心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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159話 クレイマンの話と嘘

 

 

 

 

 

 

 

 全員が席に座っているが……やっぱり12席……誰か座るのかと思っていたら、特には誰も座る事無くワルプルギスが開幕した。

 

 チラッとギィやレオンなどが、自分に座らないのかという視線を向けて来るけれど自分から目を合わせる事など絶対にせずに、目を閉じて耐える。

 あとヴァンパイア陣営のメイドさんからの視線も感じるが、そっちも見ないように必死に目を瞑るしか選択肢がなかった。

 

 それよりもワルプルギスが開幕してから数刻……クレイマンが永遠と熱弁しているのがいい加減にうっとうしく感じる。

 

「――そうして私は配下から証言を得たのです」

 

 曰く、魔王カリオンは魔国の主、リムルに魔王を名乗るように仕向け。

 

 魔王の座に診せられたリムルは箔をつけるためにヴェルドラの封印を解くことを提案し、その生け贄に選ばれたのがファルムス王国。

 

 まんまと焚き付けられたファルムス王国が侵攻、ある程度血が流れたところで思惑通りヴェルドラが復活し、ファルムス王国軍は全滅。

 

「これで魔王になれると喜ぶリムルにカリオンが「実は魔王には定員があってな、それは既に満員なんだ。でも俺はどうしても、お前を魔王にしてやりたい、なぁリムルよ、共に魔王クレイマンを殺っちまおうぜ。そうしたら席が一つ空く、これで晴れてお前も魔王の仲間入りだ」……と」 

 

 わぁ~、すっごい作り話だね……。

 というかヴェルドラの事を少しでも知っているのなら、無限牢獄の事はすぐに分かるだろう。そもそも生贄で復活するって、どうやって封印の洞窟にファルムス軍を誘導するんだろう……近くで倒れれば生贄の効果があるなら、ジュラの森で死んだ者達の数でもっと昔に復活してるでしょう。

 

 案外とクレイマンって……お馬鹿なの? それともアドリブ力が弱いとかかな。

 

「この一連の経緯を魔法通話で報せてくれたのは私の配下のミュウランですが……残念ながら彼女はもういません。なぜなら――」

 

 なんというか、ここまで見事にこっちの思惑にハマってくれると気持ち良いね。

 

「そこのリムルという痴れ者によって殺されたからです‼」

 

 リムルなんて呆れてクレイマンの話に合わせて頷いて遊んでるし……長話だったから暇だったんだね。

 

「おいクレイマンよ、話の真偽は一先ず置いておく。肝心のカリオンはなぜここに居ない? 若い魔人を問い詰めるより先に話を聞くべきは件のビーストマスターではないか?」

 

 巨人族の魔王ダグリュールが少し面倒そうにしながら、カリオンの事をクレイマンに聞く。

 

「それは無理なのです、ダグリュール。ご存知かと思いますが獣王国ユーラザニアは壊滅しました。カリオンの企みを知ったミリムが激昂し、そして国ごと奴を葬ったのです」

 

 そのユーラザニアの民はテンペストに来てるんだけど……多分、それと辻褄を合わす為にカリオンとリムルが手を組んでいたって話にしたかったのかな。

 後はワザと流したヴェルドラの噂話も、クレイマンは配下に探らせてギリギリまで情報をかき集めたんだろう。

 

「それは私を慮っての行動だったのですが、我々魔王の間には相互不可侵条約があります。証言以上の証拠が出なければ、彼女の立場は危ぶまれる故に私の軍をユーラザニア跡地へと送り調査させているのです」

 

 実質侵攻になるけど……今頃は無駄に終わってると思うけどね。

 懸念点があるとすれば、仮面を付けた道化連とかいう者達だ。

 

 実力も高いだろうし、その上で用意周到というか、裏で動く事の出来る者達だ……戦ったとして一筋縄ではいかないだろう。

 

「必ず企みの証拠を掴んでご覧にいれましょう、ですのでミリムの処分はお待ち頂きたい。……以上で、私の話は終わりです、魔王を僭称する身の程知らずなスライムは、この場で始末するのが宜しいかと」

 

 お辞儀をしながらもニヤついた笑みは隠せないようだ。

 

「それでは次に、来客よりの説明となります」

 

 メイドさんが次にと場を仕切っていく。

 

「……クレイマン、だっけ? お前嘘つきだな」

 

 リムルはワザと呼び捨てで、クレイマンの名前を知らない感じで話し始めた。

 

「何ぃ?」

「ミュウランは生きているし、俺は魔王の座なんぞに興味はない。大体カリオンさんは謀略とか考えるタイプじゃないだろ」

 

 リムルの事は魔王達も気になるようで、さっきまで寝ていた魔王ディーノもリムルを観察するように起きて話を聞いている。

 魔王フレイに至っては、カリオンの性格を語った時に表情が確かにという感じでリムルを見ている。

 

「ハッ、そんな言い訳だけで誰が信じるというのだ‼ ヴェルドラを手懐け強気になっているようだが、貴様はしょせん邪龍の威を借りねば何も出来ぬスライムよ‼」

「……そこが一番違う。確かにヴェルドラの威光を使わせてもらうことはあるけどな、それ以前にあいつは、ただの友達だ」

 

 今まで閉じていた目を開けて、リムルの方を笑いながら見てしまう。

 しっかりと自分の言いたい事も言ってくれているリムルには本当に感謝だ。

 

「ともっ……⁉ はっ?」

 

 クレイマンは理解出来ない様子で、驚きで思考が停止している様子だ。

 

 今まで観察するようにヴァンパイアのメイドさんから見られていたが、リムルがヴェルドラの事を友達と言ったあたりから、彼女の視線がリムルにも行くようになった。

 

「それに証拠がないのはお互い様だ。そっちの証言だって配下の報告だろ、しかもその配下はもう殺されたって? そんなもん証拠とは言わねぇよ、あとミュウランは今、俺の保護下にあるから、この場に呼んだとしてもお前に都合の良い証言はしないと思うぞ」

 

 リムルは席を立って堂々とクレイマンに言い放つ。

 

「……フッ、フフッ。そこまで卑劣な真似をするか、さては貴様、ミュウランの躯に悪霊でも取り付かせたか」

「遺体に悪霊? する訳ないだろ、さすが心臓を人質に脅迫する奴は発想が違うな」

 

 完璧にクレイマン自身がしていた事を言われて、余裕そうな表情がかなり崩れている。

 

「皆さん、いつまでこんな一介の魔人如きに話をさせるつもりです⁉ こいつは暴風竜の威でもって魔王に成り上がろうと――」

 

 リムルが座っていた椅子をクレイマンの真横を掠めるように蹴り飛ばす。

 反応が出来なかったのか……あえて反応しなかったのかは不明だが、クレイマンが押し黙った。

 

「さっきも言った通り、魔王なんざどうでもいい。俺は俺が楽しく過ごせる国を作りたいだけでね」

 

 コツコツとクレイマンに一歩、また一歩と近付いていく。

 

「それには人間の協力が必要不可欠だし、だから人間を守ると決めた。それを邪魔する者は人も魔王も聖教会も全て等しく、俺の敵だ。クレイマン、お前のようにな。お前も俺が気に食わないんだろ、ならこれは俺達と、お前の問題だ」

 

 リムルに動揺しながらも、クレイマンはなんとかリムルを睨んでいるが……正直、リムルの方がどう見ても強者だね。

 

「おい、お前」

 

 突然、魔王ギィがリムルに話しかける。

 

「魔王を名乗るつもりはあるのか?」

「……ああ、既にジュラの大森林の盟主を引き受けているし、人からすれば魔王だからな」

「ふむ……そこのお前は?」

 

 ふとこの場の全員の視線が自分の方に集まってくる。

 

「え? 自分?」

「あぁ、お前も同様の力があるだろう?」

 

 物凄く楽しそうに魔王ギィが語り、背筋に冷たいモノが走った。

 

「え~、リムルが魔王を名乗るならそれで良い? 自分は基本的にリムルに付く? 楽しい事を第一にしてくれるからね。魔王とか面倒なのはリムルに任せる」

 

 全てを押し付ける気満々なので、リムルにサムズアップして頑張れのエールを送る。

 

「おい……お前ほんっとに後で覚えとけよ‼」

「くくっ……ならば良し。丁度ここには見届け人が揃っている。オレ達の前でクレイマンに勝てたなら、お前が魔王を名乗ることを許そう」

 

 魔王ギィはリムルを見ながら心底楽しそうにしながら言う。

 

「ありがたいね、わかりやすくて」

 

 ふと、ミリムが机の下で握りこぶしをしていた。

 

 えっと……ミリムさん?

 

 貴女は操られているのではないのかな?

 

 どういうこと? 

 

 今の反応はどう見ても、ミリム自身が喜んだように見えたんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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