
少しリムルから離れてみていると、スライムボディのリムルが振動し始めて、周りの空気も一緒に振動で震えるようにして、洞窟内の空気が一気に変わっていく。
天井に亀裂が生じる程の圧は、この世界に来てヴェルドラにあった時のようだ。
洞窟内に嵐のような風が吹き荒れたかと思うと、台風の目にいるような……落ち着いた空気へとすぐ変わる。
「ククク」
モクモクとすごい砂煙で姿は見えないが、懐かしい声が聞こえてくる。
「クハハハ。クァ――ハハハハハ‼」
少し上を見上げれば、ヴェルドラの顔がある。
それと同時に、懐かしい威圧感も肌に感じる。
「俺様、復活‼」
【俺様ってなんだよ……】
【ヴェルドラって、大体、あんなんだったよ?】
「コホン、いよぅ、久しぶり。元気だった?」
「リムル……せっかくの復活なんだから、もうちょっと考えてあげよう?」
「……全くだ、少しはウィンを見習え。我の扱いが軽すぎる」
【相変わらず、めんどくさいオッサンだ】
【まぁまぁ】
ヴェルドラの復活は果たしたけど、そういえば肉体はどうしたのだろう。
「しかし、思ったより早かったな。まだまだ当分は先だと思って居ったぞ」
「あぁ、ちょっと色々あってな。俺とウィン、魔王になったんだけど、ユニークスキルが究極能力に進化してさ、解析能力が格段に上がったわけよ」
「ほうほう、そんなことが」
「……あんまり驚かないんだな」
いや、どちらかというと……ヴェルドラの反応って知ってたような感じに近い気がする。
「いやいやいや、驚いておるよ⁉ 我、のぞき見なんてしとらんし‼」
のぞき見……ヴェルドラなら、リムルの中から多少なりとも行動を見る事が出来た? そんな事が可能なのかな? 意外とヴェルドラならいけそう。
「しかし2年やそこらで覚醒魔王か、お前達の成長ぶりは一体どうなっておるのやら」
【なんか逸らされたな】
【そうだね……】
「って、それより……覚醒魔王?」
〈解。真なる魔王と同義です。魔王種が収穫祭を経て覚醒することから、そう呼ばれます〉
「それで収穫祭って書いて、ハーベストフェスティバル?」
自分が呟くように言うと、リムルは納得したようだった。
【なるほど】
「ま、なんて言うの? ほら、俺って天才っぽかったじゃん? 仲間にも名前を付けると一気に進化してたしね」
「このアホウめ」
「それは多分、ヴェルドラのお陰じゃない?」
「その通りだ‼ さすがウィン。お前達がホイホイ名付けても無事だったのは、足りない分の魔素を我から奪っておったからなのだぞ。それで効率が落ちるから解放はまだ先だと思っておったわ」
【そりゃあリスクもなく、あれだけ簡単に進化できるのはおかしいなとは思っていたんだ……というよりウィン‼ お前、気付いてたんなら教えろよ‼】
【え? 気付いてるもんだと思ってた?】
【くぅ~、今後は控えよう】
「あれ結構しんどいのだぞ……まぁ、今更だ」
「こうして無事“無限牢獄”も破れたわけだし許してくれよ」
「……なにかプレゼントでもくれるのなら、許そう」
「プレゼント?」
何が欲しいんだろう。
「そう……例えば、シュークリ――」
「あっ! そうだ忘れてた、お前には祝福って届かなかったのか?」
……ふむ、いま絶対にシュークリムルと言おうとしてたね……ヴェルドラ、リムルの中から色々と見ていたみたいだ。
それにしても、確かに魔王化の際、魂の系譜に配られるという話なら、自分やリムルの名付け親であるヴェルドラにも何らかの祝福があっても不思議はない。
しばらく沈黙が続き、ヴェルドラの目がカッと開かれた。
「お、おおお‼ 俺のユニークスキル「究明者」が究極能力「究明之王」になったぞ‼ 我の飽くなき探求心が願う究極の真理へ至る力だな‼」
「へ~、凄いねヴェルドラ‼」
「はっはっは、そうだろう。やはりウィンは良く分かっているな」
「はいはい、すごいすごい」
「……リムルはいつも思ってたのと違う……」
リムルにそういう感じの事を求めても、きっと無駄よ。
「さてと……ここで話しているのもいいけど、せっかく復活したわけだし、そろそろ外にでるか?」
「……そうだな。では、我の肉体をどうするかだが……」
「そういえば、今のヴェルドラって肉体は? 今のヴェルドラって思念体? だよね」
「ああ、それはなんとかなると思う」
いわば魂だけの存在だ。
本来、精神世界にいる精霊や悪魔、竜種等の精神生命体は肉の身体を持たず、その姿を物質界に顕現させるには依り代に受肉させる必要がある。
気をつけないといけないのは、精神生命体がマテリアルボディ、つまり物質体を得ずに物質界、まぁ今の自分達がいる世界に居続けると、エネルギーが拡散して、やがて消えてしまう。
まぁ、消滅しても、またどこかで復活するらしんだけどね。
その時は記憶もまばら、たとえそいつがヴェルドラという名の暴風竜であったとしても、リムルと自分の盟友ヴェルドラではなくなってしまう。
「リムルに捕食される前の身体は?」
「うむ、あれは魔素で作りだした体だが、胃袋の中では不要故、魔素に還元されておる」
「へえ~……一つ約束してくれないか?」
リムルが何か思いついたのか、ヴェルドラに約束事を持ち掛ける。
「ほう、なんだ?」
「お前のデカ過ぎる妖気を抑えて欲しい、街には人間もいるし、弱い魔物もやって来る」
「……なるほど、わかったぞ。約束しよう」
「よし、ありがとな」
「それなら、皆が安心して暮らせるね」
「リムル、ウィンよ……お前達は本当に王になったんだな」
「まぁね」
「自分は別に? そういう面倒なのはリムルに任せる」
「おいコラ! お前もしっかり国のトップとして働いてもらうからな⁉」
「いやだ~」
なんてじゃれ合いをしながらも、リムルはもう片手の方で、違う力を込めている。
「待ってろ、今用意してやる」
「おお……っ⁉」
「リムルがもう一人? 強化分身?」
「はは、さすがウィン、良く分かるな」
「これをお前の依り代にしてくれ」
「ほほう……」
作り出されたリムルの分身体を調べるように見つめ、ヴェルドラがついに笑い出した。
「クアハハハ‼ 良い依り代だ、ありがたく頂戴するとしよう」
ヴェルドラが一気にリムルの分身体の体の中へと入って行く。
〈告。重要な報告が発生しました。マスターと個体名ヴェルドラの“魂の回路”の確立を確認しました。また、ヴェルドラの残滓を解析鑑定した結果――究極能力「暴風之王」を獲得しました〉
『ふふ、ふふふ……こういう“魂の回路”っていうのは、やっぱり良いモノよね』
「え? ライナ!?」
「という事は何か、今まで姿を見せなかったと思ったら、なんかやってたのか⁉ つうか、その魂の回路を確立したの、お前かよ⁉」
『ちょっと色々と遅くなっちゃったけど、良いじゃないリムルも新たな力が手に入ったんだからさ』
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
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