心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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15話 シズエ・イザワ(後編)

 

 

 

 

 

 

 シズさんが意識を失う様に目を閉じると、今まで抑えていただろう炎が一気に全身を覆い始めていく。炎の長い髪の毛に鋭い爪、細くも筋肉質な上半身の男性に変る。

 

「アレがイフリート、最上位精霊」

「念のために聞くぞイフリート! お前に目的はあるか⁉」

 

 イフリートは返事をすることなく、手を上に掲げる。

 彼の真上で小さな炎の渦が幾つも作られていき、上に掲げた左腕を振り下ろすと、炎の球になって瓦礫が降ってくるみたいにこちらに襲い掛かってきた。

 

【会話は無理。自我があるかも怪しい?】

『そもそも対話をする気はないんじゃない?』

【俺達を全滅させたいって意思はわかったな】

 

 リムルがひょいっとランガに飛び乗る。

 

「ランガ、お前は回避に専念しろ」

「御意!」

 

 自分は杖を振りかざして、炎の壁を作り出して降り注いでくる火球を取り込む様にして防ぐ。逆に相手の炎を吸収して炎の壁を強化していく。

 

「そっちの冒険者達を任せるぞ!」

 

 自分とライナの少し後ろで、エレンとギドはカバルを盾にしつつ何とか耐えている。

 

「あっちぃ、あっつ‼」

「死んじゃうー」

「無理! 無理でやすー‼」

 

 相変わらず五月蠅い感じではあるが、余裕はあるようにみえる。

 

『ほっといても、大丈夫じゃない?』

【……ほっといても平気そうだな】

「ある程度は好きに動けそうかな?」

 

 自分の出した炎の壁は攻撃を防いだとしても、かなりの熱があるのでカバル達の前に展開するにしても、かなり離さないと意味がないだろう。

 

「ランガ、奴に接近しろ」

「はっ!」

 

【母体になってるシズさんが心配だけど、いざとなれば回復薬がある……奴にダメージを与えて無力化する!】

 

 近付いていくランガを警戒してか、イフリートが右手を動かし人差し指をクイっと小さく上へと動かすと、地面から火柱が立ち上がる。

 

【くらいやがれ「水刃」!】

 

 ぷくっとリムルが少し膨らんで水の刃を打ち出した。

 だが、イフリートに当たる前に蒸発してしまう。

 

【蒸発した⁉】

【イフリートの周りは更に熱いってことかな?】

『熱に守られてるってよりも、炎そのモノって考えなさい! 相手は精霊よリムル!』

「我が主よ! 精霊種に爪や牙などの攻撃は通用しません。下位精霊ならば雨で弱体化するのですが……」

 

 相手は最上位の精霊だ。雨なんかで弱体化する訳もなく、ただの弱点属性をぶつけたとしても焼け石に水だろう。

 少なくとも、イフリートが纏う熱量より遥かに上回る必要がある。

 

「なるほど……火には水が強いってことはないのかな?」

 

 カードホルスターから2枚のカードを取り出して、その内の1枚……水霊使いエリアのカードを手に取って見るが、さっきのリムルが放った「水刃」の様子を見るに、悪手になる可能性の方が大きい。

 

「リムル! 水は使っちゃダメ‼」

「え⁉ なんでだ!」

「蒸発してるんだから! イフリートの熱量に勝る水量をぶつけでもしたら、弱体化しても大規模な水蒸気爆発してここら一帯なんて軽く吹き飛ぶよ⁉」

「うぇ!? マジかよ⁉」

『流石にそんな爆発じゃ、アタシの防壁なんて一瞬で吹っ飛ぶわね』

 

【大賢者! ウィンが言うように水刃用に溜めてる大量の水をぶっかけたとして、奴を弱体化できるか⁉】

〈解。弱体化しますが、個体名、ウィン=テンペストが言う通り水蒸気爆発が生じる可能性が高いです〉

【っ⁉ 生じるとどうなる⁇】

〈建設中の街を含む、この辺り一帯が更地になります。実行しますか?〉

【するワケねーだろ‼】

 

 あんまり攻撃力が高すぎても、母体であるシズさんが危ない。かと言って弱体化するような属性攻撃に関しては、生半可なモノじゃあダメだ。

 攻撃手段が限定されていく中で、イフリートの方に動きがあった。

 

 イフリートは自分を睨みつける様に見ていると、全身から同じくらいの質量をもつ分身体を幾つも作り出していく。

 

【分裂した⁉】

「なんで自分が睨まれたの⁉」

『そりゃあウィンが一番の危険人物だからでしょう』

「え? なんにもしてないよ?」

『いやいや、相手の炎攻撃を吸収してるじゃない。それにウィンの力に興味があるんじゃない? 倒して取り込む満々って感じよアレは』

 

 ライナが逆にイフリートを睨みつけながら、嫌悪感を隠しもせずに指差して言う。

 

「変な奴に好かれたなウィン」

「リムル、やめて……背筋になんか気持ち悪いのがはしった」

『あんなのにウィンを渡す訳ないでしょう。ぶちのめすわよ』

「気持ちは解るが落ち着けライナ……にしても、まずいな。まだ有効な攻撃方法もみつけてないってのに――」

 

「「アイシクルランス」‼」

 

 分身体を狙ったのか、エレンがはなった大きな氷のトゲがイフリートの分身体を撃ち抜いていく。

 

【効いた⁉】

「形は崩れたけど……すぐに再生する? でも弱体化には役立ちそう」

 

 

 チラッと全員でカバル達の方を見ると、エレンが構えている杖の先から魔法陣が展開されている。詠唱中のエレンを守る様にカバルとギドがイフリート攻撃を防ぐ感じだ。

 

「もういっちょお……「アイシクルランス」!」

 

 分身体の形は崩せるけど、またすぐに再生する。

 

「アレは使えそう?」

「いいねぇ。取り込めれば使える様になるか大賢者?」

〈可能です〉

『なら、それまでの時間稼ぎは任せなさい。あんまり遅いと、活躍の機会を無くしちゃうと思うけどね』

「そりゃあ、急がないとな! ランガ!」

「はっ!」

 

 リムル達がエレンの方に走り出していく。

 

「役者が揃うまで、お相手願いますよ。イフリート……」

『舐めてると痛い目にあうわよ』

 

 分身体達が取り囲む様に動き出して、一斉に手を上に掲げる。

 

「同じ手は通じないけど?」

『ちょっとは違うんじゃない?』

 

 ボッと大量の火柱と、熱量の増した炎の玉を同時に展開しだした。

 

「ねぇイフリート。分身体を出したのは……失敗だったね」

 

 何を言っているというように、イフリートの表情がピクっと動いた。

 

「ライナ、防御は任せていい?」

『ふふん、まかせなさい……でも、あの炎の壁は消さないでよ』

「アレは簡単には消えないよ。なんか予想以上に相手の力を取り込んじゃってるから」

『なら全然平気♪ 消えないならこっちで操っちゃっても問題ないよね』

 

 カードホルスターから取り出したもう1枚は、罠カードだ。

 

 霊使いの描かれた罠カードは属性ごとに1枚、しっかりと存在する。前のは地属性の「鉄」そして今回のは火霊使いヒータの絵が描かれているトラップカード。

 

 火霊術ー「紅」だ。

 効果は、自分フィールド上に存在する火属性モンスター1体を生け贄に捧げ、生け贄に捧げたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

「キミは気付いてたかな? 1体だけ、キミのコントロールを受け付けない個体が居るって事にさ」

 

 自分に言われて初めて、分身体の1体が動かない事に気が付いたようだ、その事に驚き目を見開きながら、こっちを見ている。

 

『何をされたのか分かってないみたいね』

「まぁ、今更気付いたところで遅いんだけどね」

 

 分身体が攻撃を仕掛けてきた時点で、こっちの術中にはハマってるんだから。

 自分が操っているイフリートの分身体の足元に「紅」のトラップカードで作られた魔法陣が展開されて、分身体を魔法陣が取り込んでいく。

 魔法陣が赤く輝いて、赤く凝縮した炎が次第に赤い光に代わって、レーザーの様になってイフリート自身へと襲い掛かる。

 

 警戒していたようだが、いくら回避しようとしたところでどこまでも追跡していき赤いレーザーがイフリートを貫いてく。

 

 初めて痛みを感じたようで、なんか怒った様に此方を睨みつける。

 

『そっちばっかに集中してちゃあ駄目じゃない。自分で生み出した子達の面倒もみないとね。こういうヘマをしちゃうのよ』

 

 ライナによって光の縄で縛られ、地面に縫い付けられて動けない様にされている。

 

「おいおい、本当に俺の出る幕が無くなっちまうだろうが」

 

 リムルはランガの背中から飛び降りて、自分とライナの隣に降り立った。

 

〈告。「アイシクルランス」の解析および取得に成功しました。〉

 

「よし! 「アイシクルショット」!」

「えええ⁉ なに今のアレンジ⁉」

 

 エレンが撃っていた氷のトゲが雨の様に降り注いでいく。

 彼女もリムルの使った魔法に驚いてツッコミを入れている。

 

 ライナの力で動きを封じられていた分身体は避けるすべなく全段命中する。

 姿を維持できなくなった炎が行き場を失う様に漂っていたのでそれに向かって、杖を翳してカード作成に使う魔素として吸収させてもらう。

 

 

「残るはテメーだけだ。イフリート」

 

『……炎化爆獄陣』

 

 イフリートが自分とリムルを囲う様にして地面に魔法陣が展開された。

 

『ウィン⁉』

「主よ‼」

 

【ミスった……俺もここまでか。シズさんを救えずに終わるのか、クソ……無念だな】

【……ん?】

【スライムに転生して数ヶ月、短い人……いや、スライム生だった】

【リムル……何してんの?】

【お前まで巻き込んで……ってか熱くないのか⁉】

【それはリムルもでしょう?】

【苦しくもないな、なにコレ、焦らしプレイ?】

【はぁ……おバカ……「大賢者」さん。説明宜しく】

 

〈……解。「熱変動耐性」の効果により炎の無効化に成功しています〉

 

【あっ‼ 忘れてた】

 

【……おバカ】

〈……はぁ〉

 

【おい、ウィンはまだしも大賢者! 今あきれただろう⁉】

【自業自得?】

【くっ! まぁいい、それじゃあ反撃だ】

 

 リムルが炎の中からイフリートにむかって糸を巻き付けて、動きを封じる。ライナがやっていたようにして、しっかりと縛り付けて手足を動かない様にしている。

 

「悪いな、イフリート。俺達に炎は効かないんだ」

「チェックメイト?」

「シズさんを返してもらうぜ」

 

 リムルがユニークスキル「捕食者」でイフリートを覆いつくしていく。

 

「勝った、のか?」

「助かったでやすな」

「つかれた~」

 

『もうウィン‼ 心配したんだから』

「わぷっ、く、苦しい⁉」

『アタシを心配させた罰よ⁉』

「ご、ごめん」

 

 見た目の割にライナはしっかりと胸があるんだから、顔を胸に押し付ける様にして抱かないでほしい、少しは恥じらいを持ってよ。

 

 

 

 リムルはイフリートだけを捕食して、シズさんの姿に戻った。

 倒れ込むシズさんをスライムボディでしっかりと受け止めてあげている。

 

 

 

「スライムさん…… ありがとう」

 

 

 

 

 

 

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