心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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148話 国の繋がりと英雄の使い方

 

 

 

 

 

 

 

 

 話し合いの場はお祭りなどで使う一画。

 屋根もあるし、外という事で結界を張れば会話が漏れる事もないと、御巫や霊使いの皆が協力してくれてる。

 

 警備はレイや白老がしっかりと受け持ってくれている。

 

「――では、既に皆様自己紹介はお済ですので、各国の代表者様のご紹介だけ、させて頂きます」

 

 朱菜が間に入って、各国の代表者の顔を一人一人見ながら紹介を始めていく。

 

「武装国家ドワルゴンより、国王陛下ガゼル・ドワルゴ様。

 獣王国ユーラザニアより、三獣士が筆頭アルビス様。

 ブルムンド王国より、ギルドマスター兼情報局統括補佐、フューズ様。

 魔道王朝サリオンより、大公爵エラルド・グリムワルト様。

 ジュラ・テンペスト連邦国より、盟主が一人、ウィン=テンペスト。

 最後にジュラ・テンペスト連邦国より盟主改め魔王陛下、リムル=テンペスト」

 

 なんかフューズは顔色が少し悪いけど大丈夫だろうか。確かに「なんか自分だけ場違い」という感じは否めないけど……頑張って欲しい。

 

 ちなみにヴェルドラには顧問として参加してもらっているけれど、ヴェルドラはこういう場は向いていないだろうし、場が混乱するだけなのでリムルにマンガという名の聖典を渡され、没入している。

 

「いいか、邪魔だけはするなよ」

「うむ……」

 

 エレンの親であるエラルドは油断できない人物だし、話し合いは慎重に進めないとだ。

 

「では、始めようか」

「前に、シズさんと同郷だと伺いましたが……」

 

 まず初めに経緯を説明する所からだ、自分やリムルのルーツやヴェルドラとの縁が気になっている者も多いみたいだし。

 

 元は異世界の人間だったこと、リムルはスライムに転生し、自分は精霊魔女という感じでヴェルドラの居た洞窟で目覚めた事など……外遊からの帰国時にヒナタが襲ってきたことや……どうにかテンペストに帰ってきたら、襲撃の後だったこと。

 

 魔王化に至るまでを、かいつまんで話した。

 

「――とまぁ、そんな流れでファルムス軍には生贄となってもらった。そうして俺とウィンは魔王になったんだよ」

「ん――で、事実は今リムルが説明した通り? なんだけど、公にする筋書きは大きく変える?」

 

 説明を終えたリムルに合わせ、今後の方針を付け加えて自分も語る。

 その言葉を聞いて、会場内が少しザワつく。

 

「どのような理由で、どんな風に変えるのですか?」

 

 紅丸が一番最初に聞いてくる。

 

「返り血で染まった手で友好を求められても、その手を取れるものはおらぬ。リムル、ウィンの望みが人と魔物の共存共栄なのだとしたら、恐れられるのは悪手だろう。それは配下がやったと言っても同じことだ。だが――“暴風竜”の仕業ならば話は別だ、その存在はもはや伝説であり、その行いは紛う事なき“天災”だ。受け入れる以外の選択肢はない」

 

 ガゼル王が皆に分かり易くあらましを説明してくれる。

 

「“天才”……か」

 

 ヴェルドラが呟くように言うが……違う、絶対に漢字や意味が違うのだが、いまここでツッコミを入れる勇気はないです。

 

「私も、この筋書きを支持します。娘のせいで新たな魔王が誕生したと恨まれるより、魔王が誕生したお陰で暴風竜との交渉が可能になった――そう広まる方が都合がいい」

「パパ……それってなんか姑息ぅ」

 

 そう言ってあげないでほしい、エレンを守る為でもあるんだから。

 

「反対意見があれば言ってくれ、特にヴェルドラには俺やウィンの罪を背負わせてしまうが……」

「何も問題ないぞ。我はお前達の業を共に背負うと決めていた、暴風竜の威、存分に使うがよい」

「……うん、ありがとう」

「ああ、ありがとうな」

 

 自分とリムルがヴェルドラと顔を見合わせながら礼を言う。

 周りに居る者達も、そんなやり取りを唖然としながらも、しっかり暴風竜と意見を言い合い、楽しそうに話す姿を見て、仲の良さを確認してくれる。

 

「本当に、暴風竜と友達なんだな……」

「ところでリムルよ、捕虜はどうするのだ? そやつ等の口から真実が語られないとも、限らんぞ」

「……ああ、ファルムス王国には一度滅んでもらう」

 

 リムルがしっかりとした意思を籠めて、滅んでもらうと言う。

 会場内が一瞬だが沈黙した。

 

「ほう、それはまた直接的ですね。戦争を仕掛けるおつもりか?」

 

 エラルドがどういう戦略を考えているのか探りを入れてくる。

 

「ある意味そうとも言える」

「ん、だけど軍は用いない? まずは現王を解放……我が国への賠償を行わせる?」

「しかし、言っては何だが、あそこは一部の貴族を除いて腐ってますよ。賠償にまともに応じるとは思えんのですが……」

『ふふ、それが狙いよ』

「賠償問題はきっかけに過ぎない?」

「ああ、本当の目的はファルムス王国内に内戦を起こさせることだ」

「内戦……?」

 

 そこまで話が進むと、事前に内容を話していたヨウムが立ち上がる。

 

「一度滅ぼし、新しい国に生まれ変わらせる」

『英雄ヨウムを新たなる王に据えるのよ……楽しそうでしょう』

「幸い、彼は国民からの人気が篤い?」

 

 そう言われて、ガゼル王がヨウムの方へと視線を移した。

 

「小僧、あまり驚いていないな」

「はは……旦那やお嬢からこっそり聞いてたんで」

「革命、ということか」

「ファルムスは既に四万の兵を失っている」

「或いは成し得るかもしらんが……」

 

 一息、ガゼル王がヨウムを見ながら“英雄覇気”を飛ばした。

 

「うおッ‼」

 

 ヨウムは持ち前の気力で耐え抜き、ガゼル王の英雄覇気に耐える。

 

「フン……根性だけは大したものよ。だが、覚悟はあるのか?」

「……俺を信じて託された、この役目。やるからには全力でやるさ……惚れた女の前でカッコつけたいのは男として当たり前だろ?」

 

 大見得切って放ったセリフは、ミュウランの事だった。

 ちょっと遠くでエリアがキャーキャー騒いでいるが、すぐにアウスによって沈黙させられている。

 

 ガゼル王も、まさかそんなセリフが返って来るとは思わなかっただろう。

 目を見開いてヨウムを見ている。

 

 グルーシスは楽しそうに笑い、その横に居るミュウランは顔を赤らめている。

 

「ドワーフの王よ。俺も保証する、コイツは馬鹿だが無責任ではない。あんたのように英雄王と呼ばれる、その時まで……このグルーシスが見届けよう」

「……で、あるか。ならば良い、何かあれば俺を頼るがいい」

「……心強い」

 

 ガゼル王もヨウムの事は認めてくれたようだ。

 

「さて……この件について、他に何かあれば意見を言ってもらいたい」

「いいですか?」

「フューズ」

「その件、ブルムンドとしても協力できるかもしれません。ファルムス王国にミュラー公爵というブルムンド王の遠縁に当たる方がいらっしゃいます。彼ならば、交渉が可能だと思いますので、上手くいけば便宜を図ってもらえるかと」

「本当か‼」

 

 リムルが嬉しそうに反応する。

 

「プハハハ‼ 面白い、これは愉快だ‼ 国を跨いで本音で語り合うなどと‼ これでは警戒している私の方が滑稽です」

 

 まぁ、確かにそうだけど……さて、エラルドさんとやら……貴方はどう動く?

 

「フューズとやら、一つ問おう」

 

 エラルドが椅子から立ち上がって、フューズの方へと歩み寄っていく。

 

「貴国はなぜ、魔国連邦と国交を結んだのかね?」

「それは、どういう……」

「今の君はブルムンドの公人として、ここに居る訳だろう? 私はブルムンド王の思惑が知りたいのだよ」

 

 なるほど、確かにエラルドとしても、この話が悪い方向に転がってはエレンの立場も下手をすれば国も危うくなる。

 当然の質問だし、疑問だ。

 

「失礼だが貴国は大国とは言い難い。有益な取引だけ行いつつ、西方聖教会の出方を見ていても良かったのでは? 少なくとも国交を結ぶ必要はなかったと思うのだがね」

 

 皆がフューズに集中する空気の中、彼が下手な嘘を付けばすぐに分かるだろう。

 それが分かっているのか、はなっから気持ちなど決まっていたのか……頭をガシガシとかきながら立ち上がる。

 

「そんなもん、わかってますよ……ええ、そうですよエラルド公。俺もベルヤード――知り合いの貴族も同意見でした。……ですが、『信頼関係を結び、共存共栄の関係を築く、それしかない。オークロードやカリュブディスを退ける国だぞ? 仲良くせんと、我が国が滅ぶじゃろうが……‼』というのが、リムル殿、ウィン殿がブルムンドに来られる前の王の言葉です」

 

 やっぱり、あの王様は頭が切れる人のようだ。

 強かであり、国の為にもしっかり動ける人物、優しい顔をしつつも物事を見れる、見た目に反した曲者のようだ。

 

「結果として、この選択は正解だった。ブルムンドはルミナス教への信心が薄い。命運を賭けるなら、西方聖教会ではなく、魔物の主を信じよう……と。ま、それが理由です」

「……なるほど、つまり生存戦略として、西方聖教会よりテンペストを選んだ、という事ですか。すまなかったねフューズ殿。お陰でよく理解出来ました」

「小狡いなエラルド、他国を試さずとも俺がリムル、ウィンを信じているのだから、疑うまでもあるまいよ」

「そうは言うがなガゼル、魔物の国との国交となると、そう簡単には決めかねるよ」

「……で? 決断は下せたのだろう?」

「私なりに結論は出ているがね、それを答える前にリムル殿、ウィン殿自身に一つ伺いたい」

「ちょっとぉ、パパ‼ 勿体ぶらずにさっさと答えてよぉ‼」

「ちょ、お嬢様今は不味いですって!」

 

 エレンが出てくると、公爵も形無しだ。

 

【ねぇねぇリムル、可愛そうだし、少し雰囲気を出してあげない?】

【お、良いな。何するんだ?】

【ガゼル王を習って、魔王覇気でちょっと雰囲気づくり、とかどう?】

【……なるほど、乗った】

 

「エレンちゃん、今、大事なとこだから」

「……それで、なんだって? きこうか、エラルド」

 

 リムルが魔王覇気をエラルドに向けて放つ。

 

「……では魔王リムルよ。貴殿は魔王として、その力をどう扱うおつもりか?」

 

 エラルドは魔王覇気にしっかりと耐えながら、リムルに力の使い方を問う。

 

 少し緊張した空気と沈黙が続く。

 

「――なんだ、そんなことか。俺は俺が望むままに、暮らしやすい世界を創りたい。出来るだけ皆が笑って暮らせる、豊かな国を……ま、そんな簡単にはいかないだろうけどな」

「そ、そんな夢物語のようなことを……っ、本気で実現で出来るとでも!?」

「もちろん、そのための力さ。力なき理想など、戯言だし、理想なき力は虚しいだろ?」

「うん、ただ力のみを求める趣味は、自分もリムルもないよ? 皆と楽しく笑って暮らせる……これほどの理想を持たずに国なんて作らないよ?」

 

「……は、ははは、はははははははっ。これは愉快ですな、魔王リムル、それに魔王ウィンよ‼」

 

 笑い終えると、自分とリムルに改めて向き直り、ゆっくりとお辞儀してきた。

 

「貴殿達が覚醒できた理由が、理解出来た気がします……失礼しました、私は魔道王朝サリオンよりの使者として、貴国――ジュラ・テンペスト連邦国との国交樹立を希望いたします」

 

「その話、是非ともお受けしたい。こちらからも善き関係を築きたいと思っていた」

 

「初めから魔国側に付くと決めておったくせに、この狐め」

「暴風竜がいる時点で敵対はありえんがね、最後の決め手は彼等の魔王としての在り方さ。まさかいきなり呼び捨てで、威圧されるとは思わなかったがね」

 

 そっと自分はリムルの後ろに隠れて顔を背ける。

 

「こら、お前は隠れるな‼ 提案者‼ 申し訳ないエラルドさん……殿?」

「個人的な会話なら“さん”でも“殿”でも結構です。ですが公的な場では名前と役職で呼んでください」

「ああいう演出はとても効果的だ、どんどんやるといい」

「……感謝するよエラルド公」

 

「ふぃ~、一旦、休憩~?」

「お前は早く休みたいだけだろう……」

「お飲み物、お持ちしますね」

「頼むよ」

「冷たいの、お願い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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