心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

164 / 175
164話 不意の一手と魔王クレイマン

 

 

 

 

 

 

 

 腕の中の狐ちゃんをモフモフと優しく撫でていると、なんかランガが少し羨ましそうに見てくる。

 

「えっと? どうしたの?」

「いえ、自分は主には良く撫でて貰っていますが……その、ウィン様はあまり触れてくれないものですから……」

 

 あぁ、狐ちゃんが羨ましくなっちゃったのかな。

 

「まぁ、ランガ可愛いっていうよりカッコイイ感じでしょう? こんどアペライオと一緒にブラシ掛けてあげようか?」

「宜しいのですか⁉」

「うん、別に良いよ?」

「では、よろしくお願いします」

 

 ランガが狐ちゃんへの嫉妬の視線が消えうせて、尻尾を振って嬉しそうにしている。

 

【リムル様、ウィン様、少しよろしいでしょうか】

 

 シュナやライナの方で何かあったのか、蒼影からの思念伝達が飛んで来た。

 

【ソウエイか、どうした?】

【なにかあったの?】

【クレイマンの本拠地を落としました】

【え⁉ もう?】

【さすがに、早すぎない?】

【はい、色々あったのですが……。急遽、数千のアンデッドがシュナ様に下りまして】

 

 蒼影の報告に思わず自分とリムルが顔を合わせて見合ってしまった。

 

【蒼影? それってライナがやったの?】

【いえ、ライナ様は城を落としました】

【は? ライナ一人でか?】

【はい、お一人で城を落として、粉砕しました】

 

 何を言っているのか、さっぱりわからない。

 ライナって物凄く強くなってるのかな? いや、それにしては言い方に違和感があるんだけどね……そもそも、粉砕ってどういう事だろう。

 

【アンデッドがシュナ様に下り、速やかに制圧が完了しました】

【は? シュナがやったのか⁉】

【……説明が難しいので、経緯は後程。急ぎお渡しすべきものを見つけましたので、ゲルドをよびました。「胃袋」をご確認ください】

 

 リムルのもつベルゼビュートの権能「食物連鎖」の効果で、ゲルドの「胃袋」へリムルもアクセスが出来るようになったらしい。

 

 胃袋という言い方をしているが、要はゲームなんかのストレージやアイテムボックスみたいなもので、色々なモノを亜空間に収納できる力の事を言う。

 

 つまりは、ゲルドが「胃袋」という亜空間に入れたモノは、リムルも何処に居ても取り出すことや、アイテムの確認が可能という事だ。

 

「……なるほど」

「なにか良いモノだったの?」

「あぁ、使える」

 

 リムルはそう言いながら悪い笑顔でクレイマンの方を見る。

 

「なぜ……なぜ効かん⁉ あのミリムすらも支配する究極の呪法……操魔王支配だぞ⁉」

 

 いやいや、ミリムは操られてないから。

 まぁそういう事が分からない時点で、クレイマンの強さは程度が知れてるのかもしれない。

 

「これは何のつもりです? 痛くも痒くもないが、もう少し待てばいいのですか?」

 

 いい加減飽きたと紫苑が一歩踏み出すと同時に、身体に纏わりついていた黒い靄を吹き飛ばした。

 

 あまりにも予想していなかったのか、驚いた顔をして紫苑を見ている。

 

「ビオーラ‼ 何をしている⁉ さっさとこっちへ――」

「ビオーラ? ……あぁ、コレの名前でしたか? なかなか強かったですよ、攻撃手段がとても多彩でした」

 

 ベレッタが木偶人形の胸を貫いて、心臓部だと思われるモノを強引に抜き取っている。

 

「ただ、残念ながら、そのどれもがワレには通じなかっただけのこと。戦利品として頂戴します、研究のし甲斐がありそうだ」

 

 自分やリムルのせいなのか、ベレッタは木偶人形に仕込まれていた武器を興味深げに物色しながら鼻歌を歌っている。

 

「あの従者、変な奴だな。お前に似て」

「研究熱心って言ってよね‼」

 

 魔王ギィがラミリスを揶揄うように言うと、ラミリスの方は顔を赤くしながらベレッタの事を弁護している。

 

「馬鹿な……」

 

 最後の頼みの綱だったんだろう狐ちゃんは、いま自分の腕の中で寝ている。

 

「敵わなかったというのか、新参のスライムごときに……ッ⁉」

 

 ショックを受けているクレイマンにリムルがゆっくりと近付いていく。

 

「これで手詰まりか? まだ何か奥の手を隠しもっているのなら、さっさと出せよ。お前の計略は全て潰すって決めてるんでね」

 

 リムルの言葉を黙って聞いているクレイマンの雰囲気が、少しだけ変わった。

 

「それとも今度こそ、お前自身が戦うか? 魔王クレイマン」

「そうか、そうだな。魔王、私は魔王なのだ――だから戦い方にこだわり、上品に優雅に敵を葬ってきた」

 

 クレイマンがキッチリと着こんでいた服を脱ぎ捨てた。

 

「久しく忘れていたよ、自らの手で敵を捻り潰したいという、高揚感をな‼」

 

 クレイマンの足元から黒い魔素があふれ出て彼自身を覆いつくしていく。

 

「リムル様お下がりください‼」

 

 紫苑がリムルを庇うように前へと飛び出す。

 

「へぇ……」

「少しは、らしくなった?」

 

 クレイマンは自らの背に人形の腕を生やし方から肘にかけては筋肉質な部分が見えているのに、肘から先は人形のような手をしている。

 魔素の量も格段に大きくなっている。

 

「リムル様、私が――」

 

 紫苑が大太刀に手をかけて戦おうとするのを、リムルが手を上げて止める。

 

「少しはマシになったじゃないか、見直したよ。魔国連邦(テンペスト)国主リムル=テンペストだ、決着をつけようぜ」

「魔王――いや“喜狂の道化(クレイジーピエロ)”クレイマンだ。殺してやるぞ魔王リムル」

 

 クレイマンが魔王と名乗らず“喜狂の道化”と名乗った。

 それは彼なりにも意味があったと思いたいね。

 自分やリムルを前に、自分で決めて自分自身が戦うという事になったから魔王と名乗るのを止めたのか、クレイジーピエロと名乗る方が……なんというか、クレイマンらしいと思ってしまった。

 

 何故かは、分からないけど。

 

 クレイマンの行動って紫苑みたいに、誰か主に仕えていたように感じるのだ……きっと彼は自らが先頭に立っているよりも、誰かを支えるような紫苑みたいな立場に居た方が、物凄く輝いていたんじゃないかなって思う。

 

 無理やりに戦わせたり、心臓なんて命を対価にしておきながら自分優位なんていう事をしている時点で許せないんだけどね。

 

 もしかしたら、身内には違う顔を見せていたのかもしれない。

 

 何が、クレイマンという人物を変えたのかは知らないけど……やってはならない外道な手段を用いて、喧嘩を吹っ掛けてきた時点で彼の運命は決まったんだ。

 

 自分やリムルが決めたと、言った方が正しいのかもしれないけどね。

 

 さて、ここで一泡吹かせてやらなきゃいけないのはもう一人居る。

 

 ヴェルドラと一緒に遊んでいるミリムにも……キッチリとお返しをしないといけない。

 

 自分達を心配させておいて。

 ミリム自身の思惑は多分、成功しているのだろう。

 

 リムルや自分がここに居る時点で、ミリムの目的は七割……いや、九割は達成しているって感じで、後はこの場でリムルや自分が魔王達の前で力を見せた事で、ミリムがしたかった事は終えている。

 

 人の手の平で最後まで踊っているなんて、そんなつまらない終わりはないよねぇ。

 

 ランガをカード化出来た事も含め、本来の遊戯王カードの力を使わずに、別の力と見せるなら、やり様は幾らでもありそうだし……。

 

 うん、リムルの方はクレイマンに集中してもらおうかな。

 

「リムル……、一対一で良いよね?」

「あぁ、コイツは俺が相手をする」

「それじゃあ。ちょっとミリムを泣かしてくる」

「え? あ、あぁ。任せた」

 

 いま自分がどんな顔をしていたかは、ちょっと分からないけどミリムにターゲットを決めて、ヴェルドラと遊んでいる間にワザと割り込む。

 

 風の弾を思い切り爆発させて暴風を生み出す。

 

「ぬ? ウィンか」

 

 チラッとミリムもこっちをみて、何がしたいのという視線を向けてきている。

 

「ふふ、ミリムにはそろそろお仕置きしないとダメだと思うの……ねぇ、ミリム?」

 

 ミリムがちょっとブルっと震えている。

 

「ヴェルドラ。さっきから撃ってた技は、どっちも波動系だけ? 他にはまだ覚えてないの?」

 

 隙の大きな気を圧縮して溜めた力を、一気に放つ亀なる師匠が生み出した技や、格闘技の筋骨隆々なキャラが使っていた波動。

 

 よくまぁ、再現出来たねと言いたいけど……丁度いいから利用させてもらう。

 

「ぬ、まだその聖典は初めの方しか読めていなくてな。他にもあるのか⁉」

「あるよ、見せてあげる」

「やはりウィンも使えるのか⁉」

 

 円盤状の光を生み出しながら、チェンソーみたいに回転させていく。

 

「お、おいウィン‼ それは危なくないか⁉」

「大丈夫だよリムル、刃は潰れてるからね。ミリムならちょっと痛い程度で済むはず?」

 

 キィーと物凄い音が鳴っているから信用はないだろうけど。

 

「ほうほう、気を回転させて薄く伸ばすのか」

「まぁここから自分なりにアレンジしちゃうけど」

 

 でも、このままただ投げるのではミリムには意味が無いだろうから少し工夫する。

 コレをカード化させる。

 

「む? カードにするのか?」

 

 そのカードをコピーして、手札のように五枚にして右手に持つ。

 

「マジシャンっぽく、そろそろ戦ってあげるね♪」

 

 手札にしたカードには円盤状に回転している光のような絵に、風が纏うモノや、炎が燃え上がっているような絵柄になっているモノなど、属性ごとに分かれている。

 

「ヴェルドラ、魔法陣の所にミリムを誘導してほしい?」

「ふむ、任せろ。ヴェルドラ波‼」

 

 魔法陣を地面に展開させながら、自分はカード化した回転円盤をミリムの真横に投げる。

 

 音も無く、カードの場所に自分がカード化させた力が急に現れてミリムにぶつかった。

 

 感知にも引っ掛かり難いカードだからね。

 ミリムからしたら、何も無い場所から急に自分の攻撃が飛んで来たように思うよね。

 

 咄嗟に腕でガードした所に、ヴェルドラが回転しながら足蹴りをして地面に叩き落とす。

 

「ナイス、流石はヴェルドラ」

 

 自分が褒めるとヴェルドラは心底嬉しそうに胸を張る。

 

 魔法陣を展開させて、ミリムの力を少しでも奪いながら、手に持っている四枚のカードもミリムに向かってばら撒く。

 

 それに気付いてミリムが脱走しようとするまえに、カード化させて四方を固め、もう一度ミリムが身を屈めて腕でガードするように仕向ける。

 

 ミリムは回転円盤を鬱陶しそうに力で何とか押し返そうとしている。

 

「はい、残念賞♪」

 

 腕を上げた時点で、狙いをすませながら杖を構え、一点に集中させて空気圧と魔素を圧縮させた空気砲を腕輪に思いっきりぶつけてやる。

 

 ミリムの腕にもかなりの衝撃がいくだろうけど、頑丈なミリムならこの程度なら大丈夫でしょう……多少は痛い思いをしてもらわないとね。

 

 バキィン――と物凄い音を部屋中に響かせながら、ミリムの腕輪を破壊する。

 

「あぁ‼ やられたのだ⁉」

 

 ミリムが物凄く悔しそうにしながら、涙目で自分の事を睨んでくる。

 

 操られていたって感じを出すなら、もうちょっと演技しようよミリム……。

 

「やったのかウィン⁉ 流石だな‼」

 

 あぁ、リムルの純粋な眼差しに少しだけ罪悪感が……。

 

 後で絶対にミリムに文句言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

  • ウィッチクラフト
  • エクソシスター
  • 蟲惑魔
  • 妖怪少女
  • 六花
  • 海晶乙女
  • アロマ
  • ティアラメンツ
  • 白き森
  • イビルツイン
  • ドラゴンメイド
  • ラビュリンス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。