心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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168話 魔王の脱退とミリム陣営

 

 

 

 

 

 

 

 お茶会の席に案内されて座らされたのは、とりあえずリムルの隣でホッとしている。

 

 椅子は別に魔王さん達が座る椅子ではなく、別のお客様用みたいな椅子である。

 

 二つ席が空いていて、その奥にカリオンが座っている。

 

「――さて、今回のワルプルギス。議題はカリオンの裏切りと、そこのリムルの台頭についてだったが……その問題は片付いた」

 

 メイドさん達が一人一人に飲み物を配っていく。

 ちなみに何故か自分とリムルの後ろに席を用意して、小さく丸い机にはリムルから出してもらった聖典、もといマンガ本が詰まれ、読書に夢中になっているヴェルドラも居る。

 

「オレとしちゃあ、これで終わりにしてもいいんだが……せっかくの機会だ、何か言いたいことがあるヤツはいるかい?」

 

 魔王ギィが場を仕切りながら周りにいる魔王達を見て言うと、手を上げて答える者が一人。魔王フレイが声を上げた。

 

「いいかしら? 私から提案……というより、お願いがあるのだけど」

 

 カタンと何時から立ち上がって、魔王フレイは席に座る他のメンバーを見ていく。

 

〈天空女王の名で知られる、魔王フレイです〉

【さすがに覚えてるよ‼ 信用ないなっ‼】

【ふ~ん……名前よりも容姿に見惚れてたから、そっちで覚えた?】

【ウィン⁉ 違っ――】

〈…………魔王フレイが最初に――〉

【わぁ~‼ ラファエルさんタイム‼ それ以上は何も言わなくていいから⁉】

 

「おかわりなのだ‼」

 

 ミリムの方は配られた飲み物を速攻で飲み干し、お代わりを要求している。

 

「いいぜ、言ってみろよ」

「今日この場を以って――私は“魔王”の地位を返上させてもらうわ。そして、ミリムに使えることをみとめてもらいたいの」

 

 魔王フレイが清々しい笑顔でミリムの名前を出しながら語ると、ミリムが急に口に含んでいた飲み物を噴き出していた。

 

 ミリムの隣に座っている魔王ダグリュールがミリムにハンカチを手渡している。

 

「待つのだフレイ‼ ワタシはそんな話、初耳だぞ‼」

 

 ミリムがダンッと机に両手を付いて勢いよく立ち上がる。

 

「ええ、言ってなかったもの」

「いきなりだな、理由はなんだ?」

 

 魔王ギィの方も、知らない話らしい。

 

「理由は――、そうね……色々あるのだけど、私は魔王としては弱すぎると思うのよ。さっきの戦いを見ていて確信したのだけど。私では覚醒したクレイマンに勝つことは出来なかったでしょう。それに、そっちの子にも勝てると思えないのよね」

 

 絡みつく視線に思わず背筋がゾワッとして震えてしまった。

 その猛禽類が獲物を見つめるような目で見ないで欲しい。

 魔王フレイは多分、自分の事を調べようとしたのだろうけど……彼女では自分の力量を謀るのは無理だろう。強さを隠しているっていうのは、気付いているだろうけどね。

 

「だがフレイよ、有翼族であるお主の本領は大空での高速飛行戦であろう、そこまで自分を卑下する事はないのではないか?」

 

 魔王ダグリュールの言葉にミリムが隣でコクコクと頷いている。

 それに魔王フレイは首を横に振って答える。

 

「空ならば敗れなかった。民を守れなかった時、魔王にそんな言い訳は通用しないわね。それに……たとえクレイマンのように有利な状況を整えようと、その全てを覆す者が相手ではどうしようもないと知ったのよ」

 

 魔王フレイは最後の方に少しだけ、リムルと自分を見ながら語っていた。

 

「だから、ね、ミリム……私は貴女の配下につくと決めたのよ」

「だ、だが……」

 

 魔王フレイはそう語りながら、ミリムの方へとカツカツと歩いて寄っていく。

 ミリムはオドオドと戸惑いながら魔王フレイに、なんと言えば良いのか分からない様子だ。

 

「どうかしら、この提案を受けてくれないかしら」

 

 ミリムを優しく覗き込む様にして魔王フレイは微笑んで、ミリムの言葉を待っていると――別の者も声をあげて立ち上がる。

 

「ちょっと待ってくれや、そういう話なら俺様にも言いたい事がある。ミリムに負けた俺が魔王を名乗り続けるのはおこがましいってもんだ。だから俺も魔王の地位を返上させてもらいたい」

「ちょっと待てカリオン!? あの時のワタシはクレイマンに操られていたのだぞ⁉ ノーカンに決まっておるではないか‼」

「……ミリム、その言い訳には無理がある?」

「ウィン! 何を言うのだ⁉」

 

 ミリム……操られないって自分で言っちゃってたよ。

 

「だよなぁウィン。てめぇ、さっき「ワタシを支配するのは無理なのだ」っていってただろうが」

「本当にそれで良いのかよ、カリオン」

 

 魔王ギィがカリオンに聞く。

 

「あぁ、建前上、魔王同士は同格だが……ああまで歴然とした力の差を見せつけられたんだ、ここは潔く軍門に下ろうと思う」

「オレはお前を気に入ってたんだぜ? 後、数百年もすれば、お前も覚醒するだろうと期待してたんだがな」

 

 魔王ギィは手元のコップを指先で転がしながらカリオンに言う。

 

「期待は有難いが、身の振り方は自分で決めるさ」

「……まぁ、いいだろう。たった今よりフレイとカリオンは魔王ではない。ミリムに仕えたいというのなら自分達で説き伏せるがいいさ」

 

 これ以上は引き留めても無駄だと思ったのか、魔王ギィはあっさりと引き下がって、後は自分でミリムを説得するんだなと言って終わった。

 

「本気なのかカリオン」

「ああ、ユーラザニアの王を辞めるつもりはねぇが、ミリムを上に置く新体制を築きたいと思ってな」

「良いと思うわよ。獣王戦士団は貴女の戦力として恥じない実力だし」

 

 魔王フレイ……もう魔王から降りたのなら、フレイさんで良いのかな? なんか……カリオンさんとフレイさん……結構に良い仲だったりするのかな。

 

「そ、そんなことを言って、ワタシを騙そうとしていないか? 配下になると気軽に話してくれなくなるだろ? 一緒に遊んだり悪巧みもしてくれなくなるんだろ⁉」

 

 なるほど、ミリムが心配しているのは上下関係になった時、二人と距離が開いてしまう事が一番の不安要素か。

 

 クスッとフレイさんが笑い、少し屈んでミリムに顔を近付ける。

 

「いいえ、何時でも一緒にいられるようになるし。なんならもっと楽しいことが出来るかもよ? それに考えても御覧なさい、あそこに居る二人の関係」

 

 指差された先は勿論、自分とリムルの方だった。

 確かに立場的には自分はリムルの下で、今のリムルは魔王という立場になっている。

 

 フレイさんに促されて、ミリムがソワソワし始めた。

 

【あのフレイさんってミリムの扱い方が上手いね】

【あぁ、俺より格段に扱いが上手いな。ちょっとくやしい】

 

「そもそもお前がオレの都を吹き飛ばしたんじゃねぇか。お前にも俺達を養う義務があるんだよ‼」

 

 カリオンの方はごり押しする気のようだ。

 

「わ、ワタシは民を持たぬ主義だ、仕えると言われても困るのだが……」

「だからこそ、私たちが貴方の役に立てるのよ。貴女だっていつまでも我儘ばかり言ってはいられないでしょう? そろそろ領土の運営も考えるべきなのではなくて? でないと貴女を慕う神官たちが可哀想じゃない」

 

 フレイさんに指摘されて、ミリムが言葉に詰まりながらビクッと肩を揺らした。

 

【うわぁ……ミリムの国と国交を考えるなら、あの人達を相手に交渉する事になるの?】

【だろうな】

 

「ええいわかったのだ‼ もう勝手に、好きにすればいい‼」

 

 考える事を放棄して、フレイさんとカリオンさんの言葉攻めに負けたミリムが折れる形となった。

 

「ねぇ貴女、私の代わりに魔王にならない?」

 

 急に爆弾発言をしてくるフレイさんに思いっきり首を横に振って答える。

 

「遠慮します‼」

「あらそう? 残念……貴女、空を飛ぶのもかなりのモノでしょう? アレだけ風を操れるのだし、ミリムの話でも飛ぶのが上手いって聞いてたんだけど」

「ミリムは大袈裟に話すのが好きだから、気にしない方がいい?」

「ふ~ん、まぁ本人が嫌がっているんじゃあしようがないわね」

 

 アレは了承していたらどうなっていたか分からない……なんか下手をしたらミリム陣営に引っ張られていそうな予感がする。

 

「領土運営の話になったら呼んで頂戴ね」

 

 そう言ってフレイさんとカリオンさんが会場を出ていった。

 

【カリオンさんはまだ話が通しやすそうだけど……フレイさんは手強そう?】

【あぁ、油断してると色々と向こうに有利な条件で話を進められそうだな】

【リムル、気をつけてよ?】

【なんで俺なんだよ⁉】

【自覚ないみたいだから、ラファエル先生。お願いします】

〈……御意〉

【なんでそこでラファエルさんが返事するんだよ⁉】

 

 もう胸に手をあてて考えれば良いと思う……むしろ、朱菜や紫苑にフレイさんの事を言ってしまった方が早いかもしれない。

 

「ねぇねぇリムル……」

「なんだよ……」

「二人、魔王が抜けたよ?」

「あぁ、そうだな……八人になったな」

「もう十柱もいないよ?」

「あぁそうか、十大魔王じゃなくなったんだな」

 

 流石に二人抜けたらもう十大魔王とは名乗れないなら、どうするのだろう。

 そう思ってリムルと話していただけなのに、自分達の言葉を聞いて場の空気に亀裂が入ったように空気が変わっていった。

 

「え? えっ⁉ 自分、なにか悪いことを言った?」

 

 

「いや、俺に聞くなよ⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の解放テーマ、ワルプルギス終わりまで

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