マンガに集中しだしたら止まらない子供のように、ずっとかじり付いているラミリスをジト目で見ながらリムルが立ち上がる。
「この色男たちの中からヒロインが一体誰を選ぶのか、それを見届けるまでアタシは――」
「おい、ラミリス……そのヒロインが誰とくっ付くか、ばらされたくなかったら、さっさと来た目的を言え」
「……リムルの記憶から……あのマンガって再現されてるんだよね」
「あ、あぁ……はっ‼ いや、別にどんなマンガを読んでたっていいだろう⁉」
「別に、面白いし良いと思うよ?」
「お前も知ってんじゃねぇか‼」
何のことかと分からないと、そっと目を逸らす。
ラミリスも流石にネタバレは嫌な様で、すぐにこちらに飛んで来てくれる。
「はい! もう一度言うわ‼ この国は滅亡する‼」
「それはもう聞いた?」
「で? なんで、そうなるんだよ?」
「そうね、それを伝えるまえに……」
自分とリムルを見た後に、後ろを振り返ってガゼル王やエラルド公などの人間達の方へと視線を向けていく。
「随分人が多いけど……まぁいいわ、人間にも関係ないわけじゃないし、一緒に聞きなさい。魔王クレイマンの提案でね、魔王達の宴が発動されたのよ‼」
「ワルプルギス?」
リムルがラミリスの言葉を少し繰り返しながら、なんか違う想像をしていそうな驚き肩をしていた。
「……なんでちょっと胸躍らせた感じなの? リムル?」
「いや、なんでもない……」
「ええそうよ、ワルプルギス‼ 全ての魔王が集う特別な会合なの」
ラミリスの説明を聞いて、リムルがちょっと残念そうな顔をしている。
「あんた達……魔王を名乗っちゃったんでしょ?」
「ん? 魔王を名乗ったのはリムルだけ?」
自分はラミリスの言葉にすぐリムルを指差して答える。
「ああ、後悔も反省もしてないぞ? と言うかお前は俺を指差すなッ‼ お前も魔王になってんだろう!?」
「まぁまぁ、つまりはリムルへの制裁が目的で会合が開かれる?」
「名目はそれなんだけど、本当はそんなことじゃ理由にならないよ。制裁するならご自由にってのが我々の業界での暗黙のルールなの‼」
業界なの魔王の世界って?
ラミリスはリムルの髪を引っ張りながら必死さをアピールしている。
「アタシの所に届いた報せでは、クレイマンは既に軍事行動を起こしてるの‼ アンタたち全員始末する気満々なのよ‼ もう制裁どころじゃなくて、これは先手を取られた戦争なの‼」
「……へぇ」
「なるほど……」
リムルとちょっと重なるように自分も納得する。
「ちょっと二人共!? なに落ち着いちゃってるのよ⁉」
「いや、今までずーっと裏でコソコソされてて気に喰わなかったんだ」
「うん、敵意を向けて出てきてくれるなら好都合?」
「ようやく分かり易い敵意を向けてくれたな、魔王クレイマン」
==リムルと二人で悪い笑みを浮かべながら、とりあえずは会談を終了させる為に話を進めていく。
「――以上で本会談のまとめを終了いたします」
『議事録は後程、また今後新たな情報がわかり次第、お知らせします。皆様、お疲れさまでした。大変有意義なご意見を頂けたこと、感謝いたします』
朱菜とライナがしっかりと場を締めてくれる。
「えー……では、本日は誠にありがとうございました」
「後に“人魔会談”とか言われそうだよね?」
「はっはっは、良いなウィン‼ この初の会談を語るなら、確かに人魔会談であるな」
なんか余計な事を言ったみたいで、他の面々と確かにと頷きながら“人魔会談”という言葉がすぐさま定着していってしまった。
リグルドとゴブイチはお土産の準備でもしているのか、「なるべく小さめの茶菓子の用意を」と話し合っている。
「ふー……いつの世も、お偉いさんとの会談は肩が凝るな」
「スライムに凝る肩があるの?」
「気分の問題だ!」
スライムボディのリムルは紫苑に抱っこされながら、オジサンみたいなセリフを言っているので、つい反応してしまった。
「そういやアンタ、スライムだったね」
「ああ、ラミリスに見せるのは初めてだったか」
「ラミリス、聞かせてくれる? 魔王達の宴について?」
自分がお茶菓子を用意しながら、ラミリスの分も紅茶を入れながら聞く。
「元はただのお茶会みたいなものだったのよ、アタシとギィとミリムだけの集まり。そのうち後から魔王になった子たちも参加するようになってね、揉め事があれば多数決できめたりする場にもなったの。んで今から千年前に人間が“ワルプルギス”って呼称を広めたワケ」
マカロンが気に入ったのか、物凄い勢いで噛り付いていく。
それにしても……ラミリスの喋り方や性格のせいか、どうにも認識的に軽すぎて信用ならないというか、当てにできないというか……。
「んまぁ、あの時は……大戦で混乱してた頃だし、人間からしたら魔王が集まって何か話し合ってるなんて、それだけで不吉よね」
「大戦?」
「大戦があったのか?」
「そ、五百年周期で発生する天魔大戦」
【ねぇ、いま周期って言った?】
【……ん? 千年前にワルプルギスの呼称が知れ渡って、それが五百年周期で発生する大戦中だったって?】
「おい、それって近々大戦が――」
「ってそんな過去のことは一旦置いといて」
いや、その話も結構に重要なお話だと思います。
「今大事なのは、今回のワルプルギスよ‼ リムルあんた……ワルプルギスに参加するつもりなの?」
「ワルプルギスには当然クレイマンも来るんだろ? こっちから出向いてみるのも面白いかと思ってさ」
「ねぇリムル、そもそも飛び入り参加って出来るの? ラミリスを通せば出来たりしないかな?」
「うーん……多分大丈夫だと思うけど」
ラミリスとリムルに混じって話を進めていくと、朱菜が心配そうな顔をしていた。
「危険……では、ないでしょうか」
「シュナ」
『そうです、シュナ様の言う通り。それにリムル様が行くとなると、絶対に主様も行きますよね‼ ご自身を大事にしてくださいまし』
「クレイマン以外にも敵がいないとは言い切れません。そんなところにリムル様が出向かれるなど……」
『……危ない事に、賛成はしかねる』
「オレもそのように思います。リムル様が御身を危険に晒さずとも、クレイマンがワルプルギスに参加するのなら、奴が城を空けるという事、むしろ攻め入る好機ではないでしょうか」
朱菜に賛同するようにハレやフゥリ、それにゲルドが声を上げて言う。
「……ま、それはそうなんだけどな」
「ん~、リムルが気になってるのはミリムでしょう?」
「それはウィン様もですよね?」
自分が歯切れの悪いリムルの事を語ると、紅丸に自分事も言われてしまう。
隠すことじゃないから、紅丸の言葉に頷いて答える。
「確かに、ミリム様の不可解な動向の裏にはクレイマンの影が見え隠れしている、だが操られているのか、自身の意思なのか決め手に欠ける」
蒼影が壁に寄り掛かりながら、意見を出してくれる。
「ミリム様がリムル様やウィン様を裏切るなど、絶対に考えられません‼」
『根拠がねぇってツッコミたいんだけどなぁ~……正直、オレもシオンの意見に一票だな。ミリム様ってのは裏工作とか出来るお人には見えねぇよ』
『まぁ確かに……やるならキレて暴れるとか、真正面から叩き潰すっていう方が、ミリム様らしいと、ボクも思うね』
紫苑が声を大きくして、根拠のなさそうな事を言うが……自分も紫苑の意見には同意したい。
「俺とてそう思っているが、相手は海千山千の魔王だ。その心を読み切ることは不可能だろう」
「いいえ‼ 根拠はありませんが、あれは絶対本気で懐いてました‼」
この潔さは、流石と言える……紫苑らしくて良いね。
「ここでいくら話したとて俺達が真相を知る術はない」
『ベニマル様の言う通りですね。確かに危険はありますが、確かめるのならばミリム様に直接問いただす他はないかと思います』
『戦力的には、リムル様とマスターが一緒の方が良いと、私も思いますね……出来れば私はマスターのお側に――』
『貴女は自重してください、それにウィンの傍に居るなら私がいますっ‼』
紅丸とニニは違う意見を言いながら、自分やリムルのやりたい事に賛同してくれる。
レイとロゼは……ディアブロと紫苑の関係みたいに、お互いに噛みついている。
「なるほどね、ミリムについてはアタシも変だなと思ってたのよ」
「ほんとか……?」
「いいわ‼ このラミリス様にまっかせときなさい、リムルとウィンの参加をばっちり認めさせてやろうじゃないの‼」
「ああ、頼むよ」
「ん~、自分はリムルの従者って事で良いと思う?」
「お前は俺を前に立たせて隠れる気満々だなっ‼」
「そんな魔王なんて危ない人達と一緒の席に座ってお茶したくないだけ?」
「今現在してるよな! こいつも一応は魔王だろう‼」
「あんた達ね……あ、そうだ。従者は二人までだよ‼ 誰を連れていくか決めといてよね‼」
ラミリスがそう言い残すと、周りの連中があからさまに反応していた。
「クフフフ、では私がお供を――」
「いや、お前はファルムス王国攻略の役目があるだろう」
『……そうなると、俺も無理じゃねぇか……』
『なんでダルクまで行く気になってるのよ。ウィンの傍にはアタシが居れば――』
『おいコラ! 偶にはオレ達に替われ‼』
『そうです、ライナだけいっつも一緒はズルいですよ‼』
なんか大変な事になっているけど、大体のメンバーは別に頼みたい事があるから、無理じゃないかなぁ。
三獣士の皆と、クレイマンの軍と戦うだろうしね。
次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで
-
ウィッチクラフト
-
エクソシスター
-
蟲惑魔
-
妖怪少女
-
六花
-
海晶乙女
-
アロマ
-
ティアラメンツ
-
白き森
-
イビルツイン
-
ドラゴンメイド
-
ラビュリンス