心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

163 / 175
163話 狙うは腕輪と保護する狐

 

 

 

 

 

 

 

 風を操りながら腕輪の方を狙っていると、やはりミリムは嫌がって動いてくれる。

 

〈――案。「暴食之王」による魔素吸収攻撃を提案します〉

【その手があったか】

 

 リムルも隙を見て吸収攻撃をミリムに放つと、そっちに対しても嫌な顔を向けている。

 

【お、嫌そうな顔してる‼】

 

「きゃぅ⁉ もう、リムルの方に集中してくれても――」

 

 リムルにも攻撃しているが……絶対に自分の方に放ってくる攻撃の方が容赦がない感じだ。ちょいちょい、何かを拳や体に足に纏わせながら攻撃してくるせいで、凌ぐ事しか出来ない。

 

【これで少しずつでもミリムの体力を削って、一瞬でも油断してくれりゃあ宝珠を壊すチャンスだが……正直、そんな千載一遇を狙うよりも、クレイマンを倒す方が現実的だな】

【この状態のミリムを一人で抑えてろって言うの⁉】

【あ~、最悪……頼むかもな】

 

「紫苑!? 遊んでないで早くクレイマンなんかやっつけちゃって‼」

「え? あ、はい」

 

 遊んでいる自覚はあったのか、大太刀を構え直して紫苑がクレイマンに斬りかかると、クレイマンが持っていた剣を簡単にへし折った。

 

「くッ……」

「この程度ですか? 魔王を名乗るには弱すぎますね」

「貴様あぁ……」

 

 紫苑の言い方的に……あれは挑発じゃなくって本当に弱いと思って言っている。

 クレイマンは折られた剣を悔しそうに見つめ、紫苑の見下す様な視線に怒りの感情が上がっているようで、顔は物凄く残念な怒りの表情になっている。

 

「スライムや小娘風情の手下が、調子に乗るなよ⁉ 行け‼ 踊る人形達‼」

 

 クレイマンは人形を何体か取り出して魔素を籠めると、ただの人形が受肉したように人の姿へと変わっていく。

 

 人形の額に埋め込まれた珠みたいなモノが関係しているのか、人形達の姿は其々違う。

 

 紫苑はそんな事はお構いなく大太刀を横に薙ぎ払って変化した人形達を胴体から全て真っ二つにしてしまう。

 

「おぉ、紫苑も強くなったねぇ」

「よそ見してないで手伝えって‼」

「手伝ってるでしょう……悉くミリムに打ち砕かれちゃってるけど」

 

 いくら風を操っても、ミリムが拳を振るって操った風を纏めて打ち消すせいで自分がやり難いのだ。

 しかも、ミリムも拳の風圧にミリム自身の魔素を籠めてくるせいで、操れない風が混じって上手くミリムに攻撃が出来ない。

 

 なんでパンチの風圧に魔素を籠めただけでこっちの術が吹き飛ばされるのか……全くもって理解出来ない。

 その上、いくら風で感知していても……ミリムの早さについて行けるかと言われると、ギリギリで躱せるレベルでしかない。

 

 反撃をしようとすると、すぐにカウンター攻撃が飛んでくるし。

 杖に纏わせた風で応戦しながら、隙だと思った攻撃はミリムの誘いで下手に仕掛けようものなら、ミリムに良いようにあしらわれ、隙を晒した自分はミリムの攻撃を防ぐ事が出来ずにダメージを受ける。

 

 ミリムの攻撃なんか当たったら無事じゃすまないんだから、回避に全力を尽くすしかないという……カードが使えればやり様はあるのだけれど……こんな、魔王達が見ている真ん前で使いたくはない。

 

「ふ……ふははははっ、やるではないか、強力な魔人の魂を封じ込めた人形をこうも容易く、打ち砕こうとは」

「下らない、本当に大したことがないようですね」

 

 珍しい、紫苑が本当に呆れながらクレイマンを見ている。

 

「フン、おわりだと思ったか? 言っただろう? 魔人たちの魂を封じ込めたと。今一度立ち上がれ人形どもよ‼ そして踊るのだ‼ その悪鬼を死へと誘う舞踏をな‼」

 

 なんか大見え切ってポーズまで決めながら、クレイマンは足元に転がっている人形に語り掛けている。

 

「もしかして……気づいてないの?」

「は? ば、馬鹿な⁉ 復活しないだと⁉ なぜ……‼」

 

 紫苑が大太刀で人形達を攻撃した時点で、人形に封入されている魂は消えている。

 

 なんかミリムも呆れた様子でクレイマンを見ている。

 すぐに自分とリムルの方を見て、操られているフリをして攻撃してきたけど……。

 

「どうやら人形遊びはお終いのようですね。では次は鬼ごっこにしましょうか」

 

 というか……そろそろ、ミリムの馬鹿力を杖で凌ぐのは限界に近い……自分がではなく、このままだと杖が粉々になってしまう。

 

 ……本当にやめて欲しい。

 

 この杖はお気に入りで、絶対に無くしたくないモノなんだから。

 

 ミリムが暴れたせいで、足元もかなりデコボコしていて動き難くなっている。

 

【――主、ウィン様‼】

【ランガ? どうした、ピンチか⁉】

【え、あんまり動きがないように見えるけど……というより、ランガは狐ちゃんに対して余裕じゃなかった?】

【えぇ、その……身の危険はないのですが、困っております】

【なんだそりゃ、どういうことだ⁉】

【そちらが一段落したら、主かウィン様、どちらか一人で構いませんので、ちょっと来てください‼】

【分かった、もうしばらく踏ん張って――】

【あ、じゃあ今から行くね~】

【ウィン⁉ まぁしょうがないか……】

 

 すぐに自分が飛び退いてミリムから距離を取ると、ミリムも自分の行動は想像していなかったのか、着地する足場を間違えたようで、ボコボコの足場で足が引っ掛かりよろけた。

 

 チャンスとばかりにリムルが走り出して、ミリムの腕輪を壊そうと手を伸ばしている。

 

「リムル‼ それダメ⁉」

〈告。罠と推定――〉

 

 躓いて態勢を崩したにしては、しっかりと体の軸は整っているのでワザとだと分かるのだが、焦ったのかリムルには分からなかったらしい。

 

 服を掴まれて、ミリムからの一撃をもろに食らうかと思っていたが……なんか急にリムルとミリムの間に変な魔素が現れた。

 

 まぁ変というか、なんでこっちに来たのか分からないが……。

 

「いきなり何をする‼ 酷いではないか‼」

 

 ヴェルドラが現れた。

 リムルの代わりに殴られたようだ。

 

 いや、というかヴェルドラが何で転移してきたのだろう……ラファエル先生が呼んだのかな。

 

 会場全体が驚きの空気で、全員の動きが止まった。

 

〈告。究極能力「暴風之王」の権能に「暴風竜召喚」があります〉

【いや、それは覚えてるけど。俺は使ってないぞ、ラファエルさんが使ったのか?】

〈否。マスターの許可なく私がスキルを行使することはありません〉

【ホントにぃ?】

〈本当です。個体名ヴェルドラは召喚経路を自力で逆走してきた模様です〉

【え? そんな事できるの⁉】

【まぁ……ヴェルドラだしな】

 

「おい、お前なんでここに来たんだよ」

「ぬ? リムルよ、貴様、我にあのような仕打ちをしておきながら、その言いぐさは酷いのではないか?」

「え?」

「リムル……ヴェルドラになにしたの?」

「俺何かしたっけ?」

 

 リムル本人は記憶に無いらしい。

 

「用件はコレだ」

 

 ヴェルドラがマントの内側をゴソゴソと探りながら、一冊の本を取り出す。

 

 その本をしばらく見つめたリムルが「あ」と声を出し、何か思い当たる事があるように上を向く。

 

「カバーと中身が別物ではないか‼ 最終巻にしてこの嫌がらせは悪質すぎるぞ‼ いや、これも面白かったが‼」

 

 なんか、物凄くどうでも……いや、確かにやられたら嫌だけど。

 

「ねぇ、リムル。どうせならヴェルドラにミリムを抑えて貰ったら?」

「たしかに……」

 

 ヴェルドラならミリムの遊び相手にも丁度良いだろう。

 後は、隙を見てミリムの腕輪でも壊してあげよう……ここまで自分を集中的に邪魔してくれたお礼はしてあげないとね。

 

「よし、本来の中身を渡す前に、お前にはミリムの相手を頼みたい」

「む、ミリム?」

 

 話をしているヴェルドラの背後から、飛び上がったミリムが蹴りを放つ。

 

「おお、そうだ。その名、思い出したぞ。我が兄の一粒種か」

「凄い」

 

 ミリムの蹴りを腕一本で受け止めて、ミリムを押し返した。

 

「操られているだけだ、絶対に怪我をさせないようにな」

「フン、我に任せろ」

 

 こっちはもう大丈夫だろうし、自分は早くランガの下へと行こう。

 

「ランガ? どうしたの」

「ウィン様‼ すみません、我がふがいないばかりに……」

「いや全然、無事ならいいし……何があったの?」

「それが……」

 

 ランガは狐ちゃんの方を見る。

 

【――けて。……助ケテ‼】

 

「なるほどね」

「ウィン様‼」

 

 急に上から飛んでき攻撃してきたのは、サルとウサギの魔物だった。

 

「新手?」

「あの狐の従魔です‼ 二本のしっぽが化けました」

「ん~、じゃあランガには二体の魔獣を抑えておいてほしい?」

「はっ‼」

 

 狐ちゃんに真っすぐ向かって行くと、従魔達は庇うように立ちはだかる。

 

 サルの方は二刀流なのか、二本の武器を手に持っていた。

 

 まぁさっきまで戦っていたミリムに比べると、動きは遅く躱しやすい。

 

 ゆっくりと歩いて狐ちゃんに近づいていくと、可愛く吠えているのでちょっとだけ口を押える。

 

「……ん~、支配の呪法だね……これくらいなら、ライナに頼らなくても解呪できるよ」

 

 そう微笑みながら狐ちゃんに語り掛ける。

 

 こっちの言葉を直ぐに理解し、頭を差しだして来た。

 

 糸のように巻き付いている黒い靄を、自分の魔素込めた風の刃で黒い靄をズタズタに切り裂いて剥がしてやる。

 

「ね、もう大丈夫」

 

 少し怖がって震えていた狐ちゃんは、すぐに自身に掛かっていた呪法が解かれたと分かり、目をぱちくりさせている。

 

 少し時間を置いてから、吠えると一本だった尻尾が三本に戻っていく。

 

「疲れたね……寝てていいよ。守ってあげるから」

 

 狐を抱き抱えてあげて、優しく撫でてあげる。

 

 狐ちゃんはすぐに落ち着いたように眠りに入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

  • ウィッチクラフト
  • エクソシスター
  • 蟲惑魔
  • 妖怪少女
  • 六花
  • 海晶乙女
  • アロマ
  • ティアラメンツ
  • 白き森
  • イビルツイン
  • ドラゴンメイド
  • ラビュリンス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。