心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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173話  ファルムス国の三つの道

 

 

 

 

  △▲△▲ 視点:ダルク △▲△▲

 

 

 

 

 ==ファルムス王国。王城――、謁見の間。

 

 

「な……何をしておる‼ 誰ぞ早く神官を連れてまいれ‼ それから回復薬を‼」

「これは……魔物の国の者にやられたのか……?」

 

 王が座る椅子に置かれているのは、箱詰めにされた王様だ。

 

「王をお連れしたショウゴはまだ目を覚まさんのか⁉ たたき起こして説明させるべきであるが‼」

「落ち着かれよ、カルロス卿。喚いても事態は変わらん……‼」

 

 王様を出迎えた王宮は大騒ぎとなっている。

 

「だ……駄目です。回復魔法も効果がありません‼」

 

 神官が回復魔法や回復薬での治療を試みるが、その全てが無駄に終わる。

 まぁ、箱詰めにされている王様は、別に怪我などしていないのだから、回復など出来るはずもない。

 

「そもそも、ご存命なのか? どう見ても、その……」

「は、はい。意識もおありです……それどころか切り傷ひとつありません、まるで……まるで最初から、このお姿であったかのようです――」

「通常の回復魔法は効かぬ。身体を構成する法則が書き換えられておるのだ」

「おお……目を覚ましたか。そなたは無事のようだな、田口省吾よ」

「痛み入りますミュラー殿。衛兵、レイヒム殿が英雄ヨウムを連れ完全回復薬を持ち帰る手筈となっている。直、到着するであろう。門番に話をとおしておくように」

 

 入り口付近に立っていた衛兵が戸惑いの声を上げて、かなり戸惑っている。

 

「ショウゴ貴様‼ 事情を知っておるなら早く説明せよ‼ 魔物の国への遠征で一体、何があった⁉ ラーゼン殿は何処におられる⁉ 貴様が無事ならあの方も生きておろう‼」

 

 どうやらラーゼンが体を奪ったっていうのは、知らない者の方が多いのかもな。

 

 

『かなり面白い事になってるな』

「やはり便利ですね、こういう使い方も出来るのですか……」

「すげ~、リアルタイムで向こうの声が全部聞こえてくる」

 

 ディアブロとヨウムが興味深そうに、カードから聞こえてくる声に感動している。

 

「ぼ、ぼぼっ⁉ 暴風竜の復活だとぉ⁉」

「あり得ん‼ 彼の竜は消滅したと聖教会が発表したはずではないか‼」

「そ、そうだ‼ しかも全軍行方不明? 敗北の言い訳にしては荒唐無稽ですぞ‼」

「その通りだ‼」

「貴公は本当にラーゼンか⁉ ショウゴの奴めが出鱈目を言っているのではあるまいな⁉」

 

 多くの者達が信じられないようで、怒号が飛び交っている。

 

「儂は信じますぞラーゼン殿」

「ミュラー卿」

「ミ、ミュラー卿。こんな出鱈目を信じるなど……」

「他でもない数百年我が国を守護してきたウィザードであるラーゼン殿が告げたのだぞ。他の誰よりも確かで確実な情報だ」

「しかし……しかし‼ では全軍が行方不明というのは、どういうことです? 殺されたでもなく潰走したでもなく……行方不明とは――」

 

 一人の男がラーゼンに詰め寄りながら聞いてくる。

 

「我が軍と魔物達との戦いが、彼の竜を蘇らせた。彼らは皆、生け贄――苦痛も恐怖もなく、何が起きたかもわからぬ間に暴風竜に食われてしまったのです」

「そん……な」

 

 詰め寄った男は大声で泣きだして、ラーゼンの前で崩れ落ちた。

 

『よくまぁ、こんな作り話を思いつくもんだな』

「クフフ、ですが……事実よりかは幾分、優しい方だと思いますよ」

『確かにな』

 

「しかし、ならばなぜラーゼン殿は助かったのです? 何か理由がおありなのでしょう?」

「助けられたのですよ、あの方に」

「レイヒム殿‼」

「そなたも無事であったか……‼」

 

 ハゲの……レイヒムという男を登場させる。

 

「待たれよ‼ 今、助けられたと申されたか? 暴風竜を相手に一体、誰が助けてくれたというのじゃ⁉」

「私とラーゼン殿は王をお守りするので精一杯。暴風竜の復活に絶望していた我らの前に、あの方々は舞い降りたのです」

 

「あの、方々?」

「勿体ぶり過ぎだぜレイヒムさんよ。あの人達はそういうの照れちまうぞ」

「な、何者だ⁉」

 

 続いて、登場メインで登場するのはヨウム達だ。

 

 俺とディアブロはその後ろについて歩く。

 

「失礼、紹介が遅れましたな」

 

 本番はここから始まる。

 

「遅くなって申し訳ないラーゼン殿、無事お連れした」

 

 少しハゲ……じゃなくってレイヒムが咳払いをしながら、俺達の紹介を始める。

 

「ヨウム殿――我が国で唯一、あの方と縁を持つ、架け橋となりえる存在です。ぜひ彼の話を聞いて欲しい」

「待たせたな、どうにか“あの方々”……リムルさんとウィンさんの説得に成功したぜ。王を元に戻す薬も、もらってきた」

 

 そう言って、緊張もなくあっけらかんと話し出すヨウムに少し笑ってしまいそうになる。

 

「ヨウム……英雄ヨウムか‼」

「あのオークロードを倒したという……‼」

 

【貴族共が話を聞く姿勢は整いましたか?』

【完了しております。今ならば、ヨウムの話に耳を傾けるでしょう】

 

 ラーゼンにワザとらしく思念伝達で聞くディアブロは流石だと思う。

 話は勝手に俺の能力で聞いていたのにな。

 

「なんじゃ貴様は‼ 英雄だかなんだか知らぬが、平民風情が無礼であろう‼ ここは下賤の輩が来るような場所ではないぞ‼」

「か、カルロス卿‼ まずは話を聞きましょうぞ‼」

 

「え~っと……じゃあ話すぜ。まず、分かってねぇみたいだから教えてやる。ファルムスは今、滅茶苦茶ピンチだが、同時にチャンスでもある。暴風竜ヴェルドラ、アンタらは四万の軍隊と引き換えに天災級をめざめさせちまった。ファルムスはジュラの大森林と隣接してる、まず無事にすむ訳ねぇよな。これが最大のピンチだ」

 

 場の空気を一心に集めるよう、ヨウムが芝居がかった感じ出さずに、少し大袈裟にアピールしながら告げる。

 

「次にチャンスの方だ。リムルさんとウィンさんから、和睦協議の提案があった」

「それの何が、チャンスだと……」

「忘れたのか? さっきレイヒムさんが「助けられた」っていってたじゃねぇか。テンペストの盟主、リムル=テンペストとウィン=テンペストは現状、暴風竜と交渉可能な唯一の存在だ」

 

 ヨウムの説明に会場内がざわつきだした。

 

「暴風竜と交渉可能⁉」

「おっと、希望が見えてきちゃったか? でも忘れちゃいねぇよな? 自分達があの人達の国に何をしたのか……リムルさんとウィンさんは人間との協調を望んでいるが……仲間が殺されて泣き寝入りを決め込むほど、お人好しじゃねぇ……正直、滅茶苦茶怒ってるぜ? さて、どうする? この状況で、和睦協議の提案を突っぱねるか? よく考えて答えようや、俺らの国のことなんだからよ」

 

 さて、あのちょび髭、カルロス卿だったか、使えるな……勝手に怒って暴れてくれればもうちょっとやり易くなるな。

 

「なんという無礼な物言いか‼ 大国ファルムスが魔物の国に屈するだと⁉ あり得んな‼」

「カルロス卿‼」

「リムルだかウィンだか知らぬが、そ奴らに顔が効くなら都合がいい。取りなすのも英雄の仕事であろう‼」

「カルロス卿。控えよ‼」

「国家の大義を貴様如き平民が語るでないわ‼ よいか‼ 儂は絶対に認――」

「控えろといっておろう、この馬鹿垂れがぁ‼ 事情を知らぬものが出しゃばるでないわ‼」

 

 ラーゼンが巨大な氷の中にカルロス卿のちょび髭を閉じ込めた。

 

「……良いか、ヨウム殿の言葉に嘘はない。我らは敗北した。生き残ったのは儂とレイヒム殿と……そして暴風竜の魔素にあてられ、かような姿に変じてしまわれたエドマリス王のみ。我らが運命は、テンペストの盟主様方にかかっておる、コレがファルムスの現状よ」

 

 ラーゼンの話を他の貴族たちは黙って聞く。

 

「……提案を、受け入れようではないか。のう? 皆の者」

「クフフフフ、賢明な判断です。それでは約束通り、この国の王を解放して差し上げましょう」

 

 ディアブロのヤツ、ワザと気配を消してエドマリス王に近づいたな。

 

「な、何者だ‼ 貴様いつの間に王の側へ――」

「これは失礼、がら空きでしたもので。私の“名”はディアブロ――偉大なる我が王リムル様とウィン様の忠実なバトラーですよ」

 

 ディアブロがそう語りながら、手に持ったフルポーションをバシャバシャと箱詰めにされたエドマリス王に浴びせていく。

 

「ご気分はいかがですか? エドマリス王」

「あ、ああ……助かった。感謝する」

「おお……王が元の壮健なお姿に……」

「信じられん。あれ程あらゆる治療を試みても効果がなかったというのに」

「さて、ファルムスの王よ。我が王であらせられるリムル様、ウィン様より伝言があります」

「聞こう、魔物の国の使者殿」

「では申します。“これより一週間の後、両国代表による和睦協議を行いたい”

“講和条約の締結に先立ち貴国には三つの道を用意した、選択肢を与えよう”

“一つ、王が退位し戦争賠償を行うこと”

“一つ、テンペストの軍門に下り属国となること”

“一つ、戦争を継続すること”“貴国の前には三本の道がある、どれも茨の道だが、よく考えて選んで欲しい”“選んだ道が途絶えない事を祈る”

 ――以上となります。それでは一週間後までに答えを用意しておいてください」

 

 

「ま、待ってほしい! それはあまりにも時間が」

「黙りなさい、私は気が短いのです」

「しかし地方の貴族たちも招集せねば――」

 

「黙れと言っている。お前達の都合などリムル様には関係ない。いいですか、つまらない小細工を弄しようなどと考えないことです。返事を先延ばしにすることは許しません。こちらの提示した選択肢以外の答えも許しません。一週間後に、返事がなければ「戦争の意思あり」と受け取ります……いいですね?」

 

 威圧しながら周りを黙らせ、ディアブロはスラスラと凍り付くような空気の中で淡々と貴族たちに言葉の刃を向ける。

 

『もう良いか? それじゃあ一旦帰ろうぜ、そろそろウィンやリムルが帰ってくるようだしな、出迎え準備と行こうぜ』

「おお、もうそんな時間ですか……では、失礼。せいぜい、よく考えて返事をするように」

 

 足元に魔法陣を展開させ、テンペストへと帰還する。

 

 まぁ、こっちに乗って来た馬車に魔法陣を設置してあるから、ファルムス国にも一瞬で移動出来る準備は万全だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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